もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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第1章 魔法少年がやって来た!!
3. I can fly.


 

 

 

「王手飛車取り」

「ふん、飛車などくれてやる」

「へぇ、結構な自信だな」

「貴様程度、歩だけでも楽勝だ」

「……そうかよ」

 

 相手の言う通り、今、流れは相手にある。飛車を取ったからといって、それは変わらない。

 

「良いことを教えてやろう」

「断る」

 

 絶対に“良いこと”なわけがない。

 

「まぁ、聞け。この対局だが、後十二手で私の勝ちが決まる」

 

 才気煥発の極みか?

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「詰んだな」

「ふん、だから言っただろう」

 

 本当に十二手で決めやがったな。

 まぁ、何か賭けたわけでなし、負けても別に悔しくないけどな。

 ……ホントだよ。

 

「んで、話って何だよ?」

 

 将棋が終局し、今いるログハウスの家主であり、対局していた相手、エヴァさんことエヴァンジェリンに俺は訊ねた。

 

「今度、“ヤツ”の息子がこの学園に来る」

「へぇ~。……んで、“ヤツ”って?」

「わざと言っているだろ、貴様」

 

 当然。

 エヴァさんが“ヤツ”って呼び方する人は一人しか心当たりがないからな。

 

「俺にどうしろと?」

「なに、ソイツの血を吸って、この忌まわしき封印を解いてみようと思ってな」

「好きにすれば良いよ。それに俺の力が必要?」

「念の為だ。他の魔法使いの連中にとやかく言われるのはめんどうだからな」

「つまり、エヴァさんが事を起こしてる間に横槍が入らないようにしろと?」

「そういうことだ」

 

 ……面倒くせぇ。

 

「まぁ、実行するのはまだまだ先だからな。返事はその時、聞かせてもらう」

 

 あぁ、そうでしょうよ。なんせ今は、八月だ。

 エヴァさん曰くのヤツの息子、ネギ君が来るのは三学期付近だ。まだまだ時間はある。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 そう思っていた、夏。

 季節は巡り、あっという間に今は三学期。原作開始……というより、主人公のネギ君が来るまで、あと僅かとなった今日この頃。

 俺は高畑先生に呼び出された。

 

「――ということで、魔法学校の最終課題でその子が麻帆良(うち)に来ることになった」

「えぇ、その話は大分前にエヴァさんから聞きました。確か魔法界の英雄の一人息子なんですよね?」

「ははは、エヴァは口が早いな」

「てか、寧ろ高畑先生は言うのが遅いと思いますけど。エヴァさんがその話したの、確か夏頃ですよ。てことは、その時にはすでにその子が麻帆良(こっち)に来ることは決まってたんですよね?」

「まぁね。でも確定したのは、つい最近のことだよ」

 

 そう言って、高畑先生は、手に持ったカップに入ったコーヒーを啜った。

 現在、場所は麻帆良にある食堂街の喫茶店内。俺と高畑先生はテーブルにつき、対面しながら話をしている。当然周りに話してる内容がわからないように、高畑先生によって簡易認識阻害の結界が張られていた。

 

「んで、ソレを話して、俺にどうして欲しいんですか?」

 

 俺は頼んだクリームソーダのアイスを口に運び、高畑先生に訊ねた。

 

「別にどうしろって事はないよ。ただ、君は初等部上がりで、雪広君やアスナ君と仲が良い。ひょっとしたらその繋がりで知り合うかもしれないから、前もって言っておこうと思ってね」

 

 という事は、原作通り、ネギ君は2年A組の担任か。

 確かに、知り合うかもねぇ……。まぁ、ネギ君が能力者を知ってるかどうかで、色々付き合い方とかが変わるかもだけど。

 

「因みに、その子は悪魔の実について知ってるんですか?」

「うぅーん……多分一般の魔法使い程度には知ってるんじゃないかなぁ」

 

 つまり、『悪魔の実を食べると化け物になるぞ』的な理解をしていると。

 

「その子、十歳ですよね? エヴァさんとか見て、泣いて逃げなきゃ良いけど」

「ははは、まぁ、しっかりしてる子だし、多分大丈夫だよ。その子にはエヴァや雪広君のクラスの担任をしてもらう予定だし」

「は? 担任? え、ちょっと待って下さい。さっき雪広とアスナがどうこう言ってましたけど、つまり、その子は教師に?」

 

 知ってるが不自然がないようにリアクションしておこう。

 

「そうだよ」

「十歳の子供が?」

「あぁ」

「……ありえねぇ」

「まぁ、その反応が当然だろうね」

 

 そう言って、高畑先生はまた一口、コーヒーを啜った。

 

「分かってて何でそんなことを?」

魔法使い(こちら)にも色々と事情があるんだよ。彼は英雄の子で魔法の才能も充分にある。“本国”や周りの大人達も色々と経験を積んでもらって、彼に立派になって欲しいんだろう」

「経験を積む云々(うんぬん)は、そうかもしれないですが、それを最終的に決めるのは、本人ですし、イコール教師をするって事にはならないと思いますけど」

「確かにね。けど、僕が決めた事じゃないし、詳細な部分は分からない。それに、もう決まった事だから、今、僕にできることは彼が麻帆良(こっち)に来た時に、上手く成長できるようにサポートするだけさ」

 

 まぁ、確かに、ネギ君が先生をする事を決めたのは、高畑先生じゃないし、ここで詳しい事情を訊ねるのもナンセンスか。

 俺はストローでソーダを飲み、一息つく。

 

「まぁ、 魔法使い(そっち)の事情は分かりました。頭の隅にいれときます。その子に何かあったら、適当に対処しときますよ」

「ありがとう。助かるよ。青藤君にもこの話はしてあるし、万が一、彼が能力者に襲われたりしたら、一緒に助けてあげて欲しい」

「じゃあ、エヴァさんに監視をつけとくと良いですよ」

「ははは、エヴァは大丈夫だよ。彼女はアレでも結構 “良い人”だからね。その辺は君の方が分かっているだろう?」

「……まぁ、多少は」

 

 高畑先生の言う通り、エヴァさんと俺はそこそこ付き合いが長い。だから、あの人がホントは根が優しい事はよく“察して”いる。ネギ君の血を吸う為に襲いはすれど、命までは取らないだろう。

 一通り話が終わり、俺と高畑先生は席をたった。会計は、呼び出したのが高畑先生だったこともあり先生が払ってくれたが、礼儀として一応、礼は言った。

 

「そういえば、その子ってどんな容姿なんですか?」

 

 俺は高畑先生と別れる所まで歩きながら、その間ネギ君について色々と訊いていた。

 

「ん? あぁ、だったら会ってみるかい?」

「え?」

「彼が麻帆良(ここ)に来る当日、僕が麻帆良中央駅まで迎えに行くことになってるから。一緒に駅に行けば会えるよ」

「なるほど……。けど良いんですか? 中央駅ってどちらかと言うと女子校エリアですけど」

 

 俺がそう言うと、高畑先生は顎に手を当て、少し考える。

 

「大丈夫だと思うよ。気にする生徒は多少いるかもしれないけど、僕がいるわけだし、それに君が何かするとも思えないしね」

 

 それは俺を『臆病者(チキン)』と思ってるからか?

 ……いや、素直に『信頼しているから』という意味で受け取っておこう。いい意味でね。

 

「わかりました。じゃあ、当日ついて行っても良いですか?」

「うん、いいよ。それなら詳しくは後で連絡しとくよ。多分、学園長室で色々話すことになると思うから、そこでネギ君と顔見知りになっておくと良い。広域指導委員の生徒ってことで君を紹介しよう」

「了解」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 そして、むかえたネギ君が麻帆良に来る当日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、遅刻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっべぇ、普通に寝坊したぁ」

 

 そんなことを言いながら、俺はせっせと学ランに着替え、支度をする。

 俺は一人で寮暮らしをしているが、こういう時、だれかと相部屋だったら良かったのになぁっと思わなくもない。いくら寮暮らしといえど、実質一人暮らしのようなもの。だからこういう時に全て自分でやらなければならない。そこが少し面倒だ。

 

「走って行っても、間に合わねぇな」

 

 いや、普通なら本気を出せば、まだチャイムがなる前に教室に着くことはできる。けど、今日はネギ君を迎えに行くために、一度、職員室に行かなければならない。

 目指すのは、男子中等部校舎の教室ではなく、女子中等部校舎の職員室。今いる男子寮から女子中等部職員室に走って行くには遠すぎる。

 というより、今の時間的に、すでに高畑先生達は学園長室にいるかもしれない。

 

「仕方ない、“飛んで”行くか」

 

 俺は玄関の扉を内側から鍵を閉め、ベランダに出て勢い良く塀を蹴った。しかし、俺の体は下に落ちることなく、真っ直ぐに前へ飛んで行く。

 背中には純白の翼が一対。その白い羽は大きく宙を扇ぎ、風を起こしながら、俺の体を上空へ運んでいく。

 

 

 俺の食べた――正確には、記憶がないので“食べたと思われる”だが――悪魔の実は、動物(ゾオン)系幻獣種、ヒトヒトの実モデル“天使(エンジェル)”。

 天使と聞いて、強そうな能力を想像するかもしれないが、正直、あまり大したことがない。何故なら、この実の(俺が認識している)能力を簡単にいうと“空を飛べる”のと“生体能力の上昇”の二つだけだからだ。魔法使いがいる、しかも運動神経が化け物レベルの奴等がウジャウジャいる麻帆良にとって、この二つの能力はホントに大したことがない。

 ついでに言っておくと、前に言った通り、麻帆良に能力者は俺含め、四人。

 俺、青藤先輩に雪広とエヴァさんである。

 それぞれの能力だが、青藤先輩は……これも前に言った通り、容姿は海軍大将青雉ことクザンのまんま。能力も“まんま”で自然(ロギア)系ヒエヒエの実。

 雪広は、『ONE PIECE』でモネが使っていた、ユキユキの実。

 そして、エヴァさんことエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだが、この人は、俺と同じ動物(ゾオン)系幻獣種ヒトヒトの実。モデルは“吸血鬼(ヴァンパイア)”。

 しかも、覚醒者である。俺が聞いた話では、実を口にした時に不老となり、覚醒したと同時に“真祖の吸血鬼”になったとの事である。その辺は、聞いた話なのでホントかどうか知らないがな。

 

 

 はてさて話を戻し、俺は女子中等部校舎の屋上に降り立った。翼を消し、サクサクと階段を下りて、真っ直ぐ学園長室に向かう。部屋の前につくと、俺は扉を叩き「失礼しまーす」と言いながら扉を開けた。

 

「どうも、遅れました」

 

 室内に入ると、中にいる全員がこっちを見た。

 

「やぁ、やっと来たね」

「おぉぉ、加賀美君」

「え! 総一!?」

「総くん! 久しぶりやなぁ」

「えっ……?」

 

 高畑先生と学園長に……えぇーと、たしか源先生、少女二人と少年一人の視線が俺に刺さる。

 少女二人――明日菜と木乃香とは初等部を卒業して以来あんま会ってないから、本当に結構久しぶりだ。

 

「おぉ、アスナにこのか。久しぶり」

「ホンマやなぁ」

「なんでアンタがここにいるのよ! ここは女子校よ!!」

 

 俺が手を上げて挨拶すると、二人とも違った反応をした。

 

「彼は僕が呼んだんだよ。本当は一緒にネギ君を迎えに行く予定だったんだけどね」

 

 高畑先生の言葉に、明日菜は驚き、俺は手を頭の後ろに持っていき「遅れてすみません」と言って、頭を下げた。

 寝坊して遅れたという事は、とりあえず黙っておこう。

 

「ネギ君、彼は僕と一緒で広域指導委員をしている。何か困った事があれば頼ると良い」

 

 高畑先生がそういうと、赤毛の少年ことネギ君は視線を高畑先生から再度俺に向けた。

 

「少年が高畑先生が言ってた子ね。俺は加賀美総一。高畑先生が言った通り、広域指導委員してて放課後とか学園内をプラプラしてるから、何かあったら気軽に声掛けてよ」

「はい、ネギ・スプリングフィールドです。よろしくお願いします」

 

 ペコリと丁寧に頭を下げて自己紹介をするネギ君に、俺は「よろしくー」とフレンドリーに返した。

 

「あ、あの……加賀美さんは男子生徒ですよね?」

「そうだよ。だから大概男子中等部にいるから、授業とかではあんま会う事はないけど、“色々と”会う機会もあるかもだから、今日は顔合わせでね」

 

 君が悪魔の実に関わったら、まず俺が呼び出されるからね。多分、テスト明けぐらいに、また会う事になるかなぁ。

 ネギ君は、「はぁ」と頷きながら、理解しきれていないような顔をしている。そんな中、横から「なぁなぁ」と木乃香が俺に話しかけてきた。

 

「総くんは、この子が来る事、知ってたん?」

「うん、まーねぇ」

「な、なんで男子のアンタが先に知ってるのよ!!」

「高畑先生から聞いた。アスナのクラスの担任になるんだよな。お互いに大変だな」

 

 雪広は大歓迎するだろうがな。

 

「だ・か・ら、なんで十歳のお子ちゃまが私達のクラスの担任なのよ!!」

「俺に言われても……」

 

 御尤もな意見だがな。

 

「ほっほっほっ、加賀美君は相変わらず明日菜君や木乃香と仲が良いみたいじゃのぅ。どうじゃ、木乃香を嫁に――」

 

 学園長がそんな事言い出すやいなや、木乃香が「イヤやわぁー」と言いながらトンカチで学園長を殴った。

 ……どこから出した?

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ――キーンコーン

 

 そんな事をしていると、チャイムがなった。

 

「もう時間じゃの、ではネギ君、今日からよろしく頼むの」

 

 学園長の言葉にネギ君は背筋を伸ばし元気よく「はい」と返事をした。

 源先生に先導され、俺達は学園長室を出た。

 俺と高畑先生以外は2年A組の教室に向かうが、俺も男子中等部の自分の教室に行く為、途中までついていく。高畑先生は、一人職員室へと行き、先に別れてしまった。俺が歩いている前では、明日菜とネギ君が並んで歩き、お互いに視線を真反対に向け、むすっとしている。

 

「なぁ、あの二人、何かあったのか?」

 

 俺は隣を歩く木乃香に訊ねた。

 

「最初会った時にちょっとなぁ……登校しとる時にあの子が明日菜に『失恋の相が出てますよぉ』って言ってなぁ……」

「あぁ、察し」

 

 察したというより思い出したと言った方がいいな。だから、明日菜はジャージを着てたんだな。

 そんな事を話していると、明日菜はネギ君に何か言い、走って自分の教室に向かっていった。

 

「ほな、私ももう行くな。総くん、また会おうな」

 

 そう言って、明日菜に続いて、木乃香も教室に向かっていった。去り際に手を振っていたので、俺も手を上げて軽く手を振った。

 

「これから大変そうだな、少年」

「い、いえ。大丈夫です」

 

 言葉とは逆に、ネギ君はとても不安そうな表情をしている。

 

「加賀美君、もうチャイムが鳴っているわ。あなたも急いで自分の教室に向かいなさい」

「そうですね……んじゃな、少年、これから頑張んな」

「はい、ありがとうございます」

 

 源先生に急かされ、俺は自分の教室に向う。

 ホント、十歳にしてはよくできた少年だ。

 頑張れよ、主人公。

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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