もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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20. 同じ失敗は繰り返さない

 

 

 

 修学旅行三日目の夜。

 ネギと明日菜、刹那達は無事に関西呪術協会本部かつ木乃香の実家である本山に辿り着き、協会の長である近衛詠春に親書を渡すことができた。

 学園長からの任務を終え、今、彼らは何故か一緒について来てしまったのどかや夕映達と共に和風な豪邸の大広間で宴をしている。

 豪華な料理や使いの巫女達の踊りが振る舞われる中、ふとある事を思い立った刹那は携帯を取り出して、ある人物に電話をかけようと席を外した。

 

「刹那さん、どうしたの? 誰かに電話?」

 

 立ち上がった刹那を見て、不思議に思った明日菜は持っていたグラスを置いて訊ねた。

 

「えぇ、加賀美さんに連絡を入れておこうと思いまして。シネマ村で別れてから連絡をいれてなかったので」

「そう。アイツ大丈夫なのかしら。アイツ一人で、敵全員の足止めしたんでしょ?」

「えぇ、流石に敵も命までは取らないとは思いますが、どうなったのか心配です」

 

 刹那はそういいながら、携帯の履歴から総一の番号を選択した。

 数回のコールの後、無事に電話は繋がった。

 

《桜咲か?》

「加賀美さん、御無事でしたか」

《あぁ、今は旅館の方でのんびりしてるよ。そっちは無事に着けたようだな》

「はい、お陰様で無事に本山に着きました」

《そうか、良かった……》

 

 総一が口を閉じると、何故かお互いの会話に暫しの間ができた。

 

《……気を付けろよ》

「え、どういう意味ですか?」

 

 途端に聴こえた総一の予想外の言葉に刹那は疑問を持つ。

 

《敵はまだ諦めてないみたいだからな。またこのかが狙われる可能性は十分ある》

「えぇ、でも大丈夫ですよ。本山は結界で守られていますし、西の長もいますから」

《……そうか、でも気を抜くなよ》

「はい、分かっています」

《うん、それじゃーな》

「はい」

 

 ピッと通話を切り、刹那は携帯をしまって、席に戻った。

 

「どうだったの?」

「えぇ、どうやら無事に旅館に戻ったようです」

「そう。アイツもやるときはやるのね。一昨日の夜なんて溺れて目回してたみたいだったから、どうなることかとおもったけど」

「でも、加賀美さんは一人で敵の神鳴流剣士を退けたり、敵数人の足止めをしたりと、実力はそれなりにあるみたいですよ」

「そう? ……うぅーん……言わてみればそうね。アイツはだいぶ前から魔法使いと仮契約してたみたいだけど……刹那さん何か知ってる?」

「すみません、私も今回の件ではじめて加賀美さんがこちら側の人間だと知ったもので」

「そうなんだ」

「アスナさんこそ、加賀美さんとは長い付き合いだと聞いていますが、何か知らないのですか?」

「私はつい最近魔法について知ったから、それまでは全然。アイツが魔法使い達に関わってるって知ったのも、ついこの間だし……」

 

 明日菜は指をあごに当て、「うぅーん」と考える。

 

「……あ! そういえば、アイツ、『エヴァンジェリンさんに色々と世話になってる』って言ってたわね……んー、エヴァンジェリンさんに魔法でも教わってるのかしら? けど、アイツは『従者だけど魔法使いじゃない』って言ってたし……」

 

 明日菜は色々と思考を巡らせるが、考えても何も分からず、やがて思考を放棄した。

 

「はぁ、考えても分からないわね。帰ったら問い詰めてやるわ」

 

 拳を握りしめ、意気込む明日菜を見て、刹那は「ははは」と苦笑いした。

 

 

 それから数時間後。

 宴会の華やかな雰囲気から一変して、関西呪術協会本部の人間は結界を破った一人の少年により、長や一部の一般人を含めて皆石へと変えられた。

 本部の結界が破れてから、木乃香が拐われるまで、そう長く時間はかからなかった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 今日の日程を終え、就寝前の自由時間ということで、ロビーにて貸出用の少年誌を読んでいると、制服のズボンに入れていた携帯電話が震えた。

 周りに先生がいないことを確認し、取り出して画面を見ると、学園からの着信であった。

 

「どうしました?」

《加賀美君!》

 

 電話に出ると、すぐに先方の学園長の声が聴こえた。

 学園長のその声は、いつもの陽気なモノではなく低く真面目な声である。電話の内容は、想像通り、関西呪術協会の長がやられ、木乃香が拐われたので、至急ネギ君達を救援しに行ってほしいというモノであった。

 

「了解。じゃあ、すぐに向かいます」

《うむ、頼んだぞ。こちらからも“援軍”を送るつもりじゃ、せめてそれまでは持ちこたえてくれ》

「はい、分かりました」

 

 俺は電話を切ると、「さてと」と立ち上がり、早速総本山へと向かう。

 

「……おや?」

「おろ?」

「あっ」

 

 しかし、旅館の出入口にて、俺は古、長瀬、龍宮さんの三人と出会った。

 

「おー、お前さん達、一体どちらへ?」

「アイヤァー、見つかったアルネ」

「これはこれは、加賀美殿も何処かへ行くでござるか?」

 

 古は手ぶらだが、長瀬と龍宮さんはそれぞれ大きめの荷物を持って、どこかへ出掛けようとしている。

 

「……なるほど、どうやら君の方にも救難信号がきたようだな」

「正解。時間も惜しいし、はやく行こうぜ」

「あら、怒らないアルか?」

 

 古が頭に『?』を浮かべ、目を点にして首を傾げた。

 

「そんな時間はないってことさ。ほら行くぞ」

 

 俺達四人は旅館を抜け出し、ネギ君達の救援に向かった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「フフー、深夜に宿を抜け出すのは、修学旅行の醍醐味アルネ」

「こらこら、遊びに行くわけではないでござるよ」

 

 電車に乗って、目的地へと行く中、俺は長瀬と古の会話を聞いて、苦笑いした。

 確かに遊びに行くわけではないが、長瀬本人もどこかワクワクしているように見えるのは気のせいか?

 

「それにしても良かったのか、広域指導委員の君が旅館を抜け出したりして」

「大丈夫でしょ、学園長からの指示だし」

 

 つり革を掴む形で立っている俺を見ながら、龍宮さんはからかうように言うが、俺は何事もないように返した。

 

「随分と落ち着いているな。こういう事はよくやっているのか?」

「あぁ、学園長には大なり小なり何か問題事があるたびに呼び出されて、こういう風に使われてるからな」

 

 まぁ、麻帆良で暮らせているのは、あの人のおかげでもあるため、手を貸すのは当たり前でもあるわけだが……。

 

「なるほど、経験は十分というわけか……さすが“能力者”だな」

 

 前にいる俺だけに聴こえる声量で龍宮さんはサラッと言った。

 

「まぁな……」

 

 …………あれ?

 

「知ってたのか?」

「見たらわかるよ」

 

 ワッツ!?

 

「どういう意味?」

「そのままの意味さ。君の身体に“憑いているモノ”が、私には見えるからね」

 

  “憑いてる”って、なにが?

 ……そう言えば、この人って魔眼を持ってる魔族とのハーフだっけ?

 

 俺が色々思考を巡らせていると、龍宮さんはこっちを見て不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふふ、君は随分と“ソレ”に好かれているようだ」

「一体、何がどういう風に見えてるのか、非ッ常ぉ~に気になるんだが……」

「霊体のような悪魔の姿が君の姿と重なって見えているよ。悪魔の実の能力者は皆そうだ」

「へぇー」

 

 悪魔の魂が見えるとか、どっかのエクソシストみたいだな。

 

 『真名(マナ)・ウォーカー』ってか? ……あってるじゃん。育て親の名前だけど。

 

 ……ん? 待てよ。

 

「『能力者が分かる』ということは……」

「あぁ、うちのクラスにも能力者がいるみたいだな。しかも自然系(ロギア)動物(ゾオン)系幻獣種と、かなり希少なものばかり」

 

 あらら、やっぱりバレてた。

 エヴァさんは有名人だから知ってても不思議ではないが、雪広についてもバレてるとは。

 

「系統も分かるのか?」

「何となくだがな。それに見分けられるのは自然系(ロギア)動物系(ゾオン)だけさ。超人系(パラミシア)は系統は分かっても、それが何の能力なのかまでは見ても分からない」

「へぇー。因みに訊くが、俺は何の能力者に見える?」

「……ふむ、動物系(ゾオン)の翼を持つ生き物のモデルに見える。トリトリの実の一種かな?」

 

 憑いてる悪魔の姿を見て言ってるのか、龍宮さんは俺を見ながら答えた。

 

「ハズレ。けど惜しいな」

 

 正確にわかるわけではないようだが、一目で能力者が分かるというのは、そこそこ便利な能力だな。

 

「ん? 何か話しているようだが、二人で何話してるアルカ?」

「別に大したことじゃないさ」

 

 古菲がやってきて、この話題は打ち切りとなった

 

《次は○○。次は○○駅です》

 

 やがて目的地の最寄り駅に着くアナウンスが流れる。

 そして、電車を降りる際に俺は龍宮さんだけに聴こえるような声量で云った。

 

「能力者のことは他の魔法使いには言わないでくれよ。メンドーだから」

「ふふ、分かってるさ」

 

 うっすらと笑みを浮かべながら龍宮さんは了承した。

 

「そういえば、結局君は何の能力者なんだ?」

「……それはヒミツです」

 

 龍宮さんの問いをなんとなーく誤魔化して、俺達は駅を出た。

 向かうは、関西呪術協会総本山の森である。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「やっと来てくれたですか」

「待たせたでござるな、リーダー」

 

 関西呪術協会があると思われる山の麓の森の入口で、綾瀬は携帯を握りしめて待っていた。

 俺や長瀬達を見ると、綾瀬は安堵の表情を浮かべ、駆け寄って来た。

 

「現状は電話で話した通りです!」

「アイアイ。では早く向かうでござるよ」

「……ちょっと待て!」

 

 綾瀬は「こっちです」と長瀬や古と共に山を登ろうとするが、俺はすぐに呼び止めた。

 

「どうした?」

「………」

「ゆっくりしてる時間はないです! 早く行くですよ!!」

「………」

「何してるアルネ?」

 

 俺は山頂がある方角から少し逸れた方へ顔を向け、気配を探った。

 綾瀬達は何をしているのかと俺を見るが、俺は気にせずに顔を向けた方を指さす。

 

「……あっちの方角にたくさん気配を感じる」

「なに?」

「多分、あそこでアスナと桜咲が戦ってる」

「どうして分かるアルネ?」

「………」

 

 古や綾瀬から疑問の目で見られるが俺は無視して、更に気配を探り続けた。

 

「……ふむ、ならとりあえず、そっちに向かうでござるよ」

「いや、待て!」

「どうしたですか!? どうやったか分かりませんが場所が分かるのなら早く向かうです!!」

 

 止まるように呼びかける俺を見て、綾瀬は強く言い張った。

 すると、俺が指した方角から更に少し逸れた所の空が明るくなり、光の柱が現れる。

 

「なんだ?」

「あっちの空が明るいアルヨ」

「……あまり良くないことが起きているようでござるな」

 

 光の柱を見て、長瀬と龍宮さんの表情が鋭くなった。

 

「早く行こう。刹那もだがネギ先生が心配だ」

 

 肩にかけたカバンからライフル銃やハンドガンを取り出し、龍宮さんはこちらを見た。

 

「加賀美、ネギ先生の場所は分かるか?」

 

 俺は光の柱と明日菜達がいると思わしき位置の間を指した。

 

「二時の方向にそこそこ強い気配が移動してる……多分ネギ君だ。けどその先にも強いヤツの気配がある、これは多分敵だ」

「そうか、なら二手に別れよう」

「そうでござるな。では拙者がネギ坊主の方へ行くでござるよ」

「わかった。では私と古は刹那達の所へ向かおう。君はどうする?」

「……俺もアスナ達の方へ行く」

「よし、では行こう」

 

 ハンドガンを装備し終え、ライフルを肩に掛けながら、龍宮さんは言った。

 

「あの、私はどうしたらいいですか?」

「綾瀬は長瀬について行け。敵が少ない所にいた方が狙われる確率は少ないからな。そんで戦闘中は長瀬の近くで隠れてろ」

「分かったです」

 

 綾瀬が頷くと、長瀬は「ではリーダー、しっかり捕まっているでござるよ」と綾瀬を背負い、走り去っていった。

 続いて俺達もアスナや刹那達がいると思われる場所に向けて、走り出した。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「………」

「……随分と怖い顔をしているが、大丈夫か?」

 

 走って移動している最中、龍宮さんが俺の顔色を窺いながら訊ねてきた。

 正直な話、さっきから向かっている所から感じる“強い気配”に対して冷や汗が止まらない。

 

「この先に、かなり強い気配を感じる。多分今の俺じゃあ勝ち目がかなり薄いくらいのな」

「……ふむ、君の実力がどれほどモノか知らないが、そんなに強い奴がいるのか?」

「あぁ、コイツはおそらく今まであった人達の中でダントツで強い。気配だけで判断すれば高畑先生以上だ」

「そんなに強いアルカ!?」

 

 横で聞いていた古菲が驚きの声を上げ、龍宮さんも「ほぅ」と珍しいものを見るような目でこちらを見た。

 

「高畑先生より強いのか……それはかなり骨が折れそうだな」

「骨が折れるレベルで済めばいいけどな」

 

 下手すりゃ死ぬかもしれないぞ。

 

 俺がこの先にある一抹の不安に内心で頭を抱えていると、古がこっちを見て近寄って来た。

 

「さっきから気になってたアルが、ネギ坊主の位置とか敵の強さとか、どうして加賀美は分かるアルカ?」

「……修行」

「一体どんな修行をしたら、そんな技が身につくネ。是非教えて欲しいヨ」

「気が向いたらな……」

 

 そんな風に話をしながら、開けた場所に出る直前、俺と龍宮さんは足を止めた。

 古も「どうしたアルネ?」と訊ねながら、つられて足を止める。

 眼前では桜咲達が大勢の妖怪たちと対峙しており、アスナに至っては鴉の妖怪に腕を掴まれ宙吊りになっていた。

 

「なにやらピンチのようだな」

「みたいだな――来れ(アデアット)

 

 龍宮さんはライフル銃を構え、俺はアーティファクトを取り出し、矢を生成した。

 古が「どうやって出したアルか、それ!?」と目を輝かせていたが、俺は「あー手品手品」と適当に返す。

 神々しく輝く光の粒が神弓に集まり、魔弾の矢と化す。

 

「久々に本気出して撃ちますか……」

 

 更に矢は輝きを増し、握りの部分を中心に、まるで神弓に伝わるように弓の刀身部分も輝き始めた。光が満ちると神弓の刃は形を変え、刀身が大きくなる。

 光る大きな神弓をやや上空に向け、俺は龍宮さんに合わせる形で弾を撃った。

 

天光の矢(エンジェル・アロー)!」

 

 ライフルの銃声が響くと同時に、空に向けて一本の矢が昇る。

 その光輝く矢は空中で弾け、小さな矢に分裂し、地上にいる妖怪達を狙って、まるで雨の如く降り注ぐ。

 矢はドーム状に広がり、辺りにいた妖怪たちを一掃する。

 矢に貫かれた妖怪共、そして龍宮さんに狙撃された鴉の妖怪は、悲鳴を上げながら気化するかの如く消滅した。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「この助っ人の仕事料はツケにしといてあげるよ、刹那」

「うひゃー、化け物たち一掃アルね」

「龍宮!」

 

 突然の空からの奇襲、そして森の茂みから現れたクラスメイトの姿に刹那は目を見張った。

 驚いたのは刹那や明日菜だけではなく、周りにいる妖怪達もであった。

 妖怪達も真名と古菲に目を向け、驚きの表情となる。

 

「な、なんやーアイツ等!!」

 

 飛来した攻撃と突然現れた真名達を見て、動揺している鬼の妖怪の背後に一つの人影が現れる。

 

癒天(ラファエル)

 

 その鬼が背後の少年の存在に気づいた時には、すでに遅く、鬼の体に三つの斬撃が走った。

 体に走った斬撃は鬼を光の粒へと変えていき、やがて鬼は姿を消した。

 

「総一!」

「よぉー、アスナ。大丈夫だったか?」

 

 双剣を持った総一を見て、明日菜は驚きながら立ち上がる。

 

「遅いわよ! もっと早く来なさいよ!!」

「……悪かったよ」

 

 逆手に持った双剣を順手に持ち変え、総一は動いた。

 体を向けた先には総一の倍の大きさはある一目一本角の鬼妖怪と人型サイズの鬼武者妖怪が数匹。

 

「来るか。ワシの剣は強いでェ! 兄ちゃん」

 

 まっすぐ向かってくる総一に、一本角の鬼妖怪は大きな大剣を振り下ろす。

 しかし、大剣が当たる直前、総一は姿を消した。

 

雷光天(バラキエル)

 

 総一の低い声と空気を斬る音が辺りに響き、一線の斬撃を走らせ、総一は瞬時に鬼妖怪達の後ろに立った。

 一本角の鬼妖怪がその強力な斬撃によって斬られると、続いて周りにいた鬼武者妖怪に稲妻のような斬撃が走る。

 攻撃を喰らった鬼妖怪達は低い悲鳴をあげて、傷口を押さえた。

 そして、妖怪達は気化するように塵となって消滅していった。

 

「なッ! 龍宮さんやくーふぇもだけど、アイツってあんなに強かったの!?」

(召喚された妖怪を送り返している! あのアーティファクトも退魔の性質を持っているのか!?)

 

 明日菜と刹那は、総一の剣技にそれぞれ目を見張った。

 総一はいつになく真剣な眼差しで辺りを見る。

 

(さっき感じた強い気配は、どいつだ?)

 

 気配を探っていると先程から光っていた光の柱が一層強く光り出した。

 

「ちょ、ちょっと、刹那さん、アレ!」

「な……なんだ、アレは!?」

「……ん?」

「ほろ?」

「ほほぉーう」

「こりゃー見物やなぁ」

 

 強く光る空を不思議に思い、この場にいる(総一を除いた)全員が同じ方角を向いた。

 そこには何十メートルもの大きさがある鬼がいた。

 

 ――二つの顔に四本腕の大鬼神。

 その鬼神こそ、千六百年前に打ち倒された『リョウメンスクナノカミ』であった。

 

「ネギの奴、間に合わなかったの!」

「分かりません! けど助けに行かねば……」

「そうは言っても、コイツ等が!」

 

 現れた鬼神を見て、明日菜と刹那がそういうと、二人に襲い掛かろうとしていた月詠と妖怪が銃弾によって止められた。

 

「行け、刹那! あの可愛らしい先生を助けに!」

「ここは私達に任せるアルよ!」

「……すまない。行きましょう、アスナさん」

「う、うん」

 

 アスナと刹那は、妖怪の攻撃を振り払い、鬼神のいる方へ走り出した。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「――はッ!! アスナさん、危ない!!」

 

 しかし、突如横から放たれた強力な攻撃によって、二人は動きを止められた。

 攻撃そのものは明日菜達に当たらなかったが、攻撃によって生じた風圧に明日菜達は身構える。

 

「え、な、なに今の!?」

 

 明日菜が驚いている中、二人の前に一人の“男”が立ちはだかる。

 

「新手か!?」

 

 男を見て、刹那は『夕凪』を握る力を強めた。そして、男が放つ雰囲気に冷や汗を流す。

 

(……この男、かなりできる)

 

 相手の放つ殺気やたたずまいに、刹那は男の力量を察した。

 

「アスナさん! この男は私が相手します。アスナさんは先にネギ先生の所へ!」

「えっ、でも……」

「この男はおそらくとても強いです。二人で戦うわけにはいきませんし、アスナさんに任せるわけにもいきません。ここは私が―――」

「俺がやる」

 

 後ろから聴こえた声に、明日菜と刹那は振り向いた。

 そこには、今までに見たことの無いほど鋭い目をした総一が双剣を持って立っている。

 総一のその表情を見た刹那は、一瞬ゾクッと恐怖を感じたが、すぐにその恐怖心を振り払い口を開く。

 

「けど加賀美さん、あの人はかなり強いです。一人で戦うのは……」

「わかってる。だから長く足止めは出来ない。桜咲達は振り向かずにまっすぐ走り抜けろ!」

「しかし! それでは加賀美さんが……!!」

 

 総一は二人の前に立ち、男と対峙する。

 

「戦況を見誤るな、桜咲。コイツを倒せば勝ちってわけじゃない。お前らは一秒でもはやくネギ君の所へ行くべきだ」

「……わかりました」

 

 完全に納得しているわけではないようだが、総一の静かな威圧に押され、刹那はゆっくりと頷いた。

 

「大丈夫なの?」

「……さぁーな」

 

 明日菜の問いに、総一は大丈夫とは答えなかった。それほどまでに目の前にいる男が強敵であり、その強さが並みでないことを総一は“知っていた”からだ。

 双剣を握りしめ、総一は相手を見据える。

 

 

(まさか、この男と戦う事になるとはな……)

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






『強敵、現る!』ということで今回はここまで。


突然ですが読者の皆様。
このような拙い物を読んでくださって、ありがとうございます。
最初の1話2話を書いていた頃くらいは『ど~せ、こんな小説なんて世界的に2、3人くらいしか読まないだろ~(笑)』なんて思って適当に書いてましたが、気づけばお気に入りの数が三桁いっていて、少し驚いています。


さて、物語では千草達に能力者の仲間はおらず、全てそのまんま原作通りぃ~~という感じでしたが、そういうわけには行かず、突然の強敵出現です。

ダライアスやロックマンでいうと『WARNING!!WARNING!!』ものです。

その強敵に総一はどう立ち向かう?

そもそも、その強敵の男とはいったい誰なのか!?


その正体は――――



『待て、次回!』


もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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