もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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45. 一方その頃

 

 

 

「加賀美さん、貴方は一体何者ですか?」

 

 高音の問いに総一は「はぁ」と息をついた。高音と愛衣の張り詰めた雰囲気とは対照的に彼はいつも通りの態度を崩さなかった。

 総一は周りにいる皆を一瞥した。ネギ、明日菜、刹那、古菲、楓、小太郎、エヴァ、朝倉、相坂、カモ、チャチャゼロ。そしてここにいる人を確認して問題ないだろうと判断した。

 

「実は俺、悪魔の実の能力者なんです」

「ふざけないで下さい!!」

 

 高音は一喝した。

 

「そんな“おとぎ話の産物”、私が信じるとでも思ってるんですか!?」

「いや、ホントに――」

「口にしただけで上位級魔法を詠唱無しで使えるだとか、人を石に変えるだとか、キリンになるだとか、『ヤミヤミ』とか『グラグラ』とか『トリトリ』とか、そんな(もの)があるわけないじゃないですか!」

「随分と詳しいですね……」

「むっ」

 

 総一に指摘され、高音は恥ずかしさから微かに顔を赤くした。自分がおとぎ話が好きで夢見がちな乙女だと思われたかもしれないと感じたからだ。実際、彼女は悪魔の実について精通している方だった。普通の魔法使いなら『悪魔の実』の名を知れど、『ヤミヤミ』や『グラグラ』と言った個別の名前は知らないことの方が多い。

 

「う、ウソで誤魔化そうとしても無駄です。さぁ、さっさと本当の事を言ってください」

「ですから、本当にヒトヒトの実のモデルt――」

「まだ言いますか!?」

「だって本当の事ですから」

 

 淡々と言う総一を高音はキッと睨んだ。その視線を受け流すように総一は無表情で視線を合わせた。

 周りの皆は黙っていた。総一は嘘をついてないと高音に教えてあげたかったが、とても口を出せる空気ではなかった。そしてなにより、悪魔の実については総一から黙っているように頼まれている。自分達が説明をして余計なことを言ってしまうより、ここは彼に任せた方が良いだろうと考えたのだ。

 

「加賀美君、エヴァちゃん、生きてるーーッ!」

「総君、けが大丈夫ぅ!?」

 

 そんな中突然、救護室の静けさを吹き飛ばすように早乙女ハルナや近衛木乃香が入ってきた。その二人に続く形で宮崎のどか、綾瀬夕映も中に入る。

 救護室内の張り詰めた雰囲気にハルナは「あれ?」と顔を傾けた。

 

「一般人の方がいらしたので今は見逃しますが、もしあなたが悪事でもしようものなら私は容赦しません! 覚えておいてください!」

 

 総一の返事を聞くことなく、高音と愛衣は救護室から出て行った。その後ろ姿を見送って総一はため息をついた。

 

「ひょっとして、私たちお邪魔だった?」

「い、いや、そんなことないわよ………多分」

 

 ハルナに訊ねられた明日菜は手を横に振った。

 

「そ、それより二人とも大丈夫なの!? さっきの試合、血がばぁーって凄かったけど! エヴァちゃんも!」

『あれはケチャップ(トマトジュース)だ』

 

 総一とエヴァンジェリンは声を揃えた。それを聞いて四人は「えっ!」と目を丸くした。

 

「で、でもさ、あれは確かに皮膚から――」

「ケチャップだ!」

「いやいやいやいや、けど――」

「トマトジュースだ!」

 

 二人は揃ってハルナの言葉を遮った。その様子を見て周りのみんなは、この二人実は仲が良いのではないかと苦笑いした。

 

「いや、でも絶対――」

「ケチャップだ!」「トマトジュースだ!」

「………」

 

 二人の強い語調にハルナは絶句した。代わりに疑いの眼差しで二人を見た。

 

「ケケケ」

 

 部屋の隅ではチャチャゼロが小さく笑っていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 その頃、麻帆良学園女子中等部の教室ではA組の生徒達が仕事を休め、ネットに流れているまほら武道会のハイライト映像を見ていた。

 皆、自分の同級生や担任の先生が戦っている姿を見て、手に汗握り声をあげた。中でも“第六試合”と“第八試合”の映像は一層彼女たちの目を引いた。あまりの戦いぶりに一部の生徒は「CGじゃないの?」「加工してるんじゃない?」と疑った。

 だが、その中に“真相”を知る者もいた。

 そのクラスの委員長、雪広あやかは“第六試合”を見て「まぁ、ネギ先生! なんと凛々しい!」と目を光らせ、少年の傷つく姿を見たときは目を潤ませた。また、“第七試合”を見ては「ま、まぁ、明日菜さんも中々やるようになりましたわね……」と呟き、“第八試合”を見ては「何をやってるんですか、あの二人はァ!?」と声を荒らげた。第七試合の“明日菜の変化”は映像を挟んで見たために、彼女は気付かなかったが、第八試合で二人が“覇気”をぶつけ合っているのは経験から察しがついた。

 そんな彼女は試合の映像を見て、すぐにでも会場に行きたいという気持ちにかられた。

 

「あぁ、手元にチケットがあるというのに大会に行けないなんて……!」

 

 チケットを持ち上げて、あやかはそれを見上げた。

 それを苦笑いして見た和泉亜子は皆の後ろからパソコンの画面を覗き見た。画面ではネギや総一達が痛々しい姿で戦っている映像が流れていた。血を見るのが苦手な彼女は総一やエヴァンジェリンの傷ついた姿を見て動悸が激しくなり、ふらっと倒れそうになったが、隣にいた大河内アキラに支えられ何とか意識を保った。

 

「加賀美君とエヴァちゃん、大丈夫やろか……?」

 

 亜子は心配になった。二人が普通の人間じゃないと知っているが、それでも試合の様子を見て不安がつのった。

 

「ネギくぅ~ん!」

「総吉のヤツ、あの怪我で二回戦出場できるのかな?」

「ん~、トーナメント表に残ってるから出るんじゃない」

「でもすごい怪我ですよ!」

 

 佐々木まき絵と明石裕奈、鳴滝姉妹が言った。

 

「これ本物かな?」

「えぇ~、CGかなにかでしょ、手も黒くなってたし」

「おっ、速報によるとネギ君勝ったみたいだよ。(くー)ちゃんと桜咲さんと加賀美君も!」

 

 椎名桜子と釘宮円が映像を見ている横で、柿崎美砂がケータイを見て言った。

 

「とにかく、いても立ってもいられませんわ! 誰か代わってください!!」

「やだよぉ、私達も行きたいしぃ!」

 

 あやかの要望を皆揃って首を振った。しかし、その中であやかの肩をトントンとたたき、引き受ける者がいた。

 ザジ・レイニーデイは無表情な顔のまま親指を上に立てた。彼女曰く仲間が来るから自分一人でも大丈夫とのことだ。

 A組の皆は彼女に感謝して、急いで会場へと向かった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 思いの外、まほら武道会は盛り上がりを見せた。中でもネギとタカミチの試合、総一とエヴァンジェリンの試合はネット上でかなり話題となっていた。道行く人からも「格闘大会がスゴイらしいぜ」「行ってみようよ」という声が聴こえてくる。

 カフェテラスにいるパトロール中の魔法使いの先生たちもパソコンで試合の映像を見ていた。

 

「うわぁ、高畑先生、本気出しちゃってるなぁコレ」

「アハハ、ネギ君もなかなかやるじゃないか」

「笑い事ではありません」

 

 映像を見て笑う瀬流彦先生と明石教授に葛葉先生は静かな口調で咎めた。彼女は自身のPDA端末で試合の様子とそれについてのネット掲示板を見ていた。

 

「しかし、あの闇の福音(エヴァンジェリン)と互角に渡り合ってるこの子は……?」

 

 瀬流彦先生は首を捻った。

 

「加賀美君ですね」

「知ってるんですか、刀子さん?」

「えぇ、彼は私が担任しているクラスの子ですから」

「あぁ、新しく見習い魔法使いになった彼だね。確かシスターシャークティの従者だとか」

「えっ、見習い!?」

 

 明石教授が思い出したように言うと、瀬流彦先生は「すごいなぁ!」と感心した。

 

「彼も偵察でこの大会に参加したのかな?」

「いえ、おそらく彼の意志で参加しているかと。彼が大会に参加することはシスターシャークティから報告が入っています」

 

 明石教授は「そうか」と頷き、パソコンに目を戻した。画面には総一とエヴァンジェリンが――刃物や魔法を使っていないにも関わらず――流血している姿やリングを半壊させる映像が流れている。

 

「ネギ君たちのもそうだけど、こんなのがネットに流れて大丈夫かな? この大会の主催はあの超鈴音って聞くし……」

「この程度ならば問題ないと思います。『魔法』という単語が多いのが少し気になりますが」

 

 ふと葛葉先生は掲示板のコメントを見ている内に、その内容に疑問を持った。掲示板には『魔法』という単語の他に『能力』という単語もちらほらと出てきていた。彼女にはこの『能力』という単語が悪魔の実のものであるように思えてならなかった。

 しかし、悪魔の実については秘匿事項で、周りの先生方がそれについて“知っている人”かどうか判断つかない彼女は、その疑問を口にすることはなかった。

 

「よし、念のため学園長に報告して、偵察を増やしておこう。ちょうど“適任な人”がいるしね」

「わかりました。では、私が連絡しておきます」

 

 明石教授が誰のことを言っているのか、葛葉先生はすぐに分かった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 場所は告白阻止警備区域、とある建物の屋上。

 

「格闘大会の偵察にですか?」

 

 葛葉先生から電話で指示を受けたシスターシャークティは疑問の表情となった。

 

「世界樹のパトロールは?」

『代わりの者を向かわせます。とにかく至急会場に向かってください』

「了解しました」

『それと、加賀美君が格闘大会に出ているみたいですが、かなり目につく戦いをしているようです。念のためにあなたの方から彼に注意するように言っておいてくれませんか?』

「はい、分かりました」

 

 シャークティは電話を切った。

 

「まほら武道会の会場に向かいます」

「えっ!? パトロールはどうするんですか?」

「すぐに交代が来るそうです」

「おぉ、やったー!」

 

 そばにいた美空がうれしそうに言った。建物の屋上で警備するのに飽き飽きしていた彼女は格闘大会に行くと聞いて心が踊った。

 

「そういえば格闘大会って、今、総一が出場してるんじゃ?」

「えぇ、どうやら派手にやっているようです」

 

 シャークティは仮契約カードを取り出して額に当てた。

 

「……念話も通じませんね」

「妨害されてるんですか?」

「おそらくそうですね。この調子なら電話もダメでしょう。とにかく急いで向かいましょう」

 

 美空はココネをおろして、シャークティに続く形で走り出した。

 

「総一のヤツ、ちゃんと勝ってんのかな? どう思う、ココネ?」

「ソウイチは簡単には負けナイ。多分勝ってる」

「無駄口たたいてないで、黙って走りなさい!」

「うっ……。了解っす」

 

 三人は屋根を伝って、龍宮神社へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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