もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:ジョン・N

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総一(親方、空から女の子(シスター)が……!)




47. 召喚される天使

 

 

 

「お疲れさん」

 

 古菲と楓がリングからおりてくると、総一は二人に向かって手をあげた。

 

「なんだ、なんか納得してないって顔だな」

「むぅ、楓に勝てたは良いアルけど、できればもう少し戦いたかったアル」

 

 総一は「このバトルバカ」と目を細めた。

 

「長瀬は良かったのか? お前ならまだ粘れただろ?」

「あのまま戦っても結果は変わらなかったでござるよ。それに、拙者は今の古があのクウネル殿とどう戦うのか興味が湧いたでござる。古には拙者と戦って体力を削るより、次のクウネル殿との試合で遺憾なく全力で戦ってほしいと思ったでござるよ」

「ふぅ~ん……まぁ、お前がそれでいいなら別に良いけど。それより、はやく救護室で治療してもらいな」

「ははっ、バレていたでござるか。さすが古の師匠でござる」

「いや、アレだけ攻撃受けて無傷って方がおかしいから」

 

 脇腹を押さえる楓に、総一は「とりあえずはやく行け」と救護室がある建物を指した。

 急所を外し、『気』を集中させていたとはいえ、“武装”した上、鉄をも砕く強度を持った拳で突かれれば、そのダメージは計り知れない。

 

「古老師ぃー!!」

 

 解説席近くの観客席からネギが走ってきた。彼が手をあげてみんなの前に行くと多くの観客達が「おっ、子供先生だ」「可愛いィ!」と注目した。

 

「凄かったです古老師! 前よりもずっと強くなってますね。『覇気』というのも、使えるようになったみたいですし!」

「いやいや、まだまだアルよ」

 

 謙遜ではなく、古菲は本音からそう言った。

 

「さっき使った『覇気』二色とも錬度が全然足りないアル。『武装色』は威力が全然でてないアルし、『見聞色』なんて修業の時に師匠の攻撃をかわせたのは何十回に1回くらいアル。さっきは運が良かったネ」

「そうなんですか?」

 

 古菲は小さく頷いた。彼女の師匠である総一も同じように首を縦に降った。

 

「確かに実戦で使うにはまだまだだな。さっきはたまたま上手くできたが、多分次はないだろうし」

 

 総一がそう言うと、古菲はしょぼんと肩を落とした。

 

「けど、修業始めて数ヵ月弱でアレほど使えるようになったのは大したモンだ。正直言ってかなり驚いた」

「それに、古が強くなったのは事実でござるよ。そのスピード、パワー、戦術、すべて強者のレベルと言ってもいいでござろう」

「ふふ~ん、その辺は修業の成果アルヨ」

 

 総一と楓の言葉を聞いて、古菲はころりと表情を変え、得意気に笑った。

 

 

 

「あっ、そうだ!」

「どうしたのよ、ネギ?」

 

 急に何かを思い出したように声を出したネギに、明日菜が訊ねた。ネギは「それが――」と、大会の様子がインターネット上に流れていることを話した。

 

「ええっ!! ちょっと、それってマズいんじゃ!」

「それに『魔法』の話題が飛びかってるって! そりゃまたなんでだ!?」

「僕にもわかんないよぉ!」

 

 明日菜とカモが声を潜めて驚いた。

 

「それに、『なにかの“能力”なんじゃないか』って話題も流れてるみたいで……」

「“能力”?」

「えぇ、教えてくれた千雨さんが言うには『まるで誰かが“魔法”や“能力”というのを流行らせているみたい』だって……。僕にはその“能力”というのが悪魔の実のことに思えてならなくて……」

 

 ネギはそういうと、総一に目をやった。彼は目を細めて片手で頭を抱えていた。

 

(……超のヤツ)

 

 総一は人知れず奥歯を噛みしめた。

 

「ヤバいなぁ、このままじゃ兄貴たち……」

「うん、オコジョにされて故郷に強制送還されちゃう!」

「それにもし『悪魔の実』についてバレたら、ネギ先生だけでなく加賀美さんや雪広さんもどうなるか……加賀美さん?」

 

 刹那は総一に目を向けた。しかし、当の本人である総一が厳しい顔つきで熟考しているのを見ると首を捻った。

 

「どうかしたんですか、加賀美さん?」

 

 声を掛けられていることに気付いた総一は「へ!?」と裏返った声を出して反応した。

 

「あ、あぁ、いや、なんでもない!」

 

 総一は誤魔化すように手を横に振った。

 

「ネギ先生!」

 

 突然誰かに名前を呼ばれ、ネギは振り向いた。周りにいる皆もつられてそっちへ目を向けた。

 

「ついに直々にあなたをこらしめる時が来ましたね!」

 

 するとそこでは、高音がネギを人差し指で差して立っていた。

 

「え、えっと、それがですね、高音さん! 今、インターネット上でいろいろ問題が――!!」

「言い訳は結構です!」

 

《では続いて第二回戦第二試合、選手2名はリング上へお願いします!》

 

「さぁ、本気で来てください!」

 

 アナウンスを聞いて、高音はリングへと上がって行った。

 

「え、あっ、ど、どうしよう……」

「あの人ってホント、猪突猛進というか、なんというか……人の話、全然聞かないよな……」

 

 ネギは慌てたように手を動かし、総一は高音を見て呆れた表情をした。

 

「あ、あの、ネギ先生」

「あなたは佐倉さん!」

「今のお話は、どういうことですか?」

 

 ネギはやって来た佐倉愛衣に明日菜達と同じ話をした。

 

「えぇっ、ネットで『魔法』のことがバレそう!?」

「そうなんです。それに、『悪魔の実』のことらしき話ついても、チラホラと広がっているみたいで……」

「『悪魔の実』!?」

 

 その単語を聞いて、愛衣は総一を一瞥したが、すぐに目線をネギに戻した。

 

「どうしてそんな都市伝説なんかが!?」

「えっと、それは――」

「いつまでそこでお話ししているつもりですか、ネギ先生!!」

 

 高音の大きな声に阻まれて、ネギは言葉を詰まらせた。

 

「すみません、僕も行ってきますね」

 

 そう言ってネギはリングに向かう。愛衣はまだ何か訊きたそうにしていたが、高音に急かされているネギを止めることはできず、口を閉ざした。

 

「大丈夫なの?」

「はい、任せてください!」

 

 明日菜の問いにネギは大きく頷いて駆け足でリングに上がった。

 

「ネギ坊主、大丈夫アルカ?」

「相手はあの高音殿でござる、あまり派手に戦えないとなると勝つのは難しくなるでござろうな」

「良いからお前は早く治療しに行け!」

 

 いまだに選手席にいる楓に、総一はまくし立てるかのように言った。

 

「……ネギの試合は気になるけど、楓ちゃん一人で行かせるわけには行かないし、私も付いてくわ」

「では私も」

「私も行くアルヨ」

「いや、お前は残れ」

 

 明日菜と刹那に続いて行こうとする古菲を、総一は呼び止めた。

 

「な、なんでアルか? 怪我させたのは私アルし、付き合うアルヨ」

「次はネギ君の試合だろ、師匠として見といた方が良いんじゃないか?」

「う、うむ……しかし……」

 

 古菲は困惑した眼で楓を見た。

 

「その気持ちだけ受け取っておくでござるよ、古。加賀美殿の言う通り、お主は師匠としてネギ坊主の試合を見届けるでござる」

「……分かったアル」

 

 楓が諭すように言うと、古菲は渋々頷いた。

 

「じゃあ、代わりに師匠が付いて行ってはくれないカ?」

「……あぁ、別に良いぞ」

 

 古菲の心情を察してか、総一は特に嫌がる素振りを見せず、楓達と一緒に救護室に向かった。

 

 

 楓を救護室まで送った三人は「先に戻ってるでござるよ」という彼女の言葉に甘え、すぐに部屋を後にした。

 救護室がある建物を出ると、三人は会場に向かうため、境内に出た。会場に人が集まっているせいか、三人の周りに人気はなかった。

 

「そういえばさっき、古菲(くーふぇ)てば、やけに楓ちゃんのこと心配してなかった?」

「加減せずに全力で攻撃しちまったからだろ。覇気を使ってはいたけど、まだコントロールできるわけじゃないからな。それに―――」

 

 突然、総一が言葉を区切った。そして何かに反応するように「ん?」と言葉をもらし、上空へ目を向けた。彼のその様子に疑問を持った明日菜と刹那はその視線を追うように顔を動かした。

 すると、そこには黒い服を着た何者かが宙を飛んでいた。

 その人物は放物線を描くように飛び、やがて総一達のいる境内に降り立った。

 

「さーて、どうすっかなぁ。暇だし試合見ちゃう?」

 

 彼らを背にして降りてきた“彼女”は自身のアーティファクトである靴をカードに変えた。そのカードには、『MISORA』と彼女の名前が大きく書かれていた。

 一緒に降りてきたココネは辺りを見渡し、総一達がいるのに気づいた。

 

「ん、どうしたー?」

 

 ココネにクイクイと修道服の端を引っ張られた美空は、何かあったのかと彼女の視線を追った。

 

「げっ!?」

 

 総一達と眼があうと、美空は目を見開いて驚愕した。すると明日菜が彼女に詰め寄った。

 

「美空ちゃん! あなた美空ちゃんでしょ!? なにやってんのよ、ここで!? なによ、そのカードはぁッ!?」

「いえいえ、なんのコトでしょう? 私は見ての通り、通りすがりの仮面シスターです」

「仮面つけてないだろ……?」

 

 問いただす明日菜から目を逸らし、美空は顔をプルプルと横に振る。そんな彼女の様子を見て、総一は目を細くして呆れた表情になった。

 

「クラス短距離走で毎回1位、2位を争ってる私の顔を忘れたとは言わせないわよ!! アンタも魔法使いなの、ねぇ!?」

 

 捕まえて訊き出そうとする明日菜から逃げるように、美空は「キャー!」「ひゃあ!」と悲鳴をあげた。

 

「いえ、私、美空じゃありません!」

 

 サムズアップして言い切る美空を総一は哀れむような目で見る。そんな総一と眼を合わせると、美空は気まずさからか、額から汗をタラタラと流した。

 

「おい、美空!」

「で、ですから、私は美空という者ではありません!」

「いや、そういうのいいから。お前ら、ここに何しにきたんだ?」

「任務。超鈴音に気付かれぬよう地下施設に潜入、高畑先生とコンタクトをとり可能なら救出するコト」

「あっ、ちょっとココネ!」

 

 美空が慌てた声を出したが、ココネは更に続けて言った。

 

「美空とココネだけでか?」

「シスターシャークティも一緒だった。けど、ここに来る途中に妨害を受けテ、私達はなんとか切り抜けたケド、シスターシャークティはまだ足止めされテル」

(……あぁ、なんかそんなこともあったなぁ)

 

 ココネの言ったことをヒントに記憶を振り返り、総一は今回の“経緯”を思い出した。

 

「なら、助太刀しに行くか……場所は?」

「あっち、神社の入口近くにある通路の屋根の上」

 

 ココネが指す方角を見ながら、総一は仮契約カードを取り出した。

 

(確か足止めしてるのって、龍宮だったよな。試合もあることだし急いで片付けたいけど、真っ向勝負じゃ時間が掛かる……。さて、どうしたものか……)

「え、えぇーと、総一さん? もしかしてシスターシャークティの所に行くつもりで?」

「あッたり前じゃん、なに言ってんの?」

 

 総一がそう言うと美空は心底残念そうな顔をして、「はぁ」とため息をついた。

 

「折角サボって試合見れると思ったのになぁ……」

「そういうことは、せめて心の中で言ってくれ……。念話(テレパティア)

 

 美空を呆れた表情で見ながら、総一は頭にカードを当てた。

 

「ねぇ、美空ちゃん。さっきから随分と総一と親しそうだけど、ひょっとして知り合い?」

「えっ!! あっ、いや、そんなこと無いですよ」

「じゃあ、なんで総一のヤツはあんなに親しげなのよ、美空ちゃんのことも名前で呼んでるし!」

「そ、そうでしたっけ? 気のせいじゃないっすか? って、だから私は美空じゃないってばぁーー!!」

 

 二人がそんなことを話しているうちに総一は念話を終えた。

 

来れ(アデアット)

 

 総一が呪文を唱えると、仮契約カードは“天界の神弓”へと姿を変える。総一は弓を構え、ゆっくりと目を閉じ、神経を集中させた。

 

「ちょっと! 何してるのよ!?」

「………」

 

 明日菜が問いかけるが、総一は答えない。彼は『見聞色の覇気』をあまり得意としていないため、遠くの気配を察知するには、ある程度の時間と集中力が必要だった。

 やがて、総一の足元に光輝く魔方陣が出現した。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 少し時間を戻して、場所は龍宮神社の入口付近。そこから会場へと続く通路の屋根の上では、マントで顔を隠した龍宮真名と杖(十字架)を構えたシスターシャークティが対峙していた。

 彼女達はお互いに様子を窺っている。真名はそこから先に通さないように注意を払い、シャークティはなんとか彼女の隙を狙おうとしていた。

 

《シャークティさん、聴こえてますか?》

 

 急に頭に響いてきた念話にシャークティは微かに頭をあげた。

 

《話はココネから聞きました。とりあえずそのまま聞いてください》

 

 総一の言葉を聞き、シャークティは懐に入れようとした手を止めた。その中途半端な動きを真名は不思議に思い、彼女をより注意深く観察した。

 

《手貸しますんで、今から30秒後に俺をそっちに“召喚”してください》

 

 それだけ言うと念話は途絶えた。突然の念話と総一の言葉数の少なさにシャークティは少し戸惑ったが、彼女は言われた通り、彼を召喚しようと懐の仮契約カードに取り出した。

 

「なかなか派手な大会のようですね」

 

 相手の注意を逸らし、かつ時間を置くため、シャークティは適当に能舞台から聴こえてくる歓声への感想を述べた。

 

仮契約(パクティオー)カード?)

 

 アーティファクトを使うのか、念話で応援を呼ぶのか、それとも誰かを召喚するのか、真名は様々な可能性を考え、対処できるように銃を構えた。

 

召喚(エウォケム・テー)!」

 

 シャークティは仮契約カードを前に突き出し、手をかざしながら呪文を唱えた。その言葉に反応するように、カードが浮いている屋根の表面上に光輝く魔法陣が浮き出た。

 

シャークティの従者(ミニステルデ・シャークティ)加賀美総一(カガミ・ソォイチ)!!」

 

 魔方陣と共に現れた人物に真名は驚き、やがて口元を緩めた。

 

「……ふふっ、まさか君が来るとはな」

「――どうも」

 

 真名を見ながら、総一は小さく顎を引いた。

 

「美空達から聞いて、パートナーを迎えに来たんだけど……龍宮、そこ通してくれる?」

「生憎だがチケットを持ってない者を通さないのが私の仕事でね。チケットが無いのなら君のパートナーには、お帰り願うよ」

「あぁ、そう…………こんなことならチケットもらっとけば良かったなぁ」

 

 真名から目を放し、総一は呟いた。だが、すぐに目線を戻して片手に持った神弓(アーティファクト)を肩にかけた。

 

「じゃあ、実力行使で」

「良いのか? 私と戦っている間に君の試合が始まるぞ」

「……かもな。さすがに俺もお前相手に瞬殺できる自信はない。でも、勝てない相手じゃない!」

 

 総一は神弓を双剣状にして、それぞれ順手と裏手に持ち構えた。そして、真名に向けて自身の『覇気』を飛ばした。

 気絶こそしなかったが、真名は総一の覇気に当てられ、全身で身の危険を感じた。

 

(……本当にやる気か?)

 

 次に試合を控えている総一がこの場で戦おうとしていることに、真名は疑問に思った。しかし、覇気を剥き出しにして構えている彼の姿は、とても猛々しく、焦ったり試合を気にしているようには見えなかった。

 そんな総一に引っ掛かりを覚える真名だったが、彼女は総一に銃口を向けた。総一の力量を知っていた真名は、彼と後ろにいるシャークティに全意識を集中させた。

 だが、その意識が仇となった。

 突然、総一がニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

眠りの矢(スリープ・アロー)

 

 

 真名が総一の声を聞いた途端、彼女の背後から“光の矢”が襲った。

 当たる直前になって真名は振り向いたが、時すでに遅く、彼女の体に“光の矢”が刺さった。

 

「くっ!!」

 

 直撃した“光の矢”に威力、殺傷力は一切なかったが、代わりに真名は強力な眠気に襲われた。

 真名はなんとか抵抗を試みたが、やがて膝をつき眠りに落ちた。

 

「よし、上手くいった」

 

 総一は構えを解き、神弓をカードへと戻した。

 

「総一、今のは……?」

「ここに召喚される前に撃ってたんですよ。まともに戦ってたんじゃ時間が無いですから。シャークティさんも急いでたでしょ?」

「えぇ、ありがとう。助かったわ」

 

 シャークティは礼を言うと、総一と一緒に倒れた真名の腕を取り、隅に生えていた木に寄り掛からせた。

 

「では、会場に行きましょう。詳しいことは走りながら教えるから」

「了解です」

 

 二人は駆け出し、急ぎ会場へと向かった。

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音
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