もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら 作:リョーマ(S)
はやくストーリーを進めたいがためにノリと勢いで書いています。
『それでは皆様、お待たせしましたぁー!!』
マイクを持った男が特徴的な声色で言う。
『ただいまより学園公認第6回デービーバックファイトを開始しまーす!』
男の宣言を聞いて、周りにいた見物人達の歓声が沸いた。先ほど周りにいた野次馬を含めて総一たち一同は麻帆良オックス広場から移動してテニスコートへと着ていた。
『なお司会は私、放送部部員の
いつの間にか現れた“デービーバックファイト運営係”なる人たちによって、テニスコートはすっかり小さなイベント会場と化している。ちなみに、この“デービーバックファイト係”は学園側が設けた正式な係であり、体育祭と文化祭にてそれぞれひっそりと仕事をしているらしい。だが、(今回が第6回目ということから察せるように)デービーバックファイト自体が行われることが少ないため彼らが表に出ることは非常に少ない。
『それではまず初めての方にも分かるように麻帆良式デービーバックファイトについて説明いたします。この麻帆良式デービーバックファイトは、麻帆良学園の生徒が“球技”、“レース”、“学問”を種目に争う学園公認の奪取ゲーム。ゲームに勝ったチームは敗けたチームから、グラウンド・特別教室等の使用権や担任の先生など学園側が管轄しているものを得ることができる。ちなみに今回の場合、聖ウルスラ女子チームが勝てば、次の学期からネギ先生が聖ウルスラ女子高校2年D組の担任となります!』
司会の説明を聞いて、総一はふと疑問を持った。
「……いま思ったけど、これって俺らが勝ったら何がもらえるの?」
「さっき(聖ウルスラチームに)訊いたら、一人につき食券100枚だって」
「へぇー」
そんな明日菜の返答を聞いて、総一は少しやる気が沸いた。
『さぁ、説明はコレくらいにしてさっそくゲームの方へ参りましょう!』
そういって司会がゲームに移ろうとするが、周りにいる人々はすでにこれから何を始めるのか、言われずともわかっていた。両チームの面々もすでにコート別に分かれている。
『第一種目は各チーム二名の代表で行う“テニス”です!』
でしょうね、と総一は思った。
運営係から各チームに二つのラケットが手渡される。
「出場者二人はラケットを持ってそれぞれのコートへお願いします」
運営係の女子生徒はそれだけ言うと足早に去って行った。ラケットを受け取った総一はあやかと明日菜に投げ渡す。急に投げ渡され戸惑った二人だったが、なんとか反応して飛んでくるラケットを受け取った。
「よし、雪広、頼んだ! 天衣無縫なプレイを見せつけてやれ!!」
「なんで私なんですの!?」
突然のことに、思わずあやかの声色が強くなった。
「明日菜は出るのが決まってるんだから、あとは俺かお前のどっちかだろうが。俺はテニス未経験だし」
「ちょっと、なんで私が出るのが決定してるのよ」
「後の種目考えたら当然そうなるだろーが。この“麻帆良祭ルール”とかいうヤツによると、一人につき出場回数は2回以上。行われる種目の『球技』『レース』『学問』の中で2回出るってなったら、明日菜は『球技』と『レース』に出るしかないだろ」
「うぅ……」
総一の言うことに反論できず明日菜は顔を歪めた。勉強が得意じゃない彼女には『学問』の種目に出て勝つ自信がなかった。あやかも半ば納得したように頷いている。
「で、でも私、テニスのルールなんて知らないわよ」
「雑に言うと、卓球と同じだよ」
「そんなこと言われても……!」
明日菜は困ったように口を結んだ。
「雪広は大丈夫だよな?」
「えぇ、私はお稽古で少々かじったことはあります。加賀美さんは?」
「俺はマンガで大まかなルールくらいは知ってるし、遊びで打ち合いだけやったことがある」
「じゃあ、委員長とアンタで出なさいよ。次の『レース』に勝って先に2勝しちゃえば、そこで終わりでしょ!」
「…………確かに」
明日菜の言い分にも一理あった。ここで総一とあやかでペアを組み、次の『レース』で二人のどちらかが明日菜と出て勝ちを決めれば、その時点で麻帆良中等部チームの勝ちが決定する。
「……どうする?」
「そうですわね……」
総一は首を傾げてあやかに判断を求めた。思えばこのゲーム、彼は木乃香の代わりでしかない。意見を言うのは“あり”だろうが、自分が中心になって決めるのは“違う”気がする、と総一は考えた。
あやかは顎に手を当ててどちらが得策か考える。
「どうしたの、はやくしなさい!」
すでにコートに立った英子が大声であやかたちを急かす。聖ウルスラ側のコートにはすでに英子としいがラケットを握って立っていた。
「……仕方ありません。ここは早期決着のため最初の2種目で終わらせる作戦で行きましょう!」
「そっ。んじゃ、俺と雪広で行くわけな」
総一は明日菜からラケットを受け取る。特に変わった所はない普通のラケットだ。重さに差はあれど長さ的には彼がいつも使っている
「私が文句いってて言うのもアレだけど……頼んだわね」
「えぇ」
「まーかせーなさーい」
どこかバツの悪そうにしている明日菜に応えながら二人は自陣のコートに立った。正式なテニスというわけではないので、開始前に握手とかはしないらしい。
ポジションはそれぞれ英子と総一が前衛、しいとあやかが後衛だ。
「ん?」
両チームが準備を終えると、運営係の面々が流れるような動きで両側のコートの後ろにどこからか持ってきた大きなパネルを配置した。
そのパネルはまるでテレビで使うような作りをしており、30個ほど存在するマスは一マス一マスが回転するようになっていた。そしてすべてのマスに麻帆良の校章が描かれている。幅はテニスコートと同じくらい、高さは総一の身長より少し高いくらいだ。
「…………なんだよ、これ?」
総一は奇妙なものを見る目でパネルを見た。彼からは見えなかったが後衛にいるあやかも似たような表情をしている。
『それでは第一試合、“ストラックアウトテニス”を始めまぁーす!』
「ストラックアウト?」
普通のテニスをするのではないのか、とあやかが首を捻った。
『ルールを説明するよー! この競技はテニスと同じく相手のコートへ球を打ち返す競技! 打ち返せなかった場合は相手チームに1ポイントが入るよー。100ポイント取った方の勝ちだー。サーブ権はポイントを取った方に与えられるよー』
「はっ!? 100ポイント?」
総一は驚きのあまり大きな声を出して糸見水を見た。一般的なテニスの場合、打ち返すことができなかったりした場合に1ポイント取れることができ、1ゲームで4ポイント、6ゲームで1セットとなっている。総一を含めた普通のテニスのルールを考えていた面々は、100ポイントという数に「多すぎる!」あるいは「長すぎる!」と不満を洩らした。
『もちろん、普通の方法でやってたら日が暮れてしまう! そこで使用するのが後ろのパネルだ!』
選手と観客たちはそれぞれ二つのパネルに目を向けた。
『そのパネルの裏にはそれぞれのマスに15
「まんまテニスのストラックアウトだな。どっか子供が考えたみたいだ……」
総一は眼を細めて観察するようにパネルを見た。パネルのマスはどれもそれなりに大きく、ボールがパネルに当たれば、どこかしらのマスに当たるような作りになっている。
『だけどー、マスの中には点数以外に、“罰ゲーム”が書かれていたりもするから、そこは要注意だぁー!』
「罰ゲーム?」
「なんですの、ソレ?」
『それは出てのお楽しみー!』
総一が眉を寄せ、あやかが訊ねるが、糸見水は指を横に振る仕草をして話を切った。
『それでは早速始めるよー!! まずは聖ウルスラ女子チームのサーブ!』
コートの縁に立っていた、しいにボールが渡される。
「いつぞやの借りを返してやるわ!」
「望むところです!」
英子とあやかは闘志を燃やしながらお互いに相手を睨みつける。そんな二人をよそに、総一は相手のしいがサーブのモーションに入るのを見て、いつでも動けように腰を低く取った。
『聖ウルスラ、トゥーサーブ、プレーイ!』
糸見水のユニークなコールが発せられると、しいはボールを上空に投げ、サーブを打った。
試合が始まり、あやかと総一は気を引き締める。しいの打ったサーブをあやかは特に難しい表情を見せることなく、淡々と返した。
「先手必勝!」
そう言って英子はあやかの返球をパネルに向かって打ち返す。ボールはあやかのいない、ガラ空きになっているゾーンへまっすぐ飛んだ。
「よっ!」
「なっ!?」
最初の返球を決め球で打ち返してスキをついたつもりだった英子であったが、彼女の打ったボールは横から手を伸ばした総一によって防がれてしまった。
ボールはラケットに当たるとパコーンと間の抜けた音を出して、あらぬ方向へ飛んでいく。
『おーと、英子選手の力強いショットを防いだが、加賀美選手、ミスショット! 聖ウルスラ女子チームに1P!』
――麻帆良(中)VS聖ウルスラ(高)『0:1』
糸見水の横にある得点板に点数が加算された。
「あららぁー」
総一はラケットをいじりながら飛んでいったテニスボールに目をやった。
「加賀美さん、何してるんですか……」
「気にすんなよ、たかが100点中1点入っただけじゃねぇーか」
あやかは呆れたような声で言うが、総一は気にせず「手首じゃなくて体幹を回して……だっけ?」とラケットを振った。
再度、しいにボールが渡され、彼女はサーブする姿勢に移る。そしてまた、しいの打ったサーブをあやかが撃ち返した。
「はぁ!」
「ふっ!」
「ほっ」
「ふん!」
今度はお互い、堅実に球を返していく。
「ハァァっ!!」
やがて、あやかのショットが聖ウルスラ女子チームのパネルに直撃した。
ボールが当たったマスのひとつはくるりと回転して『30P』という文字が表示される。
『あやか選手のショットが決まった! 麻帆良中チームに30P!!』
――麻帆良(中)VS聖ウルスラ(高)『30:1』
点数が増え、観客の声が沸く。
「よし!」
「おぉ」
点を決めたあやかはギュッと拳を握ってガッツポーズをした。総一も綺麗に決めた彼女のプレイに目を見張り、客席にいた明日菜や木乃香も「良いわよ委員長ぉ!」「その調子ぃー!」と声を上げる。
「ちっ!」
「ふん、たまたま上手くいったからって調子にのらないことね」
対して、英子としいは不満そうに舌打ちした。
「このままどんどん行きますわ!」
点を決めた麻帆良中チームにボールが渡される。あやかはボールを数回バウンドさせると綺麗なフォームで「はぁ!!」と声を張りサーブを打った。ボールはまっすぐ相手コートの方へ飛ぶ。
聖ウルスラ女子チーム後衛のしいはリターンのためにボールを追った。
そのしいが打ち返した球をあやかが返し、その球を英子が返した。このゲームの得点はパネルからの加点の方が大きいため、お互いベースラインを超えるようなショットを打っている。
ラリーが続き、やがて総一が球の軌道先に走った。
「ラケットを下から上ぇ、にィ!!」
「なっ!!」
さっきまで素人のような動きをしていたにもかかわらず、総一が放ったボールの球速に、英子は驚きを隠せなかった。そのあまりの速さに対応できず、ボールはそのままガコッとパネルに当たる。
総一の当てたパネルのマスには『15P』と書かれていた。
「おぉ!」
ボールを打ってからパネルに当たるまでの、一連の動きが上手くいったことに、総一自身も驚きを隠せなかった。
『またまた決まったァ! 麻帆良中チームに15P!!』
――麻帆良(中)VS聖ウルスラ(高)『45:1』
また「ワァァーー!!」と周りにいる観客の声が響く。
続けて得点を取られたことに、英子たちは腹立たしげに奥歯をかんだ。
「あの男子……雪広あやか達を見つけた時といい今のといい、かなりのくせ者ね。素人と思って油断したわ」
あやかは唇を尖らせ、感心を隠したような顔で総一に目を向けた。その表情はまるで彼に『見直しました』と言っているようだった。
「……やりますわね」
「サーンキュ」
確実に点数を増やし、総一は「よし、次!」と意気込んだ。サーブを打とうとするあやかの顔にも微かに余裕がうかがえた。
「まだまだ行きますわよ!」
そう言って、あやかはサーブを打った。それからまた何度か返球が続く。
「はっ!」
「フン」
「たぁ!」
「ふっ!」
聖ウルスラ女子チームがテニスを得意としていないからか、あるいは2回連続で得点を入れて調子がついているのか、試合は総一とあやかが優勢となっている。やがて、またあやかのショットがパネルをとらえた。
「おぉ、また当たりぃ!」
ボールがパネルに当たる直前、総一が声を洩らした。
しかし、表示されたパネルには数字ではなく『bunny』という文字列が書かれていた。
それを見た総一とあやかは首を傾げる。
「バニー?」
「なんですかアレ?」
『おーと、ここで出たー! 罰ゲームぅー!!』
表示された単語に全員が疑問を持つ中、糸見水が一人楽しそうに声を上げた。
「罰ゲームって……」
「そういや、最初に言ってたな……」
聴いた感じ、あまりいい予感がしないあやかと総一の顔に不安の色がさした。
『罰ゲームは、そのマスにボールを当てたプレーヤーが受けてもらうよー! なぉ罰ゲームに従わない場合、そこでそのチームの敗けが決まってしまいまーす!』
「なっ!」
つまり今回の場合、罰ゲームマスを引いたあやかが『bunny』という罰ゲームを受けなければ、そこで聖ウルスラ女子チームの勝ちが決まるわけだ。
あやかは悔しさから「くッ!」と顔を歪めた。
「うっ、仕方ありませんわね……。それで、その罰ゲームとは何ですの?」
『雪広あやか選手の引いた罰ゲーム、“bunny”はコチラぁ!』
糸見水は手で隣に立つ運営係の女子生徒を示した。その女子生徒は糸見水の言葉を聞くと、手に持ったとある“衣装”を皆に見えるように持ち上げた。
その“衣装”が何なのか、罰ゲームの名前から理解した総一は「バニがっ!!」といつもなら決して出さないような驚いた声を洩らした。当の本人であるあやかは何なのか分からず首を傾げている。
『雪広あやか選手にはこのゲームが終わるまで、この“バニーガールの衣装”を着てもらうよー』
「えっ!!」
客席で聞いていた明日菜と木乃香も「へ?」と目を丸くする。
「なッ……、ななな、ななッ!!」
あやかはみるみる顔を赤く染め、口をパクパクと動かして絶句した。抗議しようかとも思ったが、すでに教えられた通り、罰ゲームに従わなければ自分たちの敗けが決まってしまう。
そんなあやかをよそに、観客たちからは歓声が鳴っていた。
「…………どんまい」
あやかの後ろに立った総一は同情的な表情をして彼女の肩をポンポンと優しくたたき、着替えるように促した。
――数分後。
「うぅぅぅぅ!!」
着替えを済ませたあやかがコートに戻ってきた。恥ずかしさからか、あやかの顔はもうこれ以上ない程に真っ赤になっている。
彼女のいまの格好は、網目模様がついた黒いパンストの上から、身体の曲線がくっきりと浮き出て肩や背中を大きく露出したハイレグレオタードを着ている。靴はピンヒールをはき、頭にはウサギの耳を模したカチューシャをしていた。その姿はバニーガール以外の何モノでもない。そして着ている衣装が黒いせいもあり彼女の金髪が、さっきより輝いて見えた。
あやかは自身の格好を周りの眼から隠すように、腕で身体を抱き身を小さくした。しかし、そのせいで彼女の胸部が盛り上がり、かえって人目を引いていた。
「オォォォ!」
「キャーーッ!」
「かわいいィーー!」
そんな彼女の姿に周りの観客の歓喜の声が沸く。周りの男の眼は皆総じてハート型になっていた。
『バニーガールとなった雪広あやか選手、そのセクシーさに観客の皆はメロメロだよー!』
あやかは俯きながら、なんとかコートに立つ。そんな彼女の姿を見て普段は喧嘩ばかりしている明日菜すらもあやかに同情した眼を向けていた。そして同時に、このゲームに自分が出なかったことに、良かったと心から安堵した。
「………」
「……な、なんですか?」
帰って来たあやかの姿をできるだけ見るまいとしていた総一は、どうしても気になり無言でチラリと眼を向けた。そんな総一の反応に気づいたあやかは、伏せ目がちになりながらもおどおどと訊ねた。
「いや……エロいなぁ、と……」
「ッ!!」
サラッと言った総一の言葉を聞き、あやかの心臓が(羞恥心から)激しく脈打った。そしてあやかは反射的に大きく腕を振り下ろして、手に持っていたラケットをぶん投げた。
「ぶベラッ!!」
後頭部に走った痛みに悶ながら総一はあやかを睨みつける。
「ちょ、おま、なにもラケット投げつけることはないだろ!?」
「ふん!」
いつも凛とした声をしているあやかだったが、今の彼女の不貞腐れた声は、裏返って幼い少女のようになっていた。
「あ、あまり、こちらを見ないで下さい!!」
「……おまえ、そんなんでゲーム続けられるのかよ?」
あやかの態度に、総一はヤレヤレと首を振った。そしてそのまま彼女の履いているピンヒールに目を向ける。爪先立ちしているかのようなその靴は明らかに走りにくそうで、満足に動けるようには思えなかった。
そんな総一の視線を、あやかは自身の太もも辺りへ向けられていると思い、慌てて手で隠した。
「このケダモノ!!」
「はぁ? なに勘違いしてんだよ?」
顔を赤らめて中腰のような体勢で下から見上げるようにしているあやかに、少しドキッとした総一だが、いわれもない非難をあびせられ、口を歪めて睨み返す。
「アハハハッ、滑稽ね。雪広あやか!」
「うるさいですわ!!」
あやかはお腹を抱えて笑う英子を睨みつけるが、格好が格好なだけにイマイチ威圧感がない。
「……これがホントの“雪うさぎ”か」
「い、いいかげん黙りませんと、今度は本物の“雪ウサギ”を投げつけますよ!」
そんな彼女の姿はまるで虚勢をはる小ウサギのようだった。
TO BE CONTINUED ...
はたして雪うさぎ(雪広さんのバニーガール姿)の需要あるのだろうか?
PS:
1ゲームにつき一話と考えていましたが、長くなったので分割しました。
もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?
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ネギ・スプリングフィールド
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神楽坂 明日菜
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雪広 あやか
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エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
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超 鈴音