真斗とレスターはズタボロになったが、未だ意識は失っていなかった。
「おい……少しは減ってるのかこれ……」
「分かんねーよ。減ってると思うしかないんじゃないか?」
「クッ……たかがもやし一本食うのにどんだけ時間掛かってるんだ……!」
情けねぇ、とでも言わんばかりにレスターはサイラスを睨んだ。
「くくっ……随分とお疲れですねお二人とも。でもねぇ、まだまだ人形はたくさんいるんですよ」
「針金細工の人形みたいな体しやがって……この棒人間野郎……!」
真斗もサイラスを睨む。
「………殺して欲しいんですか?」
「言っとくけど、死ぬのはテメェだ」
「なんですって?」
「俺がまだ本当の力を解放していないのに、まだ気付かないのか?」
「本当の、力?」
「まぁそうだよなぁ。普段はユリスに追われてるイメージしかないもんなぁ。だが、俺の剣、悪食の能力は吸収だ。だが、よぉく考えてみろ?吸収とは自分の中に止めておくということだ。つまり、」
「吐き出すことができるということが‼︎」
「……そうだ(多分)」
ニヤリと口を歪める真斗。
「! そうだったのか絢辻⁉︎」
レスターも目を輝かせている。
「ああ。いつでも発動しようとすれば出来る(やり方わからんけど)。ただ、今まで溜め込んだものが多過ぎて威力がどの程度のものになるかわからん。お前がいくら人形を使おうと逃げられないぞ」
「くッ……なんということでしょう」
「投降すれば死なずに済むが、どうする?」
真斗はニヤリと再びほくそ笑んだ。サイラスの顔には明らかな動揺が見えるし、レスターの顔にも「助かった……」みたいな雰囲気が見えた。
(………頼むから投降してくれ。もしくは早く助けに来てくれ誰か。本当は吐き出すことが出来るかなんて知らないんだ)
真斗も焦っていた。
「おい絢辻!なんでテメェ今までそれを使わなかった!」
(余計なことを言うなァァァァァッッ‼︎頼むから黙ってろレタス野郎ォオオオオオッッ‼︎)
真斗の頬に冷たい汗が流れた。
「ば、バカだなお前。頭の中も筋肉とレタスで出来てんのか?炭水化物取れよ。奥の手ってのは最後まで取っておくもんだろうが」
「な、なるほど……。炭水化物か」
苦しく言い訳してみた。すると、サイラスが命令を出した。
「ふん、それが本当であろうとなかろうと、僕は立ち止まりませんよ!行きなさい人形達!」
そのまま襲い掛かる人形軍団。
「おい絢辻!来やがったぜ!早く吸収したもん吐きやがれ!」
「わ、わかってるよ!」
今更後に引けない真斗は、剣を構えてテキトーに叫んだ。
「えと、えーっと……なんでもいいや、ゼットォォン!ピロロロロ!」
そう叫んだ瞬間、真斗の剣がパァァァッと光った。
「「「えっ」」」
真斗、レスター、サイラスの声が漏れた。その瞬間、今までユリスの炎をメチャクチャ溜め込んでいたモノがすべて吐き出され、大爆発が起こり、ビルが倒壊した。
「………な、なんで?」
助けに来た綾斗、クローディア、ユリスがその爆発を見ながら唖然とした。
○
病院。真斗は目を覚ました。
「んっ……」
うっすらと目を開けると、ベッドの上でユリスがもたれかかるように寝息を立てていた。
「………ユリス?」
「……んっ、まさとぉ……死ぬ、なぁ……」
「………なんか、心配かけさせちゃった、のかな?」
真斗がそう呟くと、ピクッとユリスの体が動いた。
「っ?」
「んっ……」
「あっ、おはよ」
「うむ……おはよ……って、真斗⁉︎目が覚めたのか⁉︎」
「おう」
「真斗!」
「おうっ⁉︎」
正面からギュッと抱き着かれた。
「……心配したぞ。この馬鹿者!」
「ば、バカ⁉︎」
「そのやりとりはもういい!お前は何を考えてるんだ…あの戦闘の中に飛び込んでいくなど……!」
「相手が強いって事は人を見捨ててもいい理由にはならないって、前も言わなかったか?」
「し、しかしだな……!それで今回は助かったからいいが……!」
「良いならいいじゃん。良かったよ、ユリスが無事で」
言いながらユリスの頭を撫でる真斗。それにユリスは顔をさらに真っ赤にする。
「か、勝手に撫でるな馬鹿者!」
「あ、やだった?」
慌てて手を離す真斗。
「誰がやめていいと言った!」
「いやそれはちょっと理不尽だろ。……てか、撫でて欲しいの?」
「そ、そうとは言ってない!撫でてもいいと言ってるんだ!」
「上からかよ」
「い、いいから撫でろ!」
「はいはい……」
言われてユリスの頭を撫でる真斗。一回撫でるたびに「んっ」と気持ち良さそうな声を上げる。いや性的な意味じゃなくて。
「……そういえばさ、ユリス」
「なんだ?」
「もう鳳凰星武祭のペアは決まったのか?」
「うぐっ……!ま、まだだ……。けど、心に決めた相手なら、いる」
「あっそー。なら早くお願いしろよ。金が必要なんだろ?」
「う、うむ。なら、頼みがある」
「なんだよ」
「そ、その……わたしと、鳳凰星武祭出てくれないか?」
「誰が?」
「お前だ!」
「…………いや無理だろ。お前も知ってるだろ?俺弱いぞ?」
「それはこれから私が鍛えてやる!元々、私はお前の奴隷だ。私はお前以外と組めないだろう」
「……………」
「返事は⁉︎」
「………わかった。なら、なるべく強くならないとな」
「……そうか。私は厳しいぞ」
「分かってるよ」
2人は握手した。