もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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少々短いですが、切りが良いので投稿しました。

原作でもそうでしたが、この作品でも超鈴音はいろいろ背負っています。




71. 本来と違うこと

 

 

 

 緊急召集された後、魔法先生と魔法生徒による会議を終えたネギは、無人の広場に一人立っていた。いつも肩にいる使い魔のカモも、今はおらず、正真正銘ひとりである。

 陽は暮れ、街灯も少ないため、周辺は影の輪郭がぼやけるぐらいに薄暗い。そこを照らす明かりといえば、遠くでほのかに光る世界樹と綺麗な星空だけだ。夜景の眺めとしては最高だが、そんな風景に見向きもせず、ネギは静かにうつむいていた。

 

「ネギ坊主!」

 

 やがて、静けさが漂っていた広場に声が響き、一人の少女が現れた。

 

「一対一で話とは何かナ、進路相談カ?」

 

 超の姿を確認するとネギは顔を上げて、彼女と向き合った。

 

(チャオ)さん……」

 

 魔法先生から超の狙いが『世界に魔法をバラすこと』と聞いたネギは、彼女からその理由を訊こうと、或いは止めるように説得しようと考えていた。一人で彼女に会うことをお願いしたのも、二人きりならば彼女が本心を話してくれる、そう思ったからだ。

 辺りを見渡しても、他の人影らしきものは確認できない。この場には、ネギと超の二人の姿しかなかった。

 

「………」

 

 しかし、二人は知らなかった。そこから遠く離れた建物の屋上から、一人の少年が二人の様子を覗き見ていたことを……。

 

 

 

 

 結果、ネギと超の話し合いは、言葉を交わすだけで終わることはなかった。超の「私との勝負に勝てばすべてを話そう。悪いことも止めるヨ」という提案から、ネギと超は戦うことになった。

 だが、超のパワードスーツと“なぞの回避”により、ネギは手も足も出ずに追い込まれた。途中、楓と刹那が助太刀に現れて挽回できるかとも思われたが、彼女たちの攻撃も“なぞの回避”によって一切効かず、終始、超のペースでバトルが行われた。

 最後には、ネギ、刹那、楓の3人はその場から撤退することを余儀なくされた。

 

「……やっぱり“そう”なんだよなぁ」

 

 3人が(チャオ)から逃げている途中、4人が争っていた場所の少し離れたところにある建物の影から、その様子を覗っていた少年がひとり呟く。

 少年、加賀美総一は、自身の肉眼と見聞色の覇気を使って、まるで何かを確かめるように彼女たちのバトルを見ていた。

 そして、今のバトルを見て、彼の“作戦”のための根拠は確かなものに変わった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 現時刻、麻帆良祭2日目午後11時。

 総一はシャークティの従者として告白阻止の警備を手伝っていた。だが、いま彼はシャークティと別行動をとり、女子普通科付属礼拝堂付近にある建物の屋上から、一人で周りを見下ろしていた。警備といっても、日が変わる直前とあって昼や夕方に比べれば告白の発生回数は少ない。よって、その時間のほとんどは周りを眺めるだけの方が多かった。

 暇を持て余すようになった総一は、やがて屋根の上に腰を置き、学園祭の3日目について考え始めた。

 

(さて、いよいよ麻帆良祭3日目。(チャオ)のヤツが計画を実行する日。時間は午後6時から7時頃……だったかな。たしか世界樹の魔力が満ちるのがそれくらいだったはず……)

 

 麻帆良学園の夜景を眺めることなく、総一はぼんやりとした表情で思考を巡らせる。

 

(これから現実になるであろう未来は、“4つ”。1つ目は、超の計画が成功して世界に『魔法』や『悪魔の実』がバレる未来。2つ目は、原作通りにネギ君が未来から戻ってきて超の計画を阻止する未来。3つ目は、ネギ君が未来から戻ってこず俺一人で超の計画を阻止する未来。そして最後のもう1つは、ネギ君が未来から戻ってきて、なおかつ超の計画が成功する未来)

 

 総一に(チャオ)の計画を成功させるつもりはない。よって彼が望む未来は当然、『2つ目』と『3つ目』のどちらかだ。そして、その未来に進めるための分岐点は2つ。『ネギが帰ってくるかどうか』と『超の作戦が阻止できるかどうか』だ。ネギ達が未来に跳ばされないとか、そういった可能性も無くはないが、この2つの分岐点の可能性に比べれば些細なものだろう。

 1つ目の分岐点『ネギが帰ってくるかどうか』。この分岐点において、この時間軸がどちらに進むのか、それは現状から把握することはできない。ネギ達が跳ばされないように対策を取ろうにも、彼にはその方法が思い浮かばなかった。

 だが、それについて総一は特に大きな心配はしていなかった。総一が不安を覚えているのは『ネギが帰ってくるかどうか』ではなく、もうひとつの“分岐点”の方だった。

 

「ネギ君が帰ってこなくても大丈夫とは思うけど……不安は拭えないんだよなぁ」

 

 総一はため息をつきながら頭を掻いた。

 確かにネギがいれば超の計画を阻止できる確率はかなり高まるだろう。しかし例えネギがいなくとも、彼は超の計画を阻止する“作戦”があった。先ほどの“ネギとの話し合い”や“刹那と楓との小競り合い”を見て、その作戦が成功できることを半ば確信できた。

 しかし、その“作戦”がうまく成功したとしても、彼にはまだ、超がなにか“奥の手”を用意しているように感じてならなかった。

 

(悪魔の実がある時点で、俺の知ってる“ネギま”じゃないし、修学旅行の時やネギ君の過去みたいに“本来と違うこと”があるかもしれないし……)

 

 総一は修学旅行で出会った“鷹の目”の男を思い出し、「あーゆー系は勘弁してほしいなぁ」と切に願った。

 

航時機(タイムマシン)や時間跳躍させる弾丸だけでも厄介なのに、なにか“隠し玉”持ってそうだしなぁ……勘だけど。そういえば、和泉と学園をまわってた時のオカマ……もしかして、あれって“マネマネの実の能力者”の変装……いや、にしては大した覇気じゃなかったし、超の仲間だったとしても、そんな大きな障害にはならないし……)

 

 “悪魔の実の能力”や“海楼石”、“未知の仲間”など、超が隠しているものが何なのか、疑い始めれば切りがない。

 

「はぁ、あーヤダヤダ……」

 

 また総一はため息を吐いた。

 彼の後ろでは世界樹が昼間のように麻帆良学園一帯を照らしている。麻帆良学園女子中等部の屋上でお別れ会をしている3-Aの皆も、いまはこの光に目を奪われていることだろう。

 時間は一刻と進み、まもなく一つ目の分岐点が近づいてきていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 時は流れ、時刻は学園祭3日目、午前7時頃。

 (チャオ)鈴音(リンシェン)とのお別れ会を終え、ネギと彼の従者プラス協力者の面々は、超の計画の対策を練るため、エヴァンジェリンの別荘であるダイオラマ魔法球の中に入っていた。 

 

「それで、話って何よ?」

「はい、超さんのことで、一度作戦会議をしようと思って……」

 

 ダイオラマ魔法球の中にある別荘にいるのは、ネギが声をかけたチームの面々、明日菜、のどか、木乃香、刹那、(クー)、楓、ハルナ、夕映、千雨。加えて、エヴァンジェリンとカモだ。

 ネギは学園祭前から現在に至るまでのことを思い出しながら、彼女たちに自身が知っている超に関することを話した。

 

「んーー。つまり、いままでの話を整理すると……」

「超さんは百年以上先の未来から来た、月で育った火星人で……」

「しかも、ネギ君と総くんの子孫!」

「本名は、“鈴音(リンシェン)(ディー)・スプリングフィールド”」

「目的は航時機(タイムマシン)による歴史の改変。そのために“魔法”と“悪魔の実”のことを世界にバラそうとしていて……」

「学園祭3日目にそれを移す……でござるか」

 

 今までの話を整理して、刹那、木乃香、明日菜、ネギ、楓が、それぞれ自身が理解したことを口にした。“原作”と違い、明日菜も超のお別れ会に参加していたため、お別れパーティー中に超が言った「実は私は“月で育った火星人”ネ!」「私は未来からやって来た、ネギ坊主の子孫ネ! 本名は鈴音(リンシェン)(ディー)・スプリングフィールド。ちなみに加賀美の子孫でもあるヨ」という爆弾発言を聞いていた。

 

「戯言だな……」

「確かに酔っぱらいの冗談以下という感じですが……」

 

 千雨と夕映が揃って呆れた。

 

(…………“(ディー)”……)

 

 そんな中、超の本名を聞いて、そばにあるベットで本を片手に寝そべっていたエヴァンジェリンは、顔つきを変えた。それは何かを懐かしむようであり、また何かを納得したような表情だった。

 だが、周りの誰もその表情の変化に気づくことはなかった。

 

「というより、超さんがネギと総一の子孫ってどういうこと? ネギも総一も男じゃない」

「別にあり得ない話じゃないです。将来ネギ先生と加賀美さんがそれぞれ結婚して、お二人の子孫(の男女)が子をなし、その子孫が超さんだとすれば、話は通っていますので……」

 

 明日菜のおバカ発言に周りの数人がいささか呆れる中、超がネギと総一の子孫となりえる事情を、夕映が説明した。

 

「加賀美さんはこのことを知っているのでしょうか? というより加賀美さんは?」

「アイツなら昨日の夜に、なにか気になることがあるって言って、どっか行っちゃったわ」

「気になること? 超さんに関することでしょうか?」

「超殿は悪魔の実についても世界にバラそうとしてるみたいでござるし、なにか対策を考えてるのかも……?」

 

 刹那の疑問に明日菜が応え、ネギと楓が自身の推測を口にした。

 そしてここで、再度『悪魔の実』が話題に出たことで、ふとネギは前から気になっていたことを思い出した。

 

「そういえば師匠(マスター)、訊きたい事があるんですが……」

 

 総一やあやかがいない今、この場で麻帆良学園における悪魔の実に関する事情について知っているのは、エヴァンジェリンだけだ。

 ネギに訊ねられ、エヴァンジェリンは体勢をそのままに目だけを彼らの方に向けた。

 

「超さんは悪魔の実の存在についても世界にバラそうとしているみたいですけど、悪魔の実に関わっている人たちはどのように動いてるんですか?」

「知らん。学園長(ジジィ)に訊け」

 

 あまりにもバッサリと切った返答に、一同は「えっ!」と声を洩らし、唖然とした。

 

「悪魔の実に関わっているのは、能力者本人とその周りにいる魔法使いの奴らだけだ。そいつらは基本的に組織として動くことはない。たまに学園長(ジジィ)の命令で仕事するだけだ」

 

 明日菜は「良いの、そんなんで……?」と心配そうな顔をした。

 

「それくらい悪魔の実についての事件が少ないということだ。それに、学園長(ジジィ)を含め、タカミチとかシスターの小娘とか、(悪魔の実について)知っている魔法使いは、すでに今回の件で何かしら動いている。だが、なにせ世間に悪魔の実をバラすことを目的にするヤツなんて今までにいなかっただろうし、対応としては一般の魔法使いと、そう変わらないだろうさ」

「……そうですか」

 

 それだけ言い終えると、エヴァンジェリンは本に目を戻した。ネギは考える顔つきで口を閉じる。

 

(……確か()()()のヤツが、“本国の機関”とパイプ役だったな。ダラけきってはいるが根は真面目なアイツのことだ、すでに超のことを()()()に報告していてもおかしくはないが……何もないということは、学園長(ジジィ)が止めているのか? あの老いぼれめ、あくまで身内でケリをつけるつもりか……いや、あるいはクザンも超となんらかの取引をしたか……)

 

 エヴァンジェリンは一人、ウンザリというように口元を歪め、内心で悪態をついた。

 

(ま、私には関係のないことか……)

 

 ため息をひとつ洩らして、エヴァンジェリンは読書を再開した。

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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