もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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総一「どうせなら『三刀流VS神鳴流』が見たかったなぁ」

刹那「……?」





49. 六式VS神鳴流

 

 

 

「はぁぁ、またやっちゃいました……」

「やってしまったものは仕方ないアルヨ」

 

 総一と刹那が会場に着くと、なにやら落ち込んでいるネギを古菲が励ましていた。ネギは両手の人差し指をツンツンと合わせながら、顔を暗くしてる。

 

「なにやってんだ、お前ら?」

 

 総一が声をかけると、古菲は「あっ、師匠!」と顔を向けた。

 

「楓は大丈夫だったアルカ?」

「あぁ、無傷とまではいかないけど、特に問題ないらしい」

 

 総一がそう言うと、古菲は「良かったアル」と胸を撫で下ろした。横にいたネギも、それを聞いて同じように安堵の表情を浮かべた。

 そんなことをしていると、選手席の隅にいたエヴァンジェリンが四人の元に歩いて来た。

 

「刹那」

 

 エヴァンジェリンはネギの横に立っていた刹那に向かって声をかけた。二人の眼は鋭く、まるでこれから戦闘でもするかのように目を合わせている。

 

「さっきのことは、分かってるな?」

「はい」

 

 刹那の返事を聞くと、エヴァンジェリンは「……なら良い」と微笑し、離れていった。

 二人のそのやり取りを見て、ネギと古菲は何事かと首を捻る。

 

「あの、刹那さん、師匠(マスター)と何かあったんですか?」

「いえ、大したことではないので御心配なく」

 

 表情を和らげ、刹那は心配かけまいと首を横に振った。そんな彼女の雰囲気にネギ達はどこか違和感を感じたが、それを訊ねるよりも先に、刹那がリングへと上がったため、結局それを知ることはできなかった。逆にそばにいた総一はわけを知っていたが、教える必要も無いだろうと判断し、あえて口を閉ざした。

 

「ところで師匠、何アルそれ?」

 

 古菲は先程から総一が持っていたものを指した。

 総一は「これか?」と“箒”の柄を持ち上げる。ここへ来る途中、総一は神社の隅にあった掃除道具置き場らしき所から、古びた竹ぼうきを持ってきていた。その箒は竹枝がボロボロで、穂先が扇のように広がっている。

 

「次の桜咲に合わせて俺もなにか“武器”になるものが欲しかったからな、その辺にあったのを持ってきた」

「盗んできたアルか?」

「人聞きの悪い言い方するな…………黙って借りてきただけだ」

「それを“盗んだ”って言うんじゃ――」

「――よし! じゃあ、行くか」

 

 ネギの呟きをよそに、総一は竹ぼうきを肩にかけ、リングに上がる。その不自然すぎる態度の変えように、ネギと古菲は半ば呆然としていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

《お待たせしました! 続いて第二回戦最終試合、桜咲刹那選手対加賀美総一選手! この試合で学園最強ベスト4が決定します!!》

 

 総一は竹ぼうきを、刹那はデッキブラシを得物にしてリング上で対峙した。

 

《さぁ、この最終試合、対決するのはデッキブラシを使う猫耳剣士、桜咲選手と、第一回戦でマクダウェル選手と目を疑うような凄まじい死闘を繰り広げた、加賀美選手! あんな戦いをしてまだ戦えるのか!?》

 

(ぶっちゃけ、かなり疲れてるよ……)

 

 朝倉の実況を聞いて、総一は心の中で泣いた。しかし、彼はその心情を決して(おもて)に出さなかった。真剣な顔つきで彼を見据えている刹那に対して、彼も空気を読んでいたのだ。 

 

「刹ちゃーーん、総くーーん! 頑張れぇーー!!」

 

 ふと観客席から聴こえてきた木乃香の声に、刹那は目をやった。木乃香と目を合わせると刹那は口元を緩めて笑みを向けた。その笑みを見て、木乃香はなんだろうと顔を傾けたが、刹那はすぐに総一に目を戻した。

 

「加賀美さん」

「ん?」

 

 柔軟体操にと、腕の筋肉を伸ばしていた総一はそのままの体勢で刹那を見た。

 

「この試合、私は絶対に負けられません」

「……あぁ、分かってる」

 

 総一は竹ぼうきの柄を握りしめ、穂先を肩に置いた。

 

「だが、俺にも勝たなきゃいかん理由がある。手加減無しだ」

 

 刹那は小さく頷く。その表情に緩みはなく、凛とした顔立ちは鋭さを増していた。

 

 

 

「あの、師匠(マスター)

 

 ネギは選手席で腕を組んで立っていたエヴァンジェリンに声をかけた。

 

「さっき刹那さんに言ってた『さっきのこと』ってなんですか?」

「……別に、ただの“虚仮威(こけおど)し”だ」

 

 エヴァンジェリンはネギと古菲に(ついでにチャチャゼロの上にいるカモにも)先程、救護室でした刹那の“決意”を話した。

 当然、話を聞いた彼らは『えぇ!?』と驚きの声をあげた。

 

「そ、そんな! 負けたら剣を捨てるなんて!?」

「本人が了承したことだ。それに、負けて本当に剣を捨てるというなら、ヤツの“思い”がその程度だったというだけだ」

「それは……そうですけど……」

 

 返す言葉が見つからず釈然としないまま、ネギ達は心配そうな面持ちでリング上の二人に目を向けた。

 

 

 

《それでは、第12試合、Fight!!》

 

 試合が始まった瞬間、刹那はデッキブラシを片手に持ち、総一に攻め寄った。

 初手は移動の勢いをのせた横振りで、総一はそれを竹ぼうきを縦に持って受け止めた。

 もちろん、それで刹那の攻撃は終わらない。刹那はすぐに5回、6回とデッキブラシの柄を振った。総一もはじめは竹ぼうきを回して受け止めていたが、穂先が重いせいか上手く動かせず、途中から間合いを取って攻撃をかわした。

 

「ハァ!」

 

 総一は刹那に向け、竹ぼうきの穂先を思いっきり振り下ろした。そのモーションは余りにも力任せで、彼女にとっても避けるに容易いものだった。

 

《おぉーと、開始早々、桜咲選手の猛攻! そのすばやい攻撃で加賀美選手を翻弄しています!!》

 

(やはり……。加賀美さんは強いけど、“剣”については御世辞にも上手いとは言えない。この試合、剣術で押しきれば……)

 

 刹那はそう思いながら、得物を両手に持ち変え、間合いを詰める。

 

「せぇーのッ!!」

 

 しかしその最中、総一はまた地面につけた穂先を勢いよく振り上げた。すると、竹枝の束が柄からすっぽりと抜けて刹那に向かって飛んでいった。

 刹那は冷静に対処し、デッキブラシで飛んでくる穂を振り払う。そしてそのまま、総一の頭部に向けて、柄を打ち込んだ。

 総一は、もはや竹の棒となった竹ぼうきを、棒術使いのように振り廻し、受け止めた。

 

 

「さすが師匠、やることが姑息アルネ」

「褒めてるんですか、それ?」

 

 古菲の言い回しに、ネギは困惑したように首を傾けた。

 

「……アイツめ、わざと“壊した”な」

「「えっ?」」

 

 二人の横にいたエヴァンジェリンの言葉に、横にいた古菲とネギは声を揃えた。

 

 

《桜咲選手の華麗な剣術に、力技で攻める加賀美選手! 一回戦でその強さを見せつけた加賀美選手だが、どうやら剣は素人の模様。桜咲選手にかなり押されています! 相手に合わせて武器を持ったのが裏目に出たかァ!?》

 

 竹ぼうきとデッキブラシのぶつかり合う音が辺りに響く。観客達はその音を聴いて、今に壊れるんじゃないかと思ったが、どちらの得物とも未だにその形状を保っていた。

 だが、『気』を使って強化している刹那に対して、総一の竹の棒にはなんの強化もなされていない。よって、いつ(ひび)が入ってもおかしくなかった。

 

 ――バキッ

 

 案の定、総一の持つ竹から乾いた音が鳴った。

 これを好機と見た刹那は、更に攻撃を続けた。総一は竹の端を両手で持ち、柄の中心でそれを受け止めていく。しかし、いくら持ち方を変えたところで、竹に耐久力が無くなってきたことに変わりはなかった。

 

「神鳴流奥義、斬岩剣」

 

 刹那は力を入れてデッキブラシを振り抜く。

 すると、ついに総一の得物が“2つに割れた”。

 

「おぉ!」

 

 総一は折れた竹を見て声を漏らした。

 

《あぁーと、ついに加賀美選手の武器が折れてしまったァ!》

 

 間合いをとり、総一は「綺麗なくらい真っ二つになったな……」と、竹の折れ目を確認した。彼の言う通り、その折れ目は半ば整っていて、まるで本当に剣で斬ったかのようであった。

 

「……上出来」

 

 だが、総一に得物が壊れた事への動揺は一切なかった。むしろ思い通りと言うかのように、彼は2つになった竹をくるくると廻して、右手に持った竹を順手に、左手のを裏手に持ち変えた。

 

 

「加賀美さんは“アレ”で戦うつもりですか?」

「あれがヤツの“剣のスタイル”だ」

 

 ネギは「えっ?」と疑問の表情でエヴァンジェリンを見たが、彼女は「まぁ、見ていろ」となにも答えなかった。

 

 

「行くぞ、桜咲!」

 

 そう言って総一は刹那に接近する。

 近づいてくる彼に、刹那はデッキブラシを振ったが、総一は裏手に持った竹でそれを払いのけ、右手の竹を突き出した。刹那は体を反らしてそれをかわすが、総一が体を旋回させ、追撃に竹を振ると間合いを取った。

 

「なるほど、二刀流ですか……」

「……いやいやぁ――」

 

 総一は「嵐脚」と脚を振る。すると鎌風からできた斬撃が刹那に向かってまっすぐと飛んだ。しかし、彼女は即座にそれを薙ぎ払う。

 

「――悪いが、四刀」

 

 なんつって、と総一は(おど)けたようにニヤリと笑った。だが、刹那の表情は変わらなかった。むしろ彼の斬撃を見て、彼女の闘志はさらに増したようだった。

 総一はまた間合いを詰め、竹を振り廻す。刹那は最低限の動きでそれを受け止めるが、その力強さに後退りしていき、大きく後ろに追いやられていった。

 

(振りは荒いが、それを補う『力』と『速さ』がある。不慣れな剣技を体技でカバーしている感じだな。それだけ戦い馴れしているということか……けど、この程度でやられる私ではない!)

 

 刹那は武器を振るスピードを速めた。総一も負けじとその速さに対応する。周りの観客には、もはや二人の腕の動きは追えず、ネギや古菲でさえ得物の動きは“閃”にしか見えなかった。

 

 

「おいおい、加賀美の兄ちゃんが使ってる箒の破片、やけに丈夫に成ってねぇか?」

「そういえば……。さっきは刹那さんの攻撃を受けただけで、すぐに折れたのに……」

 

 カモに言われ、ネギは総一が持っている竹に意識を向け、その異様な“耐久”に気が付いた。

 二人は高速に得物をぶつけ合う。互いの木々がぶつかる音が、その威力を如実に表していた。しかし、どんなに攻撃を受け続けても、総一の竹には罅どころか、傷ひとつ入っていないようだった。

 

「今の総一(ヤツ)は『覇気』を使って竹の強度を上げている。『武装色の覇気』は武器に纏わせることもできるんだよ」

「そりゃすげぇな」

 

 カモが感心したように声をもらす横で、ネギは「……刹那さん」と不安気な表情を浮かべた。

 

 

 リング上では総一が体を廻して竹と脚を振る。だが、その体を旋回させる動きは相手に背中を見せることにもなっていた。

 総一が背を見せた瞬間に刹那は攻撃を放つ。

 

「神鳴流秘剣――」

 

 刹那は曲線描くようにブラシを振る。だが、『見聞色の覇気』を使った総一には死角からのその攻撃も、ちゃんと知覚できていた。

 

「――斬空閃」

「鉄塊」

 

 刹那の攻撃は、確かに総一の体に直撃した。だが、その体はビクともせず、代わりにかん高い音が辺りに響いた。

 

(堅い!)

 

 この結果には、流石の刹那も驚愕した。彼女は後ろに下がり、警戒を強めた。

 

(『気』も使わずに……。これが『覇気』か……いや、見た所そんな感じじゃない……信じられないが、アレは加賀美さん自身の身体能力による“体術”みたいだな)

 

 刹那は今まで見た総一の動きを短く振り返る。

 

(さっきの“鎌風”に、鉄のようになる“身体”、それにあの時――古と戦った時――の“瞬動”……)

 

 刹那が考えを巡らせている間に、総一は両手の得物を裏手に持ち変え、彼女の方を向いた。

 

(どれも厄介だな…………まずはあの“身体”を破らなければ……)

 

 刹那が動くと、また二人の打ち合いが始まった。

 豪快に振り回す総一の竹の棒を刹那が打ち落とし、適格に打ち込む刹那のデッキブラシを総一が受け止める。互いの武器のかち合う音が、まるでの線香花火ように連続して鳴った。観客達は二人の対称的な剣技に釘付けになった。

 そして長く打ち合っていると、どうしても剣に長けていない総一の方に隙ができる。刹那はそれを見逃さなかった。

 

「神鳴流奥義――」

「鉄ッ……くッ!」

 

 技を繰り出す刹那に、総一は防御の構えを取ろうとしたが、突然、彼は顔を歪めた。

 

「――斬鉄閃!」

「嵐脚」

 

 総一が脚を振り上げると、そこに斬撃が走り、刹那の技を掻き消した。

 すれ違った二人は互いに相手を背を向ける形となった。

 

「危ねぇ! 鉄塊で受けてたらアウトだったな……」

 

 斬れはしないだろうが腫れることは必至だったな、と思いながら総一は振り返ると、刹那と間合いを取るため足を踏みしめて後方に飛んだ。そしてほぼ同時に、刹那も振り返り、総一を追うに間合いを詰めた。

 そのスピードは刹那の方が速かった。

 

「鉄塊――」

 

 またその技か、と刹那はそのまま前に向かい、また同じように得物を振ろうとした。

 これを好機と見た総一は、すぐに腕を曲げ、竹を持ったまま拳を構えた。

 

「――砕」

「なッ!?」

 

 鉄塊を防御技だと思っていた刹那の予想は外れ、彼女は総一が鉄塊をかけた拳で攻撃してきたことに驚いた。咄嗟にそれをデッキブラシの柄で受け止めるが、その勢いに押され、刹那の体はリング場外まで吹き飛ばされてしまった。刹那は空中ですぐに体勢を立て直し、場外の枠にある木の柵に着地した。

 

「くっ……!」

 

 刹那は読みを誤ったことに苦い顔をして、総一を睨んだ。

 

「鉄塊は防御だけじゃねぇーぞ。嵐脚」

 

 総一の斬撃に、刹那はまた飛び上がった。彼女が立っていた柵は切り裂かれ、破片が辺りに飛散する。

 刹那は後ろにあった観客席の屋根の上に飛びのった。

 

「剃」

 

 総一が姿を消したことに、周りの観客達は驚いたが、刹那は目を細め、辺りの気配を探る。

 そして構えをとり、彼女は得物を振る体勢になった。

 

(…………来るッ!!)

 

 すると、その真後ろに消えた総一が現れた。

 

「百裂桜華斬」

「うわッ!」

 

 移動直後の攻撃に驚いた総一は、その一閃を防ぐこともままならず、攻撃を受け、屋根の上からそのまま湖に向かって落下した。

 

「月歩!」

 

 危険を感じた総一は大気を蹴り、リングへと飛んだ。

 

「こんにゃろぉ……」

 

 鋭い眼で身を構えている刹那を見ながら、総一は奥歯を噛んだ。

 

(やっぱりそう簡単にはいかないか……)

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 所変わって、龍宮神社の近くにある地下水道。わりと綺麗な水が流れているその水道は、周りはコンクリートで覆われ、その壁と円状の天井には何かしらのパイプや電線がまっすぐ伸びている。そして水道の横には、そこそこ幅のある通路が設置されていた。

 今、その通路を歩く人影が6つ。先導するシスターシャークティに続く形で、明日菜、美空とココネ、高音、愛衣の六名がタカミチ救援のため、奥にある地下施設へと進んでいた。

 この中で唯一――ネギと仮契約しているとはいえ――一般人とされている明日菜は、ここに来る前に、シャークティから付いてこないよう警告されたが、「高畑先生を助けたい」という思いから、なんとかシャークティを説得し、同行することを認めてもらえた。

 

「じゃあ、シャークティさんは総一の……」

「えぇ、保護者でもあり契約主(パートナー)でもあります」

 

 先程の境内でのやり取りが気になり、明日菜はシャークティから彼女と総一との関係を聞いた。

 総一の仮契約カードを見たときから、たびたびその契約相手が誰なのか気になっていた明日菜だが、いざ会ってみて、その人が想像していたよりも若く、結構な美人だったことに、少し不意をつかれた感じがした。

 

「……それよりも、高音さんは何かあったんですか?」

 

 最後尾を歩く高音を見ながら、シャークティは愛衣に訊ねた。

 

「えぇ、少しショッキングなことが……」

 

 内容が内容なだけに、愛衣は語尾を濁した。重大任務とあって彼女は半ば無理矢理、高音を連れてきたが、今の高音は顔色をどんよりと暗くし、見るからに何かに落ち込んでいる。生気の無い瞳で虚空を見つめ、お経のように何かをぶつぶつと呟いている。そんな高音の横では、ココネが心配そうに彼女を見上げていた。微かな念話を受信できる彼女でも今の高音の言葉を聞き取ることはできないようだ。

 戦力は多い方が良いと、高音と愛衣の二人に手助けを求めたシャークティも、その姿を見て、連れて来なかった方が良かったかしら、と心の中で少し後悔している。

 だが、今さら引き返すこともできず、一行はそのまま奥へと足を進めた。

 

「それにしても、超リンはこんな地下で一体何たくらんでるのかねぇ?」

「それを探るのも私たちの仕事です。無駄口叩いてないで真面目にやりなさい」

 

 シャークティに指摘され、美空は苦笑いしながら「はぁーい」と小さく応えた。

 

「でも、ホント、学園の地下にこんな所があったなんて……。美空ちゃんの言う通り、何かをたくらんでるのは間違いないですよね?」

「えぇ。それに、もしネットでの情報の拡散が彼女の手によるものなら、一刻も早く高畑先生の救援に向かい、阻止しなければなりません」

 

 二人が話す後ろ美空は小声で「だから美空じゃないってば……」と明日菜に言った。小声なのはシャークティに注意された手前、大きく言えなかったからだろう。

 

「……あの、シスターシャークティ」

 

 愛衣は顔色を窺うかのように、シャークティに向かって声をかけた。

 

「“悪魔の実”って本当にあるんでしょうか?」

 

 愛衣の問いに、シャークティの目が微かに細くなった。しかし、それはこの場にいる誰にも気付かないほど、微小な変化だった。

 

「唐突ですね。一体どうしたんですか?」

 

 シャークティは足を止め、振り返って愛衣を見た。

 

「先程、ネットの方で『魔法』と『悪魔の実』についてが話題になっていると聞きまして……」

「……その事は存じてます。ですが『魔法』についてはともかく、『悪魔の実』については、なにかの間違いでは?」

 

 シャークティは訊ねた。確かに愛衣の質問に対して彼女は断言的に首を縦に振ることができる。しかし、『悪魔の実』については秘匿事項。それに、ネットに出回っている『能力』というワードが『悪魔の実』を意味しているのかどうかも、未だはっきりしていない。そう簡単に答えることはできなかった。

 

「それだけではないんです。その……」

 

 愛衣はまた語尾を濁した。だがさっきと違い、今の彼女は何かを言うべきかどうか迷っているようだ。その目線は右往左往し、高音の方へも向いていた。しかし当然、今の高音がその視線に気づくはずがない。

 

「……その、加賀美先輩が『自分は悪魔の実の能力者だ』って」

 

 それを聞いて、シャークティと美空とココネの三人は「えっ!?」と声を揃えて愛衣に顔を向けた。

 

「……それはあの子が自分から白状したんですか?」

「はい」

 

 愛衣はコクりと頷いた。

 

「あの子は一体何を考えて……」

 

 シャークティは頭に手を当て、やれやれと小さく横に振った。横目で明日菜を見ると、彼女の顔にはこれといった表情の変化がなかった。そのことから、シャークティはある可能性に気付いた。

 

「あなたもすでにご存知で?」

「え、えっと……はい」

 

 成績の悪い明日菜であるが、『なにを』とは訊かずとも分かった。

 シャークティは暫しの思考の後、呆れ顔で「はぁぁ」と深くため息を吐いた。

 

「……中途半端なごまかしは無駄でしょうから本当の事を話しますが、今から言うことは一切他言しないようにお願いしますね」

 

 シャークティは「急ぎますので、とりあえずは歩きながら話しましょう」と四人に歩くように促しながら足を進めた。

 

「時間がありませんので詳しくは言いませんが、『悪魔の実』は確かにこの世に存在しています。そしてネットに出回っている『能力』というワードも、恐らく『悪魔の実の能力』を示唆したものでしょう」

 

 後ろの愛衣のリアクションを見ることなく、シャークティは続けた。一応、高音も声の届く所にいるが、今の彼女は耳から入る言葉がそのまま反対側へ抜けているようだ。

 

「じゃあ、加賀美先輩は本当に悪魔の化身なんですね?」

「いえ、違います。『悪魔の実』は口にした対象に『能力』を付与させるだけです。悪魔になったりするわけじゃありません」

 

 愛衣は昔、高音から聞いた話を元に訊ねたが、シャークティはそれをはっきりと否定した。

 

「ですが、口にしただけで強力な『能力』を与えるという果実の存在は、世界に少なからず“悲劇”を生みます。それを避けるため、魔法使いの中では知る人を少数に限らせ、悪魔の実を口にした者――能力者や実そのものを秘匿にしているのです。まぁそれでも、完全に隠すことはできず、おとぎ話レベルで広く伝わってしまっているわけですが……」

「それって――」

 

 すると突然、愛衣の言葉を、シャークティは手をあげて制した。彼女の目はまっすぐ通路の奥を向いている。

 

「続きは後にしましょう…………どうやら、敵が来るようです」

 

 一行の目の前にはガタガタと音を立てながら、機械の一団が迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 






自分的には――
『ネギVSベビー5』(ギャグ)
『エヴァVSエース』(ケンカ)
『フェイトVSドフラミンゴ』(小競り合い)
『近衛 詠春VSジュラキュール・ミホーク』(マジ戦闘)
『タカミチVSヴェルゴ』(マジ戦闘)
――が見てみたい。


あと、総一の技名(剣術)が思い浮かばず、最近ころころ変えていますが……まぁ、その、ご了承ください。
『これだ!』って思うものが思い浮かばないんですm(__)m

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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