もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

59 / 93
56. 勘?

 

 

 

 会場から離れ、ある程度遠くまで来た総一と古菲(クーフェイ)は露店と人込みが多い通りに来ていた。周りには初等部生や高等部生、学園外から来たと思われる一般人などなど、相変わらず多くの人で賑わっている。

 

「流石にここまで来たら、大丈夫そうアルネ」

「そうだな……はぁぁ、疲れたな」

 

 古菲と共に辺りを見渡し、追手がいないことを確認した総一は脱力したように肩を落とす。

 

「いやぁ、とても楽しい格闘大会だったアル。主催した超に感謝アルヨ!」

「……そうか」

 

 この後の事を考えると、古菲の言うように超へ感謝することはできず、総一は微妙な気持ちになり、それ以上なにも言えなかった。

 二人は足を進め、並んで通りを歩く。

 

「師匠はこの後はどうするアルカ?」

「うーん、そうだなぁ……とりあえず色々と気になる事とやる事があるから、まずそれを片付けに行くかな」

「そうアルカ。折角なら師匠と一緒に学園祭回りたかったアルけど、仕方ないアルネ」

 

 残念そうな表情を浮かべる古菲に、総一は「悪いな」と一言詫びを入れた。

 ある程度進むと、二人は大きな通りへと出た。

 

「じゃあ、俺はここで」

「うむ。学園祭終わったらまた修業して欲しいアルネ」

「あぁ、分かった」

 

 総一は「じゃあな」と手を上げて古菲に背を向ける。だがその時、十数メートル先にいる団体に気づいた総一は思わず「あっ!」と声を洩らし足を止めた。彼の声を聞いて、後ろにいた古菲も何事かと思い振り返る。すると、団体の中の一人が総一と古菲を見つけるやいなや、得物を見つけた狩人の如く表情を変えた。

 

「いたぞ! 古選手と加賀美選手だ!!」

「古選手、加賀美選手! インタビューお願いします!!」

 

 カメラや録音機材を持っている、新聞部と思われる面々がドダドタと足音を鳴らし、二人に近づいてきた。

 

「げっ、見つかった! てか、もうこんな所まで来てたのか!?」

「あいやぁ……」

 

 押し寄せてくる記者の人達に、総一は表情を歪ませ、古はまずいモノを見つけたように目を丸くした。周りの通行人達も何事かと皆一様に困惑した顔になっている。

 

「まほら武道大会について教えてください!!」

「二人は師弟関係だそうですが、本当にそれだけですか?」

「もしや今、デート中ですか?」

 

 行く手を阻む壁の如く二人の前に広がった記者達は、二人の応えを聞くことなく次々と質問を飛ばす。

 

「あァァもう面倒くさい! 逃げるぞ、古!」

「ちょ、師匠! 待つアル!!」

 

 総一と古菲は取材陣に背中を向け、脱兎の如く逃げ出した。

 

「あっ、逃げた!」

「追うぞ」

「麻帆良新聞部の記者たる者、取材対象を逃してなるものかァ!!」

 

 新聞部の者たちは懸命に二人の後を追う。しかし並外れた身体能力を持つ二人が一般人達から逃げるのは、そう難しいことではなく、5分も走っていると、すでに二人の後ろには記者と思わしき人影はいなくなっていた。

 総一は「撒いたか?」と辺りを窺う。しかし、また「いたぞォ!」と言う声が聴こえ、地鳴りのような足音を立てながら騒がしい一群がやってきた。

 

「加賀美くん、俺を弟子にしてくれ!」

「菲部長! 是非俺と付き合っ――いや、俺を弟子にィ!」

「加賀美ィ! テメェが菲部長の師匠なんて認めねぇ、俺と勝負しろォ!!」

 

 ある者はニコヤかな表情で、またある者は懇願する表情、別の者は怒り心頭とした表情で二人に迫る。表情や雰囲気に多少の差はあれど、皆、揃ってガッチリとした体格をしていて、なんともむさ苦しさの漂う男達であった。

 

「こっちはこっちで面倒くせぇ!!」

 

 総一と古菲は、また全力疾走して追手から逃げた。そしてやっとむさ苦しい男共から逃げたと思った二人だったが、今度は色紙や携帯カメラを持った一団に囲まれた。

 

「君たち、古菲さんと加賀美さんだよねぇ!!」

「試合見てたよ!」

「一緒に、写真撮って貰っても良い?」

「ねぇ、サインちょうだい!」

 

 やたらテンションの高い女子生徒達(多分女子高生)に囲まれた二人は、狼狽した表情を浮かべ、ゆっくりと後退りして包囲から抜け出した。

 

「アハハ、私達有名人アルネ!」

「喜んでる場合か! 逃げるぞ!」

 

 また一団に背を向け、全速力で走る。

 これを数回繰り返した後、二人は建物の影に隠れる事で、やっと足を止める事ができた。

 人が一人通れるほどの暗い路地に入った二人は、壁に背をもたれながら荒れた息を整える。呼吸を整えると、総一達は周りに追手がいない事を確認して横道から出た。

 

「ふぅぅ、なんとか逃げ切ったアルネ」

「あぁ……けどやっぱり、ここも周りの目が気になるな……」

 

 総一は目を細め、辺りの雰囲気を読み取った。周りには二人の姿を見て、「ねぇねぇアレって……」「さっき映像で見た……」とヒソヒソと話す声が聴こえる。追手の人達に見つかるのも時間の問題だろう。

 

「ありゃりゃ、これじゃあまともに道歩けないアルネ。どうするアル師匠?」

「とりあえず、どこかで着替えるなりして変装する必要があるな。確かレンタルできる所があったから、そこで借りよう」

 

 周りを最大限に警戒しながら、二人は洋服店を探した。

 

 

 幸いにも、洋服店はすぐに見つかった。どうやら学祭中にオシャレやコスプレをする人は多いらしく、学園内で洋服をレンタルできる店もそこそこ多かった。

 

「じゃあ師匠、ここで失礼するアルネ」

「あぁ、マスコミに気ぃつけてな」

 

 着替えを済ませると、総一は古菲と別れ、一人目的の場所に向けて足を進めた。今の彼の服は真っ黒なジーパンに白い襟シャツ、フードのついた真っ黒なローブと、さっきまで来ていた服とほぼ同じだが、八の字の付け髭と目元を隠すサングラスをつけている。ロザリオをつけていることもあって一見、小さい老神父のようにも見える服装だ。

 

「……気分はもうドレスローザ、なんつって」

 

 変装していることもあって、先程のような総一を注目する視線は無くなった。偶に変なものを見るような眼で視線を向けられることもあったが、何かの仮装だと思われたらしく、特に話し掛けられることもなかった。

 

《総一、聴こえますか? 総一》

 

 そんな風にして歩いていると、ふと頭の中に声が響いた。それがシャークティからの念話だとすぐに理解した総一は、人目に付かない所――さっきみたいな横道――に移動し、自身の仮契約カードを額に当てた。

 

《はい、なんですか?》

《逃げた超鈴音の居場所を探るために、あなたの意見を聞かせて欲しいのですが。今、大丈夫ですか?》

《えぇ、実は今そっちに向かってる所だったんです。シャークティさんがいるのって、多分会場近くの地下施設ですよね? すぐに行きますから》

《いえ、ここまで来るのは大変でしょうから、私が“召喚”します》

《そうですか……。じゃあ、今ちょうど人気の無い所にいるので、お願いします》

 

 念話を終えてカードをしまうと、総一の足元が光はじめ召喚の魔法陣が現れる。

 変装の意味なかったな、と思いながら総一の姿は魔法陣と共に消えていった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「どう思いますか?」

「そうですね……地下にこんな空洞があるのに、なんで地盤沈下しないのかなぁ、って思います」

「真面目に」

「結構本気で思ったことなんですけどね……」

 

 自身の頭をワシャワシャと掻きながら、総一は再度辺りを見渡した。いま彼がいるこの場所は、地下であるにもかかわらず、5階の建物以上の高さはあろうかという程まで天井が高く、だだっ広い。しかも、どこからか明かりが照っており、周りを見るのには不自由しないほど明るい……いや、地下という事を考えると、むしろ明かる過ぎると言っていいだろう。目の前には湖が広がり、その先にはかなり太い幹をした樹が何本も生えている。総一は向かいに生えている樹木や壁を伝うように張っている根っこを見て、なんだか(雰囲気が)シャボンディ諸島みたいだな、と思った。

 

「超はここでロボット兵の軍団、及び巨大メカを作っていた……そういうことか?」

「ホントなんだってぇ、信じてよぉ!!」

「分かったから抱きつくな、鬱陶しい」

 

 総一は泣いて詰め寄ってくる美空の肩を押して無理矢理距離を取った。普段の行いが悪いせいか、隣に立つシャークティは半ば疑いの眼差しで、彼女を見ている。

 

 

 仮契約の効果で召喚され、超が何かを企んでいたと思われる地下施設へとやってきた総一は、シャークティから大会の裏で行われていた経緯(いきさつ)を聞いた。

 事のあらましとしては、地下に捕らわれていたタカミチが自力で脱出し、先に地下施設に入り気絶させられた美空たちを救助。そして侵入者排除用のロボを殲滅すると共に、救援に来ていた、シャークティ、明日菜、高音、愛衣と合流。後に超のいた建物の部屋に向かうも、そこにはパソコンが並ぶだけで超の姿はなく、すでに逃げた後だったらしい。その後、大会も終わり、目を覚ました美空から事情を聞くと、どうやら彼女は地下施設で――今総一達のいるこの場所――で、大量のロボット兵と巨大メカを見たとの事だ。

 

 

「ホント、ここにドーンって、デカい石像みたいな巨大メカがあったんだってば!」

「それは分かったっての。疑ってねぇーよ……。ロボや巨大メカの大きさと数は?」

「怪獣みたいに大きいのが1つ、あと人型(グラサン)のヤツとRPGの中ボスみたいなヤツがズラーッと、たくさん……」

「いくつくらい?」

「えぇーと、五百……いや、千体くらいいたかも……」

「アバウトだなぁ……」

 

 付け髭とサングラスを外しながら、総一は呆れたように目を細め、ヤレヤレと首を振った。

 

「……まぁ、何百体にせよ、そんな大量のロボット、(魔法で)移動させることは出来ても、保管するとなると、かなりのスペースがいるでしょうから、少なくともここ位に広い場所を探すのが、超のヤツを探す為のベターな選択かと」

「そうですね。美空の言った事が本当なら超鈴音が何か良からぬ事を計画しているのは確実。早急に対処しないと」

「ここ以外にも似たような場所がいくつかあって、もしそれらにここと同じだけのロボがあるとすると…………。超は麻帆良の魔法使い相手に“戦争”でもするつもりなんじゃないですか?」

「まさか……いえ、ですが……」

 

 語調とは違って半ば確信的な表情で言った総一に、シャークティは一瞬否定しようとしたが、それだけの根拠がなく言葉を詰まらせた。

 

「戦争って……いくらなんでも大袈裟過ぎじゃない?」

 

 ここで、先程から黙って後ろで総一達のやり取りを見ていた明日菜が、怪訝な表情で訊いてきた。因みに彼女の格好だが、美空と合わせて体操服だ。

 

「言い方の問題だな。超の人柄からして血を流そうとかは考えてないだろうけど、なにか“大きな事件”を起こそうとしてるのは確かだろうな……」

「なによ、その“大きな事件”って!? 大体、なんで超さんがそんなことするのよ?」

「……さぁ」

「さぁ、ってアンタねぇ!」

「まぁ、何にしても超君を探し出して、色々と訊く必要があるだろうね」

 

 明日菜が詰問し、総一がとぼけた様に首を傾けると、彼らの後ろからタカミチが声を掛けた。

 

「高畑先生、どうでしたか?」

「ダメだったよ。上にあったコンピュータはすべてデータが消されていた」

 

 シャークティの問いに、高音と愛衣を引き連れてやってきたタカミチは残念そうに首を横に振った。どうやら彼らは建物の中にある超が使っていたパソコンを調べに行っていたようだ。また、明日菜たち同様、彼の後ろにいる二人もそれぞれ体操服だ。

 

「それで、加賀美君。いま君が言った事が本当だとして、もし超君が動くとすれば、いつだと思う?」

「さぁ、俺は超じゃないので、なんとも……」

「勘でかまわないよ」

 

 タカミチがそう言うと、総一は頭を掻きながら顔を上に向け、何かを思い出すような顔で「うーん」と声を洩らした。

 

「……麻帆良祭3日目、世界樹が最も光るとき、とか?」

「学祭中に最も魔力が満ちる時間か……。なるほど、あり得る話だね」

 

 総一の言葉に、タカミチはアゴに手を当て自身の考えを巡らせた。

 

「……分かった。頭の隅に入れておこう」

「まぁ、あくまでも勘なので、あしからず……」

「いや、言い方はオーバーかもしれないけど、それなりに妥当な推測だと思うよ。彼女は『魔法』と『悪魔の実』の存在を世界にバラそうとしている。この麻帆良学園でそんなことをするには、それくらいの手段を準備していてもおかしくないさ」

 

 自分のクラスメイトを大好きな先生が疑っていることに、明日菜は複雑な気持ちになった。 

 

「やはり、彼女の目的は“ソレ”なんですね?」

「あぁ、さっき捕まえようとした時に彼女自身から聞いた。逃げられたけどね。彼女は『悪魔の実』についてはなにも言わなかったけど、ネットでの工作から見てそれは間違いないと思うよ」

 

 シャークティの問いに対するタカミチの返答を聞いて、総一は「はぁ、面倒くさいなぁ……」とため息をついた。

 

「……それで、魔法先生方は『悪魔の実(そっち)』の話題についてどう考えてるんですか?」

「『魔法』の話題と同時に広められたとあって、不審に思っている人は結構いたみたいだけど、流石にネット工作(アレ)だけで『悪魔の実』の実在を信じた人はいないよ。一応、さっき学園長に報告して、魔法使い全員(主にネット対策をしている魔法使い)に『魔法の話題を広める為の手段に過ぎないから、あまり気を取られないように』って通達されたから、今はみんな『魔法』の話題がこれ以上広まらないよう対処するのに集中してる」

 

 そうなんですか、と総一が横に立つシャークティに訊くと、彼女は小さくコクっと頷いた。

 

「『悪魔の力』、『能力者』と、広まった情報も断片的でしたからね。『悪魔の実』を連想する人はいても本当に実在すると思う人はいませんよ」

「そうですか……」

 

 良かったのか悪かったのか分からないが、何か忘れ物をしたような感覚が残り、総一はまた「はぁ」とため息をついた。

 

「加賀美さん!」

「んー?」

 

 声を掛けられた総一は、ダルさが残ったような表情のまま顔を向ける。目を向けた先にいた高音は、いつにも増して真剣な眼をしていた。

 

「先程まほら武道会の時に言っていた『悪魔の実』についてですが、どうやら本当の事のようですね」

「えぇ、まぁ……」

 

 ここに来る前にシャークティかタカミチから聞いたのだろうと推測し、言葉を濁しながらも総一は素直に頷いた。

 

「ならば、やはり私は、貴方のことを信用できません!」

「えぇー、なんですか突然!?」

 

 高音はハッキリと言い放った。敵対宣言とも取れるその言葉に、総一は驚愕して顔を引きつらせた。

 

「『悪魔の実』、小さい頃におとぎ話として何回も聞かされてきました。童話として読んだだけでなく、時には親が子供(わたし)に悪事を行わないよう(いさ)める為や都合の悪い事情の説明を誤魔化す為に話した事も……。そう、例えるなら『親の言う事を聞かない子は“ブラックサンタクロース”が拐いに来る』とか『自分が悪い事をした時に、大切な物が無くなるのは“小人”のせい』というような……!!」

「なんの話ですか?」

 

 総一は首を捻り、表情を歪める。

 

「そんな『悪魔の実』が実在するなんて……もしソレ等が、私が小さい頃に聞いた話のような物なら、貴方を信用しろという方が無理な話です!」

「……いったい、いままで高音先輩は『悪魔の実』について、どんな風に聞かされて来たんですか?」

 

 たとえば、突然『“なまはげ”や“トイレの花子さん”が実在した』と聞いたら、それは当然パニクるだろうが、だからといって彼女のようにそれらに対してこんなにも敵対心を持つだろうか。きっとよっぽど悪魔の実について尾ひれのついた話を聞いたのだろう、と総一は思い、彼女に訊ねた。

 

「『ヤミヤミの実を食べた者は人々を虚空の闇へと引きずり込む。夜遅く、子供が一人で出歩くと帰って来なくなるのは、その者のしわざ』『グラグラの実を食べた者は大地を揺らし世界を破壊する。地震が起きるのは、その人が暴れているから』『トリトリの実を食べた者は闇夜に現れ、生きた人の肉を貪る。だから暗がりを歩いてはならない』などと、そのように聞かされてきました。他にも私が幼い頃に読んだ童話では、死体に――」

「もういいですよッ!! 怖ェーよ! ウソ混じってますよその話ッ!!」

 

 前2つは半ば事実だけど、と総一は口にしようとしたが、話がこじれるだけなのでなんとか呑み込んだ。

 

「あの、高音さん、この子は確かに悪魔の実を食べた者――能力者ではありますけど、決して貴方の言うような事はしませんよ」

「てか出来ません!」

 

 高音と総一との間に入り、シャークティは彼を庇うように言った。総一本人もそれを強く肯定するが、高音は引き続き疑惑の目を彼に向ける。

 

「では、武道会で見せた加賀美さんのあの力は何なんですか?」

「あれは悪魔の実の能力(ちから)じゃなくて、覇気と言って人ならだれしも持っている――――」

「では、あの飛ぶ斬撃は――――」

「あれは六式といって、修業を積んで――」

「そんなの信じられますか!! それに、私が聞いた話では――」

 

 周りの者たちを置き去りにして二人の会話はヒートアップして行った。二人のそばにいたシャークティもお手上げと言わんばかりにヤレヤレと頭を抱えている。

 

「総一も大変だねぇ」

「………」

「そうだ、ココネくん。君達二人が見た巨大メカだけど、絵に描けるかい?」

「おーい、私も見たのに、なーんで私には訊かないのかなー、高畑先生?」

 

 コクっと頷くココネの横で、美空は無機質な作り笑いを浮かべ、タカミチに問いかけた。

 

「ねぇ、愛衣ちゃん」

「はい?」

「高音さんっていつもああなの?」

 

 美空達から巨大メカについて聞いているタカミチをよそに、明日菜が愛衣に訊ねた。彼女の人差し指は総一と言い合いをしている高音を指している。

 

「いえ、いつもならあんな風に強く当たることもないですけど、悪魔の実の話題や話す相手が年下の男の子になると、あのような感じに……」

「どうしてですか?」

「それは……えっと……」

 

 シャークティが訊くと、愛衣は少し口籠もった後、声を少し低くして「これはお姉様の前では内緒でお願いしますね」と前置きした。

 

「その、お姉様がまだ小さかった頃、お姉様には弟さんがいらしたんですが、生まれて間もなく病気で亡くなられて……」

 

 思った以上にデリケートな話題になり、聞いていた二人は少し深刻な顔つきになった。

 

「その際に、御両親がお姉様を悲しませまいと、色々とはぐらかしてしまったらしく、『悪魔に取り憑かれた者に連れて行かれて遠くに行ってしまった』とか、そういった風に聞かされたみたいです。後から病気で亡くなられたと知ったみたいですけど、それからお姉様は悪魔の実の話が苦手になったみたいで……」

「それで今あんなに躍起になっていると……?」

「はい。それと、年下の男の子に強く当たってしまうのは、ある種の強がりだと思います。普通にしていると、亡くなった弟さんのことを思い出してしまうから」

「……そうなんだ」

 

 接し方に違いはあるが、どこか自分のクラスの委員長と似ているな、と明日菜は心の中で感じた。明日菜と合わせてシャークティも、「人に過去あり、ですね……」と総一に向かって声を上げている高音に眼を向けた。

 そんな中、いい加減煩わしくなってきたのか、彼女と話している総一の物言いが少し荒くなってきていた。

 

「だぁぁかぁぁらぁぁ、それはおとぎ話の産物なんですってェ! それに悪魔の実は一人につき1個! 2つ食べたら体が弾けて飛び散る(らしい)ので、『麒麟と狼に姿を変える能力者(ひと)』なんてありえませんから!!」

「なんですかッ、そのグロテスク設定ッ!! それは流石にウソではないですか!?」

「ホントなんですってばァーー!!」

 

 三人の暖かい眼に気付くことなく、二人は火花を散らし続けた。

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。