もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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40. 本選開始

 

 

 

 朝、時刻は六時半。昨晩ほどではないが龍宮神社は多くの人で賑わっていた。おそらく今いるほとんどが観客だろう。今の時間帯と集まっている人数から見て、この大会の注目度がうかがえる。

 控室に入ると、すでにほとんどの本選出場者が揃っていた。俺が入ってきたのに気付いた古が「ニーツァオ」と手をあげ、そばにいる龍宮と長瀬が小さく顎を引いた。

 俺は「よぉ」と手をあげて、三人へ近づいた。すると、古が頷くように顔を動かして俺を見た。

 

「師匠が制服以外の服を着ているとは珍しいアルネ」

「そうか?」

 

 古の言葉に俺は首を捻った。

 

「そう言われたらそうかもな……でも、これ、いつもの学ランの代わりにコート羽織ってるだけだぞ」

「そのコートになにか仕掛けでもあるアルカ?」

「いやぁ、全く」

 

 コートを広げて俺はなにも無いことを見せた。背中には白いラインが十字架を描くように入っているが、それ以外はただの真っ黒なロングコートだ。でも生地はそこまで厚くないから、コートというよりはロングジャケットと言った感じかもしれない。

 

「でも戦闘時の格好と言えば、コートを羽織るのが通例かなぁって……」

「つうれい?」

 

 単語の意味が分からないのか、古は目を点にした。

 

「一体どこの通例なんだ……?」

 

 龍宮が軽く呆れたように言った。

 主に“海軍”かな。

 この世界に“海軍”があるのかは知らないが……。

 

「でも龍宮もコート着てるし、“あの人たち”だってそうだろ」

 

 俺は離れたところにいる三人を親指で示した。白いローブに身を包んだ“フードの男”とどっかの宗教のように目元以外の全てが隠された全身黒ずくめの二人組だ。あの二人組は、おそらく高音先輩と佐倉だろう。

 

「それより今日の試合、自信のほどはどうなんだ?」

「むぅぅ。正直、勝てる気しないヨ」

 

 苦笑いする古に、俺は「だろうな」と同意するように頷いた。

 古と龍宮では戦闘経験が違う。勝てる気がしないのも無理はない。“見聞色”でも体得してたら、まだ()()()()()かもしれないけど……。

 

「まぁでも、だからって負けるつもりはないんだろ?」

「当然ネ!」

 

 古は表情を変え、両手の拳をギュッと握りしめた。それを見て龍宮は楽しそうに微笑した。

 

 

 数分後、エヴァさんがやって来た。エヴァさんは俺を一瞥すると、眠たそうにあくびをした。

 緊張感ゼロ、ということらしい……。まぁ、ここでエヴァさんが緊張しているようなら、それはそれでおかしいのだろうが、俺はそれを見て少しムカついた。

 続いて、ネギ君や明日菜達が控室に入って来た。ネギ君は初戦で高畑先生と戦うというだけあって、少し緊張しているようだ。高畑先生が入ってくると、その顔をいっそう強ばらせた。

 

「加賀美さんも参加していたんですね」

 

 ネギ君や明日菜が高畑先生と話す横で桜咲が話しかけてきた。その言葉に、俺は「まぁな」と目をやった。

 

「もしかして超さんの偵察に?」

「偵察というか……“気になること”があるからそれを確かめるため、って感じかな。この大会で超本人ついてなにか調べようとは思ってない」

「それは、一体どういう――」

「ようこそ、お集まり頂きました!!」

 

 桜咲はなにかを訊きたそうにしていたが、その問いは朝倉によって遮られた。

 超と朝倉によるルール説明が行われた。

 ルールによると、試合時間15分のうちに『ダウンの10カウント』、『リングアウトの10カウント』、『気絶』、『ギブアップ宣言』で負けとなるらしく、時間内に勝敗が決まらなければメール投票で決めるそうだ。あとは昨日と同じらしい。

 説明が終わると本選が始まるまで、あと三十分となっていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

《皆様、お待たせ致しました! 只今よりまほら武道会第一試合を開始します!!》

 

 朝倉の開会宣言で周りの観客が沸いた。

 第一回戦、第一試合『佐倉愛衣 対 村上小太郎』。

 両者がリングとなっている能舞台にあがった。

 佐倉がフードを脱ぐと、見覚えのある顔に小太郎君と俺の横(左側)にいるネギ君達が声をあげた。

 それを見て、俺の隣(右側)に座っている黒ずくめの一人が……というか高音先輩がマントを脱いだ。

 なぜ、どうして、と慌てるネギ君たちを指差して、高音先輩は「あなたをこらしめるためです!」と声を張った。そして昨日のことを含め、この場にいる経緯を語った。

 

「――これはお仕置きしなければ分かってもらえないと思い、飛び入り参加した次第です」

「もっと良い方法なかったのかよ……」

 

 俺の呟きに、高音先輩はキッと睨んできた。

 

「あなたもですよ、加賀美さん!」

 

 突然名前を呼ばれて、俺は「えっ」と声を漏らした。

 

「“見習い”の身であるとはいえ、このような怪しい大会に出場するネギ先生を止めるでもなく、ましてや自分も出場するなんて!」

「良いじゃないですか、別に」

「良くないです!!」

「えぇーー、なんでぇ?」

 

 ついタメ口になってしまった。

 

「なんでもかんでもないです!! 聞く所によるとあなた、この時間は警備(パトロール)する時間となっていたにも関わらず、用があるからと外してもらったそうではないですか!!」

「どっから聞いたんですか、それ?」

 

 高音先輩は「そんな事はどうでも良いんです!!」と俺の質問を切り捨てた。

 

「私が言いたいのは、あなたには“魔法使いとして”の自覚が足りないってことです」

「……くっ」

 

 俺は口を尖らせた。

 『魔法使いじゃないですから』と言い返せない今の立場が心苦しい。

 完全に標的がネギ君から俺になってしまった。

 

「あの、加賀美さん」

「ん?」

 

 腕を組んで叱咤している高音先輩を横目で見ていると、ネギ君が小声で話しかけてきた。明日菜と桜咲もこっちに目を向けている。

 

「『見習い』とか『魔法使いとして』とか、どういう意味ですか?」

「あぁ。悪魔の実について無暗に広めると色々と不都合が出てくるから、一般の魔法使いの中で俺は魔法使い見習いってことになってんだよ。一般人って立場だと警備(パトロール)もできないしな。だからネギ君たちも“そういう事”で頼む。雪広や和泉のこともできれば黙っててくれ」

「よく分かんないけど、とりあえず“アンタや委員長のこと”を他の魔法使いにも内緒にしておけば良いのね?」

 

 明日菜の言葉に俺は小さく頷いた。

 ネギ君たちは「分かりました」と納得してくれた。ネギ君の肩でカモが「能力者も大変だな」と同情するように言った。

 

「聞いてるんですか!?」

 

 突然の大きな声に驚いて、俺は慌てて視線を戻した。

 すみません、聞いてませんでした。

 

「とにかく私たちが出場したからには、こんな大会はすぐに終わりにさせてもらいます。愛衣は大人しそうに見えますが、あの歳でなんと無詠唱呪文も――」

「あのぉ先輩?」

 

 誇らしげに話す先輩の言葉を遮る形で俺は声を掛けた。

 

「自慢の後輩、場外で負けましたよ」

「なぁっっ!!」

 

 瞬間、リングでは朝倉がカウントを取り、佐倉の負けが決まった。

 小太郎君に助けられる佐倉を見て、高音先輩は決まりが悪そうな表情で口を結んでいた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 第一回戦、第二試合『大豪院ポチ 対 クウネル・サンダース』。

 勝者、“フードの男”ことクウネル・サンダース。

 

 第一回戦、第三試合『長瀬楓 対 中村達也』。

 勝者、“甲賀流忍者”こと長瀬。

 

 

 第一から第三試合まで勝者の戦力差がありすぎて、それぞれ5分もしない内に勝敗が決した。

 そして次の第一回戦、第四試合。

 “銃使い”龍宮真名 対 “拳法少女”古菲。

 すでに龍宮はリングに上がり、古はリングの入口でネギ君となにやら話している。

 俺は明日菜や桜咲と一緒に椅子に座って試合が始まるのを待っていた。

 

「アンタはくーふぇになんか言うことないの。弟子なんでしょ?」

「さっき頑張れとは言っといたよ」

「確か、覇気というものを教えてるんでしたよね。古は体得できたのですか?」

「いや、全く。たった2ケ月程度で身につくようなものじゃないから、それも仕方ないけどな」

 

 リング上で二人が向き合った。

 

「加賀美さんはこの勝負、どうなると思いますか?」

「さぁーね……。確率で言うと“75パーセント”ってところじゃないか?」

「それは……どういう意味ですか?」

「そりゃあ、もちろん――」

 

《それでは第四試合Fight!》

 

 開始宣言と同時に観客の声も高まった。

 

「――古のヤツが勝つ確率だよ」

 

 龍宮の手から弾丸(コイン)が放たれた。

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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