放課後。真斗は商業エリアで夕飯の買い出しに行っていた。
「ふふーんっ、今日はセールで特売のものがたくさん買えたぜ。人参3本にジャガイモ6個に卵が1パック、米は家にあるからこれで1ヶ月は生きられる」
貧乏だった。で、寮に戻る帰り道。一度校舎を抜けなければならないので、中庭を通っていると、聞き覚えのある声がした。
「……なら、なんで新参者なんかと決闘しようとしやがった!」
「………?」
気になって真斗はそっちへ向かった。
「あっ」
「おっ」
全く同じことをしてる綾斗と顔を合わせた。
「ども」
「う、うん」
と、挨拶してると、「答えろユリス!」と、より一層怒鳴りつけるような声が聞こえて、そっちを見てみた。見れば、ユリスが男三人に囲まれていた。
「応える義務はないな、レスター。我々は誰もが自由に決闘する権利を持っている」
「そうだ。当然俺もな」
「同様に我々は決闘を断る権利も持っている。何度言われようと、もう貴様と決闘するつもりはない」
「だからなぜだ!」
「……はっきり言わないとわからないのか?」
大きくため息をつくと、ギロリとレスターを睨んでユリスは立ち上がった。その時だ。
「ままま、落ち着いて落ち着いて」
緊張感のない声で真斗が間にはいった。
「な、なんだお前!」
「んなっ……⁉︎」
ユリスも驚いたように反応したが、真斗は営業スマイルのような笑顔で言った。
「あ、どうも絢辻です。この子、俺の奴隷でしてね?俺の教育が悪くてどうもすいません」
「だ、誰が貴様の教育を受け……」
言いかけたユリスの口を塞ぐ真斗。
「ですから、とりあえず後でちゃんと教育しときますので、見逃してもらえませんか?レタスさん」
「ふ、ふむ、それなら今回は見逃してやらんことも……今なんて?」
「へ?レタスさん?」
それを聞いてユリスは額に手を当てた。
「俺の名前はレスターだ!貴様ぁ、さては俺を挑発しに来たな?」
「い、いやいやいや!この場を収めに来たんですよ!何でそうなるの⁉︎」
「そういえば、何処かで見たことあると思ったらお前、序列5位じゃないか?」
「ギクッ!」
「こうしよう、ユリスの代わりにお前が戦え!」
「え、え〜……そ、それは無理ですよ」
「なんだ?怖気付いたか?」
「はい」
「そうか」
「…………」
「…………」
「…………」
「なんだお前!怖気付くのかよ!」
「だってターレスさんの方が俺よりも強いもん」
「しかも、認めるのか⁉︎お前5位だろう!」
「いや、たまたま偶然この人に勝てただけですよ」
「俺より弱い奴が俺の上にいるなど……尚更許さん!戦え!」
「や、嫌だってば!」
「そうだぞレスター。しつこいぞ」
いい加減、このやりとりにうんざりしたのか、ユリスが口を挟んだ。が、
「いや、ユリスに言われちゃおしまいでしょう」
思わず本音が出た真斗にユリスは魔法を使う。
「ほう、殺されたいのか貴様は?」
「ご、ごめんなさ……危なっ⁉︎あああ!特売品がぁあ!」
真斗が手に持ってる袋に火がついた。
「だ、誰か!火消して!1ヶ月分の食料がぁあああ!」
「……1ヶ月分?」
「これが?」
引き気味にレスターの後ろの二人が言った。それを気の毒に思ったのか、綾斗が出てきて一緒に火を消してくれた。結果、無事なのはジャガイモ2個と卵4つだけだった。
「ああ……俺の1ヶ月分が一週間分になってしまった……」
「これでも、一週間は保つんだ……」
綾斗が苦笑いで言った。
「チッ、興が冷めたぜ。覚えてろよユリス、5位。貴様らは俺が倒す」
そう言うとレスターは去って行った。
「………俺の、食料」
涙目で俯いた。
「そのくらいで仮にも私の主人ともあろうものが情けない……。それよりもよくも余計な真似をしてくれたな」
「そのくらいだと⁉︎お前みたいな生まれた時から勝ち組の小娘に寮暮らし貧乏学生の何がわかるってんだ!どれだけ特売セールが重要か分かるのか⁉︎」
「ふんっ、分からないし分かる必要もないな」
「そもそも誰の所為でこうなったと思ってんだ!」
「助けてくれなんて頼んだ覚えはない」
冷たい言い分にガックリと項垂れる真斗。すると、綾斗が口を挟んだ。
「………流石に少し酷いんじゃないか?」
「うっ……」
実はユリスは若干気にしていた。申し訳なさそうに若干俯向くも、直ぐに腕を組んで顔を逸らした。
「……………」
「………とりあえず、今日の飯は家にある32分の1カップ麺だな……」
「うっ……」
「明日は……朝飯に砂糖と塩を舐めて昼飯は自販機の下から金をかき集めて学食、晩飯は雑草と米27粒カナ……ははっ、笑えねー」
「ううっ……」
「後は英士朗に土下座してガムでも一つもらうか……」
「………ったな」
「はっ?」
「悪かったな!ご主人様に手を挙げた罰として今日は私が晩御飯をご用意したします!」
「えっ……いやいいよ。悪いし……」
「ダメだ!大体、そんな飯を食っていてる状態で私が寝首をかいて倒したとしても後味が悪い!」
「………尚更食いたくなくなったんだが」
「いいから作らせろ!異論は認めん!」
「えー。そもそも料理できんの?王女様が?」
「貴様は王女様に偏見を持ち過ぎだ‼︎」
一先ずそこを注意しておいて、ユリスは聞いた。
「貴様、ルームメイトはいるのか?」
「いないよ」
「ふむ……なら丁度いいな」
「何、暗殺?」
「違う!少しは私の事を信用しろ!」
「そうは言われてもなぁ……視界に入るだけで火球ぶっ込んでくる女だぜ?」
綾斗に「どう思うよ?」と視線で聞いた。
「ま、まぁ……普通ではない、かな?」
「ふんっ、部外者は黙ってろ」
ユリスにピシャリと言われて黙る綾斗。
「とにかく、今日の夜19:00頃に貴様の部屋に行く。部屋番号を教えろ」
「……分かったよ」
そんなわけで、今日の晩飯は豪華になった。