もしもネギま!の世界に悪魔の実があったら   作:リョーマ(S)

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色んなワケがあって、文量少なめ更新。




80. 別の道があった

 

 

 

 学園都市の主要な場所から少し外れたところにある林道。

 その周辺にある道や林は今、“氷の大地”と化していた。その区域だけが、まるで氷河期に戻ったかのようにさえ感じられる。木々や路面は凍りつき、そよ風に当てられても動くものはない。辺りは静寂に包まれ、聴こえるのは氷の軋む音のみ。

 そして、その凍った林道の中に、ふたつの人影があった。

 

 長身の男と金髪の少女。

 

 向かい合う二人の周辺は荒れ果て、氷雪があちこちに飛散していた。

 

「……フゥゥ」

 

 男……クザンは無表情のまま、ゆっくりと白い息を吐く。周りの状況から、彼と少女の間には激しい戦闘があったことが見受けられるが、今の彼の動きはまったく乱れていない。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……クッ!」

 

 逆に、少女……あやかの呼吸は荒れていた。膝をついた彼女の身体は所々が氷結しており、霜が張っている。そして彼女自身は氷結された身体に凍え、鈍い痛みに耐えていた。

 

「もう、諦めなさいな」

「誰がッ!」

 

 あやかは絞り出したような声を上げ、クザンを睨み付けるが、その反動で生じた痛みに眉を歪めた。

 

「はぁ……はぁぁ、クッッ!」

 

 痛みに耐え、あやかは立ち上がった。

 

「まだやる気か?」

「えぇ……まだまだですわ!」

「……まったく」

 

 苦痛に歪みながらも、まっすぐな眼で立ち向かってくるあやかを見て、クザンは頭をかきながら「はぁぁ」と深いため息をついた。サングラスのせいで分かりにくいが、その際の彼は、今までの無表情の時とは違い、心底イヤそうな顔をしているのが、あやかには分かった。

 

()()()()()()()()も気になりますが、とりあえず今は、明日菜さん達が逃げ切るまで、なんとしても持ち堪えなければ……!)

 

 頬についた霜を拭い、あやかは再度、戦う構えを取る。

 

「もう少し……ねばらせて、貰いますわ!」

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 地下牢の上にある教会内では、ガンドルフィーニが項垂れるように礼拝堂の椅子に腰を置き、瀬流彦が介抱するように付き添っていた。

 

「ちょっとガンドルフィーニさん、大丈夫ですか? とゆーか、お酒あんまり強くないんじゃ……?」

「いいんだよ。一週間ぶりの休憩に酒くらい飲ませてくれ。君も飲むかい?」

「い、いえ、僕は仕事中ですので!」

 

 二人は礼拝堂から出て、ゆっくりと廊下を進む。酔いが回っているのか、ガンドルフィーニの足取りが危うい。

 ガンドルフィーニは、自身の家族のことやネギのことについて不安を感じ、自身の過ちについて悔やんでいた。

 そして今回のことを振り返る内に、ふと彼の頭に本事件唯一の負傷者である少年の存在が過った。

 

「そういえば、悪魔の実の……加賀美君は、どうしてる?」

「加賀美君ですか? 容体自体は回復に向かっているみたいですが、意識はまだ……」

「そうか……そういえば、“あの話”は本当なのか、加賀美君が()()()()()()()だって話は……?」

(えっ……!)

 

 ガンドルフィーニは思い出したように瀬流彦に訊ねた。この時、彼らの話題にひっそりと反応を示すものがいたが、二人はその存在に気づいていなかった。

 

「えぇ、そうみたいです。加賀美君がここに運び込まれた際、採血した一部をDNA鑑定したところ、判明したらしいです。高音君の弟さんが亡くなったとされる時期と加賀美君が保護された時期がほぼ同じことからも、間違いないみたいですよ」

「そうか。だが、どうしてDNA鑑定なんて?」

「なんでも学園長の指示らしいです。学園長がどうして高音君と加賀美君を鑑定しようと思ったのかは分かりませんけど……」

 

 学園長の真意を訊こうにも、本人は本国へ行ってしまっている。

 だが学園長の考えよりも、ガンドルフィーニが気になったのは、今後の二人についての方だった。

 

「そうか……。二人とも、災難だな。高音君はオコジョの刑、加賀美君は能力者。あともう少し前に姉弟だと分かっていれば、あの二人にも、別の道があっただろうに……」

 

 ガンドルフィーニは頭を抱え、二人の数奇な境遇に同情した。

 

「二人は知っているのか、この事を?」

「いいえ、なにせ知らせるタイミングがなくて……」

「まぁ、そうだろうな。高音君も学園祭からずっと忙しかっただろうし、加賀美君は……」

 

 ――TRRRR

 

 ガンドルフィーニに話す最中、彼の携帯電話が鳴った。

 

「私だ……あぁ……何、侵入者!」

 

 電話に出ると、ガンドルフィーニはその報告に、目を見開く。

 その瞬間、それぞれの二人の背後に影が過った。

 

「なっ!」

「君たち!」

 

 ガンドルフィーニと瀬流彦は、突然天井から現れた不審人物の影に、すぐさま戦闘態勢に入った。しかし、相手の方が動作がはやく、ガンドルフィーニは現れた二人に当て身を入れられ、気を失ってしまった。

 ガンドルフィーニが倒れる瞬間、瀬流彦は二人……明日菜と古菲の姿をはっきりと捉えた。だが不意をつかれ、彼も明日菜の大剣(アーティファクト)で殴られ気絶させられた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 明日菜はゆっくりと呼吸し、落ち着きを取り戻す。彼女が動揺しているのは、決して魔法先生ふたりに奇襲を仕掛けたからだけが理由ではない。

 

「……明日菜。今の話、聞いたアルか?」

「えぇ、スゴいこと聞いちゃったわね。まさか総一と高音さんが……!」

 

 ビックリしたと言うように、明日菜と古菲はいつもより大きく開いた眼でお互いを見る。

 

「どうするアルネ?」

「どうもこうも、今の私達じゃどうすることも出来ないし……」

 

 知り合いの驚愕かつデリケートな真実を知り、二人は揃って口を閉ざした。

 

「明日菜ぁ、もういいー?」

「あっ、うん。もう入ってきて大丈夫よー!」

 

 隠れていたハルナに訊ねられ、明日菜は思い出したように返事をした。するとハルナに続いて、のどかや木乃香達が物陰から出てくる。

 

「とりあえず、まずはネギを助けて過去に戻るのが先だし、しばらくは秘密にしておこう……」

「うむ」

 

 明日菜の意見に同意を示し、古菲は小さく頷いた。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

「ハァァ!」

 

 その頃、独房に一人いるネギは、仲間との合流と学園祭最終日へ帰還するべく、行動を起こしていた。

 

「開けっ!」

 

 ネギは素の力だけで扉を殴る。杖と指輪を取り上げられている彼はいま魔法を行使できず、その力は十代の身体力だけのものだ。

 

「あっ開いた!」

 

 だが何回か思いっきり殴ると扉はすんなりと開く。おまけに、地下の出口に行くと、彼の杖と指輪、仮契約(パクティオー)カードが用意されていた。

 

(これは、タカミチがやってくれたのかな……いや、それよりも今は急がないと!)

 

 うまく行きすぎている状況に疑問を抱くネギだったが、その答えを考えている暇はないと、仲間に会うべく走り出した。

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED ...

 

 

 

 

 






総一の本名は、なんと〇〇・(ディー)・グットマン。

『〇〇』の部分が明らかになるのは、まだまだ後のおはなし。

もしも本作のネギまキャラに海賊旗があったら、見てみたいのは……?

  • ネギ・スプリングフィールド
  • 神楽坂 明日菜
  • 雪広 あやか
  • エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
  • 超 鈴音

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