もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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明日菜「総一と木乃香って、どういう仲なの?」

総一「メル友ぉ」
木乃香「テル友ぉ」




64. 麻帆良式デービーバックファイト

 

 

 

 麻帆良祭期間中、パレードが行われる大通りや出店が並ぶ通りは総じて人で埋め尽くされている。しかし、出店が並ぶ通りはパレードの大通りに比べれば人の数は少ない。その理由としては、パレードが行われる大通りが道一本しかないのに対して、出店が並ぶ通りは麻帆良学園中にそこそこの数あるためというのが挙げれるだろう。

 今、総一たちが歩く通りも人で賑わっているが、パレードのある大通りやアトラクションがあるスペースほどではなかった。

 道に並ぶ出店の種類は、かき氷や焼きそば、綿飴といった祭りの定番なものからクレープやドーナッツ、ケバブにおでんなど珍しいものまで様々だ。射的やヨーヨー掬いなどの遊び関係のモノもいくつかあったが、目的が食べ歩きという事もあり、総一達のやってきた通りは食べ物関係のモノが多かった。周辺には食べ物のソースの焦げる匂いや甘いものが焼けた匂いが漂っている。

 

「どれも美味しそうやなぁ」

「ホントにな。そんで、これのほとんどを学生がやってるっていうんだから、スゲえよなぁ」

 

 周りにある出店の様子を眺めながら、木乃香は楽しそうに目を輝かせ、総一は感心した表情を浮かべる。

 

「総くんはなに食べるん?」

「んーーっ…………まだ悩み中。木乃香は?」

「せやなぁ……。あっ、あのクレープ美味しそぉ! アレにしよ!」

 

 ふと目にしたカップルが手にしているクレープを見て、木乃香はその出店の方へトテトテと掛けて行った。

 

「即決だな……」

 

 特に迷うことなく決めた木乃香に少し唖然として、次にふと、総一は振り返って猫背で歩いている明日菜を見た。

 

「うぅ……」

「まだグロッキーなのか?」

「……まぁね。でもやっと、マシになったわ」

 

 先ほどと比べて明日菜の顔色も良くなっている。同じようにしていたあやかも今は平常運転に戻り、ネギの為にと何かを買いに行っていた。

 

「かき氷でも食べるか?」

「……イチゴが良いわ」

「……ツケだかんな」

「分かってるわよ」

 

 提案だけのつもりがパシられることになり、総一はため息をつきながらも目についたかき氷の出店に歩いて行った。

 

「大丈夫ですか明日菜さん?」

「うん大丈夫大丈夫……」

 

 まだ微妙にやつれている明日菜を気遣いながら、ネギは彼女の隣をゆっくりと歩く。ネギの肩ではカモが「寝起きみたいッスね……」と呟いていた。

 そんな明日菜を気にしていたこともあってか、あるいは周りの人通りの多さもあってか、ネギは背後に近づく“影”に気が付かなかった。

 

「……ウッ!」

 

 突然、何者かの手によってネギの口元が押さえられた。ネギは何事かと振り返ろうとしたが、抵抗する間もなく複数の手によって身体を引き込まれてしまう。肩にのっていたカモも身体を鷲掴みにされた。そして彼らの姿は人混みの中へ消えて行く。

 あまりの瞬間的な出来事に、そのことに明日菜が気づくことはなかった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

「ンゥーーッ、このクレープ美味しい! なぁなぁ総くん食べてみて」

「あぁ、うん……ありがと。でも俺、ほら、タコ焼きあるから遠慮しとく。代わりに明日菜にやってやれ」

「そうかぁ。なぁなぁ明日菜ぁー」

 

 木乃香はかき氷を突いている明日菜に駆け寄り、彼女に自身が食べているイチゴソースのかかったクレープを勧める。明日菜は「ありがとう」と礼を言って一口食べると、その美味しさに笑みをこぼしていた。ようやく明日菜も回復していつも通りに戻ったようだ。

 

「天然って怖いわぁ……。いや、俺が意識し過ぎてるのか?」

 

 総一は少しドキッとした心臓を落ち着かせて困ったように笑う。もし彼が木乃香の勧めを断らないでいたら、そのまま木乃香と間接キスすることになっていた。おそらく木乃香本人はそのことを理解していないだろう。あるいは分かっていてやっているが、そこまで総一を意識していないのかもしれない。

 

「まぁいいや、深く考えるのは止そう……ん?」

 

 頭を軽く振って総一が考えるのを止めると、ふとチュロスを持つあやかの姿が目に入った。

 

「立って食すのは些かお行儀が悪いようにも感じますが、こういうのもたまには良いですわね」

「お嬢様も庶民の感覚がお解りになってきたようで……」

「何ですか、その言い方は。似合いませんよ」

「……あっそ。んで、なんでお前はチュロス2本も持ってるんだよ。くれんの?」

「誰が貴方にあげると言いましたか、これはネギ先生の分です!」

「だと思ったよ」

 

 本当に期待はしていなかったようで、総一は自身の持っていたタコ焼きを口に運んだ。

 あやかは周りに見渡してネギ君を探す。しかし、どこに目をやってもネギの姿はなかった。

 

「あら、ネギ先生はどちらへ?」

「ん……あれ? さっきまでいたけどな」

 

 先程まで明日菜と話しながら歩いていたネギの様子を思い出しながら、総一はあやかと一緒に周りを見た。

 

「おーい明日菜ぁ、ネギ君知らない?」

「えっ、ネギなら……って、あれ?」

「ほぇ? あら、おらんな」

 

 総一は明日菜に訊いてみるも、彼女は誰もいない方向に顔を向けて首を傾けた。木乃香も辺りを見渡すが、言われてみればと言うようにコクッと首をかしげる。

 

「一体どこへ行かれたのでしょう?」

「トイレやろか?」

「電話でも――」

 

 ――♪~♪~♪~

 

 電話でも掛けたらどうだ、と総一が提案しようとした時、同時にあやかの携帯電話が鳴った。

 

「あら、ネギ先生からですわ」

 

 モニターに表示された『ネギ先生』という文字を見て、あやかはすぐに電話をつなげた。

 

「もしもし」

《……“雪広あやか”か?》

 

 電話の向こうから聴こえてきた予想外の声に、あやかは一瞬自身の耳を疑った。その声は決して自分の知るネギの声ではない。声色を低くしているが、その声色は“女性”特有の凛としたものだった。

 しかも、相手は自身の名前をフルネームで訊いてきた。声の雰囲気も合わさって、あまり良い予感はしない。

 

「貴女……どちら様ですの?」

 

 相手と同じように、あやかは自身の声を低くして訊いた。

 

《このケータイの持ち主の男の子は預かったわ》

「何ですって!?」

 

 あやかの反応に、総一と木乃香はビクッと驚き、明日菜も何事かと目を向けた。

 

《返してほしければ、いますぐ麻帆良オックス広場に着なさい》

「なっ、ちょっ――!!」

 

 あやかの返答を聞く前に、相手はブツッと電話を切った。

 

「どうしたのよ、大きな声出して?」

「……ネギ先生が拐われたようです」

 

 明日菜に訊かれ、あやかは真剣な面持ちで答えた。その言葉を聞いて、三人は「えっ!」と揃って声を洩らした。

 

「返して欲しければ、今すぐ麻帆良オックス広場に来いとのことです」

「オックス広場?」

「聖ウルスラ女子高校の近くにある広場ですわ。ここからすぐ近くです」

 

 明日菜が訊ねると、あやかが携帯電話をしまいながらスラスラと説明してくれた。

 

「誘拐かよ。一体、誰のしわざだ?」

 

 今度は総一が訊ねた。その疑問は明日菜と木乃香も思っていたことだった。

 

「分かりませんが、とりあえず急いで行きましょう!」

 

 あやかの提案に反対する者は一人もおらず、四人は急いで広場に向かった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 四人が広場に着くと、そこには多くの人が集まり、野次馬の如く人だかりが出来ていた。そこにいる人達は皆、何かを見ながら「なんだアレ?」「何かのイベント?」と口々に疑問を洩らしている。

 

「何だ、この人だかり?」

「さぁ、何なんやろ?」

「この中にネギ先生と誘拐犯が……!?」

「とりあえず、探すわよ!」

 

 四人がネギを探そうとした、その時だった。

 

「来たようね。雪広あやか! それと神楽坂明日菜!」

 

 突然、人だかりの奥から声が聞こえてきた。すると、集まっていた人たちは空気を読んだように二つに分かれ、集団の先にいた人物が姿を現した。

 その人物は黒い制服を着ており、一目で麻帆良学園聖ウルスラ女子高等学校の生徒であることが分かった。

 その女子生徒はポーズを決めるように自身の長髪を撫でる。『それなりに美人な人だな』というのが総一の第一印象だった。

 

「…………誰?」

「「さぁ?」」

 

 総一に訊ねられて明日菜とあやかが揃って首を捻ると、その女子生徒はガクッと身体を傾けた。

 

「『さぁ?』じゃないわよアンタ等!」

 

 女子生徒は拳を振り落として、前のめりになって声を上げた。

 

「おい、なんか知らないけど怒ってんぞ、あの人。口ぶりからしてお前達の知り合いなんだろ?」

「みたいですわね。正直まったく心当たりが無いですけど……」

「私も。聖ウルスラ女子の人に知り合いなんていない、はず……」

 

 明日菜とあやかは頬や頭に手を当てて記憶を探る。しかし、いくら考えても目の前の人物に見当がつかなかった。

 そんな二人の反応に、女子生徒はメラメラと怒りを燃やし、自身の拳に青筋を浮かべた。

 

「麻帆良ドッチ部『黒百合』の英子よ! え・い・こ!! 前にアンタ達とドッチボールで戦ったでしょ!」

 

 ドッチ部、黒百合、ドッチボールというキーワードから、また二人は熟考した。

 

「「…………あぁ」」

「『あぁ』って、お前ら……」

 

 やがて二人は揃ってポンと手を叩く。そんな二人のリアクションに、総一は少し引いた様子で二人に目を向けた。

 

「そういえば、そんな事もありましたわね」

「あぁーー、はいはい、あの時の……!」

「なんでそんなリアクションなのよ!」

 

 英子は二人に向かって噛みつくように怒鳴る。そんな中、総一は一歩後ろに下がって、後ろに立っていた木乃香の横に立った。

 

「……んで、誰?」

「あぁ、総くんは知らんねんな。前、まだネギ君が来てすぐの時の話なんやけど、ウチのクラスとあの人のクラスでちょっとゴタゴタがあってな、そんで色々あってドッチボールで戦ったことがあったんよ」

「へぇー」

 

 木乃香のかなり省いた説明に頷きながら、総一は粗方の事情を察した。

 

「それで、なんで聖ウルスラの人が?」

「まさか、ネギ先生を拐ったのは……!」

 

 あやかの何かに気がついた表情を見て、英子は気持ちを切り替えて「ふっ」と嗤った。

 

「えぇ! そうよ!」

「ネギ先生をどこへ!?」

「子供先生ならここにいるわ!」

 

 英子がそう言うと、彼女の後ろから女子生徒二人、ビビとしぃが現れ、ロープでぐるぐる巻きにされてハンガーラックのようなモノに吊るされているネギ(とカモ)を連れてきた。

 ネギは身体を揺らしたり声を出したりしてあやか達に助けを求めるが、いくら暴れても吊るされた身体はグラグラと揺れるだけで、口からは言葉にならない声が洩れるだけだった。

 

「ネギ先生!」

「アンタ達どういうつもりよ?」

 

 明日菜が問いかけると、英子は笑いながらネギ達のいる所まで歩き、振り向いて制服のスカートをなびかせた。

 

「私達はこの子をかけて、貴女達に“麻帆良式デービーバックファイト”を申し込むわ」

「「「はぁッ?」」」

 

 聴き慣れない単語に明日菜とあやかは目を丸くし、総一は内心で衝撃を受けた。

 

「何よ、そのバービーバックファイトってのは?」

「“デービー”バックファイトな!」

 

 明日菜の間違った言い方に、総一は眼を細めて見ながら訂正した。

 

「デービーバックファイトは、古代の海賊が仲間を賭けて行ったゲームのこと。それに倣って麻帆良学園では体育祭中と文化祭中に生徒同士で行うゲームを開催することが認められているわ。そして、このゲームに勝った生徒は敗けた生徒の“何かしら”を(合法的な範囲で)奪うことができるわ!」

「“何かしら”って何よ?」

「それは勝者の要求次第よ。そしてさっき言った通り、今回、私達が勝った場合はこの子供先生を指名するわ。つまり、私達がこのゲームに勝てば、ネギ先生は麻帆良女子中等部から聖ウルスラ女子高校の担任教師になるってことよ」

「そんな無茶苦茶な……!」

 

 ありえない、と言うようにあやかが声を洩らす。表情に差はあれど、隣にいる明日菜や後ろにいる総一も似たような反応だ。

 

「いいえ、このデービーバックファイトは学園側が認定しているイベント。学園内の先生の移動くらいなら不可能じゃないわ」

 

 英子の口調から妙な自信を感じて、その場にいる全員は彼女の言っていることが本当の事のだと理解した。

 吊るされているネギも目を見開いて驚きをあらわにしている。

 

「アンタ達、なんでこんなことを!?」

「ふふん、決まってるでしょ。リベンジよ!」

 

 明日菜の問いに英子が返すと、それを聞いた総一は「はぁ!?」と人知れず怪訝な表情をした。

 

「麻帆良ドッジボール部『黒百合』の名のもとに、ドッジボールの敗けの借りを返す。そのための勝負よ!」

「えっ!? てことはつまり、ドッジボールで敗けた時からずっと根に持ってたの? バカなの、あの人達!?」

 

 総一は思わず心で思ったことをそのまま口にした。そんな彼の反応に、英子と他の二人はキッと睨みつける。総一は気まずそうな顔をして「こりゃ失敬」と呟き頭を下げた。

 

「さぁ、どうするのかしら?」

「やるに決まってますわ!」

「えっ!」

 

 あやかの返答に、総一はキョトンとした。

 

「そう。なら……」

 

 英子はスターターピストル(運動会で競技のスタートの合図などに使うピストル)を取り出す。そして銃口を上に向けて引き金を引いた。

 

 ――パーン

 

 大きな破裂音が鳴ると同時に、白い煙が風に流れる。

 英子はそのままピストルをあやかに投げ渡した。

 

「さぁ、そのピストンを鳴らしなさい。それがデービーバックファイトの成立と開始の合図よ」

 

 あやかは何の迷いも見せず、英子がやったようにピストルの銃口を空に向けた。

 

「えっ、ちょ待て、雪広!」

 

 ――パーン

 

 総一の停止の言葉と紙火薬の破裂音が重なる。

 あやかがピストルを鳴らし終えると、英子はニヤリと笑った。

 

「鳴らしたわね。これで正式にデービーバックファイトが成立したわ!」

 

 英子の宣言を聞いて周りにいた人たちが騒ぎ始めた。周りからは「おぉ!」「よく分からんが、なにかイベントが始まるみたいだぞ!」という期待を含んだ声が聴こえる。

 そんな中、総一はあやかの腕を掴んで後ろに下がらせた。

 

「雪広、おまえアホだろ?」

「なっ! なんですか、いきなり!?」

「なにもバカ正直に受ける事なかっただろ。ここで勝負受けずにネギ君とりかえして逃げれば、こんな面倒な事しなくて良かったのによぉ」

「…………あっ!」

 

 目からうろこが落ちたようにあやかは口をぽかんと開けたまま動きを止めた。

 

「……ま、まぁ、良いですわ、ようするに勝てばよろしいのでしょう!」

 

 あやかは恥ずかしさから顔を赤く染めて自分に言い聞かせるように言った。そんな彼女の反応に、総一は頭痛に耐えるように頭を押さえて横に振った。

 

「今からでも力づくで取り返して逃げればいいと思うんだけど……。まぁ良いや」

 

 とりあえず大変な事になるようなことじゃなくて良かったと安堵して、総一は胸をなでおろす。そして気を取り直して、彼は勝負の行く末を見守ることにした。

 

「それで、そのゲームの具体的な内容は何ですの?」

「デービーバックファイトの種目は『球技』『レース』『学問』の3つ。麻帆良祭ルールでは出場者3名でゲームを行い、先に2勝したチームが勝ちとなるわ。こっちの選手は()()()()()の三人だから、貴女達も三人代表を決めなさい……といっても、二人はすでに決まってるでしょうけど」

 

 英子はあやかと明日菜に挑発的な眼を向けた。彼女の中ではあやかと明日菜の出場はすでに決定しているのだろう。実際、本人たちもその眼に応えるように身構えていた。

 

「もちろんです! 行きますわよ明日菜さん!」

「えぇ、よく分かんないけど、やってやろうじゃない!」

 

 二人は一歩踏み出して英子たちを睨み返す。

 そんな殺伐とした空気の中、明日菜の後ろに立った木乃香が「なぁなぁ」と肩を叩いた。明日菜は「なに?」と振り向いて木乃香を見た。

 

「代表は三人いうとったけど、それってウチが出ないかんのかな?」

「あたりまえでしょ、今から3-Aの誰かを呼びに行くわけにも行かないし……」

 

 『聖ウルスラ女子高校が麻帆良女子中等部へ挑む勝負』ということで、参加メンバーは当然各学校の生徒だろう。そして、この場には麻帆良女子中等部の生徒はあやかと明日菜と木乃香の三人だけである。

 明日菜もあやかも、そして総一も、当然、木乃香が出るものと思っていた。

 

「でもウチ、二人に合わせる自信ないし、三人でやるならウチより総くんの方がええと思うんやけど……?」

「「は?」」

「えっ!」

 

 木乃香の予想外な提案に、明日菜とあやかは口を半開きにして固まり、総一は目を丸くした。

 

「なに言ってんのよ木乃香! 麻帆良女子中等部(わたしたち)への挑戦なのに部外者が入っちゃダメじゃない!」

「そうですわ! それも、よりにもよって加賀美さんだなんて!」

 

 どういう意味だコラ、と総一は内心で不満を洩らした。

 

「別に構わないわよ。私達が申し入れたのは、あくまで雪広あやかと神楽坂明日菜の二人。その二人が出るなら、他一人は男だろうが犬猫だろうがなんだっていいわ!」

 

 余裕の笑みを浮かべながらサラッと言った英子の言葉を聞いて、総一は体育祭で宣誓する選手のように手を上げて「すいませーん! 俺は犬猫と同列にされてるんでしょーかー!?」と声を上げた。

 

「ほら、あの人もあー言うてることやし……」

「でも……」

 

 木乃香は再度明日菜たちに同意を求めるが、明日菜とあやかは渋い顔をした。そして彼女達の眼は自然と当人である総一に移る。

 

「なぁ、総くん。ウチの代わりに出てくれへん?」

「えぇー」

 

 総一のもとへかけよると、木乃香は手を合わせる。だが、総一はイヤそうに表情を歪めた。

 

「な、お願い」

 

 木乃香は片目をつむって申し訳なさそうな表情でまた手を合わせた。

 これをもし、鳴滝姉妹や美空、あるいは超がやったのなら、総一は何かしらの魂胆を悟って(たとえ純粋な気持ちでやっていたとしても)サラッと断っただろう。しかし、総一には木乃香に対してそういう下心があってやっているとは欠片も思わなかった。

 やがて総一は深く息を吐きながら、渋々と首を縦に振った。

 

「……わかったよ、やれば良いんだろ!」

 

 総一の返事を聞いて、木乃香は嬉しそうにニコッと笑った。

 

「えへへ、ありがとうなぁ」

 

 木乃香の笑顔を見て、総一は心の底に微かにあったモヤモヤが晴れていくような気がした。

 

「……ったく、下心なく純粋にそういう事やってるんだから……ホント木乃香ってスゲえな」

「ほぇ、なんのこと?」

 

 目を丸くして顔を傾ける木乃香に、総一は「なんでもない」と話を切った。そしてゆっくりと歩みを進め、明日菜とあやかの二人と肩を並べる。

 

「てことで、こっちのチームは雪広と明日菜と、麻帆良男子中等部の加賀美で行きます!」

「構わないわ!」

 

 英子にとって総一は眼中にないようで適当に返事を返す。

 

「ふふっ、目にもの見せてやるわ」

 

 相手チーム三人は明日菜たちに目を向けて、英子は腕を組みながら不敵に笑った。明日菜たち三人もそれと対抗するように並んで向かい合う。

 

「決してネギ先生は渡しませんわ。明日菜さん、加賀美さん、行きますわよ!!」

「そっちこそ、ちゃんとやりなさいよね! 総一も!」

「やかましい。頼まれた手前、木乃香の期待分くらいはちゃんと応えるッつーの!」

 

 各々闘志を燃やして目の前の相手と火花を散らす。麻帆良中等部チームは半ば味方へも対抗心を燃やしているようだが、後ろで見ていた木乃香にはその三人の姿が様になっているように感じた。

 

 

「じゃあ早速、デービーバックファイト開始よ!!」

 

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 






はやく麻帆良祭を終わらせたいと思っているのに、デービーバックファイト(5話ほどを予定)をやるという……。
でも、これは今後のために必要な話となる……はず。



もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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