「いだだだ!も、もう少し優しく……」
「十分優しくしている」
保健室、ユリスが真斗の傷口を消毒していた。
「まったくお前は……仮にも私を倒した男があの程度の相手にやられるなんて、情けないにもほどがあるぞ」
「ま、まぁ……喧嘩はよくするけど、ユリスとかセーターみたいに自分を鍛えてるわけじゃないし……」
「レスターだ。……それで、その、お前にその気があればでいいんだが……」
と、何故か頬を染めながらユリスは口籠る。そして、チラッと真斗を見た。
「…….私が鍛えてやろうか?」
「へっ?」
「お、お前のその剣だけは優秀なんだ。それに、剣技が加われば少しはマシになるだろう?」
「いや、でも……ユリスはいいのか?」
「何がだ?」
「や、だって俺にモノを教えるって……。いつか俺の寝首をかくだのなんだの言ってたのに、やりづらくなるんじゃないの?」
「か、勘違いするな!私が倒す前に誰かにお前が倒されるくらいなら少しくらい特訓に付き合ってやってもいいってだけだ!」
「そ、そうか……」
「それに、貴様程度がどれだけ強くなろうと私は負けはしない」
「この前負けたばかりじゃん……(小声)」
「あ?」
「何でもないです」
「それで、どうするんだ?」
少し迷ったものの、真斗は頭を下げた。
「よ、よろしくお願いします」
「………私は厳しいからな」
そんなわけで、自分の奴隷の弟子になった。
○
翌日、放課後。特訓したみたいなとこ。
「……では、早速始めよう」
「よろしく」
「とはいうものの、私はぶっちゃけ人にものを教えるのが得意ではない」
「本当にぶっちゃけたよ。それでよく鍛えるとか言い出したな」
「だから、これからお前は私に本気でかかって来い。ボコボコにしてやるから、それで学べ」
「えー。もう少し優しい特訓にしようぜー」
「あ?」
ゴオッ!と髪の毛と炎を逆立たせた。
「すいませんでした」
「さて、来い!」
言われて、真斗は剣を握って襲い掛かった。
○
1分後。チーン、と倒れている真斗。
「ふむ……まぁ頑張った方なのではないか?」
「……もう無理、死ぬ……」
「情けない……。もしかしてお前、決闘した事ないんじゃないのか?」
「ああ。ユリスに一回勝って、それが初戦だよ」
「……私も情けない」
「殴り合いの喧嘩なら良くするんだけどなぁ……お互い素手なら五人くらいまでならまとめて相手できるぜ」
「この学園では何の自慢にもならんぞそれ。責めて剣くらいまともに振れるようになれないのか?」
「俺って剣の師匠とかそういうのいないからなぁ」
「まず剣の握り方とかそういうのがなっていない。物を教えるのは苦手なのだが……仕方ないか。構えてみろ」
言われて、真斗は牙突の構えをした。
「いやそうじゃなくて。普通にだ」
「普通にと言われても……こう?」
とりあえず、見様見真似で剣道の構えをしてみた。すると、後ろからユリスが手を回してくる。
「⁉︎ ゆ、ユリスさん⁉︎」
「動くな。もっと、こう……手は上から握るようにして……剣先は相手の喉に向けて……」
「あ、あの……色々と当たってるんですけど……」
「いいから集中しろ」
「は、はい。………意外と柔らかいな(小声)」
「? 何か言ったか?」
「へ?言ってないけど?」
「そうか。なら、話を聞け。肘は軽く曲げて……左手で持つようにして……」
(せっかくだからこの感触を堪能しよう)
「……よしっ、こんなものか。ではもう一度かかって来い」
○
30秒後、
「………さっきより弱くなってるだと?」
苦々しい顔でユリスはため息をついた。
「何でそうなるんだ……。まぁいい、今日はもう終わりにしよう」
「あ、ああ。なんか悪かったな」
「なにがだ?」
「いやー。付き合ってもらったのに全然上達しなくて」
「気にするな。最初は誰だってそんなものだ。ただし、次の日曜日も特訓するからな」
「マジ?」
「当然だ。私の主人ともあろうものがこんな体たらくでは困る」
「り、りょうかい……」
渋々頷いた。