やはり俺の脳内選択肢は青春ラブコメに波乱をもたらす   作:こうけー

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お久しぶりぶりだいこんぷれっくすーぱーふぁみこんぷれっくすーぱーふぁmーーー


償い

息を切らしながら、走る俺。

どれだけの距離を走ったのだろうか………肺が痛み、走るのをやめたい気持ちにはとっくになっている。それでも走ることを止めなかった。

「院内で走らないでください」

横を通り過ぎる際に病院のナースの人に注意された。

そう。ここは病院―—―とは言ってもただの病院では無い。千葉の中でもトップクラスの総合病院だ。

「すいません!」

俺は、謝りはするがそれでも走り続けた。

 

由比ヶ浜が俺たちの前から去っていった後、俺は平然と紗羅とのデートを続けていた。

それから数時間して、俺の携帯が震えた。俺の携帯には極めて僅かな人数しか登録されていない。家族、平塚先生、戸塚、材木座―――そして、奉仕部。

画面に目をやると、映し出されていたのは「雪ノ下雪乃」の名前だった。

 

通話に切り替え、耳に当てると聞こえてきたのは雪ノ下の焦った声だった。

通話としては1~2分。その内ちゃんと聞いたのは「由比ヶ浜が事故に遭った」という雪ノ下の第一声だけだった。

 

ーーー

ーー

 

冬なのに俺の服は汗でびしょ濡れになっていた。やっと着いた病室の前で止まり、一回深呼吸をして扉に手をやった。

だが、なかなか手に力を入れられない…中に入って彼女の安否を知りたいがその気持ち以上に俺は責任を感じていた。

【良い事が起こる代わりに悪いことも起こる】

あの選択肢が今の状況を起こしているのでは無いか?と。

紗羅を手にする代わりに由比ヶ浜を失う―――。俺が原因だとしか思えなかった。

数秒間、手を扉にやったまま立ち尽くしていると扉が勝手に開いた。すると目の前には由比ヶ浜の母親が居た。

「―—―ぁ…」

いきなりの事で言葉が出てこなかった。だが、向こうは逆に笑顔で俺を部屋の中に通してくれた。中には、電話をくれた雪ノ下と先生が居た。

そして、眠ったままの由比ヶ浜も―――

「今はまだ眠っているそうだがとりあえずは無事なようだ…」

「…そうですか」

平塚先生が俺にそう言う目は決して喜の目では無かった。それは当然、雪ノ下も由比ヶ浜の親も。そして、俺自身も―――――

由比ヶ浜は静かに酸素呼吸器を付けて眠っている。その顔に傷はついていないし、外傷部分は見受けられない。女にとって顔の傷は命取りだ。俺はある意味では安堵した―――が、すぐに目を疑った。傷が無い彼女の唯一のして最悪の姿。

何故傷が無いか―――――取り除いたからだ。

 

「由比ヶ浜…お前…………足が…」

 

そう。無かったのだ。彼女の足が―――膝より下が綺麗に。

「轢かれる寸前に転倒したのか上半身は無事だったが…下半身の、特に足の骨が綺麗に砕かれていたようだ…」

「……」

無言のままただ彼女の無くなった足の部分を見ているだけの俺。

「確かに足は失ったが死んだ訳ではない…彼女はちゃんとここにいるよ比企ヶ谷?」

平塚先生のその言葉は彼女なりの俺への励ましだったのかも知れない。先生もまた嘆きたかったに違いないにも関わらず、必死に教師であり大人であり続けた。

「何がここにいるですか……」

「比企谷?」

「こいつは…!由比ヶ浜は足がなくなったんですよ!これから何年もある人生を自分の足で歩けなくなったんですよ!これからは走ることもできないし、階段も一人では登れない……一番は周りから好奇の目で見られることになる!」

先生に対しての俺はお子様だった。

「その時傷つくのは俺達じゃない!由比ヶ浜なんですよ……!」

「比企ヶ谷君……」

ずっと無言だった雪ノ下が口を開き、視線をやると目は潤んでいた。それが俺の言葉を聞いてなのか、俺がくる以前からだったのかは分からない。けれども、雪ノ下は由比ヶ浜にいつも優しく接していた。そして、この前の水族館での一件でよりお互いを信頼できるようになっただろう。だからこそ、俺なんかよりよっぽど辛いはずだ。それでも必死に涙を流さないように…自分を潰さないようにしてる雪ノ下も先生と同様に強い。

「…比企ヶ谷」

先生が俺の肩に手を置いて、優しい口調で語りかけてきた。

「君の言ってる事は事実だ。由比ヶ浜は苦しむだろう…身体的にも精神的にも……。だがな比企ヶ谷?それらに耐えられなくなるのは一人になってしまった人間だよ。親の支えだけじゃ耐えられないものもある。でも…彼女は一人じゃないだろ?」

「……ぁ…」

「雪ノ下や戸塚に一色、葉山達に私もだ。彼女には仲間がいる…どんな事になっても変わらない関係でいてくれる仲間が……勿論、君もだろう?」

「……っ…!」

その言葉に俺は感情を隠せなかった。

「友達のいない俺にそんな事を言われても分かりません…」

「ふふっ…君はとことん意固地なやつだな。なら君が一番彼女を助けてやれ…」

「ならって…理由になってませんよ」

俺の言葉を無視して笑いながら先生は雪ノ下を連れて教室を出ようとする。

「あ、帰るなら俺も―――」

俺も便乗して帰ろうとした。実際、帰りたかったのだ…俺には今の由比ヶ浜の姿は余計に自分を責めたくなるだけだから―――

「私たちは君より早く来たから帰るだけだ。君はもう少し彼女の傍に居てあげなさい」

2人は由比ヶ浜の親に頭を下げて部屋を後にした。

 

―――

――

 

2人が帰った後の病室には俺と由比ヶ浜の母親だけが残った。

数分間の沈黙の後に母親は俺に声をかけてきた。

「今日はきてくれてありがとね…結衣もきっと喜んでいるわ」

「いえ…こちらこそ遅れてしまって申し訳ないです……」

「走ってきてくれたんでしょ…?会った時、汗と息の切らし方が凄かったから…」

「それは…まぁ俺の数少ない―――」

そこで口が止まった。

 

あいつは俺にとっての何なんだ?

友達??いやそんな関係じゃ無いと思う。なら知り合い??それも浅い気がする……

じゃあ、何なんだ?俺にとってあいつは一体…

 

俺の口が止まってるのに気づくと母親はある物に手を伸ばした。

「それって…」

彼女が持っていたのは由比ヶ浜のカバン。それも今日持ってた物だ。

「中のこれ。貴方に…って結衣が買って来たものなの」

「これって……」

渡されたのは遊園地のチケット。俺には身に覚えが無いが彼女が言う通りなら俺へのプレゼントか何かだったのだろうか…

「それを買うって決めた時の結衣はすごく嬉しそうだったわ。貴方の事をどれほど好いてるか分かっちゃうくらい…」

「そんな…あいつはいつもそんな感じじゃないですか…?」

「そうね…貴方が言う通りだと思うけど。女の子は複雑なのよ?」

そう言って笑う母親の目元は腫れていて充血していた。

(まぁ…そりゃ、そうだよな)

 

俺だけだった。あの場で感情的になったのは…。

俺だけだった。あの場で由比ヶ浜が傷つく事を想像し、助ける事を考えなかったのは…。

俺だけだった。俺だけが 幼ないまま だったのだ。

(こいつは…目が覚めて足が無いのを見たらどう思うのだろうか…?助かってよかったと思えるのだろうか…)

 

優しい由比ヶ浜が傷つき、汚い俺が無傷なのはこの世の中間違ってる証拠だ。

そして、その間違えを起こしてるのは俺と選択肢だ。

 

(…っ!?)

いきなりだった。いつもの選択肢。そして恨み殺してやりたいほど憎い選択肢の出現の頭痛が俺を襲った―――

 

【①由比ヶ浜結衣に優しくキスをする(その後、目がさめる)】

【②由比ヶ浜結衣の「足」となる】

【③由比ヶ浜結衣の記憶から比企谷八幡が消える代わりに事故を無かったことにする】

 

……。不思議と驚きは無いな。今までで一番まともと言えばまともかも知らない。

①は論外。俺にとっても由比ヶ浜にとってもメリットが無い。却下。

②は良く分からん。足になるってどういう事だ?俺の足を移植か??

③は俺に一番見合った選択肢だな。良いじゃないか…彼女を傷つけた分の代償として俺と関わってくれる数少ない人間から忘れられる。中々の選択肢だ。

 

(じゃあ…さ―――「いつか…結衣が元気になったら一緒に此処に行ってあげてね?」

そう言って、彼女は今日泊まる分の服を取りに帰ってしまった。

完全に部屋には俺と由比ヶ浜しか居なくなってしまった。

そこで俺はある事に気付いた―――そう。頭痛が続かないのだ。一瞬だけ来たままその後から一度も。まだ完全に③とは言ってないし、その前から頭痛が来てない。

(…んだよ。考える時間でもくれてんのか?)

とことん腹が立つ。変なところで空気を読みやがって…。

「なぁ…由比ヶ浜どうしたら良いと思う?」

問い掛けるが当然返事は返って来ない。当たり前のことだが俺は何故か1人でクスッと笑っていた。

俺はさっき先生に言われた事を思い出していた。

「1人じゃない…か…」

先生の言ってる事を否定はしない。実際、由比ヶ浜は友達に助けられると申し訳ないと思うだろうが嬉しく思うだろう。

だが、それなら俺は必要あるのだろうか?

俺なんかより他のやつの方がよっぽど相手を気遣えるに違いない…それなら、選択肢は③を選べば良い話だ。俺は傷つき、由比ヶ浜は助かる。win-winの関係だ。

だが何故かさっきまでの勢いは無くなり、③を選ぶのを躊躇ってる自分がいる。

それが由比ヶ浜の母親に最後に言われた事が俺を躊躇わしているのか、それとも由比ヶ浜が自分の足が治る代わりに俺を忘れる事を嫌がると思っている俺の勝手な理由からなのかは分からない。

 

俺にはこの選択肢があまりにも重たすぎる……

 

さっき渡されたチケット。由比ヶ浜の好意には気付いていたがあえて分からないフリをしてきた。俺が彼女の事をどう思ってるのか分からないからだ…そして、由比ヶ浜の母親のさっきの言葉が俺の頭の中でリピートされ続けている。するといつの間にか握っていたチケットを強く握り過ぎてくしゃくしゃにしてしまっていた。どれだけ悩んでるのかが伺えた。

 

悩む俺に対して、不意にリピートされ続ける言葉と先生に最後に言われた言葉が噛み合って聞こえた。

 

【いつか結衣が元気になったら一緒に此処に行ってあげてね…?】

【君はとことん意固地な奴だな…なら君が一番彼女を助けてやれ】

 

(そうか…そういうことか)

 

簡単な話だったのだ。俺が選ぶべき選択肢はたった1つだけだった。

先生の言葉を守り、由比ヶ浜の母親の言葉を守り、由比ヶ浜を助けてあげる事が出来る。そして、何よりも俺が彼女の為に償える方法。

 

「俺が由比ヶ浜の【足】になれば良いんだ…」

 

俺の人生の全てを捧げてでも俺は彼女の為に生きて、彼女の為に死ぬんだ。

 

例えそこに恋愛感情が無くても…これはあくまでも【償い】なのだから―――

 

 

【①9話を待つ】

【②次話を待つ】

【③明日好きな人のおっぱ―――】

 




どうも半年以上ぶりです。こうけーです。
無事大学に入れて、ひとまず忙しい日々を抜け出してようやく執筆出来ました。また、ゆっくり始めていきたいなと思います。

さて、今回は八幡がまだ恋愛感情を持ってません。このままなのか…それともハッピーエンドなのかはこれからの楽しみという事で!
さてさて、感想もたくさんお待ちしておりますがとりあえずは皆さんに楽しんで頂ける様に頑張りますので応援よろしくお願いします。
選択肢の提供お願いしますね!
ではまた!次話で!
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