性質の悪い夢だ、冗談にしても面白くない。
だがどうしてか、最後に見た文字は強く焼きついている。
知らなかったことを知っている。
大丈夫、目を開ければいつも通りお気に入りのインスタントコーヒー
で一日が始まる。
なら何故こんなに目を開けるのが怖いのか。
「そのまま一生寝ておけばよかったか」一人部屋の病室で啓介はひとりごちた。
気がつけば知らない天井が見えてそれから流されるままに病院で様々な検査をされた結果IS適正があることが判明した。
それを病室のベッドで報告された瞬間、色々な考えが啓介の中を駆け巡る。が、それはあくまで啓介の予測でしかない。その予測を現実とさせる答えは目の前の担当者が知っている。
「俺は――私生活、元の高校へは戻れないのか」震える声を抑えながら搾り出す。担当者は同情からか少し残念そうな顔で「ええ、あなたにはIS学園に行ってもらいます。あとで国から正式な通達が来るでしょう」と伝えた。
予測が現実になった衝撃は想像以上だったのか、啓介は空気が重くなったと錯覚した。暫く沈黙が流れる。
担当者が何か飲むかと聞くと、啓介はコーヒーと答えた。
「これ、無かった事にならないか」
「無理でしょう。あなたと親族の安全上やはり国で保護させて貰います」
どうせ男性操縦者のデータが欲しいだけだろう、と啓介は建前の裏側を見透かしながら複雑な気分になった。もう自分にとってこの世に平穏に暮らせる場所などないのだと考えると何もかもが嫌になった。
一通り今後の説明をされた後、担当者が「そうそう」と付け加えて実は他にも男性操縦者が見つかっていると話した。
「なんだ、ISは女しか使えないんじゃなかったのか」
「あなたと同じイレギュラーです」
「満タンで頼む」
「残念、石油は枯渇してるようで一人しか見つかっていない」
「採掘能力が低いんだろ、もっとがんばってくれ」
両手を挙げやれやれ、といったポーズで担当者は少しくだけた様子で話す。
「確かに君にとっては女の園というのは不幸かもしれないが、考え方によってはISに乗れるんだ。悪い話ではないんじゃないか?」
啓介の表情が強張る。
「なにが...あんたに何が分るってんだ......ッ!」啓介は静かに、だが激しく感情を爆発させた。
「こんなモノ俺は望んじゃいなかった!命を狙われながら生きるなんてごめんだ......」
俯く啓介の表情は暗い。
「だが君には『力』がある。通常兵器は太刀打ちできない途轍もない『力』が。それで命は守れる」
担当者は続ける。
「確かに君は望まないかもしれないが他人にとっては望んでも手に入らぬモノだ。君は突然手に入った『力』で人生が変わってしまったが、その『力』で君はまた違う人生が作れる」
啓介が胸元に手をやる。そこには待機状態となったISである指輪がネックレスとしてぶら下げられていた。
「三年間、時間はある。学園で君がどう『力』を高め、使い、行動するかで君の人生は大きく変わる筈だ」
担当者が啓介の胸元を指差す。
「その力で未来を切り開け。自分の信じた道を行くといい」
啓介は指輪を握りながら考えた。どうも突然の出来事に気が滅入っていたらしい、と客観的に自分を見ることが出来た。自信と落ち着きを取り戻した。
「アンタ」
「なんだ?」
「アンタはカウンセラー、向いてると思う」
「フムン。喰いっぱぐれたら考えてみよう」
ほら、と缶コーヒーを渡す。
受け取るとそれはお気に入りのインスタントと同じ銘柄だった。
これからの一日は多分、いい日だと、啓介は予感した。
ISの男性操縦者なんてあちこちから狙われまくりだろうなと考えた結果こうなった。あんまりISでシリアス物ってないから書きたかったんだよ~