ミラージュの容姿はポートガス・D・ルージュをイメージしています。
~パチュリーside~
今日、久しぶりに私は小屋でのんびり過ごしていた。椅子に座り、私の膝の上で寝るマリアの頭を撫でてぼんやりと窓から空を眺める。今日は天気が良く、ぽかぽかして気持ちいい。ちなみに遠征は一ヶ月後だ。
しかし、いつもの小屋とは違ったところがある。それは
「ほらほら~♪いないいない~バァ~♪」
「きゃははははっ♪」
シャスティフォルに乗った女の子の赤ん坊をあやす小悪魔と
「ごめんなさいね、パチュリー。」
「気にしなくていいわミラージュ。大人しく休んでなさい。」
ベッドに横になっている、赤ん坊の母親である女性だ。彼女は若干ウェーブのかかった髪を持つ美女だ。彼女に初めて会ったのはほんの3日前。お腹を大きく膨らませ、路地裏で出産しそうになっていた。それを見つけた私は慌てて彼女をどこでもドアで小屋に運び、マリアとともに帝王切開手術をした。その結果、彼女は間一髪一命をとりとめ、子も無事出産することができた。
なぜ路地裏で出産しようとしたのかと聞くと彼女の夫が先日とある国で起きた革命を指揮した革命家で、街の医者に頼るとそのまま子も彼女も捕らえられる可能性があったからだそうだ。まあ、その夫も確か一週間くらい前に処刑されてしまったが。今はその夫に子と妻がいたことを知った国がギルドに依頼をかけ、全力で捜索している。それを知った私がこの小屋で匿うことにしたのだ。
「とりあえずあなたが回復するまで面倒はみるけど、その後どうするの?当てはあるの?」
「・・・ないわね。知り合いのところに行こうにも行けないし、行けたとしても国が手をまわしてるでしょうし。」
やっぱりか。路地裏であんな状態になってたくらいだからだいたい予想はついてたけど。ハァ、しょうがないなぁ。
「ハァ、しょうがないわね。いいわ、ここに住みなさい。」
森の真っ只中にあるこの小屋になら国の役人も冒険者も簡単にはやって来れないし、この小屋は私の気まぐれで移動したりするからまず見つからない。
「・・・いいの?」
「いいのも何も、あなたは放っておけないもの。そのかわり、ここに住むからには何かしら働いてもらうわよ。」
働かざる者食うべからずだ。
「・・・ありがとう。」
そのミラージュのお礼と涙に私は気づかなかった。
~ミラージュside~
私にはもう、少しの希望さえも残されていなかった。あの人が処刑されて数日、国は私とお腹のこの子の存在を嗅ぎつけた。あの人と私の間にできたこの子は必ず守らなきゃいけない。
だけどもう限界だった。私が住んでいた家に国の役人がやって来て、何とかここまで逃げてきたけどもうダメだ。足も動かないし、意識も朦朧としている。おまけに陣痛もひどい。
(ごめんなさい・・・あなた・・・)
薄れていく意識の中、私が見たのは
「ちょ、ちょっとあなた!!大丈夫!?」
私にあわてて駆け寄ってくる、何故か夫の姿と重なる紫色の髪の少女だった。
「はっ!!」
私は木でできた小さな小屋で目を覚ました。ここはどこだろう?
(!お腹がへこんでる!!あの子は!?)
私がお腹がへこみ、陣痛がなくなってることに気づき戸惑っていると
「慌てない。あなたの子はここよ。大人しく寝てなさい。」
紫の髪の少女が隣に浮かんでるクッションに赤ちゃんを乗せてやってきた。
「・・・良かった。」
私は無事だった赤ちゃんを抱きしめて少女に問いかけた。
「ここは?牢獄じゃないわよね?」
「ここは私の小屋よ。森の中にあるわ。私はパチュリー・ノーレッジ。あなたは?」
「ミラージュよ。あなたが助けてくれたの?ありがとう。」
この後パチュリーがなぜ路地裏にいたのか聞いてきたので全部話した。夫のこと。家が役人に襲われたこと。全部。
「・・・なるほどね。」
「お願い。私はどうなってもいいからせめて、この子だけでもあなたが育てて・・・」
私はパチュリーが私を国に突きだすと思い、せめて赤ちゃんだけでも助けてくれるように頼んだ。でもパチュリーは
「何言ってるの。子は親が育てるものよ。この子は私が面倒みてあげるから、あなたは体力回復に専念しなさい。」
と言った。私は私が厄介者だと分かっても追い出したりせずに面倒をみると言った彼女の器にあの人と同じものを感じた。革命家だったけど、まっすぐで困ってる人を放っておけないお人好しなあの人と。
「ハァ、しょうがないわね。いいわ。ここに住みなさい。」
3日後、大分回復してきた私が行く当てがないと行ったら彼女は私にそう言ってくれた。
「・・・いいの?」
彼女が冒険者なのは知っている。私を匿うと仕事がしづらくなるし、何より捕まった時に間違いなく共犯になる。彼女がいたおかげで私はあの子を産めた。彼女には返しきれない恩がある。これ以上迷惑はかけられない。そんな思いをこめて聞いたのだが
「いいのも何も、あなたは放っておけないもの。そのかわり、ここに住むからには何かしら働いてもらうわよ。」
彼女はまるで当たり前でしょ?というかのようにあっさりと答えた。私はその言葉に
「・・・ありがとう。」
とお礼を言って、彼女に気づかれないように静かに泣いた。
これからミラージュは夫と同じものを感じたパチュリーをだんだん愛するようになっていきます。