もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:ジョン・N

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44. 第一回戦、終了

 

 

 

「おぉ、もう始まっていたカ」

 

 施設へ侵入したタカミチとチビセツナ(刹那の式神)を機械で拘束した(チャオ)は、スクリーンに映し出された試合の様子を見て、口元を緩ませた。

 

「危うく“目ぼしい試合”を見逃すトコだったヨ」

 

 画面では、観客達が興奮したように声を上げている光景が映っていた。彼らが見ているリングではエヴァンジェリンが糸を振るい、それを総一が必死でかわしていた。

 

「それにしても、流石あの二人ネ。魔法や能力を使わずにここまでやるとは、素直に感服するヨ」

「あれは……エヴァと加賀美くんか」

「すごいです……」

 

 スクリーンに映る二人の戦いを見て、三人は圧倒された。そして同時に、一人は半ば愉快そうに笑みを浮かべ、他二人は半ば緊張したように頬をこわばらせている。

 

(あの二人がいれば、そこそこ“盛り上がる”とは思っていたが、まさか一回戦で戦うことになるとはネ。トーナメント決定はランダムだったのに……。ホント()()()()()ヨ)

 

 やがて、超はスクリーンに映る金髪の少女とコートを着た少年の残像に、今にも消え入りそうなやさしい笑顔を向けた。そして、小さく口を動かした。

 

「――――」

 

 だが、彼女の言葉を聴く者はいない。後ろにいるタカミチとチビセツナにも、彼女の声を聴くことはできなかった。

 

「アレは!?」

 

 チビセツナが叫んだ。

 その声で超は正気に戻った。

 再度スクリーンを見ると、総一とエヴァンジェリンが拳を突き合わせていた。

 

「王の持つ資質」

 

 それを見て超はニヤリと笑った。

 

 

「――覇王色の衝突ネ」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 まほら武道会会場の能舞台(リング)では二人の選手がお互いの拳をぶつけている。その衝撃が大気を揺らし、雷鳴のような轟音を鳴らし、嵐のような烈風を呼んだ。リングの周りの水面は激しく波打っている。

 

「な、なんだよ、これ……!!」

「CGかなにかだよな?」

「なにが起きてるんだ!」

 

 その光景に、周りにいる者達は呆然と立ち尽くしていた。実況をしている朝倉も役割を忘れ、口を開けて固まっている。唯一、違った表情をしているのは、裏の世界を知る者たち、魔法使いや武術の達人達だった。

 

「なになになになに! なにアレ!!」

「これは、さっきの!!」

「一体、なにが起きてるでごさるか!?」

「これも、覇王色の覇気ってやつアルカ!?」

「ケケケケケケ」

 

 選手席にいる面々が目の前の光景に目を見張った。

 

「なんや! あの力ッ!?」

師匠(マスター)と加賀美さんの間で何が!?」

 

 解説席の横にいる少年二人が汗を滴らせた。

 

「これは!?」

「なんですか、アレ!?」

 

 観客席にいる高音・D・グットマンと佐倉愛衣が驚きの声をあげた。

 

「………」

 

 屋根の上から見ていたアルビレオ・イマも鋭い顔つきになっていた。

 

 

 やがて、二人の拳は弾けた。しかし、二人の攻防は続く。二人の拳が突き合うたび、蹴りがぶつかるたび――最初の一撃程ではないが――強い衝撃波が生まれた。

 そんな中、先に動きを見せたのはエヴァンジェリンだった。彼女は後ろに下がり、総一と距離をおいた。

 

壊人形糸(マリオネット)

「また、これか!」

 

 動きを止められた総一は、奥歯を噛みしめ、糸を引き千切ろうと縛られている箇所に力を込めた。だが、その隙にエヴァンジェリンは指をまげることで、操り人形の如く総一の体を動かし、彼の手を後ろに持っていかせた。

 

枷糸(カセイト)

 

 体を縛る力が無くなる代わりに、総一の手首に何重にも糸が巻きついた。

 

「ナメるなよ。月歩(ゲッポウ)!」

 

 腕を使えなくなった総一は、足の力だけで無理矢理体勢を立て直した。

 

《飛んだ!?》

 

 朝倉がマイクを通して言った。実況ではなく純粋な驚きから出た言葉だった。

 

嵐脚(ランキャク)・荒天」

 

 総一はしきりに脚を振った。斬撃の雨がエヴァンジェリンに降りそそいだ。

 

「武装!」

 

 エヴァンジェリンは鉄扇と自身の腕を黒く染め、自分の所に来る斬撃だけを弾いた。斬撃は彼女の周りに飛散し、床板にいくつもの傷をつけた。

 

「嵐脚・天来」

 

 総一は降り下ろすように斬撃を放った。

 その斬撃をエヴァンジェリンは受け流せないと察したのか、彼女は横に飛んだ。糸で相殺しても良かったが、今の彼女にはまだそれほどの力は無かった。斬撃はリングをえぐり、小さい谷をつくった。

 総一は重力に従ってリングに降りた。その最中、彼は腕に巻き付いていた糸を、力付くで引き千切った。

 

「ふふふ」

 

 エヴァンジェリンは笑った。同じように総一もニヤリと笑みを浮かべた。

 周りの人は皆、口をポカンと開けていた。その中、朝倉はハッと我に帰った。

 

《な、なーんと、両者一歩も引かないアツい戦い! 私もつい仕事を忘れて見入ってしまいました! 現在、リングは加賀美選手の“鎌風”でもうボロボロだぁ! 少しは気を使って戦えと思うのは私だけではないはずです!!》

 

 やかましい、と総一は思った。

 

《そんな加賀美選手の猛攻を受け流したマクダウェル選手! その華麗な妙技でこの場の全員を魅了しております!!》

 

 朝倉は時計に目をやった。

 

《そしてここで、遂に試合時間が10分をきろうとしています。残り時間もおよそ5分となってしまいました! 果してこの勝負に終わりは来るのかァ!!》

 

 朝倉の実況を聞いて、エヴァンジェリン「ふん」と不愉快そうな顔になった。

 

「……くっ!」

 

 しかし突然、エヴァンジェリンは自身の腕を押さえて顔を歪めた。よく見ると押さえている所だけではなく、体の所々から血が滲んでいた。どうやら総一が放った嵐脚の雨を十分に受け流しきることができなかったようだ。

 それに気付いた朝倉が「ちょっと、エヴァちゃん! 大丈夫!?」とリングに近付いて声をかけた。

 

「トマトジュースだ、気にするな」

 

 先程の総一の言葉をからかうかのように、エヴァンジェリンは言った。彼女が大丈夫と言うので、朝倉は仕方なくリングから離れた。

 血を流しているのは総一も同じだった。選手両者が大怪我しているにも関わらず、試合を続行することに、周りの観客達は「おい、まだやるのかよ」「あの子達、血流してるんだぜ」「はやく終わらせた方が……」と狼狽した様子で二人を見たが、試合を行っている本人達が余裕の表情をしているのを見ると、ぼやく者はいなくなった。中には「演技じゃないの?」「やらせか?」と疑う者もいたが、目の前の光景に見入って、同じように口を閉ざした。

 エヴァンジェリンが自身の手の甲についた血をペロリとなめた。すると、彼女の瞳がほのかに赤みをおびた。口元を見ると彼女の八重歯が通常よりも長くなっている。彼女が人獣化している証だった。

 

「おいおい、ここに来て能力まで使う気か?」

「ふふ、ラストスパートってヤツだ」

 

 エヴァンジェリンは楽しそうに笑った。

 彼女の能力は血を吸うことで自身の力を増大させることができる。その効力は五分と持たないが、今の状況ではそれで十分だった。

 対して、総一にそのような能力はない。人獣化あるいは獣化すれば身体能力を上げることができるが、一般人の前で姿を変えれば、もはや言い逃れできない。

 総一は唇を噛んだ。

 

「さぁ、行くぞ」

 

 エヴァンジェリンの言葉を聞いて、総一は大きく深呼吸した。そして彼は腹を据えた。

 

「来い!」

 

 二人の腕が黒く染まる。

 エヴァンジェリンは間合いをつめた。彼女の掌底を総一は受け止めた。

 

「ちっ」

「ふっ」

 

 それから二人の攻防が続いた。エヴァンジェリンの突きを総一は受け止め、総一の蹴りをエヴァンジェリンはよけた。手刀をかわし、掌底を打ち落とす。時に総一の蹴りがエヴァンジェリンの脇腹に直撃し、エヴァンジェリンは総一のアゴを突きで強打した。

 やがてまたエヴァンジェリンが動いた。忽然として総一の前から姿を消したのだ。彼女独特の瞬動だった。

 

「ぐっ!!」

 

 彼女の武装した蹴りが総一の背中に当たった。その威力に彼の体がリングの外へ飛んだ。やがて、水面に映る自分の姿が彼の目に入った。

 

「月歩!」

 

 総一の足が空気を踏んだ。観客は「また飛んだ!」と叫んだ。総一は空中からエヴァンジェリンを見下ろし、彼女はフッと笑って彼を見上げた。

 

(ケリつけてやる!)

 

 総一は両手の拳を握りしめ、エヴァンジェリンに向かった。それを見た彼女は近づいてくる総一に向かって重ね重ね糸を振るった。それは細い糸が周りの観客たちに見えるほどの量で、総一にとどめを刺すくらいの力を持っていた。

 

 

氷雪白糸(スノーホワイト)

 

 

 糸に触れた総一の体に切り傷が走る。激痛に顔を歪めるが総一は決して屈さなかった。糸に切り裂かれながら彼はエヴァンジェリンの前まで来た。そして構えていた拳を突き出した。

 

 

壊人形糸(マリオネット)

 

 

 総一の拳は彼女へ届かなかった。エヴァンジェリンの張った糸が彼の体に纏わりつき、動きを止めたのだ。彼の右拳がエヴァンジェリンの胸の前で止まった。黒くなっていた腕もいつのまにか普通の肌色に戻っていた。

 だが総一の顔は崩れない。彼のその顔にエヴァンジェリンは目を細めた。

 総一は左拳をゆっくりと彼女の腹部の前へと持って行った。

 

 

六王銃(ロクオウガン)

 

 

 総一の手から銃を撃ったような音が響くと同時に、衝撃波が発生した。その衝撃波はエヴァンジェリンの方へと放たれ、彼女の体を貫いた。

 エヴァンジェリンの体が鞭を打つようになびいた。そして彼女はリング上に倒れた。

 

《ま、マクダウェル選手、ダウン!!》

 

 朝倉の宣言すると、会場に静寂が流れた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 やがて、総一の体を縛っていた糸が外れた。彼は荒い息をしながら腕を脱力させた。

 エヴァンジェリンが倒れて10秒が経った。

 

10(テン)カウント! よって勝者、加賀美選手!!》

 

 試合に決着がつき、観客たちの喝采が響き渡った。

 

「おぉ~い、生きてるかぁ?」

 

 総一は息を整え、倒れているエヴァンジェリンに声を掛けた。彼女はゆっくりと目を開けた。

 

「だれが死ぬか」

「だろうね……。これで俺の25勝37敗9引分だな」

「…………27勝だ、バカ」

 

 彼女の眼前には眩しいほどの蒼天が広がっていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 試合が終わり、総一とエヴァンジェリンの二人はすぐに救護室へと向かった。本人達はとりわけ自分達の怪我を気にしていなかったが、選手席にいる明日菜や古菲達に半ば無理矢理連れて行かされた。

 救護室に入ると、中にいた女医さんは二人の痛々しい傷を見て、目をシロクロさせた。そしてすぐに治療へ移った。二人の傷を見て、女医さんはまた吃驚した。刃物禁止の試合だったにも関わらず、二人の怪我の殆どが切傷だったからだ。

 

「師匠、ホントに大丈夫アルカ?」

「平気平気、致命傷ってほどの怪我じゃないから」

「エヴァンジェリンさんも大丈夫ですか?」

「問題ないと、さっきから何回も言ってるだろう!」

 

 明日菜や刹那達の心配に、エヴァンジェリンはいい加減、辟易していた。

 そんな中、突然、救護室のドアが勢いよく開いた。

 

師匠(マスター)、大丈夫ですか!?」

 

 ネギはドアを開けるやいなや、ベットの上に座るエヴァンジェリンへと駆け寄った。ネギに続くように小太郎も救護室へと入ってきた。

 

「うるさい、大丈夫に決まってるだろう。私を誰だと思っている」

「はぁ、良かったです」

 

 エヴァンジェリンのいつも通りの顔を見ると、ネギはほっと胸を撫で下ろした。彼らの横では小太郎が総一に目をやりながら「兄ちゃんも無事みたいやな」と頬を緩めながら言った。

 

「けど、アンタ、そんな怪我で次の試合、出場できるの?」

 

 明日菜は総一に訊ねた。彼の体にはいたる所に包帯が巻かれていた。

 

「大丈夫だろ。幸い骨折もして無いしな」

「あんな戦いやったのに、よくその程度の怪我で済んだなぁ」

 

 小太郎が感心したように言った。

 

師匠(マスター)も怪我の具合はどうなんですか?」

「ソイツよりも軽傷だ。あばらが一、二本折れてるが、どうせすぐに治る」

 

 エヴァンジェリンは平気そうに言うが、明日菜達は「それって大事(おおごと)なんじゃ……」と口元を引きずらせた。その横で女医さんは「普通なら動けないはずなんですけど……」と首を捻った。

 二人は動物(ゾオン)系幻獣種の能力者だ。その回復力は人並外れていた。証拠に二人の傷の殆どがもうすでにふさがり止血していた。女医さんも怪我の具合を見て、本当に試合で怪我したのかと疑ったほどだ。

 一通りの処置を終わらせると女医さんは部屋から出ていった。そして入れ代わるように朝倉と相坂が入ってきた。

 相坂は総一の姿を見ると「加賀美さん、心配しましたよぉ~!」と涙を流しながら駆け寄った。そんな彼女を総一は「悪い悪い」となだめた。朝倉は総一とエヴァンジェリンの様子を見ると、安心したと言うかのように、息をついた。

 

「そんで加賀美くん、次の試合だけど出場できそう?」

「おぅ、もちろん」

 

 総一は力強く頷いた。幸いドクターストップはかからなかった。彼のその反応を見て、朝倉は「了解!」と陽気に返事をした。

 

「会場は今、どうなってんだ?」

「リングの改修中。少し時間が掛かるみたい。誰かさん達が盛大に壊してくれちゃったからねぇ」

「あははは……」

 

 総一は笑って自身の頭を掻き、エヴァンジェリンは「ふん」と顔を振った。二人とも反省する気はないようだ。

 第一回戦の終わりということで、会場では改修作業と平行して一回戦のハイライト映像が流れていることを朝倉は皆に教えた。映像が残されていることに、皆、顔色を曇らせたが、今はどうにもできないと話を置いた。

 

「それより加賀美兄ちゃんって、生身でもあんなに強かったんやな」

「おぅ、だてに子供の頃からエヴァさんに“ケンカ売ってない”よ」

「どういうことですか?」

 

 ネギが訊ねた。

 

「コイツは私と出会った時から生意気だったってことだ。まったく、出会い頭に人の事をからかいよって、今、思い出しても腹立たしい!」

「いや、アレはつい口が滑って、ね?」

 

 総一は皆にエヴァンジェリンと初めて会ったときの事を話した。

 彼はエヴァンジェリンに初めて会ったとき、彼女の外見を見て、開口一番に「ロリババ?」と呟いたのだ。本人としては純粋に『歳を重ねているが見かけは少女にしか見えない人の総称があったような……』と思い出していただけだったのだが、つい口に出してしまい、それを聞いたエヴァンジェリンにバカにされたと受け取られてしまったのだ。

 

「それからというものエヴァさんの俺への風当たりは強くなり、何処とも知れない森に放り出されるわ、図書館島の地下に突き落とされるわ、風船にくくりつけられて空に飛ばされるわ、定期的に呼び出してボコボコにしてくるわ……。ホント散々だったよ」

 

 後にエヴァンジェリンはそれをすべて“修業”と言っている。

 

「でもそれって自業自得じゃない?」

「……まぁな」

 

 明日菜は呆れたような目で総一を見たが、総一は頑なに視線を合わせなかった。

 

 

 

 すると突然、また救護室のドアが開いた。入ってきたのは高音と愛衣だった。全員の目が二人の方へ向いた。

 高音は入ってくるなり、ベットに座っている二人を一瞥した。

 

「二人とも大丈夫なようで、ひとまず安心しました」

 

 そう言うと高音は総一へ視線を向けた。

 

「加賀美さん、貴方にいくつか質問が有ります」

 

 総一は「なにか?」と顔を傾けた。

 

「貴方は一体何者ですか?」

 

 周りの皆は黙って、高音の言うことを聞いた。

 

「先程の戦いを見て、そちらのエヴァンジェリンさんがアレほどの力を持っているとは私も予想外でした。弱体化していると聞いていましたが、600万ドルの賞金首であることを実感しました。今後なんらかの脅威にならないかと思うほどに……」

 

 高音は顔を強張らせてエヴァンジェリンを見た。だが彼女は我関せずと目を合わせない。

 

「しかし加賀美さん、貴方はそんな彼女に抵抗する所か追い詰めるほどの力を持っています。アレは一介の魔法使いのレベルを越えていました。正直、私は貴方が見習い魔法使いだとは到底思えません!」

 

 愛衣が同意するように頷いた。

 

「もう一度、訊きます。貴方は何者ですか?」

 

 高音は鋭い剣幕で総一を睨んだ。

 総一は黙って彼女を見据えていた。

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音
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