もう1人の雷竜   作:流々

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第9話:炎と風と雷・後編

 

【オシバナ駅】

 

ここはオシバナ駅。

本来であれば行き交う人々で賑わっているころだが、今は人の姿を確認することはできない。

それどころか魔風壁という竜巻に包まれ自由に出入りすることは叶わなくなっていた。

そんな竜巻の中に6人と2匹がいた。

カゲが緑の髪の男の凶刃に倒れたことにより、新たな打開策を考えなければならなくなった一同は情報を整理していた。

 

ルーシィ「え?エリゴールの狙いって定例会だったの⁉︎」

 

シオンからエリゴールの本当の目的について聞いたルーシィは驚きを隠せない様子だ。

 

エルザ「クローバーへの唯一の移動手段を遮断し、エリゴールは空から向かった。」

 

シオン「魔導四輪車で追いつけないことはない。だが...また魔導四輪車に乗るのだけは勘弁だ...。」

 

グレイ「いやそうじゃねーだろ!魔導四輪車で追いつけないことはないがこの魔風壁をなんとかしないと駅の外には出られねぇ...。」

 

一同は真剣にいまいち状況を理解できていないルーシィ、ナツに状況を説明する。

 

ナツ「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

そんな説明もよそにナツは拳に炎を纏い魔風壁へと突撃する。

そして例に漏れず弾き返される。

 

グレイ「まあ...外に出ようとするとこれだ。」

 

ルーシィ「うわぁ...。」

 

冷静なグレイに対し、ルーシィは怯えている。

 

エルザ「カゲ...頼む力を貸してくれ...。」

 

エルザは必死に訴えかけるがカゲは目を開けなかった。

 

ナツ「うぉぉぉぉぉぉぉ!こんなもん突き破ってやる!」

 

そんなエルザを余所目にナツは再び魔風壁へと突撃しようと試る。

が、それをシオンに制止された。

 

シオン「ナツ...やめとけって。力じゃ通れねぇのは実証済みだ。」

 

シオンはそのボロボロの手を見せながらナツを説得した。

 

ナツ「おまっ...その手...!まさかあの緑野郎をぶっ飛ばした時に...?」

 

シオン「んなわけあるか!」

 

2人はコントのようなものを繰り広げている。

のだがやはりナツは飛び出した。

 

ナツ「そんなの...しらねぇぇぇぇ!!!うぁぁぁぁぁぁっ!」

 

そして弾き飛ばされたナツは倒れこむ。

 

グレイ「馬鹿野郎!シオンの言う通り力じゃどうにもならねぇ。」

 

ナツを嗜めるグレイに対しルーシィは続ける。

 

ルーシィ「でも急がなきゃまずいよ!あんたの魔法で凍らせたり出来ないの?」

 

グレイ「できたらとっくにやってるよ!」

 

ルーシィの問いに対しグレイは即座に回答した。

そんなやりとりの間もナツは魔風壁へと挑み続ける。

 

シオン「ナツ!やめろ!死にてぇのか!」

 

そんなナツをシオンは体を張って制止した。

 

エルザ「くそっ...どうしたらいいんだ...。」

 

沈黙を保っていたエルザが震えた声で言った。

さすがのエルザもお手上げらしい。

そんな中再びシオンの制止を振り切ったナツが再び駆け出した。

のだがそれを今度はルーシィが体を張って制止した。

 

ルーシィ「ちょっと!やめなさいよ!」

 

ナツ「あ?.........あーーーーーっ!!!」

 

するとルーシィを見たナツが何かを閃いたのか大声をあげた。

 

ナツ「そうだ星霊!」

 

ルーシィ「え?」

 

ナツ「エバルーの屋敷で星霊界を通って場所を移動できただろ!」

 

自信満々に目を輝かせたナツがそう言った。

 

シオン「まじか!そりゃすげえ!早くやってくれルーシィ!」

 

ボヌール「えー...僕は嫌だよぉ〜...でもそれなら脱出できるね!」

 

その話をよく知らないシオンとボヌールはナツの勢いもあってか目を輝かせた。

 

ルーシィ「いやぁ...普通は人間が入ると死んじゃうんだけどね。息ができなくて...。それに扉は星霊魔導師がいる場所でしか開けないの...。」

 

が、ルーシィは期待を裏切る解説をした。

 

シオン「ちっ...それじゃあその手は使えねぇか。」

 

ナツ・ボヌール「???」

 

シオンはその意味を理解したようだがナツとボヌールには少し難しかったようだ。

それに気づいたルーシィが続ける。

 

ルーシィ「つまり星霊界を通ってここを出たいとしたら、最低でも外に星霊魔導師が1人いないと不可能なのよ。」

 

ナツ「ややこしいなぁ...。いいから早くやれよ。」

 

ボヌール「あい...。」

 

ルーシィ「できないって言ってるでしょ!」

 

しかしやはり2人には難しかったようだ。

そんな様子を見ていたグレイはため息をつく。

 

そんな中1人...いや、1匹沈黙を保っていたハッピーもまた何か言いたげに2人を眺めていた。

それに気づいたシオンが声をかける。

 

シオン「ハッピー。どうかしたか?」

 

ハッピー「エバルーの...鍵...?...あーーーーーーー!!!」

 

今度はハッピーが何かを閃いたように大声をあげた。

そしてフラフラしながらルーシィに歩み寄る。

 

ハッピー「ルーシィ思い出したよ...。」

 

ルーシィ「何をよ...。」

 

ハッピー「来るとき言ってたことだよ!」

 

ボヌール「あ!ルーシィが変なお話!」

 

どうやらハッピーは来る時に魔導四輪車で話したことを言っているらしい。

そしてハッピーは突然金色の鍵のようなものを取り出した。

 

ハッピー「これ!」

 

ルーシィ「それ!バルゴの鍵⁉︎勝手に持ってきちゃダメじゃない!」

 

と、そんなハッピーをルーシィは叱りつけた。

だが、ハッピーも反論した。

 

ハッピー「違うよ!バルゴ本人がルーシィにって!」

 

ルーシィ「ええっ⁉︎」

 

その一言に驚きを隠せない様子のルーシィはハッピーをつねっていた手を離した。

グレイ、シオン、ナツの三人はその様子を眺めていた。

 

グレイ「ったく...こんな時にくだんねー話してんじゃねぇよ...。」

 

ナツ「バルゴ...?」

 

シオン「なんだ知ってんのか?」

 

ナツ「ああ、メイドみたいなゴリラみたいなメイドゴリラだ!」

 

シオン「なんだぁ...?そりゃ...。」

 

こちらもくだらない話をしているようだ。

そんなことは御構い無しのようでハッピーは続ける。

 

ハッピー「エバルーが逮捕されちゃったから契約が解除になったんだって!それで、今度はルーシィと契約したいっておいらん家訪ねてきたんだ!」

 

鍵を振り回しながら力説するハッピーをルーシィは嗜める。

 

ルーシィ「はぁ...あれがきたのね...。ありがたい申し出だけど今は関係ないでしょ...。脱出方法を考えないと...」

 

シオン「おいおい...バルゴってどんなやつなんだよ...。」

 

先ほどのナツといい今のルーシィのため息といい、シオンはバルゴに対し、ある種の興味を抱いていた。

 

ハッピー「でも...!」

 

そんな中ハッピーはさらに何かを続けようとしたら、ルーシィにつねられ遮られた。

 

ルーシィ「うるさい!猫は黙ってにゃーにゃー言ってなさい!」

 

グレイ「こいつも時々怖いな...。」

 

シオン「意外と強ぇからな...」

 

そんなルーシィを見てナツ、グレイ、シオンはドン引きしている。

するとハッピーは涙を流しながら続けた。

 

ハッピー「だって...バルゴは地面に潜れるし、魔風壁の下を通って脱出できるかなって思ったんだ...。」

 

その言葉を聞いた途端、一同に電撃が走った。

 

エルザ「な、なに⁉︎」

 

グレイ「まじかよ⁉︎」

 

ナツ「え、えーと?」

 

ボヌール「すごいよハッピー!」

 

シオン「でかした!」

 

ルーシィ「あ!そっか!やるじゃないハッピー!もう早く言いなさいよー!」

 

ハッピー「だってルーシィがつねったから...。」

 

一同は衝撃を隠せずルーシィは褒め称えた。

が、ハッピーの一言にルーシィは土下座する。

 

ルーシィ「ごめんごめん。あとで何かお詫びするから!しますから!させていただきます!とにかく鍵を貸してー!」

 

ハッピー「あーい!お詫びよろしくねー!」

 

そんな2人のやりとりに一同はドン引きしていた。

 

 

 

一同『ごくっ...』

 

鍵を受け取ったルーシィを一同は息を飲んで見守る。

そして頷いたルーシィは鍵を構える。

 

ルーシィ「我!星霊界の道を繋ぐもの!汝その呼びかけに応えゲートをくぐれ!開け!処女宮の扉!バルゴ!」

 

「キンコーン」

 

いつものコールとともに美しいメイドが姿を現した。

 

ルーシィ「あ、れ?」

 

バルゴ「お呼びでしょうか?ご主人様。」

 

ルーシィ「だれ?」

 

そのバルゴを見たルーシィはドン引きしている。

しかしナツは再会を喜んでいるようだ。

 

ナツ「よう!マルコ!激痩せしたなぁ!おめー!」

 

バルゴ「バルゴです。あの時はご迷惑をおかけしました。」

 

ナツは相変わらず名前を覚えないらしい。

 

ルーシィ「痩せたっていうか別人!あ、あ、あんた!その格好!」

 

目が飛び出さんばかりの勢いで驚くルーシィ。

 

バルゴ「私はご主人様に忠実な星霊。ご主人様の望む姿で仕事をさせていただきます。」

 

ナツ「前の方が迫力あって強そうだったぞ〜?」

 

バルゴ「そうですか...では...元の姿に。」

 

そんな会話ののち元の姿?と思われる姿に変身するバルゴ。

その姿を見た一同は腰を抜かした。

 

ルーシィ「余計なこと言わないの!痩せた方でいいから!」

 

ルーシィが嗜めるとバルゴは痩せた。

 

ルーシィ「とにかく時間がないの!契約後回しでいい?」

 

バルゴ「かしこまりました。ご主人様。」

 

ルーシィ「てかご主人様はやめてよ〜」

 

バルゴ「では女王さまと。」

 

ルーシィ「却下。」

 

バルゴ「では姫と。」

 

ルーシィ「そんなとこかしらねぇ」

 

シオン「そ、そんなとこなんだ。」

 

ナツ「つーか急げよ...」

 

その会話を聞いていたシオン達はドン引きしているが、ルーシィは目を輝かせている。

 

バルゴ「では。」

 

そう言うとバルゴは穴を掘った。

これで無事魔風壁を突破できそうだ。

 

 

 

脱出するとそこは強風が吹き荒れていた。

カゲが突然口を開く。

 

カゲ「無理だ。今からじゃ追いつけるはずがねぇ。お、俺たちの勝ちだ。」

 

その言葉に一同は沈黙するが、その沈黙をシオンが破った。

 

シオン「そいつはどうかな?現にナツはいねぇ。もう向かってるはずだ。今から俺も向かう。ボヌール!飛べるか?」

 

ボヌール「あい!」

 

シオン「よし!マックススピードで追いかけんぞ!」

 

そう言うとシオンは飛び立った。

 

エルザ「シオンー!頼んだぞー!なんとか足止めしてくれー!」

 

 

 

 

【山間線路沿い】

 

シオン「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!ナツ!無事か⁉︎...ていねぇのか?」

 

ボヌール「僕もう飛ばないよ...」

 

シオン「ありがとなボヌール。」

 

エリゴールに追いついたシオンはそっとボヌールを寝かせるとエリゴールに向き直る。

 

シオン「どうやら俺が一番乗りか?」

 

エリゴール「炎のガキなら今頃崖下だな。」

 

シオンの問いにエリゴールが答える。

その答えに驚きを隠せないシオンはさらに続ける。

 

シオン「なっ⁉︎ハッピーはどうした?」

 

その問いにハッピーが答える。

 

ハッピー「あい...。おいらならここにいるよ...でもごめんおいらもう飛べないよ。」

 

ハッピーもボヌールと同じく限界で飛んできたのだろう。

力なく項垂れている。

 

シオン「そうか...。まああいつなら大丈夫だろ。安心しろハッピー。」

 

エリゴール「無駄口が多いぞ。ハエが。お前も消えろ。」

 

そう言うとエリゴールは手のひらから風を飛ばした。

が、シオンも全身に雷を纏い飛び出していた。

 

シオン「どこ狙ってんだよ。この野郎。」

 

 

シオンはエリゴールの背後に回りこみ拳を叩き込む。

それをエリゴールは間一髪手持ちの大鎌でそれを受け、体勢を立て直す。

 

エリゴール「炎を付加(エンチャント)する魔導師が来たかと思えば次は雷か...ククッ...」

 

シオン「うるせぇぇ!」

 

エリゴールは口を開くがシオンは再び駆け出す。

 

エリゴール「調子に乗らなよぉ〜?ハエが!」

 

エリゴールも再び竜巻を発動する。

 

シオン「遅ぇんだよ!」

 

それを稲妻のような挙動で回避したシオンは今度こそと言わんばかりに再び拳を叩き込む。

しかしこれも間一髪回避されてしまう。

 

エリゴール「煩いハエだ。お前も奈落に落ちろ。ストームブリンガー!」

 

そう言うとエリゴールはさらに強力な特大の竜巻を巻き起こす。

 

シオン「な⁉︎しまった!うぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ボヌール「シオン...」

 

この魔法は流石のシオンも直撃してしまう。

崖下へ向かうシオンをボヌールも必死に追おうとするが魔力が足りず羽を出さずにいた。

 

エリゴール「はっ!煩いハエが2人仲良くくたばりやがれ。」

 

エリゴールは奈落を眺めていた。

 

シオン「クソッ!やべぇ!どうする...」

 

落ちながらも思考を張り巡らせるシオン。

すると下から轟音が聞こえて来た。

 

ナツ「シオーン!掴まれぇぇぇぇぇ!」

 

シオン「ナツ⁉︎」

 

ナツは炎で線路を掴み上がって来たようだ。

その魔法は一度見たことがある。

マカオの魔法だ。

 

シオン「ったく...器用なもんだな!頼むぞナツ!」

 

シオンはナツの言う通りにナツにしがみつき、再びエリゴールの元へと向かった。

 

 

 

 





シオン「おいおいお前どんだけ器用なんだよ...」

ナツ「だろ!おめー感謝しろよー!」

シオン「そんなことよりエリゴールの野郎...ぶっ飛ばすぞ!」

ナツ「あたりめーだ!じっちゃん達はやらせねぇ!」

シオン「ああ!次回!最強チーム!!よろしくな!」
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