もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:ジョン・N

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10. 弥生に降る雪【事件編】

 

 

 麻帆良の学園都市から数キロメートル離れた所に一件の廃工場がある。そこは数年ほど前まで運営していた製鉄会社の工場あったが、会社が潰れた影響で工場内の機械はすべて売り払われ、今では中には何もないただのだだっ広い建物となっている。

 現在、そこにはサーカス衣装を身に纏う怪しげな男達がいる。

 

「ぎゃーははははは!! やっと手に入る時が来たぜ! 悪魔の実という名の“お宝”がな!!」

 

 その怪しげな男達のリーダー、賞金十五万ドルの首――バギーは、声高らかに笑っていた。彼の後方の上にはロープで体を縛られ、天井から吊るされている少女が一人。

 

「さすが、バギー団長! これで俺達、大金を手に入れたも同然ですね!」

「あの悪魔の実を闇市に持っていけば、トンでもない額で売れるんですよね!?」

「おぉともよ。知るヤツぞ知る悪魔の実だ。売れば1億は下らねぇ値段がつくはずだぜぇ! ぎゃーははははは!!」

 

 部下達の(説明臭い)言葉に、両手を組みながらバギーは肯定し、また更に高い声で笑った。

 

「……うぅッ」

 

 バギーの声がうるさかったのか、後ろで気絶していた少女は目を覚ました。

 

「団長、ガキが目覚めたみたいです」

「あぁん?」

 

 少女が目覚めた事に気がついた部下の一人がバギーに報告すると、彼は視線を少女に向けた。

 

「けっ、目が覚めやがったか。眠ったままだったら怖い目にあわずにすんだものを……!」

 

 そういうと、バギーの腰が別れ、上半身が浮かび上がった。

 

「……うぅ……えっ!! ど、どこですの、ここは!? なな、なんで私は、こんな――」

 

 目を覚まし、自分がどこか知らない所で宙吊りにされている事にパニックになっている少女は動揺しながら辺りを見回した。

 

「黙ってろ、糞ガキ!」

 

 そんな少女――あやかの前に、バギーは浮かび上がり、威圧したような低い声で彼女に云う。

 

「えっ!? な、なななな、何ですの、アナタ!! かかか、体が!?」

 

 上半身だけの丸い赤鼻のピエロのような男を見て、あやかは激しく怯えた。彼女の顔色はすっかり血の気が引いており、目元には涙が溜まっていた。

 

「うるせぇ! 静かにしてろ!! これだからガキは(キレ)ェなんだ」

 

 バギーは顔を赤くしてイライラしながら、怯えているあやかを黙らせた。

 

「団長!! 使いのヤツが来たみたいで」

「おぉ! ついに来たか!」

 

 部下の言葉に、バギーは下半身の方へと戻り、体を元に戻した。彼のイラついた顔は、喜ばしいような表情に一変した。

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 工場の入口から、風呂敷に包んだ“何か”を持った一人の青年が入ってくる。青年は緊張した面持ちで中に入ると、集団から数メートル離れた所で足を止めた。

 

「テメェが使いのヤツか? ちゃんと“約束の物”は持って来たんだろうなぁ?」

 

 バギーが疑った顔で訊ねると、青年は手に持った風呂敷から光沢のある“白い実”を取り出した。

 バギーはそれを見て「おい」と隣にいる部下に指示すると、その部下は「へい」と返事をして、青年の所へ近づいた。

 青年は手に持った実をその部下に渡した。

 実を手にした部下は青年から離れ、バギーの方を向き、実をかかげた。

 

「団長、受け取りました」

 

 部下がそう言うと、バギーは自分の手をバラし、手だけを浮かべ、部下からその実を受け取った。実を掴んだ手は部下達の上空を浮かび、同時にバギーの上半身もそちらに浮いて、飛んで行った。上半身で浮ぶバギーは更に首元が分かれ、顔だけとなり、手に持った“果実”を鑑定するようにマジマジと見た。

 

「……んふふふふふふ、ぎゃーははははは!! ついに手に入れたぞ! “本物の悪魔の実”だぁ!! ぎゃーははははは――」

 

 手に持った悪魔の実が“本物”と判断したバギーは、浮かんでいる手を更に上へ浮かべ、悪魔の実を天に掲げる様に持ち上げた。バギーの声を聞き、下にいる部下の集団も、「これで大金が手に入るぜ」「さすがバギー団長!」などと歓喜の声を上げる。

 しかし、その声は、長くは続かなかった。

 

 

 ――ヒョイッ

 

 

「――はははは、は……あ、あら?」

 

 一瞬にして、悪魔の実がバギーの手から消え、笑い声が止まった。

 

「え!? ない……ない、ない、ない、ない。どこ行った?」

 

 悪魔の実が突如として消え、バギーは落としたのかと、顔だけで下のあちこちを見た。

 しかし、どこにも悪魔の実はなかった。

 

「団長、あそこに!!」

「あぁん!?」

 

 部下が空中を指差しているのに気付いたバギーは、部下が指差している方向を見た。

 そこには、右手に悪魔の実、左手にあやかを抱えた一人の少年が背中から純白の翼を生やし、飛んでいた。

 

「予定では、雪広君を救助する方が先じゃなかったかい?」

「いや、あんなに盗り易いのに、盗り逃すのは勿体ないかと……。それに一応、雪広を先に救助しているのは変わりないですし……」

 

 自分の上方を飛んでる少年に向け、青年は話しかけた。

 あやかは自分を抱えている少年の顔を見て、驚愕した。

 

「か、加賀美さん!?」

「よぉ、雪広。大丈夫だったか?」

 

 あやかが見たのは、同じクラスの少年――加賀美総一であった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 時間を少し遡り、午後六時頃。

 

「それで、どうすんだ? 当然、悪魔の実を相手に渡す気はないんだろ?」

「ふむ」

 

 礼司の質問に学園長は肯定した。

 

「では、悪魔の実を渡さずに雪広君を救出しなきゃなりませんね」

 

 タカミチは顎に手を当てた。

 中等部の学園長室内で、学園長とタカミチ、エヴァンジェリン、礼司、総一は、拐われた雪広あやかを救出し、かつ悪魔の実を相手に渡さないべく、作戦を考えていた。

 

「因みに、エヴァさん。この実は何の実か分かる?」

「さぁな、これで調べろ」

 

 総一に訊かれ、エヴァさんが取り出したのは、古くて分厚い書物であった。

 

「なんだ、そりゃ?」

 

 エヴァが取り出した本を見て、礼司は首を傾けた。

 総一はその本を手に取って表紙を見た。本の表紙には英語でなにか書いてある。

 

「えぇーと……『Fruit Of Devil』?」

 

 総一が本の表紙を見た後、中身を見ると、タイトル通り、中には悪魔の実の種類やそれぞれの絵、その詳細についてがざっと書かれていた。

 

「二世紀くらい前に手に入れた本だ。デマも混じっているが本物の情報もいくつか入っている」

「二世紀って……」

 

 エヴァがサラッと云った言葉に総一は、少し引き気味に驚きつつも、手を動かして学園長のデスクの上にある悪魔の実の絵を探した。

 

「あぁーと、えぇーと……あ、あった」

 

 ページをペラペラとめくり、総一は瓜二つの絵を見つけた。

 

「これは……“ユキユキの実”?」

 

 雪広だけにか、と総一は思った。

 

自然(ロギア)系だな……こりゃあ、余計に渡すわけにはいかねぇな」

「そうだね。自然(ロギア)系の悪魔の実が悪党の手に渡るなんて、どう考えても危険だ」

「そうじゃな」

 

 手元にある悪魔の実が自然系(ロギア)だったことが判明し、その場にいる五人の――主に男達の――表情は、一層真剣みを増した。

 

「どうすっかな。相手もバカじゃなきゃ、こっちが“モノ”をやらない限り、人質を放しはしないだろうし……」

「偽物でも作って渡しましょうか?」

「いや、相手も悪魔の実の存在を知っとるヤツじゃ。本物か偽物かぐらい見分けられると考えた方が妥当じゃろう」

 

 タカミチの提案に学園長は首を横に振った。

 

「じゃあ、いっそ、取引せずに人質を助けに殴り込むか?」

「……小娘がその場にいれば良いがな」

「どういう意味だい?」

 

 礼司の提案にエヴァが疑問を呈し、タカミチが詳しく訊ねた。

 

「取引する所に小娘がいるとは限らないって事だ。もっと言えば、悪魔の実を相手に渡したからといって、相手が人質を解放するとも限らん」

「……確かにのぅ。相手は犯罪者集団。約束事を守る道理もない」

「しかし、そんなことを言ってたら、切りがねぇぞ」

 

 エヴァの言葉に、学園長は納得するが、礼司は渋い顔をした。

 

「じゃあ、エヴァさんは、どう考える?」

「さぁな。小娘がどうなろうと私には関係ない」

 

 総一が訊ねるが、エヴァはそっぽ向いた。

 そして、どうしたものかと、五人――主に男四人――は首を捻った。

 

「……はい」

 

 その場が静寂に包まれてる中、総一が手を上げて口を開いた。周りの四人の視線が総一へと集中した。

 

「もう、“本物”渡しちゃったらどうですか?」

「おいおい、そりゃあ、マズイでしょうよ」

 

 総一の提案を礼司は、軽く否定する。

 

「いや、そうじゃなくて、悪魔の実を相手に渡して、雪広を放してもらった後に、悪魔の実を奪取すれば良いんじゃないかなぁーと」

「それは、かなり危険じゃないか? さっきエヴァが言った通り、悪魔の実を渡したからといって、敵が人質を手放すとは限らないんだよ」

「でも、相手の雪広への注意は、下がりますよ。敵が雪広を拐ったのは悪魔の実が欲しいからで、それが手に入ってしまえば、雪広は利用価値のないただの子供。必死に守る理由もないはずです」

「しかし、もし雪広君がその場にいなければ、救出もできんしのう……」

「居ないなら居ないで、都合が良いと思いますよ」

「どういう事じゃ?」

「その場に雪広が居ないってことは、相手もすぐには雪広に手を下せないって事です。寧ろ、相手を倒すなら、雪広がその場に居ない方が、此方としては都合が良いです」

 

 総一がそういうと学園長が「うむ」と手を顎に当て首を縦に振った。

 

「しかし、相手がそう易々と倒せる相手かどうか分かんねぇぞ。勝算はあるのか?」

「大丈夫でしょ。単純に戦力で言ったら、こっちの方が上ですよ」

 

 こっちには――目的地が学園外である為、エヴァは除かれるが―― 自然系(ロギア)動物系(ゾオン)の能力者が二人に魔法界の英雄が一人。相手の戦力が不確かとはいえ、並みの悪党相手なら、この三人は十分すぎる戦力である、総一はそう考えた。

 それに、総一は相手のリーダー格が“バギー”という男であると知り、すでに相手組織の戦力をおおよそ“察していた”。

 

「コイツの実力がどんなものか知らねぇが、お前がそんなに自信を持って言うからには、何か根拠があんのか?」

「“勘”です」

「勘かよ」

 

 総一の根拠に礼司は、ヤレヤレと頭を抱えた。

 

 「えぇ。でも、コイツは、きっと大した事はないですよ」

 

(俺の原作知識(サイドエフェクト)がそういってる……なんてね)

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 空中で翼を生やしながら悪魔の実を手に持ち、あやかを抱えている総一を見て、バギーは怒りを露にする。

 

「なんだアイツは!? どこから入ってきた? 出入口は、全て見張ってたはず――」

「あーらら、もうほとんど終わってんじゃないの」

 

 バギーは裏口に視線をやると、そこには冷気が立ち込め、部下と思われる氷像がいくつもあった。その中心には、背が高く、頭にアイマスクをのせた少年が一人。

 ヒエヒエの実の能力者、礼司によって工場裏口は、すでに辺り一面、氷で覆われていた。

 

「チッ! 自然系(ロギア)の能力者か! クソォ! 使いは一人で来てたんじゃねぇのか!?」

「誰もそんなことは言ってないだろ」

 

 バギーの独り言に、総一が応えた。その返答が頭にきたのか、バギーは声を張り上げて、部下に命令した。

 

「クソー! 野郎共ォ、悪魔の実を盗り返せェ!! ガキ諸共、ハデに、()っちまえェ!!」

 

 部下達はバギーの指示のもと、武器を手にし、侵入してきた三人にマシンガンやショットガン、ハンドガンの銃口を向けた。そして、一斉にトリガーを引き、けたたましい銃声が工場内部に響き渡る。

 

「ちょ、危なっ!!」

「か、かかか、加賀美さん !これは、いったい――」

「話は、全部あとあと!」

 

 総一は複雑な軌道を描きながら飛行し、あやかに当たらないことを最優先に考え、銃弾を避けた。

 飛んでくる弾丸を縫うように避け、総一は工場から脱出し、入口付近に降り立った。

 

「ちょっと、これ持ってて」

「えっ!?」

 

 総一はあやかに手に持っている悪魔の実を手渡す。

 

「いいか、ここを絶対動くなよ! 絶対だぞ! フリじゃねぇからな、コレ」

「え、えぇ」

 

 総一の言葉を聞き、あやかは動揺しながらも、首を縦に振った。

 それを見て、総一は工場の中へと戻った。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 工場内では、男たちの低い悲鳴が響いていた。

 内部の一部辺りでは寒々しい冷気が立ち込め、別の所では青年の拳によって、クレーターが作り出されている。バギーの部下たちは、それらによって氷像にされたり、殴り飛ばされたりしていた。

 

「な、何なんだよ!? コイツ等!」

「銃で撃っても、当たんねぇ!」

「いや、一人は当たってるけど、効いてねぇ!」

「どうなってんだ、アイツ!!」

 

 冷気を漂わせる少年と見えざる拳を放つ少年に、犯罪者たちは恐々と身構えていた。

 

「クソッ! 囲って撃ちまくryb○@%#$」

 

 指示を出すバギーの部下に、総一は飛び蹴りが命中した。

 

「チッ、このガキ!!」

 

 仲間がやられ、マシンガンを持った男が総一に銃口を向けて連射するが、総一は上へ飛ぶことでそれを回避した。男は総一が上に逃げたことで、銃口をそちらに向け、再度トリガーを引く。

 しかし、男は連射中に襲ってきた横からの衝撃によって吹き飛ばされた。

 

「こらこら、総一君。雪広君はどうしたんだい?」

「そこで、身を隠してますよ」

「ちょっと、不用心だな」

「なら、さっさと片付けましょうよ」

「そうだね」

 

 タカミチはそう言いながら、次の敵に向けて拳を放った。

 総一は急降下しながら、勢いをつけ敵に向かって、足を突き出し飛び蹴りを放った。

 総一、タカミチ、礼司の三人、着実に敵を倒していき、数を減らしていく。

 

「バギー団長、逃げましょう。勝てねぇ」

 

 倒されていく仲間を見て、部下の一人が怯え切った声でバギーに言う。

 

「ンンン、グゥグググッ……あん?」

 

 悪魔の実を盗り逃したことに腹を立てているバギーは、争っている部下と少年と青年を見て、ふと違和感を抱く。

 数秒の思考の後、バギーの苦い顔がニヤついた顔へと変化した。

 

「んふふふ、テメェ等、拐ってきたガキを探せ!」

「えっ!? だってガキはさっきあの小僧が」

「バカヤロウ! よく見てみろ! あの小僧は既にここに戻ってきてる! つまり、ガキをその辺に置いて、戻ってきたって事だ! あのガキは、まだ近くにいる! 探して連れてこい!」

「「ヘ、ヘイ!!」」

 

 バギーの指示で、彼の周辺にいた部下たちは散開した。

 

「へへェ、ガキを捕まえて盾にすりゃ、なんとか逃げ切れるはずだ! こんな所で捕まってたまっかよォ!」

 

 バギーは身を構えて、飛んでいる総一を見る。片手には、ナイフを四本、指に挟んで持っていた。

 

「いくぜェ、バラバラ砲!!」

 

 ナイフを持ったバギーの拳が、総一に向けて放たれた。

 しかし、横から飛んできたその攻撃を、総一は身をひるがえして躱した。

 総一の視線がバギーへ向いた。

 

「クソガキのくせにィ! よくも俺様の悪魔の実を盗りやがって!」

 

 放たれたバギーの拳は総一の後ろから、持っていたナイフを投げた。飛んできたナイフに総一は、横に移動し躱すが、一本が顔の横を掠り、総一の頬に一線の赤い切り傷がつく。

 

「バラバラの実か……面倒だな」

 

 真剣な顔をして、バギーを見た。

 

「クソ生意気なァ」

 

 バギーはもう片方の手をバラし、周辺に倒れている部下の持っているマシンガンを両手で持った。

 

「喰らえェ、クソガキ! ハデに死ねェ!!」

 

 マシンガンを持った手が総一の周りで浮遊する。

 

「バラバラ(ガン)

 

 バギーが手に持ったマシンガンがけたたましい音を発しながら、連射された。

 次々と放たれる弾丸を、総一は旋回しながら飛行することで躱していく。

 幸い、手だけで持っているせいか銃身が安定しておらず、総一は結構容易に弾丸を躱せていた。

 しかし、縦横無尽に浮遊する手は、総一が飛ぶ方向に先回りして、狙い撃つ。

 やがて、一発の弾丸が総一の脚を掠めた。

 

「ちょ、何、このオールレンジ攻撃!?」

 

 多角から攻めてくる銃撃に総一は、やや狼狽した。

 しかし、視界の隅に移る人影を見て、彼はニヤリと笑い、表情を変える。

 

「チ、すばしっこいヤツめ、コイツを喰らえェ!!」

 

 バギーの靴から小さい赤玉が総一に向け放たれる。

 

「ハデに吹き飛べェ、特性マギー玉!!」

「当たるか!」

 

 どこか見覚えのあるその玉を、総一は蹴り飛ばし、弾いた。

 その後、玉は爆発し、辺りに爆風が吹き荒れる。

 

「なっ! クソォ! クソガキの癖に生意気なァ!!」

 

 悪態をつきながら、バギーはバラした自分の手を元に戻した。

 

「アンタにそんな現代的な兵器は似合わないよ」

「うるせぇ、クソガキィ! ――あん?」

 

 総一の言葉にバギーは憎々しいような声で応えるが、ふと足元に違和感を覚え、視線を下にやる。

 すると、足元には冷気が立ち込め、バギーの足が徐々に凍り付いていた。

 

「ごめんな、兄ちゃん。ちょっと眠っててくれるか?」

 

 礼司がゆっくりな口調でそう言ってる間にも、バギーの体の凍結は進み、バギーの下半身は完全に凍り付いていた。

 

「な、あ、ちょ、やめ、あァァ!!」

 

 凍結していく自分の体に恐怖を覚え、バギーの顔は真っ青であった。

 

「きゃあぁーー!!」

 

 しかし、少女の悲鳴によって、バギーの体の凍結は止まった。

 その悲鳴のする方へ、バギー、礼司、タカミチ、総一は目を向けた。

 

「団長! 捕まえました!」

 

 視線の先では、先程散開したバギーの部下の一人があやかを首の後ろを持って、捕えていた。

 あやかは「ちょっと、放してください!」と暴れるが、地に足がついていないこともあり、体が揺れるだけで部下の男から逃げる事は出来なかった。

 あやかは悪魔の実を抱える様に持ち、いまだに保持していたが、男は片手に刃渡りが長めのナイフを持っている。

 その光景を見て、バギーの表情が変わり、引いていた顔の血の気を取り戻した。

 

「ぎゃーはははははは、よくやった! おい、おめぇ等、今すぐ攻撃の手を止めろ。出ないと小娘の命はねぇぞ!!」

 

 バギーの言葉を聞き、渋々、礼司はバギーから離れ、タカミチは手をポケットから出し、上にあげた。そして、総一も地上へ降り立ち、翼を消した。

 

「おい、早く小娘から悪魔の実を取り上げろ!」

「ヘイ! オラ、さっさとソレを寄越せ!!」

 

 男は手を揺すり、あやかの体を揺らすことで、実を手放すように促すが、あやかは両手でしっかりと実を持ち、放さなかった。あやかは持てる力をもって、全身の身を固めている。

 

「このガキ! 放せっての!!」

 

 男は更にあやかの体を揺らすが、あやかの手は一切緩まなかった。

 あやかのあまりの強情さに、男はイラつき、あやかを投げ捨て地面へと叩きつけた。

 地面に打ち付けられたあやかは、痛みで短い悲鳴を上げたが、それでも実を手放しはしなかった。

 男はナイフを持ち直し、あやかに詰め寄る。

 あやかが男の手から離れたことで総一は、すぐに行動を起こし、あやかの元へと駆け寄った。しかし、総一とあやか達との距離が遠く、男がナイフを構える方が速かった。

 あやかの視界にナイフを持った男が映る。

 男はナイフの持った手を勢いよく振り下ろす。

 あやかは恐怖のあまり、思考を放棄し、手に持った悪魔の実を口元に運び――

 

 

 ――“噛り付いた”。

 

 

 ナイフの刃があやかの体に突き刺さった。

 

「なっ!?」

 

 誰かの驚愕した声がその場に響いた。

 男はあやかの体に刺さったナイフを見て、恐怖を覚え、後ずさりして転がり込んだ。

 あやかに突き刺さったナイフは冷気を帯びて、あやかの肉体は、“雪”へと変化していた。

 傷口から、あやかの雪への変化は、全身へと広がっていき、十秒もしない内にあやかの体の全身が雪へと変わり、あやかの体が雪像へと変わった瞬間、その像は崩れ落ちた。

 崩れ落ちて辺りに散った雪は、一か所に集結し、人の形を生成する。

 集結した雪の塊は、再度、雪像となり、人間へと――あやかの姿へと変わった。

 

「なぁッ!? あのガキ! 悪魔の実を食いやがったァ!!」

 

 バギーは驚愕し、凍った下半身を残し、上半身の体の部位が細々とバラけた。

 

「雪広っ! おい、雪広、しっかりしろ!!」

 

 倒れたあやかに総一が駆け寄り、声を出して呼び掛ける。

 

 しかし、あやかの返事は返ってこなかった。

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
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