東方幻影人   作:藍薔薇

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第14話

さて、三人の妖精との勝負。そのうちの一人は音を消せる。つまり、後ろからの奇襲なんかも簡単に出来てしまうだろう。だから『幻』を正面だけではなく、全体に放つようにしたほうがいいかな。

 

「まどかさーん!そろそろ時間ですよー!」

 

大ちゃんからのお呼ばれだ。軽く伸びをしてから、三人の妖精の元に移動する。その顔が自信に満ち溢れているから、相当いい作戦なんだろうな。さて、他二人の能力も未知数。一体どんな作戦で来るのか。

 

「ルナ!サニー!やるわよ!」

「ええ!私達、光の三妖精の力!」

「見せてあげましょう!」

 

気合も十分なようです。あと、光の三妖精なんだ。サニーは太陽、ルナは月、スターは星か。いいセンスしてるよ、ホント。

戦闘準備。『幻』を展開するが、その中に追尾弾用はない。何故なら、わたしの放つ追尾弾は視認したものに飛んでいくからだ。後頭部や背中に眼はないので、後ろにはなった追尾弾は急カーブをして、前方の相手に飛んでいくことになる。それじゃあ意味がない。だから、直進弾用を高速のみで、前後左右上下に各三個ずつ。炸裂弾用も、前後左右上下に一個ずつ。合計二十四個だ。後六個しか増やせないから、これで十分であってほしいなあ…。

 

「さて、まどかさんは、スペルカード三回で被弾三回の通常のルールで、サニーちゃん達のスペルカードは一人一回ずつで、被弾は三人の合計で三回。それでいい?」

「うん!」

「ええ!」

「いいわよー」

「大丈夫です」

 

私にとっては的が増えることを喜ぶべきなのか、弾幕が発生するところが増えることを悲しむべきなのか…。まあ、困ったらスペルカード戦が苦手そうなルナちゃんを狙おうかな。

 

「さあ、サニーちゃん達対まどかさん。よーい……、始めっ!」

 

瞬間、三人が忽然と消えた。

 

()()()()()()()!?」

 

あれ?声が出ない。いや、声を出しているって感覚はあるのに、全く聞こえない。これがルナちゃんの能力か。うーん、今三人はどこにいるんだろう?前方から弾幕が来ているけれど、チルノちゃんとの勝負から予想すると、多分一人しかいない。つまり、他二人は視界に入っていない方向から攻撃してくるということになる。

上を見て弾幕がない事を確認してから、弾幕の範囲から大きく外れるように飛び上がる。下を見て、弾幕の発生位置を確認してみると、どうやら後方に二人がいるみたいだ。前方にいた方向を十二時とすると、四時と八時の方向にいると思う。とりあえず勘で撃ち込むかな。

両手を開いてから指先に妖力を込め、十の弾を作りだす。とりあえず四時の位置にいるだろう一人に射出する。大きさは小さめにして、速度は最大。さて、当たるかな?

その小さな弾幕は目標の位置へ真っ直ぐと降り注ぎ、湖に九つの小さな水柱が立った。どうやら当たったみたい。

あ、思い付いた。突然だけどスペルカードを思い付いた。上から下に落とすのを見て思いついた。確か、武器の使用もありで、例えば刀みたいな刃物で相手を斬り付けても被弾になるはずだから、これもルールの範囲内のはず。

 

()()()()()()()()()()()

 

しかし、これだとスペルカードの宣言が出来ない。いや、ルールではスペルカードの使用は原則宣言をするであって、必ず宣言するわけじゃない。これは明らかにスペルカードだ、って分かるような感じにすればいいでしょう!

視点を遠くに合わせる。目に映るものは、薄っすらと見える紅魔館とそれを囲む鬱蒼とした森。よし、あれにしよう。

右腕を上に伸ばし、右手を大きく開く。そして、視界に映る最も大きいと思われる大樹を複製する。うっ、結構妖力使うなあ…。創った大樹だけど、正直かなり重い。腕がプルプルしてきた。早く下ろしたほうがいいね。

 

()()()()()()()()!」

 

勢いよく右手を振り下して、大樹を投げつける。もちろん、面積が広い葉っぱがなっているほうを下向きに。この大きさなら、三人同時撃破も出来るかも。スペルカードの名前がそのまんま過ぎるけど、大丈夫!どうせ聞こえていないだろうし!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

かなりの速度で落下していく大樹を見下ろして高笑いするわたし。こんな大きなもの投げたせいか、テンションがかなりハイになってきた。

大樹が湖に着水して、バッシャァアーーーンといった感じの轟音が響き、わたしの肌に僅かな空気の流れを感じさせた。ん?音が聞こえる?

そんなことを考えていたら、大ちゃんが大きく腕を振って、こちらに注目を促している。

 

「まどかさーん!あの三人を助けてあげてくださーい!もう勝負は着いたので安心していいですよー!」

 

勝ったみたいだけど、三人はあの大樹の枝に絡まったらしい。チルノちゃんはもう湖に潜っているみたいだし、私も急ぎましょうか。

 

 

 

 

 

 

「うぅー、酷い目にあったー…」

「あの作戦、全然意味なかったじゃない…。瞬殺よ、瞬殺」

「あんな大きな木を投げつけてくるなんて驚いたわー」

 

三人は水を含んで随分重くなった服を絞りながら、私にジットリとした目を向けて愚痴っている。わたしは、服を絞りつつ近くの木にもたれかかって休むことにした。愚痴は聞き流す。

救出はとても簡単に終了した。水面から飛び出ている大樹に触れて、妖力として回収したら、あとは中に沈んでいる三人を岸に上げるだけ。まあ、服が水を含んでとても泳ぎにくかったし、同じように水を含んだ三人も重かったけど。

 

「まどかさん、あんなこと出来たんですね…。木を出したり消したり」

「あー、まあね。そういう能力だから」

 

さっきのスペルカード、使いどころが難しい技だよなあ…。視界に映るものしか複製できないから、いつでもあんな感じの大きくて広範囲を攻撃できそうなものが近くにないと駄目だ。しかも、わたしの腕力だと、横や上には投げられない。したがって、相手より上に上がらないといけない。しかも、弾幕を避けながら。避けながら上に行く自信はあまりないから、最悪、被弾覚悟で行けばいいかな。

まあ、いいか。使えるときに使えばいいか。複製するものによって名前を毎回考えないといけないのがちょっと面倒だけど。

 

「さて、もう少し休んだら紅魔館に行かないと」

「え?まどかはこーまかんに行くのか?アタイも行きたい!」

「え?まどかさん、紅魔館に行くんですか?私、ちょっと大図書館というところに行ってみたかったんです。付いて行ってもいいですか?」

「幻香さんが紅魔館に行くってさ!ルナ、スター、どうする?」

「うーん、紅魔館にいる吸血鬼っていうのは月が輝く夜の妖怪なんでしょう?一回会ってみたいわね」

「ふふ、じゃあ付いて行きましょう?」

 

あれ?何だか一人旅のつもりが急に増えちゃったよ?まあ、付いて行くのは個人の自由だし、放って置こうかな。

 

「付いて行くのはいいけど、休んでからね」

「やたー!」

「ふふ、色々知りたいことがあったんですよ」

「よし!目標は美味しいもの!」

「会えるかしら、吸血鬼」

「みんな楽しそうね。私はどうしようかしら?」

 

うーん、騒がしい…。紅魔館の皆に迷惑がかからないようにちょっと注意したほうがいいかも。

 


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