もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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超「高音サンのヤツ、影を纏って――!」

葉加瀬「田中さんがたったの一撃でーーッ!!」

総一「いや、間違ってないけどさ……」




41. 強くなる少女と脱げるD

 

 

 

 飛んでくる弾丸(コイン)を古は体を横にズラすことでかわした。

 それを見て龍宮は少し目を見張った。

 

「ほぅ……」

 

 感心した表情を浮かべる龍宮に対し、古はすぐに前進した。アイツの戦い方は近距離戦術、まず相手に近づくことが第一だ。

 龍宮は続いて二発、三発とコインを弾いた。古は体勢を崩さず、同じように最小限の動きで身をズラす。

 だが、次に龍宮が十発ほど連射すると、さすがに古は足を止めてかわした。

 

《こ、これは!! 龍宮選手が手から何か飛ばしていますが、一体なにを飛ばしているのでしょう!?》

 

 止むことのない龍宮の連射に、古は後ろにさがって一度距離をおいた。それによって龍宮の射撃が止まった。

 解説席の豪徳寺先輩が「あれは羅漢銭ですね」と龍宮の技について説明しだした。

 

「まさか初見でこれほど避けられるとは思わなかった」

「修業で鍛えられたアルからな」

 

 古は口元を緩ませた。そして手の平を龍宮の方へ向け、いつもの構えをとった。

 ふっと龍宮は微笑した。

 

「なるほど……では、どれほど強くなったか見せてもらおうか」

 

 途端、ガシャっと鈍い音が聴こえたと思ったら、龍宮の手から次々と弾丸(コイン)が放たれた。

 

《目にも止まらない龍宮選手の“羅漢銭の雨”!! まさしくマシンガンのようです!》

 

 リング外に避難した朝倉が興奮した声色で言った。彼女の言う通り、今の龍宮の射撃はマシンガンのようだった。

 だが、負けじと古も体を動かし、それをかわす。その勇姿に周りの古のファンが沸いた。

 

《しかーし、古菲選手も負けてない! 龍宮選手の超人的な連射を余裕の表情で避けております!!》

 

 流れ弾によってリングの床がえぐれ、リング外の水面が水しぶきをあげる。それらが龍宮の弾丸(コイン)の威力を示しているが、同時に古が攻撃を避けている証明にもなっていた。

 

「くーふぇ、凄い。龍宮さんの攻撃をあんなに……」

 

 明日菜が唖然としたように言った。

 

「やけど避けてばっかじゃ、いつまでも勝てへんで」

「なんとか接近戦に持ち込めば……」

 

 小太郎君とネギ君が不安な表情になっている。

 

「心配しなくても、古の実力があれば、例え銃の達人でも接近するのは難しくねぇーよ」

「えっ!?」

 

 ネギ君たちがこっちに目を向けた。

 

「銃の特性上、イヤでもスキはできる。その特性を知らなくても、古がそのスキを逃すとは思えないしな」

「銃の特性?」

「なんや、それ?」

「銃は――龍宮の場合、羅漢銭だけど――力を与えることで弾丸を発射する武器。距離を取った攻撃が利点だが、そういう特性上、二つ欠点ができる」

「欠点?」

 

 明日菜が首を捻った。

 

「弾切れと装填(リロード)だよ」

 

 瞬間、龍宮の射撃が止まった。右手に持った(コイン)を使いきったようだ。まだ弾切れではないようだが、それでも攻撃が止まったことに変わり無かった。

 そのスキをつき、古が一瞬にして龍宮に接近する。古は肘で腹部を突くように迫ったが、龍宮は横に逸れて攻撃をかわした。

 だが、それを逃さないよう、古は龍宮の右腕を取った。

 

「やった、八卦掌!」

「よっしゃあ!」

「いけーー!!」

 

 少年二人と明日菜が声を上げた。

 

「見事だ。しかし私に苦手な距離はない」

 

 龍宮が左手を後ろから回してコインを弾いた。

 だが突然、彼女の体が後ろへ押された。軌道が逸れ、弾丸(コイン)は天に昇る。

 

「なっ!!」

 

 思わぬ相手の動きに、龍宮は目を見張った。その最中、古は龍宮の腹部に向かって掌を突き出す。

 

「ハァ!」

「くっ!」

 

 龍宮の体が宙に飛んだ。龍宮の身体は放物線を描きながら落下し、やがてリングの上に倒れた。

 

《お、おぉーとっ、龍宮選手ダウン!! (ワン)(ツー)――》

 

 沸き立つ歓声の中で、朝倉のカウントが増えていく。

 

「ははっ、参ったよ」

 

 完敗だとでも言うように龍宮は静かに笑いながら、敗けを認めた。

 

《龍宮選手、10(テン)カウント! よって勝者、古菲選手です!!》

 

 朝倉の宣言に古のファン達が喜びの雄叫びをあげた。

 リングに立っている古は自分の手を見つめながら、呆然としていた。

 

 

 試合が終わり、二人がリングからおりてきた。

 龍宮は特に話すこともなくどこかへ行き、古は俺たちのいる選手専用の観客席へやってきた。

 

「古老師!」

「やったね!」

 

 ネギ君や明日菜たちが、古に駆け寄った。周りの皆に気付くと古は表情を変え、頬を緩ませた。

 

「スゴイです、龍宮さんに勝つなんて!」

「いやいや、真名も本気じゃなかったアル」

「なんや、龍宮の姉ちゃん、手加減しとったんか」

 

 小太郎君は残念そうな顔をして手を頭にやった。

 

「手加減というより勝つ気がなかったみたいアルネ。真名なら、あのダウンの後でも、すぐに起き上がれたと思うアルからな」

「けど、どちらにしても勝ったことには変わりないと思います。それに“最後の動き”は僕も予想外でした」

「あれは師匠との修業の成果アルネ」

 

 ネギ君の言葉に、古は俺を見ながら言った。

 

「師匠との修業では視野を広く取らないとすぐにやられるアルからな、戦う時に周りを見るクセがついたヨ。あの時、真名が左手を動かして何かしてくるのが見えたアルから、何かあると思って、すぐ後ろにさがったネ。弾の速さも、師匠の(ソル)指銃(シガン)ほどじゃなかったアルからな。師匠との実戦では、あれくらい軽く見切らないといけないヨ」

『へぇ~』

 

 皆、揃って頷いた。

 俺は立ち上がり、古の元へ行った。

 

「お疲れさん。余裕だったな」

「うむ」

 

 古は小さく頷いた。

 

「けど、お前、“いつもの調子で”龍宮に攻撃したろ?」

「う、うむ。正直、真名が飛んだときはビックリしたアル」

 

 苦笑いしながら古は頬を掻いた。

 そりゃあ、“鉄塊(テッカイ)の体”と常人の体じゃ、全然違うだろう。厳密に言って龍宮が常人の枠に入るかは疑問だが……。

 龍宮のヤツ、肋骨の一本くらい折れたんじゃないか?

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 龍宮神社の建物内、塔のようなデザインをしているそこは『まほら武道会』の会場が見渡せた。部屋の中はたくさんのパソコンが並べられ、壁のスクリーンには会場の様子やトーナメント表の現状など、様々な映像が流れている。

 龍宮は入口に立ち、中にいる一人の少女に目をやった。

 

「ありがとう、龍宮サン。これが報酬ネ」

 

 その少女、超は厚みのある封筒を龍宮に渡す。

 しかし、龍宮は「いや、それは受け取らないでおこう」と顔をそらした。そして選手専用の観客席に視線を向ける。観客席では古達が話をしながら笑っていた。その光景を見て彼女は頬を緩ませた。その手はゆっくりと腹部を(さす)っていた。

 

「……痛むカ?」

「あぁ、少しな」

「治療しようカ?」

「いや、大丈夫だ。それにしても、さっきの試合、油断も手加減も一切していなかったのだが、古があれほど強くなっていたとは……。どうやら良い師を持ったようだ」

「ニヒヒ、古()しっかり成長しているネ」

 

 白い歯を覗かせて、超は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 リングの板が張り替えられ、次の試合の両名がリング内に立った。

 

《では、続いて第五試合、麻帆良工学部所属、田中選手と、聖ウルスラ女子高等学校2年、高音・D・グットマン選手です!!》

 

「いよいよ私の実力を見せる時が来ましたね!」

 

 高音先輩は「いいですか、ネギ先生、加賀美さん!」とこっちを向いた。

 

「ここで私の真の力を示し、あなた方のダラけた態度に愛のムチを打って差し上げます!!」

「えぇ!!」

「なぜ俺も?」

 

 ネギ君は驚き、俺は顔を引きつらせた。

 

「お姉様は年下の男の子に厳しいですから」

「えっ、なんで?」

「いや、そ、それは、えぇーと……」

 

 俺は首を捻るが、佐倉も言葉を濁した。

 

「私が本気でやるからには容易には勝てませんよ。あなたも最初から全力で掛かってきなさい!」

 

 高音先輩は田中選手を指差した。

 

「――了解シマシタ」

 

《第五試合、Fight!》

 

「デハ、初動カラ出力全開(マックス)デ行キマス」

 

 試合の始まりと同時に、田中選手の口が大きく開いた。そして口の中から一筋の閃光が走った。

 

「えっ!?」

 

 突然のことに、高音先輩は「きゃあああ」と悲鳴を上げながら倒れ込む形で光線をかわした。

 

「あ、あれは――!!」

『『ビームだぁーーーーーッ!!』』

 

 会場にいる男たちが高らかに声を上げた。

 

「何なんですか、あれは……?」

「機体番号TX(ティーエックス)(スリー)。愛称『田中さん』。工学部で開発中の新型ロボット兵器です」

 

 唖然としている解説の豪徳寺先輩の横で、いつの間にか現れた葉加瀬が笑いながら説明した。

 てか、兵器って……。

 

「ろ、ロボだとっ!」

「スゲぇーーっ!!」

「………」

「カッコイイなぁ!!」

「………」

「ホンモノのレーザービームじゃん!!」

 

 男たちの大多数は目をキラキラと光らせいるが、女子の視線は冷ややかだ。

 

「おぉ!!」

「カッコいい……!」

 

 テンションの差はあれど、少年二人も少し目を光らせていた。

 

「――目標、捕捉」

 

 田中選手、もといTX(ティーエックス)(スリー)のサングラスの奥がピピッと音を鳴らし、光が点滅した。

 また、レーザー光が高音先輩を襲う。

 

「なんなのよ、アレ! あんなの有り!?」

「それよりも、会場の男性達の盛り上がり尋常じゃないんですが……」

 

 明日菜は叫び、桜咲は当惑した。

 

「そりゃあ、ロボットとビームは“男のロマン”だからな……。無理ねぇーぜ」

 

 ネギ君の肩にのったカモがタバコをふかせながら言った。

 その意見に異論は無いが、変態(カモ)が言うと素直に頷けないなぁ。

 

「――ロックオン」

 

 田中選手の目がまた光った。

 

「オオォォーー!」

「今度はロケットパンチだァーー!!」

「スゲぇぇーーーーーッ!!」

「究極だァ!!」

 

 男達が万歳して、横にウェーブしている。その中の数人は涙を流していた。

 

『………』

 

 対して、一部女性陣は無表情でTX(ティーエックス)(スリー)を見ていた。

 

「きゃ!」

《おぉーと、ついに田中選手のレイザービームが高音選手に直撃してしまったァ!》

 

 光線が当たり、高音先輩の周りに爆煙が舞った。葉加瀬は「出力不足なので人には無害です」と言っているが、間近で見ると本当かどうか疑わしい。

 

「……あぁ~あ」

 

 俺は目を細めて呟いた。

 

「どうしたアル、師匠?」

「いや、どうもこうも――」

『おぉーーっ!』

 

 煙が晴れて、さっきとは違った声色で男どもが声をあげた。

 

「なっ!」

「あっ!」

「えっ!」

「わっ!」

「ちょっ!」

「御姉様ぁ~!!」

 

 選手専用の観客席にいる皆も目を丸くした。佐倉にいたっては、うるうると涙を流してる。

 一番、驚いているのは本人だろうがな……。

 

「な、ななな!」

 

 顔を真っ赤に染めた高音先輩が悲鳴をあげながら、TX(ティーエックス)(スリー)を殴り飛ばした。手には“影”を纏わせている。苦労してレイザー光を避けていたのがウソのような一発KOだった。

 

《なんと見事大逆転! 勝者、高音選手ぅーー!!》

 

 高音先輩の手をあげて、朝倉は声を大にして言った。

 観客からの注目に、高音先輩は“服”というよりも、もはや“布”になってしまった制服をなんとか押さえ、控室へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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