もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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土下座更新。<(_ _;)>

読書とかスマホゲーとか映画鑑賞とかポケモンの短編執筆とか、色々やってたらこんなことに……。
いつの間にか元号も変わっちゃって。

皆さま、お待たせしました。




69. ドッジボール

 

 

 

「「ドッジボール?」」

 

 総一と明日菜は揃って首を傾けた。その横では英子とビビが勝利を確信したように笑っている。

 

「って、どういうことよソレ!」

「すみませーん、なんだか仕組まれてる臭いがプンプンするんですけどぉー!」

「あらぁ、何のこと? 証拠もないのに憶測で決めつけないでくれない?」

 

 二人は横を向いて英子を見た。当の本人は『悪巧み成功』といった感じの笑みを隠そうともせず、とぼけたように二人の言葉を切り捨てた。

 

「ふふーん、()()()()次の科目(テーマ)の内容は私たちの得意としている“ドッジボール”みたいね。これで借りを返せるってもんよ!」

「なにが奇遇よ! アンタ等いったい何を――」

『それでは両チーム、場を設定しますので一度ステージからお降りくださぁーーい』

 

 英子の言葉に問い詰めようと明日菜が声を上げるが、残念ながらそれは糸見水の声にかき消された。

 

「へへーん。ま、せいぜい頑張ることね。今回は前みたいにはいかないでしょうけどぉ。あはっはっはっ」

「ぬぅぅ」

 

 笑いながらステージを降りる英子を睨み付け、膨れっ面のまま明日菜は総一と共にステージを降りた。

 

「ドッジボールってアイツ等の得意種目よ。絶対アイツ等が裏でなにかやってるわ!」

「………」

 

 次の種目に納得できない明日菜は、心中にある不快感を吐き出すように声を荒げた。その横では、総一が「うーん」となにかを考えるポーズで立っている。明日菜と同様、相手の悪巧みに納得がいかなかった彼であったが、ステージ上にいた時とは打って変わって今は静かになっている。

 

「……まぁ、でも良かったじゃん」

「どこがよ!」

「難しい問題解くより、こっちの方が断然勝てる気がするだろ?」

「それは…………そうね、確かに……」

 

 明日菜は噛みつくような勢いで総一に目をやったが、彼の言葉を聞いて考えが改まり、徐々に落ち着きを取り戻す。

 

「せっかくだ、返り討ちにしてやろう」

「……そうね、コテンパンにしてギャフンと言わせてやるわ!」

 

 二人はニヤリと笑って、お互いに握った拳の先をカツンと当て合った。

 

 

 

 やがて時間が経つと、あっという間にステージが撤去され、代わりにドッジボールのコートが用意された。といっても、そのドッジボールのコートというのはテニスコートのことであり、ステージそのものはテニスコートの上に設けられていた為、セッティングにはそれほど時間がかからなかった。

 

『さぁーて、ではドッジボールを始めるよーー!』

 

 始めるに際して、糸見水によってドッジボールのルールの説明が行われた。

 

 

 今回行うドッジボールのルールは、2対2で行うために用意された『アウト&チェンジ』と呼ばれるルールを除いて、一般的なドッジボールとあまり変わらない。

 両チームは内野と外野に別れ、内野にいる人間をボールで狙っていく。内野のプレイヤーは身体にボールが当たる、あるいはボールを取り損ねたらアウトだ。

 そして今回のドッジボール特有の『アウト&チェンジ』ルールについてだが、これはその名の通り内野のプレイヤーがアウトになったとき、外野と内野が入れ替わるというものだ。よって、このゲームでは内野の人間がいなくなって試合が終わるということはない。

 代わりに、相手を当てた回数を得点とし、先に5ポイント取った方の勝ちとなる。

 

 

 糸見水の説明を終えて、両チームの二人は自陣の枠の中に入った。

 

「泣いても笑ってもコレで勝敗が決まる、か……ここはイッチョ気合い入れていこう、明日菜」

「えぇ、言われなくても全力で行くわよ。総一も油断するんじゃないわよ!」

 

 二人は自陣の中央で相手陣にいる英子とビビを見据えながら身構えた。肩を並べてまっすぐと立っているその姿は、まるで信頼し合っている戦友同士が敵と対峙しているようである。周りにいる観衆も二人から毅然とした何かを感じ取っていた。

 

「「よし、じゃあ行こう!」」

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

『それではジャンプボールを行うプレイヤーは前へ』

 

 糸見水に従い、中央の線を境にして英子と総一が向かい合った。ちなみに、この競技のジャンプボールは自陣の内野にボールを弾くのではなく、審判が投げたボールをキャッチするルールだ。

 

「あらぁ、てっきり神楽坂明日菜が来ると思ったけど……」

「なにか問題が?」

 

 薄ら笑いを浮かべる英子に、総一は怪訝な顔を向けた。

 

「別にぃ、意外にも()()()()()()が来たもんだからぁ、拍子抜けしただけよ。これは先手は貰ったも同然ね」

「………」

 

 英子はニヤニヤしながら見下すように腕を組む。そんな彼女を総一は無表情で見返した。

 

(……ちっ、“煽り”と分かってもムカつくな。てか俺の方が明日菜より背ぇ高いっての!)

 

『それではー、ゲーム開始ィィ!』

 

 総一が内心で舌打ちしていると、糸見水の開始宣言がなされた。ボールは空高く投げあげられ、英子はそれが落下し始めると同時に高々とジャンプした。

 彼女の手がボールに触れる。

 

「なっ!!」

 

 予想通りに先手はもらったと確信した英子であったが、視線を上にあるボールから目の前に移した途端、彼女の口から驚きの声が洩れた。

 彼女の目の前では、ボールに見向きもせずに総一が自陣へ小走りしていた。彼は自陣の中央に立つと振り返って英子を見据える。

 

「先手は差し上げますよ」

「ふんっ、なめたことしてくれるじゃない!」

 

 英子はジャンプボールで手にしたボールを持ち直す。

 

「まぁいいわ。先手を譲って虚をついたつもりなんでしょうけど、こんなもので揺らぐ私たちじゃないわ。アンタは知らないでしょうけど、なにせ私たちは――」

「部活でドッジボールしてんでしょ。県大会ベスト4だったか準優勝だったか忘れましたけど、分かってますから、早くボール投げてくれませんか?」

「関東大会優勝よ!」

「あぁ、じゃあ全国大会で大敗したんですね……」

「うぐッ!」

 

 総一がなにかを察したかのような生暖かい眼(同情的ながらも嘲笑の混じった眼)を英子に向けると、彼女はキィッと眼をつり上げた。ボールを持った手にも、うっすらと青筋が見える。

 

「アイツ、シメル!」

「オーケー、バチこーい!」

 

 総一は手を振ってさらに英子を煽った。そのなんともお気楽な様子が、さらに彼女をイラつかせた。

 お互い配置につき、いよいよ本格的に試合が始まる。ちなみに、すでに両チームの外野プレイヤー(明日菜とビビ)は陣の外に出ている。

 

「こんにゃろォォ!」

 

 スゴい剣幕でボールを投げる英子に対して、総一は腰をやや低くとって身を構えた。

 

『これはぁー! 英子選手、開始早々に見事な豪速球ゥ!』

「……どこが?」

 

 半ば直線上にボールが投げられ、その速さから、糸見水の声に熱が増した。しかし、総一は何食わぬ顔でそのボールを受け止める。

 受け止めた時のドンッという音が、その威力を物語っていた。

 

「なっ!」

『おーと、しかーし! 加賀美選手、英子選手の速球を臆することなく受け止めましたぁーー!』

 

 あまりの呆気なさに、英子だけでなく周りの客も一斉に驚いた。

 当の総一は何事もないように取ったボールを持ちかえて、片手でボールを構える。

 

「じゃあ、今度はこっちが……」

 

 総一は「うりゃ!」と声を出しながら、腕を振り下ろした。ボールはまっすぐ英子に向かうが、その速度はさっき英子が投げたものよりもずっと遅かった。

 はっきりと目で捉えたボールを見ながら、英子はニヤリと余裕の笑みへ表情を変えた。

 

「あははっ! 大したことないわね!」

『反撃に加賀美選手も速球で英子選手を仕留めにかかるぅー。ですが流石ドッジボール部関東大会優勝者、その速球をものともせずに華麗に受け止めたぁー!』

 

 小馬鹿にしたように嗤う英子に対して、総一は「ちぇ」と口を尖らせる。その表情は英子にボールを止められて悔しんでいるというよりも、少しがっかりしているようであった。例えるなら、プロ野球選手のバッターが草野球選手の投球に対してフライを上げてしまったような、そんな顔だ。

 

(加減しなきゃと思ったけど、流石に今のは“なめプ”し過ぎたか?)

「こらぁーー、総一、真面目にやんなさいよアンタ!」

 

 そんな中、明日菜には長年の付き合いから彼が本気でボールを投げていないことがはっきりと分かった。

 明日菜に怒鳴られ、総一の顔が更に機嫌の悪いものになる。

 

「ある意味(怪我させないよう)真面目にやってるよ!」

「どこがよッ!」

 

 今まで積み重ねてきた鍛錬や修行(あとエヴァンジェリンとのケンカ)のおかげで、総一の基礎身体能力は常人の域を超えている。彼が全力を出してボールを投げれば、普通の人の骨を折る程度のことは簡単にできてしまう。またはボールそのものがもたないだろう。

 よって総一は、このゲームの中で加減してボールを投げるほかなかった。

 

「ビビ、パスッ!」

「オーケー!」

「させるか」

 

 外野にいる仲間に向けて、英子はボールを投げあげた。ボールは放物線を描いてビビの元へ飛ぶ。しかし、ボールがラインを越えて外野に出る前に、高く飛び上がった総一によって、そのパスは止められた。

 

 ――おォォ!!

 

「「なっ!」」

『これはぁーー、加賀美選手の見事なジャーンプ! 相手チームのパスを防ぎましたぁ!』

 

 周りの面々は感嘆した声をあげ、糸見水の実況に熱が入る。総一は間髪いれず、そのままボールを投げた。

 

「明日菜ぁ!」

「まかせて!」

 

 総一の投げたボールは明日菜のいる所までまっすぐ飛んだ。明日菜は総一の言わんとしていることが分かっていたかのように、ボールを受け取り、そのまま投げ放った。

 

「……はっ! しまっ、あたッ!」

 

 半ば呆然としていたせいで、英子の反応が遅れた。結果、振り返った直後、彼女の肩にボールが当たった。

 

『英子選手、アウト!』

「よし!」

 

 英子のアウトが宣言され、明日菜は腕をグッと引いてガッツポーズを取った。麻帆良中チームに1ポイントが入る。

 

「ちっ、油断したわ」

「あんなのまぐれよ英子。気にしないで」

 

 ルールに従って、英子が外野に行き、代わりにビビが内野に入る。

 ボールは英子に当たったときに外野側へ出ていたため、明日菜から再開された。

 

「総一、パス!」

「はいはーい」

 

 明日菜からボールを渡され、すぐに総一は投げる体勢に入った。しかし、相手コートにいるビビは、すでに体を総一の方に向けており、いつでもボールを取れるように構えていた。

 

「……明日菜、返すぞぉー!」

 

 そう言いながら、総一は明日菜を指した後、すぐに投げるモーションに入り、腕を振り下ろす。

 ボールは総一の手から放れ、宙に浮いた。

 

(ソル)!」

 

 しかし、ボールがセンターラインを越えようとしたとき、ボールがある地点に総一が姿を現した。彼はゆっくりと上昇するボールを再度掴むと、即、ビビに向かってまっすぐ放り投げた。

 

「と見せかけて、ストレートぉ!」

「うっ!」

 

 本来なら放物線状に走るはずだったボールの軌跡は、総一の手によって方向を変えられる。その急な方向転換に、ビビは驚き、迫ってくるボールに対処することができなかった。

 

『おぉーと、連続アウトぉ! 今度は加賀美選手がアウトを奪いましたぁー!』

 

 常人ではあり得ない動きを目の当たりにして、周りの観客が興奮したように声を洩らす。

 

 

 

 現状、麻帆良中チームが2ポイント、聖ウルスラ女子チームが0ポイントである。

 そしてビビと替わって、また英子が内野へと入った。

 

「くッ、こうなったら……」

 

 予想外に手こずり、かつ連続で相手に点を与えたことに焦りを覚えた英子は、奥歯を噛みながらコート横に立っていた審判へ顔を向けた。

 

「審判、ボール追加よ!」

『おーと、ここで英子選手が“追加”を宣言! 宣言した英子選手にボールが渡されまーす!』

「「はぁ?」」

 

 彼女の言い放った言葉に、総一と明日菜は揃って頭の上に『?』を浮かべる。しかし、何事もないように運営係の審判は、どこからかピンク色のボールを取り出し、英子に渡した。

 英子はそのボールを取ると、なにかをたくらむようにニヤリと笑った。

 

「何そのオリルール?」

「ちょっと卑怯よ!」

「どこがぁ? ちゃんとルールに沿った行いよぉ」

 

 総一は呆れたように目を細め、明日菜が抗議するが、英子は薄く嗤いながら一蹴した。

 

『その通ぉーり! このドッジボールではプレイヤーが宣言すれば、ボールを1つだけ追加することができるんだよぉ!』

「……どっちにしろ卑怯だろ」

「はっ、知らない方が悪いのよ!」

「知らされてないなら、悪くないと思います!」

 

 総一の洩らす言葉を尻目に、英子は「さぁ、勝負はこれからよ」と言うと彼に向って思いっきりボールを投げる。

 

「はッ!」

「よっと!」

 

 だが、真っ正面からまっすぐ飛んできたこともあり、総一は、また簡単にそれを受け止めた。

 

「ちっ、取られたか……ふふっ、まぁいいわ」

 

 英子がこっそり嗤っているのをよそに、総一はすぐに両手で持ったボールを片手に持ち変え、助走をつけてセンターラインぎりぎりまで迫った。

 

「とりぃ」

『ちなみに、そのピンクのボールは女の子が投げて当てた場合しかポイントが入りませんので、ご注意を!』

「先に言えェ! このポンコツ運営!」

 

 とりゃあー、と気合いを入れながら投げようとした総一だが、糸見水の言葉を聞いて、足を引きずって助走を止め、つり上がった眼を糸見水に向けた。

 

「ちっ、明日菜ァ!」

 

 追加されたように解説されるルールに、釈然としない総一だったが、とりあえずピンクのボール(これ)は自分が持っていても仕方がないと思い、明日菜へ投げ渡した。

 

(あれ? そういえば元々あった(もう一方の)ボールは……?)

「総一、後ろォ!」

 

 最初に使っていたボールの行方を総一が考え出したのとほぼ同時に、外野の明日菜が彼に向かって大声をあげた。

 

「ッ!」

 

 明日菜の警告を聞いて、後ろからボールが飛んでくることを察した総一は、前方に飛びながら、くるッと振り返り、そのままボールを手に取る。ボールはまっすぐ飛んで来ていたため、彼にとっては取るのはそう難しいことではなかった。

 

「「なッ!」」

『加賀美選手のダイナミックキャーッチ!! この男、後ろに眼があるのかぁーー!?』

 

 総一の反応速度と身のこなしに、周りで見ていた人たちは皆、度肝を抜く。

 

「今度こそ、とりゃあー!」

 

 ボールを手にした総一は、そのまま再度振り返り、英子に向けてボールを投げ放った。ボールは直線の軌跡を描き、英子に向かって真っすぐ進む。

 

「ふん、これくらい……!」

「違う英子! そっちじゃない!」

「えッ!?」

 

 正面から飛んでくるボールを取ろうと身構えていた英子は、外野から聴こえてきたビビの声に反応して後ろを向いた。

 瞬間、英子は自身の腹部と背中に衝撃を受けた。

 

「うっ!」

『英子選手、アウト!』

「「よっしゃー!」」

 

 審判のアウト宣言が聞こえて、総一と明日菜は揃ってガッツポーズをする。

 

「くっ、汚い真似を!」

「いや、先輩方もやったでしょうが……!」

 

 英子は外野へと向かいながら、恨みのこもった眼で総一を睨む。そんな彼女に対して、総一は少しむくれた表情で返した。

 

「ふん! まぁいいわ。私たちから3ポイント取って良い気になってるんでしょうけど、こんな修羅場、ドッジボール関東大会を優勝した私たちにとっては何度も潜り抜けてきたこと!」

「……あのぉ、英子先輩」

「なによ!」

「そんなこと言ってるうちに、相方の人、当てられてますよ?」

「うなッ!」

 

 総一に言われ、英子が眼を向けた先では、腕を振り下ろした明日菜と体勢を崩したビビ、それに加えて、ピンク色のボールがどこかへ飛んでいく光景が広がっていた。

 

『ビビ選手、アウト!』

 

 審判の宣言から、自分のチームがアウトカウントを取られたことを、英子は理解した。

 麻帆良中チームの得点が4ポイントとなり、あと一回アウトを取られれば、聖ウルスラ女子チームの敗けが決まる。ゲームはすでに大詰めを迎えていた。

 

「もぅッ、なんなのよアンタら」

 

 そんな自身の現状と、総一と明日菜の理不尽なまでの強さに、英子は声を荒立てた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

「ほぇぇ、やっぱり“二人も”息ピッタリやなぁ」

「本当ですわねぇ…………も?」

 

 一般人にまじって、あやかと木乃香は試合の様子を見守っていた。二人の表情に不安の色はなく、もう勝負は決まったというように安心しきった表情でいる。

 

「それにしても、およそ5年ぶりくらいでしょうか? あの二人があーやって共闘するのは……」

「せやなぁ。初等部の頃は体育の時間とかによーやっとったなぁ」

 

 そう言いながら、二人は昔の記憶を思い起こした。

 初等部の頃、体育や運動会の時、総一と明日菜は対決する種目があると、決まって(あやかも一緒に)火花を散らして争い合っていた。

 しかし、そんな中、二人が同じチームになった時、なぜか彼らは途轍もないコンビネーションを発揮していた。リレーでは競争の果てに麻帆良学園初等部において歴代最速タイムをお互いにたたき出し、運動会の玉入れでは地面に落ちた玉を全部カゴに入れ、体育のサッカーでは少年サッカークラブに所属する少年たちを半泣きにするほどボロボロに負かし、そしてドッジボールでは今のように、お互いに外野と内野から相手チームを追い詰めて全滅させることが、数えきれないほどあった。

 こういうことが積み重なり、一部の同級生から『最悪の二人』と言われたが、本人たちは知らない。

 

「波長がおーてるんかなぁ」

「えぇ、そうでしょうね。あれで本人達は無自覚なのですから、ほどほど呆れますわね……」

「そう? でも委員長も、さっき総くんと明日菜と息ピッタリやったえ?」

「私の場合、お互いに相手の様子を見てフォローしているだけです。ですが、あの二人の場合、相手のことは意識せず自分のやりたいように立ち回って、その結果、あのコンビネーションを発揮しています。私では出来ませんわ……」

「へぇ、そうなんや……あはは、なんや委員長すこし寂しそぉ」

「なッ! そ、そんなことありませんわ!」

 

 にっこりと笑う木乃香から表情を隠すように、あやかはプイっと顔を横にやった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 ――ピッ、ピィィィィ

 

 高々な笛の音が辺りに響き、周りにいた面々はシーンと静まりかえった。

 

『ゲームセットっ!』

 

 糸見水が声を張った。

 

『聖ウルスラ女子チーム、アウト回数満5ポイントにより敗けとなります。そして両チームには取ったアウト回数×10ポイントが与えられます。はたまたそしてぇーー!』

 

 

 麻帆良中チーム[ 110 ポイント]

 

 聖ウルスラ女子チーム[ 80 ポイント]

 

 

『得点は110ポイント対80ポイントで見事第三科目を勝ち取り、“麻帆良ウルトラ試験!”を制したのは麻帆良中チーム! よってこの第6回デービーバックファイトの勝者はァァ……』

 

 糸見水が息を吸って、一瞬だけ静寂が流れた。

 

『麻帆良中チィーームッッ!』

 

 ――ワァァァーー!!

 

「ま、負けた……」

 

 周りの甲高い声が響く中で、聖ウルスラ女子の三人はその場で膝をついた。

 

「余裕すぎ……」

「よくよく考えたら負ける理由がないよなぁ」 

 

 対して、総一と明日菜は自身の勝利を喜ぶわけでもなく、あまりにも呆気なく勝てたことに拍子抜けしていた。

 

「でも、結果的に勝てたわけだし。めでたしめでたし、ってことで……」

「ま、まぁ、そうねぇ……ふふっ」

 

 可笑しな幕切れに、明日菜は自然と笑みをこぼす。そして、ふと横から誰かの視線を感じた。そっちに顔を向けると、総一がなにかを観察するような眼で自分を見ていた。

 

「な、なによ?」

「いや、別に」

「……むぅぅ」

 

 明日菜は怪しいものを見る眼で総一に訊ねたが、彼は眼を逸らして口を閉ざした。

 

(少しは気分転換できたみたいだな……)

 

 総一がそんなことを思っている横で、明日菜は「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」と、ジトーっと彼を睨む。

 

「明日菜ぁー、総くーんっ!」

 

 そんなことをしていると、一般人が見ている場所の方から木乃香とあやかがやってきた。

 

「やったなぁ」

「一時はヒヤヒヤしましたが、よくやりましたわ。お二人とも!」

「なんでアンタはそんな偉そうなのよ……」

「これでネギ先生があの年増おばさま達に盗られることもありませんわね!」

「聞、け、よ!」

「ショタコンモードの雪広になに言っても無駄だ。諦めろ」

「なははぁ……」

 

 自分達のチームがデービーバックファイトに勝ったことに、あやかは一人手を合わせて喜ぶ。そんな彼女を明日菜は眼を細めて睨み付けた。その光景を見て、総一は頭を抱えて呆れ果て、木乃香は苦笑いした。

 彼らのそばでは、運営係が『今回、観覧していただいた方の中で是非とも麻帆良式デービーバックファイトを開催したいという方がいらっしゃれば、我々デービーバックファイト運営係まで!』と自分達の宣伝をし、敗けた聖ウルスラ女子の三人は、余程悔しかったのか涙で地面を濡らしていた。そのあまりのどんよりとした雰囲気に、今は声をかけずそっとしておこうと周りの誰しもが思った。

 

「みなさぁーーん!」

 

 そんなやり取りをしていると、バトル中ずっとてるてる坊主のように拘束されていたネギ(とカモ)が解放され、総一達のもとへ駆け寄ってきた。

 

「明日菜さん、委員長さん、加賀美さん、どうもありがとうございました!」

「いいえ、これくらい大したことありませんわ」

「まったく、次から気を付けなさいよね」

「まぁ、今回は少年も被害者なわけだし、気にしなさんな」

 

 ペコリと頭を下げてお礼を言うネギに対して、三人はそれぞれ返した。

 

「でも折角だし、後でなにか奢って貰おうかしら。たくさん動いてお腹へったわ私」

「明日菜さん、貴女って人は……!」

「あははっ。別に構いませんよ。委員長さん達の分も奢りますから」

「そんな、ネギ先生にご馳走して頂くなんて!」

「俺はパス。流石に年下にメシ奢られるのは忍びない」

「ウチもええよ。今回ウチなんもしてへんし」

 

 イベントも終わりをむかえ、ようやく総一たちは自分たちの時間を取り戻す。

 

「それにしても、だいぶ時間を取られたな」

「そうですわね。気が付けば、もう日が暮れています」

「この後どうします? あっちの方にあるイベントエリアでも行きましょうか?」

「あっ、それダメかも」

 

 今後についてのネギの提案を聞いて、総一は異を唱えた。

 

「たしか俺、この時間イベントエリアに和泉といたわ」

「えっ、総くん、亜子とデートしてたん?」

「いや違うから」

 

 木乃香の天然ボケに、総一は苦笑いで訂正した。

 

「じゃあ、クラスの出し物を見て回りませんか? 実は僕、自分以外のクラスの出し物まだ見てなくて、他のクラスさんの出し物とか見たかったんですよ」

「いいですわね」

「賛成!」

「異議なーし」

「ウチもええよ」

 

 再度ネギが提案すると、今度はあやか、明日菜、総一、木乃香の全員が賛同した。

 

「では、さっそく行きましょうか」

「「「「おぉーー!」」」」

 

 雪広の言葉に応えるように、4人は手をあげて明るく返事をした。

 夕日を背にして、5人は再度学園祭を楽しむため進みだす。

 

 

 こうして、第6回デービーバックファイトは幕を下ろした。

 後日、あやか、明日菜、総一の3人が、麻帆良学園にある様々な部活から熱烈なスカウトを受けまくったらしいが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

 

 






次はもっと早く更新したいです。(如何せん、できるとは言ってない)

次回からバトル要素多めで行きますよー!


追伸
もう何か月も前の話になっちゃいましたが、前回の話で出てきた問題や解答を(解法を含め)活動報告に載せています。解答の間違いを見つけた方がいらしゃれば教えて下さい。

(活動報告の使い方がいまいち分からず今までノータッチでしたが、せっかくなので使ってみました。今後も何かあれば使っていこうと思います)

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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