派遣勇者斎藤さん   作:kotetu

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ゆうしゃよ! ついにしゅは°つし”ゃ!

転送装置なるものは隣の建物にあるらしい。

その建物に向かいながら勇者課についてすこし聞いてみた。

「勇者課ってお二人以外いるんですか?」

俺の後ろを付いて歩いている嬉野さんが答えてくれた。

「今は真田さんと明良くんだけだよー」

「今はって事は昔は居たんですか?」

「2年前まで安西っていうおじさんが居たんだけど急にこなくなっちゃって」

「…えっ……?」

「あぁもちろんこっちの世界の話ね?向こうの世界から帰ってこなくなったわけじゃないよ?」

俺は心底安堵した

「そうだったんですか…」

「だから人が足りなくて困ってたんだよー。明良君が来てくれてありがたいよ」

「いえいえ、こちら事雇っていただきありがとうございます」

まだ着きそうにないので質問をぶつける。

「ちなみに嬉野さんはなんで事務仕事担当になったんですか?」

「真田さん一人だと事務仕事が多すぎるらしくて。三人いるときは安西さんと私で交互に向こうの世界に行ってたんだけど最近は向こうの世界に行かないでずーっと事務仕事してたんだよ。人を増やすにも一応公には出せない秘密もあるしそうやすやすと求人を出せないんだよね」

「え? でも俺ネットでこの求人見つけたんですけど。ネットに出してよかったんですか?」

「実はあの求人はあのネットカフェの君がいた個室のパソコンにしか表示されないんだよ。

それがたまたま君だったってわけ」

「なるほど…でも自分のパソコンにも出てましたけど」

ぎくっという表情をしている嬉野さん

「…?」

「……ごめんハッキングしちゃった」

てへぺろと舌をだして謝る。

こんな誠意のない謝罪あるのか

「ごめんって……」

「あぁ、でも勿論それを表示させる以外の事はしてないよ?」

「……なら良いですけど…次からやめてくださいよ?」

「ありがとーっ!勿論もうしない!」

後ろから抱きついてくるけど何一つキュンと来ないのは何故だろう

「もしかして……明良君そっち系?」

「んなわけないじゃないですか!ってか人の心いつまでも読まないでください!」

「まーまーそんな怒らないでよー」

この人の前だとプライバシーもあったもんじゃないな。

ここで俺は一つ気になった。

俺が求人を見たって必ず面接に来るとは限らない。

もし広めてたらどうなっていたんだろう。

聞こうとした瞬間今まで黙ってた真田魔王が口を開けた。

「ほら着いたぞ。ここが転送装置保管庫だ」

目の前には高さ3mほどのコンクリート製の塊。

奥行きはわからない。

窓やドアは一切ない。

「中に入るぞ」

と真田さんは言っているが…

どこから入るのかと気になっていると一瞬で目の前が真っ白になった。

「うぇっ!?」

裏返った間抜けな声が出た。

その瞬間目の前が一面真っ白になる?

眩しいわけではないが白以外何も見えない。

数秒すると真っ白だった視界が徐々に弱まり外見からは想像できない広い空間が見えてきた。

部屋の真ん中には洋風の椅子が一つ台の上に置いてあり椅子の真上の天井にはお椀を逆さにしたような機械が設置してある。

「これが…転送装置……」

ぶっちゃけなんかもっとこうメカメカしいのを想像していた。

どのように使うのかは全くわからないがこれでゲームの世界に行けるというのだ。

にわかには信じがたいが今からそれを実践してくれるという。

百聞は一見に如かず、阿蘇さんの言うとおりだ。

「んじゃ、嬉野ちゃん座って」

真田魔王が指示を出すとそれに素直に従う。

「久しぶりの向こうの世界〜!」

そんなに行きたかったのか嬉野さんはとてもはしゃいでいる。

「向こうに行った事を確認したらすぐに戻すからな」

「え〜!少しくらい遊んだって良いじゃん!」

「だーめーだ。今一応仕事中だぞ?仕事しろ仕事。事務作業溜まってんだから。明日までに仕上げなきゃならんやつだって…」

「あーもう!わかったわかった!けちんぼっ」

「はいはい、けちんぼけちんぼ。さーさー早く行った行った」

なんかこのやり取りを見てると娘と父親のやり取りのようにも見える。

あんな身なりの父親は俺は死んでも嫌だけどね。

嬉野さんが椅子に座ると目を瞑り始めた。

果たしてどうなるのか。

この後俺があの椅子に座ると思うと気が気ではない。

「じゃ!お願いしまーす!」

嬉野さんがそう言うと真田さんはタブレットを取り出し操作を始めた。

すると嬉野さんをまばゆい閃光が包み込む。

「うわ!?」

見てようと思っていたがあまりの眩しさに顔を伏せる。

光が弱まったのを感じ再び椅子の方を見るとそこにはもう嬉野さんの姿はなかった。

「真田さん…嬉野さんは……」

真田魔王は黙って顎で壁に埋め込まれてるモニターを見ろと示す。

真田さんが端末をいじるとそのモニターの電源がついた。

だが真っ暗なまま。

真田魔王は機械に近づきモニターからカセットのようなものを取り出しフーフーし始めた。

「さ、真田さん…?」

そしてもう一度セットし直して再び端末をいじる。

すると画面にNow loadingの文字

「よしっ……」

真田魔王は小さくガッツポーズをした。

一昔前のゲームかっ!!

しばらくするとloadingの文字が消え一面草原の景色が現れた。

するとモニターの方から嬉野さんの声が聞こえてきた。

『やほー!明良くん聞こえるー?見えるー?』

「これって向こうにも聞こえるんですか?」

「勿論」

「嬉野さーん!聞こえてますー!」

『おー!よかったよかった。ここがゲームの世界だよー!』

一番最初の印象はすごい綺麗な所だという感覚だった。

「すごい綺麗です!」

『でしょー?』

既に少しワクワクしていた。

怖いとはいえRPGが大好きな俺からしたら夢のような事だ。ワクワクするなという方が無茶だ。

嬉野さんと話してると真田さんが「ここをいじると面白いことが起きるんだ」と言いながら端末をいじる

画面に注目しろと言われたので見ていると綺麗だった世界がファミコンのようなドット仕様になった。

「こんなことも出来るんですか!」

「嬉野ちゃんからしたら変わらないがちょっとした遊び心だな」

製作者センスいいな。

「さてとそろそろ戻ってもらうか」

またまた真田魔王がいじると再び閃光に包まれる。

光がおさまってから椅子の方を見ると嬉野さんが座っていた。

「えー!もう終わりー!?もっといたかったのにー!」

「もう始業時間から20分経ってるぞ。遊びは早々にして早く仕事しろ」

「むぅ…」

嬉野さんはご不満なご様子。

「んで、どうだった明良くん」

ぶっちゃけもう怖いとか不安とか言う気持ちは皆無に等しかった。

それよりも昔から大好きだったRPGの世界に入れると思うと徐々に興奮してきた。

「すぐにでも行きたいくらいです」

ここで嘘をついてもどうせ見破られるので本当の気持ちを答える。

「ふふっなら良かった」

「おお、恐怖が無くなったなら良かったな」

俺の答えを聞いた二人は満足そうだ。

「じゃあ斎藤君。君をあちらの世界に派遣する。これを持って行ききなさい」

真田魔王から手のひらの半分くらいの大きさの機械を受け取る。

長方形の箱の形で表面に一つ目のライトとスピーカーが付いている。

側面には赤のボタンが一つと長細い黒いボタンが二つとその他細かいボタンが少々。

中身は精密機械が詰まっているのかこの大きさにしてはなかなか重たい。

「何ですかこれ?」

「マップ、道具、装備、などすべての情報が入ってる機械だ。向こうの世界とこちらの世界とで通信も出来る。仕事を終えて帰る時などに使うから無くすなよ。向こうに行ったらまずこれを起動するんだ」

さしずめ万能アイテムってとこか。

「わかりました」

俺はポッケに機械を入れて転送装置に座る。

「明良くーん!頑張ってねー!」

「勇者となるんだぞ」

嬉野さんと真田魔王の声が聞こえる。

俺は黙って頷き目を瞑る。

その時俺はふと小学生の頃を思い出した。

8月12日。あの日小学生だった俺がゲームオタになるキッカケを作ったゲーム。ヒーローストーリー1が発売された。

現在は10まで出ている超人気RPGだ。

RPGの元祖といわれるヒーローストーリーは発売から数日で爆発的ヒットを遂げ大人から子供まで大流行した。

勿論俺ももれなく虜になり学校から帰ってきてはすぐゲームをする日々だった。

翌日学校に行ってはどこまで行ったか友達と競い合ったり攻略法を教えあったりしたものだ。

ゲーム起動中カセットを半分抜くとレベル99になるというガセネタを信じ込み実際にやったらデータが消えて一日中大泣きした事もあった。

その後2.3.4とシリーズすべてをプレイしていきヒーローストーリーは俺の青春の思い出となった。

小学生の俺はヒーローストーリーをプレイ中にこんな事を思った事がある。

RPGの世界に入れたら勇者になれるのかな。

と。

まさかそんな夢にも思わないような事が現実になるとは。

おい小学生の俺、聞こえてるか?

良かったな、お前は勇者になれるぞ。

その瞬間俺の体は閃光に包み込まれた。

 

目を開けると眼下には美しい草原と青空が広がっており遠くには山が連なっている。

ここがRPGの世界……

ぶるっと身体を震わせた。

決して恐怖に慄き震えたわけじゃない。

紛れもない武者震いだ。

ここがいままで俺を虜にし続けた世界。

これからどんな世界が待っているのか。

どんな困難が待ち受けているのか。

いまの気持ちは初めてゲームを起動した時のあの日の高揚感と全く同じだった。

いつまでも感動していてもゲームは始まらないので真田魔王からもらった機会を起動する。

スイッチを押すと一つ目のライトが光り空中に光のタッチパネルを映し出した。

おお、近代的。

右上にCALLの文字があるのでタップすると呼び出し中と出る。

少しすると端末から嬉野さんの声が聞こえてきた。

『もしもしー!どう?どう?いまどんな気持ち?』

「最高にワクワクしてます」

『おー!でもまだ序の口!実際に冒険したらもっと楽しいよ!』

「とても楽しみです」

『頑張ってねー!』

嬉野さんは俺にそう言い残し真田魔王に交換した。

『どうだね、もう怖くないかね?』

「えぇ、すぐにでも冒険したいです」

『はっはっは!それはいい心意気だ。期待しているぞ』

ここから本題に入る。

『いま君がいるところはグリーンドールという地方にいる。そこから北に進むと街が見えてくるはずだ。そこで村人から聞き込みをして仕事を遂行してくれ』

RPGの王道パターンだな

「RPGに関しての知識は他の人に負けないので頑張りたいと思います」

『ほほう、これは頼もしいな。

道具管理やステータスの把握などはすべてその端末で出来る。

装備品のデータを入力しておいたから後でチェックしてくれ。

なにかわからない事があったらCALLボタンを押して周波数0.3に繋げ。では武運を祈る』

そう言い残し通信は切れた。

 

さて、早速冒険を始めようか!

確か北の方と言っていたな。

早速向かう…の前に

まずはステータスの把握や武器の装備をしなければ。

電源を押しステータスのところをタップ。

すると俺の数値が出てきた。

 

名前:あきよし

職業:派遣勇者

Lv.1

HP25

MP5

ちから:10 みのまもり:9 すばやさ:10 かしこさ:10 うんのよさ:2 かっこよさ:10

 

俺運の良さひっくいなぁ…

うんのよさとは考察するにクリティカルヒットや敵がアイテムを落とすか否かに反映されると思われる。

序盤は金が無いので敵からのアイテムが助けになるがこうも運が悪いと敵のアイテムに望みを託すのは良い作戦とは言えないだろう。

次にアイテム欄を見てみる。

 

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