チートを貰って神様転生した男が、チートの扱い方を探っているうちに犬に襲われて死ぬ毒にも薬にもならない話。

オチはありません。
旧題チートを手に入れられなかった話

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チートを手に入れたけど頭が足りず取りこぼした話

『○○○・××で車が暴走、高校生はねられ死亡』

 

 13日午後4時20分ごろ、○○○県××の市道で同市に住む公立高校3年△△△△さん(18)が乗用車にはねられた。

 △△さんは市内の病院に搬送されたが、頭を強く打っており死亡が確認された。

 

 ××署は自動車運転処罰違反の疑いで……。

 

 

 

 

「神様っ!」

 という台詞と共に覚醒する。

 寝そべっていた体を起こし周囲を見渡す。

 雲ひとつない晴天の下、一面の草原が広がっていた。

 

 頬をつねり痛みを確かめる。

「まじか」

 真実味のない経験をしたが、自分の今の状況から考えるとそれが実際に起きたのだとしか言いようが無かった。

 

 自分は一度死に、そして神を名乗るナニかから自分の望む世界への転生とチートを与えられた。

 予想だにしない経験に、彼あるいは彼女とどんな会話をしたのかどのようなお題目で転生するのかこそ忘れてしまったが自分が要求したことは覚えている。

 転生したい世界は中世ファンタジーで魔法がありモンスターや魔王がいて、高校生レベルの中途半端な知識でもNAISEでき、エルフがいて奴隷がいて彼女――性奴隷のことだけしか彼の頭には無かった――らを金で買え、皆容姿が良く、一夫多妻制度のある世界。

 俺TUEEEするためには敵キャラやテンプレ的なやられやくは馬鹿なほうがいいがさすがに要望には入れられなかった

 それらの対象範囲がハーレムとして囲うキャラにまで及んでしまったら元も子もなかったからだ。

 ハーレムを作りこそしたいが、ひどく愚かだったり自分に都合のいいイエスマンしか存在しないのは困る――と彼は自分のことを棚にあげて考える――。たとえ魅力に溢れていても囲いたいとは思わない。

 お人形集めがしたいわけではないのだ。

 それとチートが欲しい。

 

 そうだったそうだった、生きたい世界こそ大雑把ではあるが説明したが、チートのほうはチートが欲しいとだけ言ったために困惑している様子だったことを思い出す。

 そこで、好きなようにステータスやスキルを覚えたり忘れたり上げたり下げたり出来るようにして欲しいと説明したのだ。

 あまりにも強すぎる力を普段の生活すら困難になるのではないか、という俺TUEEEものを読んでいたときの疑問からチートを貰うのであればこのような形がいいと考えていた。

 それに誰かがいわゆる鑑定のスキルを持っていたとしても、ステータス、スキルを下げたり削除できれば注目されることもなくなるのだ。

 

 生きたい世界といわれテンプレ世界しかでないあまりの発想の貧困さとハーレムが作りたいという下半身でしか物事を考えられない自分に気づいてしまったが見ぬフリをする。

 今思い返せば、恥ずかしげも無くあれこれと注文をつけられたものだと冷静さを失っていたことをいまさらながら恥ずかしくなる。

 目の前につるされたにんじんのせいでもあり、応対している相手がまさしく超常の者であることを無意識ながらにも感じとりそのカリスマやプレッシャーを受けて平静ではいられなくなったということにしておこう。

 

「よしっ!」

 気を取り直して立ち上がる。

 過ぎたことは忘れこれからのことだけを見よう。

 つまりハーレムを。その想像だけでごく一部が固くなる。

 あ、と今更ながら思いつく。どうせなら下半身も大きくしてもらえばよかった。

 ……まあいい。ほとんど平均なんだし慣れてくればすぐに出るのも治るはずだ。

 

 今はとにかくチートを試すべきだ。

 周りには人っ子一人確認できないし近くに街もなさそうでスキルを使ってみても誰にも見られることはないだろう。

 

 

 

「ぐぬぬ」

 あれやこれや思いつく限り言葉を変えながらもいっこうに変化がない。ステータス表示すら出ないではないか。

 騙されたのだろうか。いや、そもそも今までのは全部夢だったのか、あるいはひどく現実的な妄想か……。はあと深いため息をつく。

 ため息と共に頭を下げたのが切欠で、はたと気づく。

 

 自分の腹部の前にキーボードが浮かんでいる。

 そして、気ボードの上に、ほとんど透明で見えにくいのだがキャレットも浮かんでいることに気づく。

 何か変化がないか確かめるために顔を左右に振ることはしたが、目線を下げることはなかったので今の今まで気づかなかった。

 いや、キーボードという形状からたしかに顔の前にでん! と出されてもタイピングしにくいのだから文句のつけようは無い。

 

 よかったと力が抜け地べたに崩れ落ちる。その動きを追従するかの用に高度の下がるキーボード。

 どの言葉に反応したのかはあとで調べるとして、これで都合のいいようにステータスやら何やらを記述あるいは書き換えていくのだろうとあたりをつける。

 しかし。

 いじくるにしても今のステータスが分からないのだからどうしようもない。

 

 悩んだものの、自分でいじるという形なのだから高いステータスを持っているのではないだろう。

 事実、走ったり跳んだり、小石を投げたりしてみるが生前のそれとかわりは無い。

 とりあえず、分かりやすい腕力から上げてみる。

 

『腕力50』と記入してエンター。

 

 SCRIPTS:Script'SysWindowCompileAndRun',line 1:

 Script command "腕力50" not found.

 

「は?」

 わけがわからない。

 いやエラーが返ってきたことは分かるが。

 

 腕力がダメなのだろうかと今度はSTRにするもやはりダメ。

 stringsに変えてもダメ。どうすればいいんだ。

「ああああああ!!!!!」

 叫び声を上げ、わしゃわしゃと頭を掻く。

 

 こんなの俺が欲しかったチートじゃない。

 もっと簡単にこんな感じになれって願ったらそうなったくらいのでいいのになんなんだよ。

 これはゲームにあるただのコンソールコマンドじゃないか。

 たしかにステータスを上げたりスキルを覚えたりはできるだろう。

 下げたり削除したりはどうだったか……。実際はコンソールの形をしたものでコンソールでは出来ないことも出来るのだろうか?

 

 なんにせよ適切なコマンドを入れなければ効果を発揮しないのだ。

 それが分からない現状何の役にも立ちはしない。

 

「まてよ」

 コンソールコマンドならば開いている間はゲームが止まっていた。

 少なくとも俺がやっていたゲームだとそうだった。マルチだとだめだったが。

 それが出来るなら時間停止というトンデモスキルとして活用できるはず。

 

 先ほど投げた小石を拾い、空へ投げてコンソールコマンドを出す。

 時間が止まるなら落ちてこないはずだが……ああああくそっ。

 

 運の悪いことに放り投げた石が頭に当たる。

 そしてキーボードに……あたるはずが通り抜けてしまう。

 今度は直接キーボードの上から小石を落としてみるが、やはり通り抜ける。

 これなら自分以外の誰かが触ることが出来ないのだろうが、今知りたいのはこれじゃない。

 

 どさっと、地べたに体を放り投げる。

 どうするかなあ。

 時間停止にも使えないのだからなんとかコマンドを思い出さなければ本当にゴミクズでしかない。

 コンソールも自分もだ。

 

 コンソールを使ったことはかなり以前あった。

 ただ時間の問題と、コンソールを使うと実績が解除されないゲームだったため、実際に使ったのが数えられる程度でまったく覚えていないのだ。

 それならばMODでどうにかしたのだったか。

 とにかく、重要なのはコマンドを覚えていないということだ。

 なんとか思い出さなければならない。

 ステータスの上げ方はどうだったたか……。

 

 gainstr、gaindex、gainxp、gainexp……思いつくままに打ってみるが成果はない。

 じゃあこんどはアイテムだ。

 getiem、pickitem……やはりダメかと諦めかけていたがようやく答えが見つかる。

 

 additemだ!!!。

 

 SCRIPTS:Script'SysWindowCompileAndRun',line 1:

 Missing parameter ObjectID.

 Compiled script not saved!

 

 おおおおおおお! と雄叫びを上げる。

 ようやくチートを使いこなす第一歩を踏み出すことが出来たのだ。

 オブジェクトIDなるものは分からないが、additemの後に何かしら記述していけばいいのだろう。

 苦労こそすれ先には結果が待っているのだから不安はない。

 

 天にも上る気持ちになり小躍りする。

 がすぐさまそれは消え去った。

 

 三頭の犬だ。

 いったいいつからいたのだろうか。まったく気配に気づけなかった。

 唸り声を上げる三頭の犬を見て嫌な汗が流れ息も荒れる。

 襲われる予感しかしない。

 

 つばを飲み込み、じりじりと後退する。

 心臓の音がうるさい。

 三頭は機を見ているのかそのまま襲ってくることもなく、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

 このまま走って逃げたら追いかけてくるだろうと思い、逃げ出せない。

 せめて町の姿形は見えるところまで行ってから実験すればよかったと今更ながら思う。

 

 そう意識を外していたのが原因か、突如として後ろから衝撃が走る。

 すぐさまやってくる熱量。

 そして痛み。

「あっあっ」

 声にもならない声を上げる。

 痛みと熱が一箇所から二、三、四と増え、そして意識が無くなった。

 

 

 

 前方の囮の犬に気を取られ後ろから忍び寄る本命に気づかなかったこと原因だ。

 彼の第二の人生は二時間にも満たないうちに終わってしまった。




 コンソールコマンドは
 Fallout:New Vegasを参考にしました。

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