時刻は19時。
抽選会での一悶着の後、俺たちはアンツィオの学園艦へと帰り安斎とぺパロ二を見送って、自分の店であるキャロルに戻ってきた。
ちなみにオーナーは俺達を学園艦へと送ってくれ、そのまま爆音と共にまた何処かへと飛び立っていった。ホント、何者なんだあのオカマは...?
店に入ると綺麗に掃除をして片付いた店内のカウンターで1人、カルパッチョがノートパソコンを弄っていた。そういえば出る時に鍵を渡していなかったな。どうやら待たせてしまっていたようだ、悪いことをした。
「あ、店長。おかえりなさい。ご飯にしますか?それともお風呂にしますか?」
「俺はまだこんな美人な嫁さん貰った覚えはないぞ。それとあんまりそういう事するんじゃねえぞ、その辺の男だったらコロッと落ちちまうぞ」
実際悪い気はしなかったがな。
なんて思いつつ俺は夕食の準備に取り掛かり、2人分の材料を冷蔵庫から取り出した。
「うふふ、それはざーんねん。それで1回戦のお相手は何処の学校になったんですか?」
「初戦の相手はワッフル学院だ。お前も知ってるだろ、真部 里香。元々アンツィオの生徒だったらしいな。彼女が相手チームの隊長を務めている」
「あぁ!ブリカマさん!久しぶりの再会で喜びたいところですが、それは少し困りましたね」
やっぱりブリカマで通るのか...。
「残念ながら既存の作戦は意味を成さないだろう。更にこちらの戦車の情報も筒抜けだろう。カルパッチョ、ブリカマの実力はどの程度か分かるか?」
「そうですね、彼女は常にドゥーチェをライバル視して競い合っていましたから個人の実力もかなり高いですよ。向こうで隊長に就任したのも納得かと」
「成程...分かった。明日からはそれらの問題も考慮しつつ訓練に入るとしよう。......よし、トマトとボンゴレのスパゲッティだ。遅くまで待たせて悪かったな」
完成したばかりの熱々の品を皿に装い、カルパッチョに差し出し俺も隣の席にお邪魔する。
「わぁ~美味しそう!待っていた甲斐がありました。いただきまーす」
「鍵を渡し忘れていたのは俺の不手際だからな。そういえばパソコンなんて開いて何してたんだ?調べ物か?」
「いえ、小学校の幼なじみとメッセージのやり取りをしてたんですよ。最近になって戦車道を始めたらしくて、いつか試合してみたいねって話していたところなんです」
そう語る彼女の顔はとても嬉しそうだった。よっぽど仲が良いのだろう。そしてこれからは親友でもあり、戦車道の良きライバルとなるのだろう。そんな彼女を俺は少し羨ましく思った。
「ところでその幼なじみの子は何処の学校なんだ?上手くいけば大会で相手校として当たるかもしれないぞ」
「はい、大洗女子学園です!」
大洗女子学園...数十年振りに戦車道を復活させて今回の大会に参加したことが少し話題になっていたな。確か西住流が隊長を務めているとか言っていたな。
そして今日決まったトーナメント表を思い出す。
確か...反対側のブロックで初戦の相手はサンダース大付属だったな。中々やっかいな相手と当たったものだ。
仮に当たるとすれば決勝だが、アンツィオにしろ大洗にしろ、随分と先の長い話になりそうだ。
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その後 食事を済ませたカルパッチョを途中まで送り、俺は店の2階にある自分の部屋で調べ物をしていた。去年までの大会映像や記録を遡り、今年のワッフル学院の戦術や使用車両を少しでも把握する為だ。
昨年までの車両をそのまま使ってきたりはしないだろうが、それでも情報はないよりマシだ。
「主な戦車はルノーにシャーマン、それにヴィッカーズT-15か。なるほどな...ん?」
ジャケットのポケットから電子音が鳴っている。どうやら携帯に着信が入ったようだ。
いったい誰だろうか?俺は携帯を取り出し画面を覗き込んだ。
【着信︰愛里寿】
どうやら我が愛すべき妹からのようだ。
「久しぶりだな、愛里寿。元気でやってるか?」
「うん、兄さまも元気そうで何より。特に用事って訳でもないけど、久しぶりに声が聞きたくなって」
「天使か。可愛すぎだろ我が妹」
愛里寿は寂しがり屋だな。大学選抜の方はどうだ?上手くやれてるか?
「兄さま、心と声が逆になってる..。ふふっ、相変わらずだね」
おっといかんいかん、つい本音が。
それから1時間ほど俺達は久しぶりの会話を楽しんだ。
大学選抜のお姉さん達、特にアズミ ルミ メグミという3人のチームメイトの人達が良くしてくれている話。大洗の近くにあるボコランドによく行っている話。先週の試合の御褒美に母様から新しいボコのぬいぐるみを買ってもらった話。
7割近くはボコの話だったが、それでも俺は十分に幸せだった。
「じゃあ兄さま、そろそろ寝るね。最後に..その、今度兄さまのお店に遊びに行ってもいいかな?」
「あぁいいよ、いつでもおいで。じゃあおやすみ愛里寿」
「うん、おやすみ兄さま」
中々に忙しかった1日だったが最後に愛里寿分も補充出来たことだし、明日からまたワッフル学院戦への対策と訓練も頑張れそうだ。
そして俺はゆっくりと夢の国へと落ちていった。