もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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8. 弥生に降る雪【現在編】

 

 

 

「えぇー、転校生を紹介します」

 

 朝のHR(ホームルーム)で担任の先生が生徒の皆に向け、話す。

 横にはベルのついた髪留めでツインテールに髪を結んだ女の子が一人。

 

「海外から来た神楽坂明日菜ちゃんです。みんな仲良くしてあげてね」

 

 担任の言う事に周りの生徒は元気よく「はーい!」と返事をした。

 しかし、そんな生徒達の中、転校生を見て快く思わない生徒が一人いた。

 

「ちょっと、あなた。転校生のくせにその目つきと態度。少々生意気じゃありませんこと?」

「………ぃ」

 

 その生徒――雪広あやかの言葉に、転校生――神楽坂明日菜はボソッと小声で何か呟いた。あやかはその言葉を聞くために「なに?」と明日菜に近寄り、耳を澄ませる。

 

「……ガキ!!」

「なっ!!」

 

 明日菜の言葉にあやかはブチ切れた。

 

「何をいいますの!? あなたこそチビのくせに」

「そこがガキだって言ってんでしょ!!」

 

 二人は胸倉をつかみ合い、互いに「バカ」だの「アホ」だのと言葉を浴びせ合う。

 

「……どっちもどっちだろ」

「ちょっと、加賀美さん! 今なんと言いました?」

 

 二人の騒いでるのを見て、教室の隅にいた男子生徒――加賀美総一がボソリと呟いた。その言葉は決して大きい声で発せられたものではなかったが、耳の良いあやかには聞き取ることができた。

 

「なっ! 今の聞こえたのかよ。地獄耳か?」

「やかましいですわ。あなたこそ、この人と似たりよったりの目つきのくせに!」

「こんなさえないヤツと一緒にするな!」

「さえないは、余計だ! この鉄仮面が!!」

「何よ、このクソガキ!」

 

 そこからは三人で揉み合いの喧嘩となり、後に三人は先生からありがたい説教を受けた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「あのガキィ!!」

 

 昔の思い出を夢に見て、雪広あやかは目を覚ました。辺りを見ると、いつもの女子寮ではなく、実家の部屋が目に入り、彼女は休暇で自分の家に帰って来たのを思い出した。

 

「うぅ、イヤな夢を見ましたわ」

 

 そうぼやきながら彼女は起床し、仕えてるメイドや執事へ優雅に朝の挨拶をして回った。大部屋にあるテーブルに着き、執事が出してくれた紅茶を口にするも、彼女の気分は晴れなかった。

 

(全く、春休みで実家に帰って来たというのに……ん?)

 

 ふと、あやかはある事を思い出した。

 

「……そういえば、後数日ですわね」

 

 周りの誰にも聴こえない声で呟きながら、あやかは手に持った紅茶が入ったカップを置いた。

 

 “あの事件”からもうすぐで七年。つまり、自分が“能力者”となって七年になる。

 彼女は俯き、気を落ち着かせる。

 脳裏にあるのは、一つの“大切な思い出”。それを思い出す度に彼女は“ある言葉”を思い出す。

 同い年の少年が言った、“あの言葉”。

 

「はぁ……気が晴れませんわね」

 

 あやかはまた紅茶を一口飲む。

 ため息をつきながら、彼女は過去の記憶に落胆するが、その後、執事から家庭訪問の報告を聞き、彼女の陰鬱な空気はどこかへ吹き飛んで行った。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「「いやっほーー!!」」

「はぁ。まったく、もう……」

「ははは」

 

 個人プールなのを良い事に少女二人は勢い良く水面に飛び込んだ。そんな二人を見て、あやかは呆れ、少年は苦笑いをする。

 

「いいんちょーー、ネギくーーん!! 競争せぇへーーん?」

「イヤですわ。アスナさん、河童みたいに速いですもの」

 

 そう言って、あやかは断るが、それは言い訳であった。本当はただ自分が“泳げない体”であるのを隠したかっただけなのである。

 

「全くガキなんですから」

 

 あやかは額に手を当て、「やれやれ……」と目を伏せた。

 

「二人とも元気ですね」

「えぇ、木乃香さんは兎も角、アスナさんは昔はもっと大人しかったですけれど……」

 

 プールサイドに置かれたデッキチェアに腰かけ、あやかとネギは遊んでいる明日菜と木乃香を見た。

 

「へぇ~。加賀美さんもそうですけど、御二人は仲良いですよね」

「なっ! 違いますわ!! アスナさんも加賀美さんも敵ですわ、敵!」

 

 ネギの言う事をあやかは躍起になって否定する。

 

「初等部にいた時から、三人で何かと喧嘩して、特にアスナさんとは趣味が全く合いませんし、七年間、ずーーっと喧嘩してきた犬猿の仲です。あまりに喧嘩が絶えないせいで周りから『あの三人は“犬猿雉の仲”だ』なんて言われて――」

「へぇ~……。ん?」

 

 あやかの言葉を聞きながら、ネギはプールサイドから窓の外を見た。すると、そこから一つの部屋が見えた。室内にはたくさんのおもちゃやぬいぐるみが見える。

 

「あの部屋は何ですか?」

「……あぁ、アレは空き室ですわ」

「え、でも――」

「それよりネギ先生、クッキーはいかがですか? 私の手作りですの」

 

 ネギが部屋について訊ねるが、あやかはその言葉を遮り、メイドの持ってきたクッキーをネギに差し出した。ネギは「あ、ありがとうございます」と半ば動揺しながら、クッキーに手を付けた。

 

「あ、これ、凄く美味しいです」

「ふふっ、そうですか。良かったですわ。紅茶もまだありますので、どうぞ」

「はい、ありがとうございます」

 

 美味しそうにクッキーを食べるネギを見て、あやかは優しい笑みを浮かる。それに気づいたネギは、自分ばかり食べている事に気づき、恥ずかしさから顔を染めた。

 

「すみません、僕だけいただいちゃって……」

「……ネギ先生」

「はい、何ですか?」

 

 あやかがネギの名を愛おしそうに呼び、ネギが返答すると、あやかはネギに頭に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。

 

「ふふっ、ネギ先生。私がお姉さんの代わりになってあげましょうか?」

「うっ、んっっ!!」

 

 顔を抱きしめられたことにより、ネギの鼻と口が塞がり、ネギは呼吸が出来なくなった。

 

「何やってんのよ! このショタコン女!!」

 

 だがやがて、明日菜の飛び蹴りによって、ネギは窒息を免れた。

 しかし、自分の邪魔をされたことに苛立ちを覚え、あやかは「また、やりましたわね」と、明日菜に殴りかかる。明日菜も大人しく殴られるわけもなく、二人はポカポカと殴り合いを始めた。

 

「もう、絶交ですわ!! アスナさん、今すぐこの敷地から出てって下さい」

「えぇ、言われなくてもそうするわよ!!」

 

 あやかに言われ、明日菜は帰ろうと足を進めた。

 ネギは不安な表情を浮かべ、明日菜を止めようとするが、それは「大丈夫、いつもの事やし」と木乃香によって止められた。

 

「……いいんちょ」

 

 明日菜は足を止め、あやかを呼んだ。

 

「さっきはショタコン女って言って……ゴメン」

 

 明日菜はそう言い残し、ネギを残して木乃香と共に帰って行った。

 その後、あやかはネギから今日は弟の誕生日であることを聞いた。

 ネギがその事を知っていることに、あやかは目を丸くしたが、ネギから「アスナさんから聞いたことなんですよ」と、明日菜が今日あやかを元気づける為に来たことを聞き、思わず涙した。

 

「まったく。あの人は……」

 

 口にする言葉とは違い、あやかの表情はとても優しい顔をしていた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「――という事がありまして」

 

 ベットの上に座り、携帯電話に向かって、あやかは今日あった出来事を通話相手に嬉しそうに話した。

 

《へぇ、良かったじゃん》

「えぇ、本当に今日は楽しかったですわ」

 

 電話の向こうの相手――加賀美総一は素っ気無い返事を返すが、あやかは気にしなかった。それだけ今日のことは彼女にとって喜ばしいことだったのである。

 

《んで、それを話す為だけに電話したのか?》

「えぇ、そうですよ」

《おい》

 

 あやかの返事に、総一は呆れ気味に言う。

 

《ったく、それで気は済んだか?》

「………」

《ん、どうした?》

「………」

 

 急に無口になったあやかに、総一は疑問を持つ。

 当のあやかは先程のニコニコした顔と変わって、無表情で虚空を見つめていた。

 総一も電話からあやかの雰囲気の変化を感じとっていた。

 

「……あなたも」

《ん?》

 

 やっと聴こえてきたあやかの声に、総一は首をかしげる。

 

「あなたもてっきり元気がないと思っていましたわ」

《はぁ、なんで?》

「………」

《……なに?》

「“あの事件”からもう七年になりますね」

《………》

 

 あやかの言葉に、今度は総一が口を閉ざした。

 

「私は、別にもう何とも思ってないですが、あなたはどうなんですか?」

《……なにが?》

「あなたは、前に私に訊きましたわよね? 『後悔してないか?』って」

《あぁ、訊いたな》

「あなたは、どう思っているのですか?私がこの“能力”を身につけたのは、間違いだと思っていますか?」

《………》

「………」

《………》

「………」

 

 しばらく沈黙が続き、やがて総一が口を開いた。

 

《……さぁな》

 

 そう言って、総一は続けた。

 

《お前が“あの時”とった行動が正しいか間違ってるかなんて俺には分からない》

「………」

《けど、俺は“あの時”自分が最善だと思った行動をしたし、お前もそうだったんだろ?》

「……えぇ」

《だったら、 『過去にあぁしておけば良かった』なんて考えるだけ、ナンセンスだろ。まだ、良い結果も悪い結果も出てねぇんだから》

「……えぇ、そうですわね」

 

 それを聞いて、あやかは思わず微笑んだ。

 そして、眼を閉じる。

 

 

 思い出すのは、七年前。

 ――弟を亡くし、数日が経った日のことである。

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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