喫茶店長の戦車道指導譚~アンツィオ風味~   作:とらまる@

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4︰焼き菓子のあとは紅茶でも

 模擬戦が終わり、俺は戦車道チームの全員を校庭に集めた。

 

「全員集まったな。今の試合、しっかりと見せてもらった。それぞれの長所短所もある程度理解したつもりだ。特に両チームの隊長であるペパロニとカルパッチョは、急な試合にも関わらずよくやってくれた」

 

「今回は負けたけど次はしっかり勝つっすよー!アンチョビ姐さん、次こそは楽しみにしててくださいね!」

 

「あら、私だって。次やってもまた勝つつもりでいくわよ。見ててくださいね、ドゥーチェ」

 

 ホントに人望あるなぁ、安斎のやつ。やる気もあるし鍛えればきっといいチームになるだろう。ただちょっと全体的にバカっぽいんだよなぁ…。

 

 そんなことを思いながら心の中で苦笑していると、後ろにいた安斎が歩を進め皆の前に立った。

 

「よーしお前ら、明日からまた訓練再開だ!各員戦車の整備をしっかりしておけー!」

 

 「はーい」、といってそれぞれの乗っていた戦車に散っていく面々。

 その前に俺は散り行くみんなを一度引き止めた。

 

「あーー、ちょっと待ってくれ!みんな急な試合だったが良くやってくれた。俺は店の準備がある為もう戻らないといけないが、差し入れを持ってきた。これでも食べてから片付けに入ってくれ……って、うぉーい押すな押すな!ちゃんと全員分あるから!」

 

 俺が全て話し終える前に、さっきまで大人しかった彼女たちは目の色を変えてこちらに押し寄せてきたのだった。

 見てくれこそ女子高生に群がられるという良いものだが、実際はそんな良いもんじゃない。潰されそうになった…。どうやら彼女たちは戦車道<食事らしい。

 

「スフォリアテッラだ!」   「おいしそー!!」

「いただきまーす!」   「あぁ゛!お前ら、私の分も残しておけよぉ!」

 

 ほんと、模擬戦の時より元気じゃねーか。まぁこれだけ喜んでくれると作り甲斐があるけどな。

 

 今回俺が作ってきたお菓子は、スフォリアテッラ。イタリアのナポリ地方の名物焼き菓子だ。確かイタリア語で『ひだを何枚も重ねた』って意味だったと思う。

 その名の通り、貝殻をかたどったひだが何層もあるパイ生地状の生地に、カスタードクリームやリコッタチーズなんかを入れてオーブンでパリパリになるまで焼き上げたものだ。今回は更に隠し味でアーモンドクリームも入れている。自慢の一品だ。

 

「食べたらしっかりと戦車整備しておけよ。明日からビシバシ鍛えていくぞー!あと安斎、ほっぺたのクリームは明日までに取っておくように」

 

 生徒たちが舌鼓をしている中、俺は軽く挨拶を済ませると店に戻る為に学園を出た。途中、安斎がなにか叫んでいた気もしたが気にせず帰った。

 

 

 

「えっと…どこにやったかな?おっ…これかな、あったあった」

 

 店に帰って先ずしたことは開店準備ではなく、探し物だった。仕入れ等の連絡先が書かれた喫茶店用の電話帳ではない、副業とも言えるもう一つの方の連絡先が書いてある電話帳だ。

 そう、戦車道の教官をやっている叔母の頼みで過去に何度か講習に行った時の、その時の連絡先が書かれている物だ。

 

 その中の一つを見つけ出し携帯電話に番号を打ち込むと、一呼吸をおき通話ボタンを押した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 神奈川県横浜港を母校とし、アーク・ロイヤル級航空母艦並みの大きさを誇る学園艦に在る、イギリス縁の名門お嬢様校。そして俺が半年前に講習で訪れた場所。それが聖グロリアーナ女学院だ。

 

「こんな格言を知っていて?『今日という日は、明日という日の二日分の値打ちがある。』」

 

「アメリカの政治家、ベンジャミン・フランクリンだろ。相変わらずだな、元気にしてたか?ダージリン」

 

「えぇ、貴方もお変わりないようで。本日はどういったご用件でして?」

 

 電話先の相手である彼女の名前はダージリン。現在の聖グロリアーナ戦車道チームの隊長を務めている。

 俺は彼女に現在アンツィオの戦車道チームを指導していること、そして練習試合の相手を探していることを彼女に伝えた。

 

「なるほど、それで我が校に連絡をしたということですね。……ですが先日、大洗女学園からの練習試合を承諾してしまい日程的にも難しいものがありまして」

 

 大洗女学園?あそこの戦車道は何年も前に廃止になったと聞いていたが、また再開したのか。

 

「そうか、いや急な申し出ですまなかった。忘れてくれ」

 

「しかし大洗側の参加車両は5両。つまり我が校のチームに試合に出ないメンバーがいるということ。その子たちで宜しければ練習試合、お受けすることが出来ましてよ」

 

 余りメンバーといえど大会本戦に出てくるであろう聖グロリアーナの1軍メンバーだ。相手にとって申し分ない。

 

「本当か!?是非ともお願いしたい!場所は何処にしよう、うちが横浜まで行こうか?」

 

「確かアンツィオは栃木県でしたはず。ならばうちが大洗から向かった方が近いでしょう。そちらにお邪魔させていただきますわ」

 

「色々とすまないな。詳細はまた後日連絡させてもらうよ」

 

「かしこまりました。えぇ、でわ」

 

 向こうが電話を切ったことを確認すると、俺は深く息を吐き出した。

 ふぅぅぅー。試合相手も無事なんとかなったな…。だが相手はあの聖グロリアーナ。明日からは更に気が抜けないな。

 それから暫くして、俺は重い腰をあげると店の開店準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「さて。先ほどのお話は聞いていて?アンツィオとの練習試合の件、貴女に一任します。頼むわよ、ローズヒップ」

 

「もっちろんでございますわ!ワタクシにお任せくださいませ、ダージリンさま!」

 

 

 

 

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