もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
「う、うぅぅん……はっ!!」
目が覚め、意識がぼんやりとしている最中、見慣れない天井、触り慣れないベットの感触に違和感を感じ、雪広あやかは体を起こした。
「こ、ここは?」
「あ、起きたか」
あやかは顔を動かして、声がした方へ目を向けた。そこにはクラスメイトの総一が椅子に座っている。彼は本を読んでいたようで、あやかが目を覚ましたことに気づくと、ページを閉じ、横にある机に置いた。
「加賀美さん?」
あやかはここはどこなのか、そして総一の姿を見て、何故自分と総一がここにいるのかと疑問を抱いた。
周りには壁という壁はなく、綺麗に造形された石製の柱が円形に並び、同じ石製の天井を支えている。そして、柱の向こうには青々とした空が広がっていた。
「どう、気分は?」
「い、いえ、特に問題は……それよりここはどこですの?」
「まぁ、色々と疑問はあるだろうけど、その前に……お前、気絶する前の事、覚えてる?」
総一に訊かれ、あやかは自分が目を覚ます前の事を思い出した。
「た、確かお稽古の帰りに急に意識が無くなって……そして、目を覚ましたら、上半身だけの変なピエロがいて、それで――」
「いや、もう良い……」
あやかの言葉を止め、総一は深くため息を吐いた。
あの後、総一、タカミチ、礼司の三人により、バギー及びその部下達は逮捕され、“本国”へと連行された。あやかが悪魔の実を食べたことで、バギー達は悪魔の実を盗ることができなくなった上、あやかを盾にすることもできなくなった為、彼らを捕らえるのは三人にとって難しいことではなかった。
しかし、あやかが実を口にした結果になったことはかなりの痛手であり、事件後の学園長を含めた四人の心情はあまり良いものではなかった。
「あ、あの、ここはどこですの?」
落胆している総一に、あやかは様子を窺いながら訊ねた。
「ここは麻帆良にある“ある人”の別荘だよ」
「別荘?」
あやかは首を傾けながら、再度、周りを見た。
しかし、何度見ても、周りの風景は自分の知っている類の“別荘”の風景とは全く異なっていた。
「まぁ、お前も訊きたいことが山ほどあるだろうし、俺にも言わなきゃならんことがたくさんある。時間もあるし、今からゆっくり説明するよ」
総一は、あやかに説明を始めた。
麻帆良にいる“魔法使い”について。
今回起きた“事件”の概要について。
そして、あやかが口にした“悪魔の実”について。
「――んで、お前があの時食べたのが、その悪魔の実だったってわけ」
「………」
総一の話を聞き終え、あやかは視線を下に向けた。
「理解できたか?」
「え、えぇ、あまりにも現実離れし過ぎてとても信じられませんが……」
「かもな。けど、残念ながら現実だ」
総一の表情が真剣であることから、あやかは総一が作り話をしている訳ではないのだなと思ったが、それでも疑問に思うことがたくさんあった。
「大体、その悪魔の実とやらを私が食べたと言いましたが、私の体には特に変わった所はないですわよ」
「お前が食ったのは
あやかは首を傾け、総一が言った言葉の意味を推し量るが、考えても分からず、とりあえず言われた通り、手の平を上にして手に力を入れた。
「んっ……な、ななな、こ、これは!?」
あやかは自分の手から出現した“吹雪”に驚愕した。吹雪はあやかの手を中心に小さく吹き荒れたが、力が抜けると、すぐに消滅した。
「………」
「……分かったか?」
総一は無表情で訊ねるが、あやかは絶句し、目を見開いたまま硬直している。
「さて、それじゃあ、お前には今からやってもらうことがある」
「……一体何を」
総一は重い空気の流れを変えるためか、やや明る目な口調で話を切り出すが、対称的にあやかの口調はやはり暗かった。
「能力のコントロール。
総一は建物の外に出て、その建物の屋根に向かって声をあげた。
「……ん、あぁ、説明は終わったのか?」
建物の屋根では礼司がアイマスクを着けて寝ていたようで、総一に呼ばれると、ゆっくりと身を起こし、下へ降りてきた。
「この人は青藤礼司先輩。お前と同じく
総一が礼司を紹介すると、礼司は「よろしくぅ」と言って、あやかに向け手をあげた。あやかは
「んじゃあ、俺は先に下の浜に行ってっから」
礼司は階段を下りて行った。
「あの人は……まぁ、色々とダラけてる人だけど、良い人だから、能力について色々と教えてもらえ。そこにある階段を下りれば、浜辺に行ける」
「え、えぇ……」
あやかはまだ動揺しているのか、挙動不審気味に返事をし、ゆっくりと総一に言われた浜辺へと向かった。
浜への階段は意外に長く、降りるのに結構な時間を要した。
「お、やっと来たな」
「は、はい」
「そうビクビクすんな。別に取って食ったりしねぇよ」
あやかが浜辺に辿り着くと、そこでは礼司がポケットに手を入れ立っていた。
礼司は「とりあえず、こっちに来い」といって、あやかに近くに来るように指で手招きした。
「悪魔の実については、総一のヤツから聞いたんだよな?」
「え、えぇ」
「なら、俺がソレについて言う事はねぇな。そんじゃまず……あぁぁ……えーと、アレだ……
☆☆☆
「どういうつもりだ?」
「は? 何が?」
あやかが礼司から能力のコントロールを教わっているのを総一が上から見ていると、その後ろからエヴァが話しかけてきた。
「
「別に俺が勧んで申し出たわけじゃない。
総一は「何で子供の俺に世話任せてんだ、あの人? ホント、分からん」と悪態をつき、学園長の顔を思い浮かべ、目を細めた。
「一つ言っておくが、あの小娘はもう普通の生活には戻れんぞ」
「いやいやー、能力の暴発さえなきゃ、見かけ変わった訳じゃないし、全然大丈夫でしょ?」
「どうだろうな。能力者は魔法使い達にとって“化け物”同然だ。あの小娘はこれから悪夢を見るかもしれんぞ?」
「……それは経験談かな?」
「………」
総一の質問に、エヴァは口を閉ざした。視線は下にいるあやかの方を向き、何かを考えているような顔だ。
「……けどまぁ、今そういうのを深く考えるのは暗くなるだけでしょ。この先アイツがどうなるかなんて、誰にも分からないんだし。だから、今は出来る事やるべき事をやった方が変に思い悩むより、よっぽど良いでしょ?」
「だが、仮に周りから拒絶されなかったとしても、本人がそうとは限らんぞ」
総一はエヴァに目を向けた。
「俺にはよく分からないけど、やっぱりいきなり能力者になるのは結構怖いものなの?」
「ふん、貴様は生まれながらにして、“そう”だから分からないだろうな。自分から意図して実を口にしたのなら別だろうが、望んでもいないのに“化け物”になった時の、“あの感じ”はな……」
エヴァは忌々しげな表情で何やら思い出している。しかし、総一にとって、その表情はどこか何かを悲しんでいるように感じた。
総一はその顔を見て、目の前の“吸血鬼”がどんな体験をしてきたのか想像した。
「……確かに、分からん」
しかし、しばらく考えても、なにも分からなかった。
「けど、例え“化け物”だろうと、いつも隣に友達がいて、毎日泣いたり笑ったり怒ったりしてれば、そんなの小っぽけな事になり下がるだろ。アイツは一人じゃないし、大丈夫さ」
総一はもう一人のクラスメイトの姿を頭に浮かべた後、あやか達の元へ行くため立ち上がった。
「何故、分かる? ……というより、貴様は何故そんなにあの小娘に構う? 貴様はあの小娘とはクラスメイトでしかないだろう。あの小娘を能力者にしてしまった自責の念にでもかられたか?」
総一は足を止め、少しの間、考えた。
「確かにそれもある。あの時、俺が変に動かなければ、アイツは能力者になる事はなかったかもしれないからな……けどそれが行動の端ではないかなぁ」
やがて、ゆっくりと口を開き、更に続けた。
「―――」
総一の言葉を聞き、エヴァは「馬鹿馬鹿しい」と鼻で笑った。
「エヴァさんには、“そういうの”いなかったの?」
総一が後ろを向いて、エヴァの背中を見て訊ねるが、彼女は何も言わなかった。
総一は前を向きなおし、ふと考える。
「……あぁ、いないから、そんな捻くれてるのか」
総一は小声で呟いた。
――カチンッ
「容姿は美人だけど、如何せん、幼女だから、
――カッチン、コッチン
「……おい、貴様、ちょっと待て」
「ん?」
「今の言葉、もう一度、言ってみろ」
「え、俺なんか言ってた?」
――ブチッ
「きーさぁーーまァーーーー!!」
☆☆☆
――ドォガァーーッ
いきなり、爆煙が立ち込めだした建物の屋上を、あやかと礼司は下から見上げた。
「な、ななな、なんですの?」
轟音と共に発生した煙を見て、あやかは驚愕するが、礼司は「またかよ」と頭に手を当てた。
「大体、貴様は最初に会った時から、私を小娘扱いしおって!! 私は“闇の福音”だぞ!! 貴様も少しは恐れおののけぇ!!」
「分かった! わーかったから! こんな近距離で、そんなデカい魔法、撃つなぁ!!」
モクモクと立ち込める煙の中から、二人分の人影が現れた。一人は白い翼を背中に生やし、一人は黒いマントを纏い、手に魔力を収束させている。
「あ、あの、あれは何ですの?」
「あれか? あれは……その……アレだ、いつもの口喧嘩だ」
あやかの問いに、礼司はどこか呆れ気味に答えた。それを聞いて、あやかは呆気にとられた顔で、空中を飛んでいる二人を見た。
「リク・ラク、ラ・ラック、ライラック――」
「ち、ちょ、待てよ!! 危ねぇって、死ぬから、やめれ」
鬼のような形相で迫る金髪少女に羽の生えた少年は冷や汗を掻きながら後退する。
「……あぁ、そうだ。折角だ、あの二人のどっちかを的にして、雪玉、撃ってみろ」
「えっ!?」
「修行のついでだ……そうだな、まず俺が手本を見せてやっから」
礼司は前に出て、腕をクロスさせた。
「アイス
礼司の周りに冷気が漂い、矛の形をした氷弾が数発、現れた。その氷弾はエヴァに追われる総一に向かって、まっすぐ放たれた。
「ちょ、危なッ!!」
飛んできた氷弾を、総一は体を捻じることで回避する。
「――迅雨となりて、敵を貫け」
総一の注意が逸れたことにエヴァは、勝機と笑みを浮かべた。
「
エヴァの氷槍の攻撃魔法が炸裂し、辺りに総一の悲鳴が木霊した。
☆☆☆
「あぁぁぁ、死ぬかと思った」
礼司が放つ氷、エヴァの氷結魔法の
「大丈夫ですか?」
横になった総一にあやかは心配になって駆け寄る。
「あぁ、なんとかな」
総一は上体を起こした。
「ったく、あの氷結人間共めぇ。俺が人よりタフだからって遠慮なしにヤリやがって」
現在、この場にいなくなった二人に向け、総一は悪態をつく。
空はすっかりオレンジ色に輝き、砂浜から見える海が魔法で作られた夕日を反射し、鮮やかな絶景と成していた。辺りからは穏やかな波の音が聴こえる。
「んで、うまくコントロールできるようになったか? サラッと何回か俺に雪玉ぶつけてただろ?」
「え、えぇ。やってる内になんとなくコツがつかめてきましたわ」
あやかは的にした総一に対して、どこか申し訳ないような表情でいった。
「そっか。なら良かった」
総一はそう言いながら、座りながら目の前にある水平線に目をやる。総一と横に並ぶようにあやかも砂浜の上に座った。
「あの、私達随分と
「あぁ、この別荘は文字通り“魔法の別荘”でさ、この別荘での一日は外の時間では一時間にしかならないんだよ」
「そ、そうですの。魔法って凄いですわね」
今日、何度見たか分からないが、あやかの驚いた顔を見た総一はふと笑みを浮かべた。
「ははは、さっきから驚きっぱなしだな……まぁ、無理もないだろうけど」
「えぇ、確かに。丸い赤鼻男に会ったと思えば、加賀美さんが翼を生やして飛んでますし、凍らせる力を持った方や魔法使いのメガネの方、それにこの別荘。今日の一日で世界観がガラリと変わりましたわ」
「だろうね」
あやかは手から“小さな吹雪”を出し、「それに」と続けた。
「私も、このような
総一は顔を傾けて、あやかを見た。あやかは複雑な思いを抱えているような表情をしていた。
「……やっぱ、不安か?」
「えぇ、それは、まぁ、少しは……」
あやかは手にあった“吹雪”を消し、目の前にある水平線に目をやった。
「今後、私はどうなるのでしょう?」
「……さぁな、俺には分からん」
少し間を置き、総一は更に続ける。
「けど、雪広がどうしたいかによって、雪広の人生はどうなるか決まる。まずは何をしたいか考えると良いさ」
「私が、どうしたいか……」
あやかは小さく呟き、俯いた。
「それと、もしその
あやかは目だけで総一を見た。
そして、脚を抱える様に座り、水平線に視線をやりながら、腕に口元を埋めた。
「……えぇ、ありがとうございます」
総一だけに聴こえる様にあやかは言った。
「……あの」
あやかに呼びかけられ、総一は顔を向けた。
「どうしてそこまでしてくれるのか、訊いても良いですか?」
姿勢を変えず、浜に押し引きする波を見ながら、あやかは訊ねた。
あやかの問いに総一は「エヴァさんにも訊かれたな、それ」といって、さらに続けた。
「半分は、“ケジメ”かな。あの時、俺がお前に悪魔の実を預けなかったら、お前は能力者になることもなかったかもしれない……だから、お前が能力者になった原因が俺にある以上、その責任は取らないといけないってのがひとつ」
「半分? ……ではもうひとつは?」
「もうひとつは……“
その言葉に、あやかは首を傾けた。
「
「そうだな。けど、そういう風に毎日ケンカする友達を、“悪友”っていうんじゃないの?」
「えっ?」
総一の言葉に、あやかはキョトンとしたが、そんな事を気にすることなく総一は立ち上がった。
あやかは総一を見上げるが、彼が今どんな顔をしているのか、分からなかった。
総一は両腕を上げ、ぐーっと背伸びをした。
やがて、彼は何かを思い出したように、「あ、そうだ」と口を開いた。
「お前さ、ある程度、能力のコントロールできるようになったんだよな?」
「えっ!? えぇ、多少は……」
「じゃあさ、ちょっとやってみて欲しい事があんだけど、いいかな?」
総一からの申し出に、あやかは渋々了承した。
☆☆☆
「んしょっと……ふぅ、これで五体目かな」
現在、南国を思わせる澄んだ海の浜辺には、マトリョーシカの如く大きさの異なる雪だるまが並んでいる。あやか自身は自分の持っている能力で生成しているが、総一はあやかが出現させた雪を集め、一つずつ作っていた。
「おぉー、なかなかシュールだな」
砂浜に並べられた雪だるまの群れを見て、総一は面白そうに言った。
南国を思わせる海岸に、大きさの異なる雪だるまが並ぶというのは、とても現実味のない風景だ。
「一体、何がしたいんですの?」
「ん? 別に深い意味はないよ。ただ童心に帰って遊びたかっただけ」
総一の言っている意味が分からず、あやかは首を横に傾ける。
しかし、総一はそんな事は気にせず、また次の雪だるまを作るべく、雪玉を丸めだした。
「そういや、訊きたかったんだけどさ、なんでお前、あの時、悪魔の実にかぶり付いたんだ?」
手に持った雪玉を大きくしながら、総一は訊ねた。
あやかは俯いて、暫し考えた。
「わかりません。私もあの時は必至で……ナイフを持った男が目の前にいて、逃げなきゃって思ったんですけど、気が付いたら体が勝手に動いていまして……」
総一は「ふーん」と頷き、なにやら思考を巡らせた。
「…………そういうこともあるのかね」
「え?」
「いや、“悪魔の実が能力者を選ぶ”っというか、悪魔の実を口にする者が何か分からない“力”で決められてたりするのかなって思っただけ」
「どういうことですか?」
総一の言う事が理解できず、あやかは詳しく訊くが、総一は「いや、なんでもない」と言って、話題を区切った。
総一は手に持った雪玉をじぃーっと見る。
「……せいっ」
「きゃっ!」
そして、その雪玉をあやかへ投げた。
「何しますの!?」
「雪合戦?」
「なんで疑問形なんですか!?」
あやかは生成した雪玉を総一にぶつけ返した。
「ちょ、顔面はグッ」
「最初に当てたのは貴方ですわ! これでもくらいなさい、えぃ」
その後、二人は雪玉をぶつけ合って遊んでいたが、しばらくして能力を行使したあやかによって、総一は雪に埋められた。
TO BE CONTINUED ...
すみません!すみません!作者の日本語能力がなくて、本当にすみません!!
誤字が多くて、すみません。
大したストーリーを考えられず、すみません。
ツッコミ所が多くて、すみません。
キャラがあやふやで、すみません。
構成が下手くそで、すみません。
次回に続いて、本当にすみません!!
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
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