もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
…………のり切った。
久しぶりの投稿です。
「―――以上の二色が“覇気”だ」
覇気についての説明を終え、俺は古に向き直った。
現在、場所は麻帆良学園の隅にある森の入口。少し離れた所では、エヴァさんやネギ君達が魔法の修業している。
「うむ。それで、その覇気を身につけるにはどうすればいいアルか?」
「覚醒させるだけなら強いショックを与えれば出来るが、どっちにしろコントロールするには修業が必要だからな、今回は無理せずゆっくり鍛練して覚醒させようと思う」
「鍛錬って、具体的になにするアルか?」
「基本は俺との実戦だな」
ホントはルフィみたく猛獣とかと戦わせた方が、(俺が楽できるし)良いんだけど……魔法世界ならまだしも、流石にこの現代日本にはいないからな、俺が相手になるしかない。
「なるほど、実戦アルか。じゃあ早速やるアル!」
「まぁ、待て。今日は説明だけだ。修行自体は今度からやる」
「なんでアルか? 今度言わず、今やるアルよ!」
「生憎、今日はもうそんな時間ないんだよ」
すでに日は傾き、空が橙色に染まってる時間帯。
平日の放課後というだけあって、あっという間に時間が経ってしまった。
「むぅぅ。これじゃあ、満足に修業できないヨ!?」
「その点は大丈夫だ。ちゃんと考えてあ―――」
「か、関係ないって! 今さら何よ!!」
え、なに!?
突然聴こえてきた明日菜の怒鳴り声に、俺と古は目を向けた。
すると、そこでは明日菜がネギ君の胸ぐらを掴み、何やら揉めていた。そして終いには、明日菜はネギ君を
「アイヤぁー、アスナすごい怒ってたネ。ネギ坊主、一体何したアルか?」
古の疑問に俺は「さぁ」と流すしかなかった。
そういえば、この時期にネギ君と明日菜が喧嘩するエピソードがあったような気がするが…………思い出せないことから考えて、恐らく放っておいても大丈夫だろう。
「まぁ、いいや。とりあえず、
「むぅ、仕方ないネ……ありがとうございましたアル、加賀美老師!」
……老師はやめて。
老けて聴こえるから。
☆☆☆
そして、時間は少し経ち、所変わって、エヴァさんハウス。
「魔法使いと……魔法剣士……」
エヴァさんの提示した二つの戦闘タイプのどちらにするか悩むネギ君を見て、俺は「はぁ」と内心ため息をついた。
正直、魔法使いだろうが魔法剣士だろうが、どっちでもいいだろうに……。
だが、ネギ君にとって今はその事よりも、どうやって明日菜と仲直りするかの方が大事なようで、明日菜とケンカしたのを思い出して、また「うわぁーー」と頭を抱え始めた。
「加賀美さん、どうしたら良いですかー?」
目を潤ませながらネギ君はこっちを見る。
「普通に謝ればいいんじゃない。てか、なんで俺に訊くの?」
「加賀美さんなら明日菜さんとも仲良しですし、アスナさんとの仲直りの方法も知ってるかなって……」
仲良くはないよ?
ケンカした回数こそ多いが、仲直りなんてしたことないからな。
「そもそもなんでケンカしたんだ?」
「それが理由が分からなくて……」
ネギ君が泣きながら悩んでいると、茶々丸のメンテに来た葉加瀬が話を聞き、「そういうときは相手との会話を思い出してみると良いですよ」と茶々丸の音声記録を使って二人の会話をプリントアウトした。
俺とネギ君、そして同じくこの場にいる桜咲と葉加瀬、絡繰姉妹はその会話の書かれた紙に目を通す。
桜咲や葉加瀬達は、会話文を見て、「この言葉は問題では?」とか「確かに相手の身体的なことを――」などと話し合い、結果、明日菜の怒った原因がネギ君の「パイ〇ン」発言であることに至った。
俺は「違ぇだろ……」と隅で呟き、再度紙に目を通す。
「……はぁ」
放っておこう、と俺はため息をつきながら思った。
原因はネギ君の「アスナさんには関係ない」発言だろうが、指摘しなくてもあの二人なら勝手に仲直りするだろう。
「なぉ、兄ちゃん」
「……ん? なんだよ、白オコジョ」
会話文に目を通して内心で呆れていると、机の上にいる生物に名を呼ばれ、俺は顔を向けた。
机の上では「白オコジョじゃなくてカモっす」と白く細長いオコジョがこっちを見ていた。
「前から思ってたんだがよ、兄ちゃんは誰の従者なんだ?」
「あっ、それは私も思っていました」
白オコジョ、もといカモに同意する形で桜咲はこっちの話題にのってきた。
「誰も何も、普通に麻帆良にいる魔法使いの従者だよ。教会のシスターしてる……」
「教会のシスター?」
「加賀美さんは何故その人と仮契約を?」
「事の成り行きでな……その辺はあまり詮索しないでくれ」
気恥ずかしいから。
「けどよ、兄ちゃんって一介の魔法使いの従者にしちゃ、やけに強くねえか? 場馴れしてるつーか」
「そうですね……そういえば西の長が行っていたのですが、修学旅行の時、加賀美さんが相手にした剣士は、裏の世界でも名のある剣士だったようですよ。長もあの剣士を足止めした加賀美さんを評価していました」
「そんな大したことないって」
評価って……俺、血まみれになって死にかけたからね?
能力者じゃなきゃ死んでたからね?
俺の技量というより
「ケケケッ、コイツハ日頃カラオレヤ御主人ト殺リアッテルカラナ」
「「えっ!」」
「物騒なこと言うな! 殺しに掛かってるのはお前だけだろうが」
カモと桜咲がキョトンとする横で、チャチャゼロは「ケケケッ」と不気味に笑う。
俺はその笑みを見て、少し顔を青くした。
初等部の頃から何度も見ているが、チャチャゼロの笑いは俺にとって少しトラウマになっている。
なんせ、このキラー
当時、俺はエヴァさんに戦いを教わることが何度かあり、チャチャゼロとも何回か戦ったが、戦闘経験がなく、体の成長も十分にしていない俺に、コイツはケラケラ笑いながらナイフを振り回し、殺しに掛かって来たのだ。
最近はかなりマシになった――ってか慣れたが、転生して精神年齢が常人より高い俺でも、アレはマジで怖かった。ほんと、週に何度か夢に出た。
『白き翼』が『赤き翼』に変えられる夢を見たよ。
《ケケケッ、テメェノソノ羽、真ッ赤二シテヤルゼ!ケケケッケケケケケケケケケケ―――》
あ、やべっ、思い出したら寒気が……。
「……あれ、そういえばネギ君は?」
チャチャゼロが笑いながら斬りかかってくる過去の映像を振り払うと、いつの間にかネギ君がいなくなっている事に気がついた。
「兄貴なら姐さんに謝りに出て行きやしたけど……」
「怒らせた理由も分からずに謝るのか?」
「良イジャネェカ、謝ットケバナントカナンダロ。面倒クセーシナ」
まぁ、本人達の問題だし、それで解決するなら良いだろうけど……。
「その『とりあえず謝っとけば良いんだろ?』みたいな考えはよろしくないぞ」
「知ラネェーヨ、ナラ殺ッチマウカ?」
ケラケラ笑うチャチャゼロに俺は「やめぇい」とチョップをいれた。
このキラー人形、
俺は「ヤレヤレ」と頭に手を当てた。
そんな中、桜咲が「そういえば」と口を開いた。
「加賀美さんは何故ここに来たのですか?」
「………」
…………あっ。
「……ちょっと、エヴァさんに頼みがね……というわけで、エヴァさーーん、頼みがあるんだけどぉーー!」
そう言いながら、俺は席を立った。
去る最中、後ろで「ケケケッ、アイツ、忘レテタナ」とキラー人形が笑っていたのは、多分気のせいだろう。
☆☆☆
数日後。
心地良い波の音が聴こえる。
周りには白い砂浜に青々とした澄んだ海。
天候にも恵まれ、空からは太陽の光が燦々と降り注いでいた。プライベートビーチというだけあって、人混みにも無縁な環境。よって砂浜にはゴミ一つ落ちてない。
もし前世でこんなところに来ていたら、一日中、テンションフォルテッシモで遊んでいたかもしれない。
しかし、今、俺は目の前で遊んでいる3ーAの連中(一部)を見ても、一緒に遊ぶ気にはならない。
なぜかって?
…………推して知るべし。
「あぁ、陽射しが眩しいなぁ」
「なんでアナタまでいるんですの!? アナタがこんな所に来てもなにもする事ないでしょうに」
「その言葉、そのまま返してやるよ。こんな所に来て何すんだ? “ダイビング”か? “なみのり”か? どっちにしろ死ぬぞ」
「私はネギ先生が楽しんでいただければ、それで良いのです!」
「……あっそ」
目の前で遊ぶA組の連中を見ながら、雪広は「あぁ、私の『ネギ先生と二人っきりパラダイス計画』がぁ」と荒ぶりながら涙を流す。
流石はネギ君絶対主義者、ブレないな。
「おーーい、総吉ぃーー」
「私達と遊ばなーーい」
海で泳ぐ鳴滝姉と明石からお呼びが掛かり、俺は手を振り返したが、すぐにその場から立ち去った。
あの誘い、俺にとっては“死神の誘い”に等しい。
誘いにのったら、俺に命はない。
一応TPOをわきまえて、サーフパンツの水着にTシャツを着ているが、この水着が本来の役目を全うすることはないだろう。
そんなこんなで特にやることもなく、俺は砂浜を散策することにした。
「……はぁ。男一人だと肩身狭いな、相川達も連れてくれば良かった」
相川と織戸のことだ。女子の水着姿に鼻の下を伸ばすこと受け合いだが、いないよりマシだ。
「あっ、おった。総くーーん」
「ん? おぉ、このか」
綺麗な自然を眺めながら歩いていると、今回俺をこの島に誘った木乃香が桜咲を引き連れやって来た。
「ネギ君と明日菜のことなんやけど……総くん、何とかできひん?」
「別に何もしなくてもいいだろ。というかあの二人、まだケンカしてんの?」
「そうなんよ。海で遊べば、ケンカしとるのも忘れると思うたんやけど……」
木乃香が俺をここに誘った理由、それはネギ君と明日菜の仲直りの手伝いだ。
といっても、昨日、木乃香からソレについての相談に乗っているときに雪広が南国リゾートに行く話を聞いたために、流れでやって来ただけなのだが……。
「……大丈夫だろ。アスナだってバカじゃ……子供じゃないんだから、いつまでも拗ねてないだろ」
「そこは律儀に言いなおさなくても良いのでは……」
冷や汗を流しながら苦笑いする二人から視線を外し、落ち込んだ表情で海を泳ぐネギ君を見た。
「てか、ネギ君、謝ったんじゃなかったのか?」
「それが、どうやら失敗したみたいで……」
「失敗って……」
ただ単に謝るだけだろうに。
一体、なにしたんだ?
「……ん?」
ふと見ると、砂浜のヤシの木の陰に人影が――てか、雪広が泳ぐネギ君を覗いていた。
「ネギせんせーー!!」
「遊ぼーーっ!!」
「コラーー、そこの御二人、ネギ先生は私と――!!」
佐々木と和泉がネギ君に抱き着くのを見て、雪広は声と両手を上げて、“海に突っこんだ”。
「あのバカッ!!」
俺は、嫌な予感を感じとり、地を蹴った。
そして、案の定、海に足を突っ込んだ瞬間―――
――雪広は転倒し、体が海中に沈んだ。
☆☆☆
「……うぅ……はっ!!」
目が覚めた瞬間、上体をガバッと起こし、雪広は辺りを見回した。
「水深が浅くて良かったな、あと少し深かったら死んでたぞ」
日陰に並べて置かれたデッキチェアの上であぐらをかき、俺は水平線を見ながら、雪広に声をかけた。
「そういえば、私……まさか、加賀美さんが!?」
「あぁ、そうそう。皆には体操せずに海に入ったせいで足がつれて溺れたってことにしてるから――」
「まさか加賀美さんに助けられるなんて………そんなことよりネギ先生は!?」
「人の話、聞いてる? ……ネギ君ならあっちで―――」
「あっちにネギ先生の“気配”がっ! ネギ先生ェーー!!」
「………」
……ダメだ、こりゃ。
「海から引き上げたのは、俺じゃねぇんだけどな…………まぁ、いいや」
去り行く雪広の後姿を細い目で見ながら、俺はデッキチェアから立ち上がった。
「はぁぁぁ、部屋で寝てよ」
心中に溜まったイライラを溜息と共にはき出しながら、俺は海上に建てられたホテルの一室に足を進めた。
「まったく、俺は海より山派……いや、でも山は山で蚊に刺されるし」
愚痴をブツブツと呟きながらも、俺は部屋に入り、着替えるため服を出そうとベットの上にあるカバンを開けた。
「……あれ?」
しかし、バックを開けた瞬間、俺は中身の異変に気付いた。
「えっ……うそ…………ない」
そこには、“あるはずのもの”が無くなっていた。
「えっ、マジでない……ないない、ないないないない!!」
俺は、カバンをひっくり返し、中身をベットに広げた。
けどやはり、“ソレ”はどこにもなかった。
「“悪魔の実”が無くなったァーーーー!!」
TO BE CONTINUED ...
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
-
ネギ・スプリングフィールド
-
神楽坂 明日菜
-
雪広 あやか
-
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
-
超 鈴音