王女様を奴隷にしてしまいました   作:フリーザ様

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もやし野郎

 

放課後になりました。

 

「じゃ、綾斗。行こうか」

 

「ごめん、その前にトイレ行ってもいいかな」

 

「ああ、いってら」

 

教室を小走りで出て行く綾斗の背中を見つつ、大きなあくびを一発。すると、ユリスが教室を険しい表情で出て行くのが見えた。

 

「…………」

 

朝、ユリスが何か手紙のようなものを読んでたのを思い出した。なんとなく気になったので、ユリスの机の中を漁ると、出て来た。果たし状みたいなのが。

 

「ッ!」

 

それを見るなり慌てて真斗は教室を飛び出した。

 

「うおっ!」

 

「わっ!」

 

トイレから戻ってきた綾斗とぶつかったが、「悪い!」と一言詫びて教室から出て行った。

 

 

 

 

ユリスは再開発エリアの廃ビルにいた。中は薄暗くなっているが、恐れることなく中を進むと、上からユリスめがけて廃材が落ちて来た。

 

「『咲き誇れ、隔絶の赤傘花』」

 

それをあっさり炎で跳ね除ける。

 

「今更この程度で私をどうにか出来るとは思っていないだろう?いい加減出てきたらどうだ」

 

声が暗闇の中で響き渡る。その闇の中からほっそりとした少年が姿を現した。

 

「これは失敬。余興にもなりませんでしたか」

 

「貴様……サイラス・ノーマンか」

 

「その通り、御機嫌よう『華焔の魔女』……いや、ユリス=アレク(長いので省略)」

 

「こんな物を私の机の上に置いたのは貴様だな?」

 

言いながらポケットから紙を出そうとした。だが、出てこない。

 

「……ごめんどっか置いてきたみたい」

 

「いいよ気にしてない」

 

意外と優しい2人の気遣いのあと、

 

「その通りですよ」

 

と、サイラスは答えた。ちなみに手紙の内容は「これからは周囲の人間を狙う。それを望まぬなら以下の場所に来られたし」とのことだった。

 

「それで、何の用だ?」

 

「まぁまぁ、そう急かないでください。僕としては話し合いで済むならばそれに越したことはないと考えているのですよ。わざわざお呼び立てしたのもそのためです」

 

「白々しいにもほどがあるな。この後に及んで何を言う」

 

「いえいえ、本当です。僕としても正面からあなたとやりあうのはできるだけ避けたいのが本音ですし」

 

言いながらも余裕の態度は崩さないサイラス。それを見つつ、ユリスは言った。

 

「わかった。話だけは聞いてやろう」

 

「そうこなくては。実は僕もあなたと同様、ここでの目的はお金を稼ぐことでしてね。気が合うはずだとも思っていたのですよ」

 

いやそれは断固遠慮しておく、とユリスは心の中で呟いた。

 

「おわかりでしょうが、こちらの条件はあなたの《鳳凰星武祭》出場辞退です。プラスして、今回の襲撃と僕が無関係であることを証言していただけると助かります」

 

「私のメリットは?」

 

「あなたと絢辻マサオくんの身の安全では不足ですか?」

 

「おい、誰だそれ」

 

「失礼、噛みました」

 

「違う、わざとだ」

 

「噛みまみた!」

 

「わざとじゃな……いやいいから。そういうのいいから」

 

ペースに乗せられてるのに気付き、コホンと咳払いすると、ユリスは言った。

 

「話にならんな。そんなものはここで貴様を叩きのめせばすむことだ」

 

と、今にも開戦しそうな雰囲気の時、割り込むように声が響き渡った。

 

「これはいったいどういうことだ、サイラスッ!」

 

「……レスター?」

 

「やあ、お待ちしていましたよレスターさん」

 

「ユリスが決闘を受けたというから駆けつけてみれば、今の話は本当なのか?テメェがユリスを襲った犯人だと?」

 

「ええ、その通りです。それが何か?」

 

「ふざけるな!なんでそんなマネしやがった!」

 

「なんでと言われましてもね。依頼されたからとしか答えられません」

 

「依頼だと……?」

 

すると、そのレスターにユリスが言った。

 

「こいつはな、どこぞの学園と内通して《鳳凰星武祭》にエントリーした有力学生を襲っていたのだ。知らなかったのか?」

 

「………!」

 

「僕はあなた方とは違い、正面切ってぶつかり合うような愚かしいマネを繰り返すのは御免なんですよ。もっと安全でスマートに稼げる方法があるのなら、そちらを選択して当然でしょう」

 

「それが同じ学園の仲間を売ることだと?」

 

「仲間?ははっ、ご冗談を」

 

サイラスは笑いながら首を横に振る。

 

「ここに集まっているものはみな敵同士じゃありませんか。一時的に手を組むことはあっても、それ以外ではお互いを蹴落とそうとしている連中ばかりです。あなた方のように序列が上位の人はよくおわかりでしょう?僕はそのようにわずらわしい生活は真っ平なんですよ。同じくらい稼げるのであれば、目立たずひっそりとしていた方が賢いと思いませんか?」

 

「……まあ、貴様の言い分にも一理あるな」

 

「おい、ユリス……!」

 

「だが。決してそれだけではない」

 

「おや、これは意外ですな。あなたはどちらかと言えば、僕に近い方だと思っていたのですが」

 

「こちらも心外だ。貴様のような外道と一緒にされるとはな」

 

ユリスは「話はこれで終わりだ」とでも言わんばかりにサイラスを睨む。レスターも煌式武装の発動体を取り出した。

 

「レスター、あまり先走るなよ。何を仕掛けてくるかわからんぞ。奴も魔術師なのだろう?」

 

「ハッ、あいつの能力は物体操作だ。せいぜいそこらの鉄骨を振り回すことくらいしかできやしねぇさ」

 

言うと、レスターは斧を担いで突っ込んだ。

 

「くたばりやがれ!」

 

サイラスに斧を振り下ろす。だが、その横からローブをかぶった大男が2人の間に割って入り、レスターの一撃を受け止めた。

 

「ッ! そうかそうか、ご自慢のお仲間ってやつか」

 

「仲間?くくっ、馬鹿を言わないでください。こいつらは、僕の可愛いお人形ですよ」

 

サイラスがパチンと指を鳴らすと、ローブを脱ぎ捨てる。

 

「戦闘用の擬形体か?」

 

ユリスが呟いた。

 

「あんな無粋なものと一緒にしないでいただきたいですね。こいつらに機械仕掛けは一切使っていませんよ」

 

「貴様はターゲットをその人形共に襲わせていた。そして貴様が人形をコントロールできることを誰も知らないのであれば、なるほど貴様を捕まえるのは難しいだろうな」

 

「くだらねぇ!そんなものここでテメェを張り倒して風紀委員なり警備隊なりに突き出せばそれで済むことだ!」

 

「それはあなた方が無事にここから帰れたらの話でしょう?」

 

「いいだろう、だったら次は本気で行くぜ」

 

レスターは星辰刀を高めると、《ヴァルディッシュ=レオ》の光の刃が2倍近くに膨れ上がった。

 

「くらいやがれ!《ブラストネメア》!」

 

言うと斧を振り下ろした。その一撃で三体のうち二体は破壊できた。が、デカイ大男タイプの人形はボディにヒビが入った程度だ。

 

「ほう、ちったぁ丈夫な奴もいるらしいな」

 

「これは対レスターさん用に用意した重量型ですからね」

 

レスターは再びヴァルディッシュ=レオを振り下ろす。が、その前に柱の陰から現れた人形が二体、レスターに光弾の雨を浴びせた。

 

「ぐあああっ‼︎」

 

「レスター!」

 

ユリスは飛び出したが、それを阻むように別の人形が現れる。

 

「おっと、あなたはそこでおとなしくしていてください。そうそう、そいつらも特別仕様でしてね。あなた用に耐熱限界をあげてあります」

 

「くっ……!」

 

ユリスもアスペラ・スピーナを起動した。

 

「きたねぇ不意打ちしか、できねぇようだな……!」

 

レスターはサイラスを睨みつけた。

 

「おや、存外にお元気ですね」

 

「こ、こんな木偶の坊、例え何体かかってこようと、俺様の相手じゃ……!」

 

「何体で?いいでしょう。お望み通りにしてあげます。僕が同時に操作できる最大数、128体の人形でね」

 

「ひゃく……⁉︎」

 

レスターの顔に絶望の色が広がる。

 

「『咲き誇れ、呑竜の咬焔花』!」

 

ユリスは炎で巨大な竜を作った。それが耐熱限界を上げた人形だろうとなんだろうと、焼き尽くす。

 

「これは大したものですね。序列6位は伊達ではないということですか。しかし、所詮は多勢に無勢!」

 

さらに人形を呼び出すサイラス。

 

「舐めるな!」

 

ユリスは気合一閃、目の前の人形を蹴り飛ばすと、振り向きざまに背後に回っていた人形も串刺しにする。が、その人形はユリスを抱き締めた。

 

「っ⁉︎ 捨て身か⁉︎」

 

そして、人形たちが一斉にユリスに銃を向けた。

 

「!」

 

「さよならです」

 

キュッと目を瞑るユリス。サイラスが指をパチンッと鳴らそうと手を上げた時だ。カンッ、カンッ、と足音が聞こえてきた。

 

「っ?」

 

ユリスもサイラスもレスターもその足音の方を見た。暗くて見えないが、人の影のようなものが見えた。

 

「何者ですか?」

 

「………ってんだ」

 

「は?」

 

「何やってんだって聞いてんだこのもやし野郎がァッ‼︎」

 

怒声と共に歩いて来たのは、真斗だった。

 

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