東方幻影人   作:藍薔薇

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第397話

大きく旋回しながら外側へ回避し、過剰妖力を噴出させて急加速した脚で脇腹を蹴るが、少し揺れた程度で碌に効いちゃいない。身に纏っていた妖力を炸裂させてわざと吹き飛び、大きく距離を離す。かれこれ数分はまともな攻撃をどうにか受けずに済んでいるけれど、こっちの攻撃を喰らってもさほど意味がないのが悲しい現実。あーあ、本当にどうしたものやら。

 

「もうちょい重い攻撃を期待してたんだがなぁ…。これで限界か?」

「知らないよ。限界なんざ、知りたくもない」

「いいねぇ!んじゃあ、まだまだ期待させてくれよなっ!」

 

これだけの距離を僅か一歩で詰め、拳が振り下ろされる。横へ跳んで回避すると、振り下ろされた地面が大きく陥没した。地面を転がって着地の衝撃を逃がしていると、未だに地面が小さく揺れていることに気付く。…貴女は歩く災害か。

人差し指を真横に振るい、そこから伸ばした黒紫色の妖力で薙ぎ払う。が、皮膚が裂ける程度で肉までは至らず、これではほぼ無傷と変わらない。追加で二発貫通特化の針状妖力弾を放つが、これは軽く躱されてしまった。

…駄目だ、ちょっと時間が欲しい。思考を深みに沈める時間が。

 

「あんなんじゃあ私を倒すにゃ弱過ぎる。もう一度撃てないのか、あれ?」

「あんなのがホイホイ撃てて堪るか…っ」

「そうかい。それならしょうがねぇ、なぁ!」

 

先程より一段速くなった拳に一瞬驚き、咄嗟に左手で往なす。それだけでわたしの左手が壊れてしまうのだから、あれを直撃していたらどうなっていたことやら…。考えたくない。

時間稼ぎだ。空間把握。地中深くまで妖力を染み渡らせ、その全てをその場で複製する。

 

「っとぉ…っ!?」

 

一瞬で土塊が弾き出され、勇儀さんを真上へ打ち上げた。僅か数秒の時間。この時間で、どうにかするための時間を創り出す。

土塊を回収し、自分自身の頭に手を当てる。…正直、あんまりやりたくない。けれど、これは賭けだ。勝てば続いて、負ければ負ける。それだけの話。

まず、身に纏っている過剰妖力を抑え込む手段と『紅』の維持を保つ手段をまとめた情報を一つの精神として頭に捻じ込む。その瞬間、わたし自身と意思なき何かが同時にわたしの妖力を抑え始め、『紅』が維持され始めた。ひとまず上手くいったようなので、わたしは妖力を抑えることと『紅』の維持を止めた。次に入れる情報は…。

背後に、何かが落ちてくる音がした。…まずい、まだもう一つを創ってないんですけど。ちょっと早くないですか…?

 

「ふぅ…。見るだけじゃなくやられてみるもんだな。これ。ちょびっとだが驚かされたね」

 

振り向くと、もちろん土煙の中に立っている勇儀さんがいた。そして、目の前に迫る足裏。それを体を大きく傾けて紙一重で回避し、次の情報を形成する。やらせたいことを明文化し、規則を敷き詰めていく。わたしの身体を代わりに動かしてくれる情報を、一気に創り出していく。

 

「どうしたどうした!」

「…よし、出来た。あとはよろしく」

「あん?」

 

…流石に三つの精神が入っていると、どことなく窮屈な感じだ。圧迫されてる気がする。

さて、わたしの役目は過去を改竄することだ。とりあえず、三つだ。正面からやり合うための手段を一つと、不意討ち騙し討ちの手段を二つ。それぞれを今から創り出し、どうにか完成させてみせよう。

 

「…妙だな」

 

そんな勇儀さんの呟きが、すこし遠くから聞こえてくる。ま、そりゃそうだろう。まるで人が変わったような動きだろう。実際、人が代わっているのだから。

周辺を空間把握し続け、この身体に接触する可能性のある勇儀さんの動きに当たらない位置に体を動かす。それから、ある一定の距離まで移動する。そんな規則に則られた動きをする精神だ。攻撃はもちろん、射撃も追撃も砲撃も反撃もしない。ただただ回避することしかしない。…ただし、体の構造からして無理のある行動なんて考えないだろうから、どんな無茶な動きをしてしまうかが怖い。

…さて、始めよう。吉と出るか凶と出るか。どうなるかは知らないけれど、やるだけやってみようか。そう思い、わたしは意識を深く沈めた。

『巨大』『極大』『大きい』『絶大』『至大』『洪大』『鴻大』『でかい』『剛腕』『豪腕』『怪力』『剛力』『豪腕』『甚大』『巨腕』『甚大』『巨腕』『絶大』『至大』『洪大』『鴻大』『でかい』『剛腕』『怪力』『剛力』『豪腕』『強力』『剛力』『豪腕』『強力』『怪力』『剛力』『大きい』『強力』『甚大』『巨腕』『絶大』『至大』『洪大』『巨大』『極大』『でかい』『剛腕』『甚大』『巨腕』『絶大』『至大』『洪大』『巨大』『極大』『強力』『大きい』『甚大』『巨腕』『絶大』『至大』『洪大』『巨大』『極大』『でかい』『剛腕』『怪力』『剛力』『豪腕』『甚大』『豪腕』『強力』『剛力』『豪腕』『強力』『怪力』『剛力』『大きい』『強力』『甚大』『巨腕』『絶大』『至大』『洪大』『巨大』『極大』『でかい』『剛腕』『甚大』『巨腕』『絶大』『至大』『巨腕』『絶大』『大きい』『至大』『洪大』『鴻大』『でかい』『剛腕』『甚大』『巨腕』『至大』『洪大』『巨大』『極大』『でかい』『剛腕』『怪力』『剛力』『豪腕』『甚大』『豪腕』『強力』『剛力』『豪腕』『強力』『怪力』『剛力』『大きい』『強力』『甚大』『巨腕』『でかい』『剛腕』『怪力』『剛力』『豪腕』『甚大』

『喪失』『消滅』『消える』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『失する』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『失くす』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『紛失』『忘失』『紛失』『消失』『欠損』『損失』『喪う』『喪失』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『失する』『喪う』『失う』『亡失』『失くす』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『失くす』『消える』『失墜』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『失する』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『損亡』『失する』『消える』『遺失』『無くす』『失くす』『消える』『失墜』『亡失』『失くす』『消失』『損亡』『失する』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『失くす』『消える』『失墜』『亡失』『損亡』『失する』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『失くす』『忘失』『紛失』『消失』『欠損』『損失』『喪う』『喪失』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『忘失』『紛失』『消失』『欠損』『損失』『喪う』『喪失』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『欠損』『損失』『喪う』『喪失』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『消える』『失墜』『亡失』『失くす』『損亡』『失する』『喪う』『失う』『遺失』『無くす』『失くす』

『復活』『再生』『再構築』『生える』『健常』『復活』『再誕』『回生』『甦生』『蘇生』『生える』『健常』『復活』『甦生』『蘇生』『蘇る』『甦生』『甦る』『復活』『再生』『再構築』『蘇る』『甦生』『甦る』『蘇生』『復活』『再生』『再構築』『生える』『健常』『復活』『再構築』『甦る』『復活』『再生』『再構築』『生える』『健常』『復活』『再誕』『回生』『甦生』『蘇生』『健常』『復活』『再生』『再構築』『健常』『復活』『再誕』『復活』『再生』『再構築』『生える』『健常』『復活』『再誕』『回生』『甦生』『生える』『蘇生』『蘇る』『蘇生』『蘇る』『再生』『蘇る』『甦生』『甦る』『復活』『再生』『再構築』『生える』『健常』『再誕』『甦生』『回生』『復活』『再生』『再構築』『生える』『再誕』『回生』『甦生』『復活』『再生』『再構築』『生える』『健常』『復活』『再誕』『回生』『甦生』『蘇生』『生える』『蘇る』『甦生』『甦生』『蘇生』『蘇る』『甦生』『甦る』『甦生』『甦る』『再誕』『復活』『再誕』『回生』『甦生』『蘇生』『蘇る』『甦生』『健常』『甦生』『甦る』『復活』『再生』『生える』『健常』『復活』『再誕』『健常』『復活』『回生』『再構築』『回生』『甦生』『蘇生』

…さて、時間を使い過ぎるのもよくない。もうそろそろ意識を取り戻そう。付け焼き刃で取って付けたような手段を新たに引っ提げて、わたしは回避専念の情報を回収した。

 


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