派遣勇者斎藤さん   作:kotetu

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ゆうしゃよ!けつた”んのし”かんし”ゃ!▼

「ぃよっしゃぁ!全クリ〜♪」

そう叫ぶ俺の前のテレビ画面には闇の大魔王がぐおぉやられたーと嘆きながら倒れた。

また世界を一つ救ってしまった。

俺は今までいくつの世界を救ってきたんだろう。

エンドロールが終わり街を練り歩くと住人たちが勇者様勇者様と大騒ぎ。

ぬはは、よきにはからえ

なんたって闇の大魔王を倒したんだからな。

崇めるのもわかる。

俺、斎藤明良(さいとうあきよし)は昔からかなりのゲーマーだった。

小学校の低学年からゲームをやり始め徐々に魅せられる。

全盛期には週一のペースでゲームを全クリし新しいのを買うという廃人ぶりを見せていた。

流石に全盛期と比べて落ち着いたが今でも20日に一度のペースでゲームをクリアしている。

え?なんでそんな時間あるかって?

それは…

「明良!あんたいつまでゲームしてんの!!毎日毎日ゲームばっか…いい加減仕事しなさい!!」

…ニートだからである。

 

あのあと母さんがガチ切れしてゲームを捨てられそうになったので渋々外に出る。

現在21歳のあきよしくんは絶賛ニート中である。

別に労働意欲がないわけじゃない。

数回はバイト経験をしたことがあるし(なお、全て3ヶ月以内でバックレ)

今だって(家の)仕事をしている。

嘘、労働意欲が皆無だな俺。

学校の成績はtheド平均。

悪いわけではないし特別良いわけではない。

だからはたらきたくても入れる会社がないってわけではない。

普通の高校に進学し普通に学校生活を送り普通に友達を作り普通に彼女を作り。

大学に進学する学力は持っていたが特にこれといってやりたい事もないので高卒でバイトをしていた。

なんとなく大学にいって高い金払ってウェーイするより遥かにましだと思っている。

「取り敢えずネカフェでも行くかー」

いやあれよ?労働意欲が物凄くある俺は求人サイトを見るために行くんだよ?

雨が降りそうだったので足早にネカフェに向かう。

時刻は11時過ぎ。平日の昼間なのになんだこいつって視線を店員から浴びせられるも俺は気にしない。

フリータイムとドリンクバーを頼みジュースを注いでから個室のソファーに腰掛ける。

さーて、ニコニコd…じゃなくて求人サイトを…

俺が珍しくやる気になってるところにLINEの通知音が鳴る

画面を見ると宛先に翔悟の文字

神木翔悟(かみきしょうご)。俺の友達からだ。

ちなみにこいつは雑誌の編集だったかなんだったかで平日休みの仕事をしている。

内容は『アンハンやろーぜ!』というもの。

何かと思えばゲームの誘いかよ。

休みさえ取れればゲームゲームゲームゲーム。全く呑気なやつだな。

アンハンとはアンデット・ハンターの略である。

世界中のプレイヤーと協力してアンデットを倒したり高難易度のミッションを遂行するゲームで今全世界で最も遊ばれている大人気PCオンラインゲームである。

RPGを主としている俺でも結構ハマっている。

プレイ時間?2038時間46分。

ランク?9999。カンストだよ。

翔悟情報によると一部界隈で俺は神格化してるらしいな。

神プレイヤーだとかなんだとか。ふひひ。

少し話がずれた。

俺は返信の内容を少し考えてからサッサと入力。

まーなんだ。お前には申し訳ないが俺は何より仕事を探すのが先決だ。

悪いが今日のとこはパス

お前も調子乗ってると足元『オッケー!すぐログインするわ!』すくわれるぞ?

送信と。

あれれ!?翔悟から『サンキュー!待ってる!今日はランク500クラスのクエスト行きたい』

との返信が!

あれー?っかしーなぁ?

まぁ送っちゃったものは仕方ない。少しだけな。少しだけ。

だいたい30分くらいやった頃だろう翔悟からボイスチャットで編集の仕事が入ったから今日はこれくらいにしたいと終了を告げられた。

んだよ、誘ってきたから乗ったのにたった30分かよ。

赤の他人だったら地雷プレイヤーとしてプレイヤー名とID晒してるレベル。

ぶつくさ文句を言ってると本来の目的を思い出した。

さてと、そろそろ求人しらべますかねぇー

ふとPC画面右下の時計を見ると16:38と示している。

……??

う、嘘だよー、だって俺がここ入ったの11時過ぎだよー?

16時ってつまりは午後4時じゃん。

おっかしいよー、翔悟とは30分(俺式体内時計)しかやってないもんー

古いPCだから時間ずれてんじゃないの?

スマホの電源を押して待ち受けに映し出された時間は16:50

ほら!やっぱ時間ずれてるよ!

ダメな方に!!

 

「い、いかん…このままじゃ本当に何もせずに終わってしまう…

と、とにかく求人サイトを開こう!」

検索ワードを打ち込んでから検索結果画面が反映されるまで数秒かかった。

するとまたスマホがムーッムーッと震えている。

なにかと見ると俺が最近ハマってるゲームアプリの運営からの通知だった。

『アニメ【忍者☆少女みきりん】とのコラボ開催!限定クエストに挑みみきりんやカナちゃんその他アニメのキャラクターをGETしよう!!』

なん…だと…

俺の今一番熱いゲームと一番好きなアニメとのコラボだと!?

俺は無意識に求人サイトを閉じてコラボの詳細を得るために公式サイトに飛ぶ。

コラボ期間は10日間…

今日くらい良いじゃない…

いや!今日だけはしっかりと求人を見なくては…

葛藤して葛藤してなんとか最後の意地で欲を捻り潰し求人サイトにたどり着いた。

長い戦いだった。

 

だが内容を見ても俺の興味を揺さぶる求人が何一つない。

工場の流作業だったり警備員だったり。

アットホームな職場です!って書いてあるけど従業員の集合写真、目が笑ってないぞ。

アットホームな職場。そんな言葉に俺は騙されんぞ。

高校の頃その言葉につられレンタルビデオ店でバイトした時人間関係の問題で15〜6日で辞めてしまった。

笹井のクソ野郎。正社員だか知らねーけど調子乗るなよ若ハゲ。

そんな事を思い出しながらいくつかの求人サイトを転々としている。

濁りきった死んだ目でスクロールしていくが未だに見つからん。

なんやかんや1時間くらい粘ったが収穫なし。

そろそろ潮時だろう。

ゲーム大好きの俺が断腸の思いでアプリのプレイを諦めたのにも関わらず何も見つからなかった。

こんなんだったらゲームしてればよかった。

お腹が減ったので家に帰ってマミーの作る美味しいご飯を食べよう。

ブラウザを閉じようとしたその時一つの求人が俺の目を釘付けにした。

【派遣勇者様募集】

なんだこれ。

この求人が俺の人生を一変させる。

「派遣勇者?なんだこれ」

ゲームか?

いやでもここはお堅い求人サイトだ。

ゲームのリンクなんて貼るわけがない。

じゃあ仕事の求人?

いや、怪しすぎるだろ。

『会った事ないけど貴方とは前世で愛し合ってたと思うの。運命、感じない?』とかいう騙す気があるのかどうかわからないスパムメールくらい怪しい。

でも気になって仕方ない。

もしかしてゲームのクリエイターとか?

んなわけないよなぁ

少し迷った挙句URLをクリックした。

すると詳細のページに移った

 

社名:勇者派遣所

職種:人助け、悪の成敗

仕事内容:困っている人たちを助ける仕事です。とてもやりがいがありますが体力を使います。

給与:月額25万〜

学歴:高校を卒業している方。20歳以上の方

 

悪の成敗というとてもインパクトが強い単語があったが何より驚いたのが給料の高さだ。

「1年目で25万て嘘だろ…」

これすごい魅力でめちゃくちゃ美味しい仕事なんじゃないか…?

…どうする俺

いーや!待て待て待て落ち着け

そもそも何する仕事だ?

パッと見なにかの手伝いを勇者になぞらえてるように見えたが悪の成敗という項目を見るとどうも違うみたいっつーか怪しすぎんよこれ。

気になるけど。

詐欺とかだったらどうしよう

この歳でエスポワール号乗りたくねーよ。鉄骨渡りたくねーよ。

うーむと唸っていたら母さんから電話が

「あんた今日晩飯いらないの?お父さん早いらしいからあげちゃうよ?」

勇者求人インパクトが強すぎて空腹の事をすっかり忘れていたが晩飯という単語を聞いたら腹が鳴った。

「あぁいるいる!食べるから!今帰るから!」

俺は雑に話を切った。

どうする俺

めっちゃ気になるけど腹も空いた

うーーん

悩んだがやはり食欲には勝てない。

家帰ってさっさと飯食ってから自分のPCで検索しよう。

もしもなにか起きたらその時はその時だ。

気づけば時刻は夜7時半を回っていた

店を出ると小雨が降っていたが頭の中には飯とさっきの求人しか無かった。

スマホで調べれるものなら調べたいが既に7GB越えているので重くて調べられない。

もどかしく感じながら家までの帰路を小走りで進む。

5分くらい走って家に着く。

運動不足気味のせいか5分走っただけで息が上がる

「ただいま!」

早く知りたくて勢いよくドアを開ける。

「何汗かいてんの。キモいんだけどw」

俺に意地悪な笑みを向けてこう言い放ったのは俺の妹の斎藤凛花(さいとうりんか)。

現在高校二年生で彼氏がおるとの事。

「おいおいお兄ちゃんがせっかく仕事しようと考えてるのにそんな事言うなよー」

「……えっ…?」

凛花は目を丸くする

「ん?どした」

「お兄ちゃんが仕事…?」

「おう、まぁ俺も自立しないととかまぁ色々考えてんだ」

妹の相手もいいが早く求人内容が知りたい。

「おかーさん!おかーさん!赤飯!赤飯だよぉ〜!」

騒がしい妹が母さんがいるリビングにかけていく。

それに続いて俺もリビングに向かう。

「ただいま〜飯…ってうお!?」

リビングに入った瞬間母さんが俺の方を鷲掴みにして来た

「ねぇ!あんた働くの!?働くの?ねぇ」

「ちょ!ちょっと待って!落ち着いて!まだ決まったわけじゃないから!」

「いや!でも働く気が出ただけでお母さん嬉しいよ!」

「わかったから、苦しいからいったん離れて」

ハグしてくる母親を引っぺがす

「それよりご飯まだ?」

「今用意するわ!」

なんか母さんが随分と張り切って見えた。

走ってきた疲れと母さんの相手した疲れで疲労困憊の俺はリビングのソファーにどしっと深く腰掛ける。

適当にチャンネルをザッピングして面白そうな番組を探すが俺の気にいるような番組は無かった。

グダーっとしてるとハイテンションの凛花が俺の隣に座ってきた

「いやーまさかお兄ちゃんが社会人になるとはなぁ〜、凛花嬉しくて涙でちゃう。成長したねぇ」

ぐしぐし俺の頭を撫でてくる

「まだ決まったわけじゃない。

てかやめろ撫でるな」

「んもー照れちゃってー」

うぜぇ…

「ちなみにどんな会社なの?」

「派遣会社」

「お兄ちゃん仕事覚えられんのー?」

「まぁなんとかなるだろ」

すると急に凛花が手を引っ込めた。

「うわっ…汗ついた…最悪〜」

自分で撫でておきながら汚物を見るような目で睨む

何?俺が悪いの?

こりゃたまげた。

その後腕によりをかけた(母さんと凛花の残飯+昨日の残り物)マミーの愛情たっぷりご飯を食べて二階の自分の部屋に戻った。

部屋はいつも通りに汚い。

服は脱ぎ散らかしていて机の上にはスナック類の袋やビールの空き缶などが置いてある。

テレビは消してあるがゲームの電源が入ったままだった。

今朝家を出る時に帰ってから続きをやろうと思っていたのでつけっぱにしといたのを思い出す。

だが今ゲームなんてのはどうでもいい。

今俺はあの求人の事だけが気になっている。

自分でもなぜあんな嘘くさい怪しいものに魅力を感じているのかはわからなかった。

だが俺はこの時小学生の時のあの初めてRPGを触りRPGという物に惹かれていったのと似たような感覚を覚えていた。

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