星導館学園中庭。
「待てぇええええッッ‼︎」
「いやぁああああッッ‼︎」
ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトという女子生徒から、絢辻真斗という少年は逃げていた。
「今日こそ決着をつけさせろぉぉぉぉッッ‼︎」
「だーかーらー!貴方の勝ちでいいって言ってんでしょうが!なんでそんなに戦いたがるかなぁ!」
「私は自分より弱い奴が上にいるのが気にくわないんだ!」
「分かった!1500円で5位売るから!だから許して下さいお願いします!」
少し前に、廊下で激突してユリスの胸を真斗が揉んで、決闘することになり、真斗の使う剣がたまたまユリスの校章を壊し、たまたま勝利して序列5位になってしまったのだ。それ以来、追い掛けられている。
「貴様ぁ、冒頭の十二人の座を金で売ろうとは……ますます気にくわん!何が何でも決闘してもらうぞ!」
「まさかの逆効果⁉︎」
実際、ユリスの方が遥かに強い。勝てたのは、剣の性能のお陰だ。
「この、待ちなさいと……!六弁の爆焔花!」
巨大な火球が出現。
「うそぉっ⁉︎」
「くたばれぇっ‼︎」
それが真斗に迫る。すると、真斗は剣を抜いて、その火球に突きを放った。真斗の剣の能力により、火球は剣に吸収された。
「クッ……!」
「ふぅ……危ねぇ……。おい、お前!いきなりこんなところで火球なんて出したら危ねぇだろ!何考えてんだ!」
「んなっ……!うるさいっ!貴様が早くやられればいいだけだろう!」
「本当になに考えてんだお前!俺の剣が『悪食』じゃなかったらとっくに死んでるぞ!」
「そうだな、死ね!」
「反省する気ねぇーっ‼︎むしろ殺る気だった‼︎」
「『咲き誇れ、九輪の舞焔花』!」
今度はさっきより小さい焔が九つ出てきた。それが、別々の方向から襲い掛かる。
「うおっ……⁉︎ふ、複数は卑怯だろー!」
最初の三つくらいは吸収できたものの、途中から剣が追い付かなくなり、結局逃げた。
「くっ……!逃がすか!」
さらに火の玉をいくつも生み出すユリス。それを見て、真斗はため息をついて、ギロリとユリスを睨んだ。それに、若干怯むユリス。
「はぁ……ったく、しつこいぜいい加減」
「ふ、ふん……。ようやく戦う気になったか?」
「ああ。こうなりゃ、決着つけてやろうじゃねぇか」
「望むところだ」
ユリスは表情を引き締めて、剣を構える。が、その目の前の真斗は「待て」と手を出した。
「な、なんだ?」
「俺が挑まれた戦いだし、これは5位の椅子を賭けた決闘だ。勝負内容は俺が決めさせてもらうぜ」
「………はっ?」
「ポーカーで勝負だ!」
「……貴様、何処まで私をおちょくれば気が済むんだ?」
台詞と共にボウッ!と自分の周りに炎を出すユリス。それに心底ビビりながらも、なんとか表に出さずに真斗は言った。
「へぇ?怖いんだ?ポーカーが」
「んなっ⁉︎」
「まぁそうだよな。王女様はまずそんなトランプ遊びなんてしないだろうし?賭け事なんてもっての外だよな」
「ば、バカにするな!トランプくらいやったことはある!」
「でも何か物とかを賭けたことはないでしょ?」
「そ、それは……。……いいだろう、ポーカーで決着をつけてやろう!」
「何かを賭けるからにはお前にもリスクは負ってもらうぞ」
「ふぅん?いいだろう。なんでも言うこと聞いてやる」
「言ったな?」
「ああ。お前が勝てば私はお前の奴隷だ。勝てばな。ただし、私が勝てばお前の5位の席を返してもらうぞ」
その言葉に真斗はニヤリと口を歪ませた。
「じゃあ決定だ。早速、決闘を申請するぞ」
「? 何故だ?」
「一応、5位の座を賭けた戦いだろ?ポーカーで勝った方が降参なりなんなりすればいいさ」
「ふむ……なるほど。受諾しよう」
決闘が成立した。それに気付き、周りから観客が集まって来る。
「何々?何事?」
「《華焔の魔女》がまた決闘だってよ」
「というと相手はレスターか?」
「いや、今回は絢辻だよ」
「大変だな絢辻の奴も」
「お、なんか始まるっぽいぞ」
と、ギャラリーが集まる中、二人はその場に座った。観衆は「は?」みたいになるが、それらを全く気にしないで真斗はトランプを配る。
(私は何をしてるんだろう……)
冷静になって後悔するユリスだが、今更逃げることもできないし、ギャラリーが集まってから目の前の無抵抗の男を攻撃するわけにもいかない。ちなみにここまで、すべて真斗の思惑通りだ。
(………さて、あとはこのポーカーでテキトーに負けとけば、俺はこの女から解放されるってわけだ)
計画通り‼︎とでも言わんばかりの笑みだ。
(……むっ?まさか、イカサマするつもりかこの男?そうはさせんぞ)
ユリスはそう思うと、トランプを奪った。
「私がディーラーをやる」
(イカサマする気か?まぁ俺としては負けたほうがいいし、それはそれでいいんだけど)
そう判断すると、「どうぞ」と真斗は言った。そして、カードが二人に配られ、手札を確認する。した瞬間、真斗は唖然とした。
(フッ、フ……フルハウスだとォッ⁉︎な、なんでだよ!配られた瞬間フルハウスって何が起こったんだよ‼︎)
その表情を見てユリスはニヤリとほくそ笑んだ。
(………ふっ、さては最悪のカードだな?私はあと2が一枚でスリーカード、もしくは5が一枚で2ペア、その両方でフルハウスだ)
(だ、大丈夫だ……落ち着け。一回だけドロー出来るんだ。ここでカードを全部捨てれば同じ奇跡は起こらんだろ)
(さて……ここからは運の勝負だ。大丈夫、私なら勝てる!)
(頼むぜ……頼むから事故ってくれ!)
まずは真斗からカードを全て捨てた。
「(やはりな……!)随分とついてないんだなぁ?さっきまでの威勢は何処へ行ったんだ?」
(思いっきり憑いてるわ!天使の皮を被った悪魔が!)
そんな会話を交わしつつ、真斗は引いたカードを見もせずに手元に置いた。
「……試合放棄か?」
「いや、見ても見なくても俺にはどうしようもないからな。せっかくだから勝負つく時にと思って」
「なるほどな、っと」
続いてユリスがカードを2枚捨てる。
「……あいつら仲良いな」
「つーか決闘するんじゃねぇの?」
「何やってんの?バカなの?」
周りから声が上がるも無視。そして、お互いのカードの交換が終わった。
「行くぜ?」
「いいだろう」
ユリスの表情は自信満々だった。
「フルハウスだ!」
と、威勢良く言った。それを見て、真斗は安心した。
(まさかあの奇跡は二度も起きないだろ。良かった、これで俺は安全圏……)
そんな事を思いながらカードを表にした。
「えーっと……スペードの10、J、Q、K、A……って、お前これ……」
「」
「ろ、ロイヤルストレートフラッシュ……」
「」
二人は固まった。そんなわけで、その瞬間からめでたく真斗は王女様を奴隷にした。