そんなわけで、真斗とユリスは買い物に出掛けた。
「では、任せるぞ」
「はぁ?お前が何か欲しいものがあったんじゃないのかよ」
「お前の買い物を進めるがいい。沙々宮ともそうしたのだろう?」
「じゃあ、スーパー行くけど、本当にいいの?」
「いいと言っている」
仕方ないので、スーパーに向かった。
「……にしても、昨日基本的に全部買っちまったしなぁ……」
でも何か買わなきゃユリスは満足しないだろうし……と、思いながら隣を見ると、ヤケに目を輝かせたユリスがおやつコーナーをジッと見ていた。
「……なにやってんの?」
「いや、こんなお菓子は見たこともなかったのでな……」
「ポテチか?意外……でもないのか。でも奢らねーぞ」
「な、なぜだ⁉︎沙々宮には飲み物を奢ったんだろう⁉︎」
「あいつは買い物に付き合ってもらったからな。けどユリスの場合は違うだろ。それに、沙々宮さんは、こう……小さくて大人しくて、妹みたいなオーラが出てるからなぁ、つい甘やかしたくなるんだよ……って、たんまたんま!こんなところで炎はノー!」
金剛力士像のような顔で炎を出し始めるユリスを全力で宥めると、なんとか炎は引っ込めてくれた。
「………イプ、なのか?」
「ん?」
「……沙々宮みたいな子が、タイプなのか?」
「いや?それはないよ」
「へっ?」
「俺が好きなタイプは歳上に見える同い年だからな。おっと、歳上じゃダメだ。あくまで同い年で歳上に見えるタイプな」
「そ、そこに何か違いはあるのか?」
「ある。……と、思うんだが、それが未だに見つけられないんだよなぁ……。なぁ、なんだと思う?」
「知るか。……だが、まぁ同い年でお前より歳上に見える奴といえば、1人いるんじゃないか?」
「はぁ?何処に?」
「……………」
胸を張るユリス。
「………もしかして、自分のこと言ってる?恥ずかしくないの?」
「んなっ……!少なくとも貴様よりは歳上だ!」
「何処がだよ!常に正々堂々としやがって!大人なら少しはセコくなりやがれ!」
「お前は大人にどんなイメージを持ってるんだ!」
「お前とは正反対なの!てかお前みたいな短気で社交性ゼロのお姫様(笑)が大人なわけあるか!」
「んなっ……!こんのっ、真斗ぉおおおおお‼︎」
吠えながら炎をゴオッ!と燃え立たせるユリス。
「うわっ!お、怒んなよぉ……事実だろう……」
心底ビビりながら震え声で真斗は言った。
「私の何処が短気なんだ!」
「そ、そういうところだよ!すぐに頭に血が上って文字通り怒りが爆発するところ!」
「んぐっ……!」
何も言えなくなるユリス。
「……お、お前は、その……短気な女は嫌いなのか?」
「嫌い、とかそういう問題じゃないよね。短気な奴相手だと何処に機雷が浮いてるかわからないからね」
ウンウンと、頷きながら言うと、ユリスはグッと堪えた。
「……す、すまなかったな」
「はぁ?何急に」
「いや、これからは少し気の短いところを直そうと思っただけだ。言っておくが、真斗の為じゃないぞ」
「あっそ。……それより、買い物だ。今日の晩飯はどうしよっかなー」
と、上機嫌に真斗はカゴを持って歩き出した。そのあとをユリスはついて行った。
○
買い物が終わり、2人は帰宅。
「いやーラッキーだった。割と今日安く食材買えた。これでしばらくは保つなー」
元気な真斗とは裏腹に、ユリスの元気はなかった。
(結局、本当に何も買ってもらえなかったな……いや、そもそも奢ってもらうつもりでいるのはどうかと思うが……)
そう分かっていても、沙々宮より自分は下なのか、と考えてしまう。そんな自分が嫌だったりもする。俯いて自己嫌悪してると、「そうだっ」と真斗が声を漏らした。
「そういや、前にお前に飯作ってもらったっけ」
「あ、ああ。それがどうした?」
「今度は俺がお前に作ってやるよ」
「うえっ⁉︎」
「前に作ってもらったし、何度も特訓に付き合ってもらってたからな」
「い、いいのか?」
「ああ。ただし、あんま期待すんなよ」
てなわけで、真斗の部屋に向かった。
○
「そこで座ってろよ」
真斗に従って、少し緊張気味に椅子に座った。前はまったく意識していなかったが、男の部屋に入るのはやはり緊張する。
そんなユリスの気も知らずに、真斗は呑気にキッチンへ。
「何食いたい?今の俺の家なら大概なんでも作れるよ」
「そうだな。フォアグラ……」
「黙れ。やっぱ俺が決める」
一瞬で一蹴すると、テキトーに飯を作り始めた。
「ほい、出来たぞ」
言いながら真斗は唐揚げにサラダに味噌汁に白米と運ぶ。
「あ、手伝うぞ」
「マジ?悪いな」
と、食卓に飯を並べて、席に着いた。
「「いただきます」」
食べ始めた。早速一口。
「あ。美味しい……」
「だろ?俺の料理の腕は伊達じゃないんだなこれが」
「うむ……。これなら料理人としてやっていけるんじゃないか?」
「なわけあるか」
「……味噌汁も美味い!」
珍しくテンションMAXのユリスを微笑みながら真斗は見つつ、自分も箸を進めた。だが、
「真斗!私に一生料理を作ってくれ!」
の一言で箸が止まった。
「……は?」
冷静にリアクションされ、ユリスは箸どころか呼吸が止まった。そして、顔がかぁああっと真っ赤になる。
「お前……」
「いっ、いいい今のはだな!」
「俺に専属のコックになれって言ってる?」
「求婚してるわけでは……は?」
「無理だっつの。俺みたいな庶民がお姫様のコックになったら周りのコックから浮くだけ……おい、なんだその炎は。さっき短気直すって言わなかった?ねぇ、ユリ……」
「死ねぇえええええええ‼︎」
燃えた。