ー昭和七年ー
ーサクラ次元ー由里の世界ー
ー壊れた由里の家ー
ここでは、織姫と斜大の二人が明日のために寝る準備をしていた。
『仕方ありませーん。今日はここで寝ましょう。食器とかを片付けてくーださい。』織姫と斜大は光武二式の操縦席から食器を出し、二人は毛布を掛けた。どうやら、敵の突然の襲撃に対応するために光武二式の中で寝るのだろう。
『ママ、俺すこし不安なんだ…また、人を殺してしまったら…レニさんみたいに殺してしまったら…ママが…俺のこと見捨てちまうかもしれないって…自分で自分がいやになる!俺はなんのために産まれたのか…花組の皆さんが殺しあいをするきっかけを作るために産まれたのかもしれない。』
『斜大…不安ですか…ママもでーす…みんなを殺してしまうかもしれないって…みんな思いは同じ…中尉さんを…あなたのパパを愛する思いは同じ…だったのに…あんなにも中尉さんに……自分を選ばなくてもいいから…中尉さんに選んでほしかったのに……自分が選ばれなかったから…腹いせにその息子を殺そうとする人もいれば…あなたの母親…由里さんのように頑張って育てるようとする…なんだかよくわからなくてなってしまーいました……だから、不安なんでーす…同じ道を歩いていた人が…同じ思いを持っていた人と…こんなにも意見が違うだなんて……』
『ママ…みんな思いは同じでも考え方ややり方は違う…人の数だけ個性がある…人の数だけやり方がある。その人の個性を敵として決めつけて突き放す…それが俺は一番大嫌いなんだ。だから俺は今、決めた。俺が大神の息子だから恨むやつがいても仕方ない、殺すやつがいても仕方ない。それが人の個性だから。それがその人の道だから、俺は否定しない。だけど、俺も人に自分の命を易々とあげるほどお人好しじゃない…だから…俺が殺しあいのきっかけを作るために産まれたのだとしても…生きる!』
『斜大…そうですね…』
この子はまだこんなにも小さい
まだ、学校で友達と遊ぶのが普通のはずなのに
こんなことさせて…
こんな覚悟をさせて…
早すぎまーす……
子供は大人になりたがりますが…
大人は子供になりたがる……
子供はいつの間にか大人になっていて……そしていつの間にか大人は子供になりたがる…
だから…子供は子供らしくいる…
子供らしくいる時間はとても少ないんでーす!
それなのに…争いに巻き込んでしまって…
斜大はもう大人に……
だけど私にはそれを止めることは…
斜大が大人になっていくのを止められない…
なら…私が出来ることは……
織姫は斜大の頭を撫でた。
『マ、ママ。』斜大は織姫に寄り添い、織姫は斜大に布団を掛けた。やさり寂しいようだ。まだ斜大に子供らしさは残っているようだ。
『もう遅いでーす…寝ましょう…ママが子守唄歌いまーす…もしも…誰かを〜』織姫は自分の歌を歌いながら、斜大の頭を優しく撫で、斜大を寝かしつけた。
『くーっ…くーっ…』斜大の小さな小さな寝言を聞き、織姫は涙を流した。
『まだ…あるんですね…私にママとして我が子に出来ることが…まだ子供らしくいる時間を増やしてあげることが……もし…あなたが花組のみんなを殺しても…私を殺そうとしても…あなたを愛しまーす…おやすみなさいでーす…安らかな眠りを。』織姫はまぶたを閉じた。