雪ノ下「やはり私がアイドル活動をするのはまちがっている」 作:はないろ
観客を背に、青白い照明が飛び交うステージから戻ってくるバックダンサーの2人
「テンポが全然合ってない」
「代役入れるから、君たちは3曲目から下がっててくれ」
「練習して来た?」
など、ライブ関係者に非難の嵐。
緊張からか、全然リズムが噛み合ってない姿を見ていると歯がゆくなる。
簡潔に言おう。雪ノ下雪乃、渋谷凛の初舞台は大が付くほどの失敗であった。
......................................................
雪乃、凛「…」
ライブから2日、未だこの2人は落ち込んでいる。
雪乃もあんなに運動したのは久しぶり、と言っていた
それだけレッスンを重ねてきたのに、どうして通用しなかった。
プロデューサーである俺にももちろん、関係者からのお叱りがあった。正直言ってぶん殴りたかったが、明らかにこちらに非がある。
八幡「なぁ…気にするなよ、初舞台なら仕方ないだろ」
凛「…初舞台だから、気にすんな?」
凛が立ち上がり、涙と後悔の念がどろっと混ざった目でこちらを睨む。
凛「初めから他のアイドルに負けると思って、この企画に出したの?!」
凛「例え、私はバックダンサーでも、高垣さんにも、雪乃にも、誰にも負けたくない…!」
凛「っ…だから…!だから…」
瞳から涙が溢れ始める、嗚咽を漏らすと
苦しそうに、ごめん、と部屋から出ていく。
八幡「おっ、おい!凛!!」
雪乃「渋谷さんも、まだまだ子供ね…。」
八幡「俺達と1歳しか違わねぇよ…。ていうか、お前は平気なの?」
雪乃「悪いけど、泣くことより次への課題を見つけ、それを修正する方が成功への近道だと思うわ」
八幡「お前…目の周り赤くして言われても説得力な「黙るか死になさい」…黙ります…。」
雪乃「それより私はいいから、早く渋谷さんを追いかけなさい…。これでも、私達のプロデューサーなのだから、何かあったらあなたの責任よ?」
......................................................
凛「…」
凛「…帰ろう…」
普段なら街を歩けば、ブサイク勘違い男から声をかけられたりするが、今は自分でもわかるくらいの嫌悪感を放出している。
こんなんナンパしないよね…。
そしてここは例の初舞台会場だ。
今でも悔しすぎて、自分が情けなさすぎて、涙が出てくる。
おそらくこの失敗は、私の長い一生で最も許せない出来事だろう。
練習、もっと増やすべきだったのかなぁ…。
言わばここは「渋谷凛、屈辱の象徴」である。
意外と、私も完璧主義だったのかも。
「……り…ん…凛、渋谷凛!!」
凛「…えっ?」
......................................................
八幡「はぁ…はぁ…」
八幡「やっと…見つけた…!」
晴れた夜空、紺色の中にぱっと輝く月。
もうかなり遅い時間だ。
凛「…どうしたの?そんなに息切れして…」
八幡「お前を探してたからだよ、こんのあほ…!」
八幡「大体、お前はな!「あのね、私、アイドルに向いていないのかもしれない」」
八幡「…は…?」
凛「あのステージに立つと、なんというか、何も考えられなくなって、頭が働かなくなるんだ…」
凛「だから、短い期間だったけど、すごい楽しかったけど、アイドル、辞めようと思ってる…」
凛「だから…ごめ「ふざけるなよ」」
正直、今の渋谷凛ほど俺の癪に障る奴はいない
八幡「俺の中での渋谷凛は、何かしだしたら絶対に諦めない。最後までやり遂げるようなやつだ」
八幡「いいか?説教垂れるぞ」
八幡「お前らの失敗の原因はなんだと思う?」
凛「…しらない」
八幡「どうせお前、練習量とか思っているだろ、それは残念ながら不正解だ」
雪ノ下「正解は経験値、よ」
固まった空気を切り裂くような、雪乃のひとこと
ていうか、結局ついてきたのね…。
また雪ノ下の前で黒歴史作っちゃうとこだったよ…
八幡「まぁ、その通りだ」
八幡「あと、俺はお前ほどアイドルに向いてるやつはいないと思うがな」
雪ノ下「渋谷さん、あなた、私に対抗してきたくせに、こんなに簡単に折れてしまうような人だったの?」
凛「…うっ…」
雪ノ下「経験なら、これから積めばいいでしょう?それとも私に敗北するのが怖くなったのかしら?」
凛「…そんなことない、私、絶対に負けない…し」
雪ノ下「まぁ、アイドルとしては後輩だけど、人生においては先輩である私に、頼りなさいよ、渋谷さん…?」
そっと雪乃が凛を抱きしめると、凛は驚いたように目をぱちっさせる
雪ノ下「…泣いても、いいのよ?」
凛「…っう、うぅ〜…ずるいよ〜…」
あれっ、俺もしかしていらなかったよね…?
百合百合されても困るんだが、今はこいつらだけにしてやろう。
ていうか雪ノ下さんマジ女たらし。
......................................................
「気分はどうだ?」
「超絶スッキリ。」
「なら大丈夫ね」
屈辱の象徴の前で、同僚に泣きつくという結構な黒歴史を築いたようには思えない、凛々しい顔つきだ
それでこそ渋谷凛である。
凛「プロデューサー、次のライブ予定とか、ある?」
八幡「お前らが、頑張れるって言うなら、仕事取ってきてやらんこともないぞ」
雪ノ下「頑張れる?何を言っているの比企谷君」
凛「例えバックダンサーでも、全員私たちのファンにしてみせるよ」
八幡「そうか、期待してるぞ」
俺は、渋谷凛よりも、アイドルに向いているやつは本当にいないと思っている。自分の道を曲げず、意思を貫き通す。
あれっ…?武士道精神みたいだな…。
凛「あと、プロデューサー、じゃなくて、八幡って呼ぶから、よろしくね」
それは関係無いぞ、渋谷凛。
ご覧いただきありがとうございました( ¨̮ )
意見、指摘等あれば感想までお願いします