バカと俺たちの日常   作:裂やん

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【バカテスト】 数学

問 以下の問いに答えなさい。
『(1)4sinX+3cos3X=2の方程式を満たし、かつ第一象限に存在するXの値を1つ答えなさい。
 (2)sin(A+B)と等しい式を示すのは次のどれか、①~④の中から選びなさい』
 ①sinA+cosB      ②sinA-cosB
 ③sinAcosB        ④sinAcosB+cosAsinB』

姫路瑞希、神楽橙夜、神楽睦月、桜儀燐の答え
『(1) X=π/6
 (2) ④     』

教師のコメント
そうですね。角度を『°』ではなく『π』で書いてありますし、完璧です。
それにしてもお兄さんたちの名前があるのに妹さんの名前がないような……。

土屋康太の答え
『(1) X=およそ3』

教師のコメント
およそをつけて誤魔化したい気持ちもわかりますが、これでは解答に近くても点数はあげられません。

吉井明久の答え
『(2) およそ③』

教師のコメント
先生は今まで沢山の生徒を見てきましたが、選択問題でおよそをつける生徒は君が初めてです。

神楽紫の答え
『(1) X=およそ3
 (2) およそ③  』

教師のコメント
土屋君と吉井君だけじゃなかったんですね……。
苦手科目と言ってもこれは酷いと思いました。


「出番や名前をもらえるのは嬉しいけど、今回はいらなかった!?」by速水 劉太


第肆問目 Dクラス戦、開始と終わり

Side.秀吉

 

 ワシが率いる先行部隊は現在、渡り廊下でDクラスと交戦中じゃ。

 

秀吉「文系科目の国語や歴史、現代社会を中心に二人以上の多対一で掛かるのじゃ!決して一対一でぶつかるでないぞ!」

 

F男『おおぉーっ!』

 

 ワシら先行部隊は16人。対するDクラスは7人。これなら一対一になることはまずないじゃろう。

 

F男「高橋先生、Fクラス男子AとBがDクラス男子Aに世界史勝負を申し込む!」

F男「先生、Fクラス男子CとDがDクラス男子Bに現国勝負で挑む!」

F男「こちらも男子EとFとGが現代社会勝負で行きます!」

 

『試獣召喚(サモン)!』

 

 状況を確認していると、いよいよ戦闘が始まったようじゃ。

 

『Fクラス  男子A  &  男子B  VS  Dクラス  男子A

 世界史  68点  &  62点  VS          121点』

 

『Fクラス  男子C  &  男子D  VS  Dクラス  男子B

 現国   73点  &  64点  VS          105点』

 

『Fクラス  男子E  &  男子F  &  男子G  VS  Dクラス  男子C

現代社会   59点  &  72点  &  84点  VS          153点』

 

 こちらの戦力がFクラスでも流石に多対一は厳しいようでDクラスのほうも苦戦しているようじゃ。

 

?「戦死者は補習ぅぅぅーーー!」

 

 そうやって部隊の後方辺りで戦況を確認していると、両クラスから戦死者が出たようで数人が鉄人に捕まっておった。

 

鉄人「さぁ来い!この負け犬が!」

生徒「て、鉄人!?嫌だ!補習室は嫌なんだっ!」

鉄人「黙れ!捕虜は全員この戦闘が終わるまで補習室で特別講義だ!終戦まで何時間かかるかわからんが、たっぷりと指導してやるからな」

生徒「た、頼む!見逃してくれ!あんな拷問耐え切れる気がしない!」

鉄人「拷問?そんなことはしない。これは立派な教育だ。補習が終わる頃には趣味が勉強、尊敬するのは二宮金次郎、といった理想的な生徒に仕立て上げてやろう」

生徒「お、鬼だ!誰か、助けっ――イヤァァ――(バタン、ガチャ)」

 

 戦死者はどこからか現れた鉄人に連行されていった。

 

 その光景にこの場に恐怖感が漂っておった。

 

F男「木下隊長!Dクラスの後方より奴らの援軍らしき人影が!化学教師の五十嵐先生と布施先生を連れている!」

秀吉「なんじゃと!それは拙いのじゃ!皆の者、敵方の援軍が到着する前に出来るだけ数を減らすのじゃ!」

F男子『了解!』

 

 それじゃ、ワシも敵方の援軍が到着するまで頑張るとするかの。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.速水

 

F男「島田!木下たちがDクラス連中と渡り廊下で交戦状態に入ったらしい!」

 

 俺がいる、島田の率いる中堅部隊は今現在前線にいる木下が率いる先行部隊と、Fクラスとの中間辺りに配置されている。

 

 とりあえず今は、耳を済ませて前線部隊の様子を聞き取ろうと思う。

 

鉄人『さぁ来い!この負け犬が!』

生徒『て、鉄人!?嫌だ!補習室は嫌なんだっ!』

鉄人『黙れ!捕虜は全員この戦闘が終わるまで補習室で特別講義だ!終戦まで何時間かかるかわからんが、たっぷりと指導してやるからな』

生徒『た、頼む!見逃してくれ!あんな拷問耐え切れる気がしない!』

鉄人『拷問?そんなことはしない。これは立派な教育だ。補習が終わる頃には趣味が勉強、尊敬するのは二宮金次郎、といった理想的な生徒に仕立て上げてやろう』

生徒『お、鬼だ!誰か、助けっ――イヤァァ――(バタン、ガチャ)』

 

 ……試召戦争の雰囲気は大体分かった。

 

速水「なぁ、島田」

美波「なに?速水?」

速水「……退避しないか?」

美波「この意気地なし!」

 

 臆病風に吹かれた俺に、島田は一発、拳骨をくれた。

 

美波「ウチらの役割は木下の前線部隊の援護よ。アイツらが戦闘で消耗した点数を補給する間を、ウチらの部隊で前線を維持するのよ。それに木下たちだって頑張って敵を弱らせてるんだから、ウチらは逃げるわけには行かないのよ!」

速水「島田……」

 

 なんてお前は男――いや、漢らしいんだ!

 

F男「島田、前線部隊が後退を開始した!」

美波「総員退避よ」

 

 前言撤回。

 

速水「さっきと言っていることが全然違うぞ!折角見直したのに!」

美波「総員退避で問題ないわ!」

速水「よし、逃げよう。俺らには荷が重すぎたんだ」

美波「そうよ、ウチらは精一杯努力したわ」

 

 決して握りこぶしを俺に向けている島田が怖くなったわけじゃない!

 

 そう思いながらくるりとFクラスに向かって方向転換すると、本陣に配置されているはずの横田がいた。

 

美波「ん?横田じゃない。どうしたの?」

横田「代表より伝令」

 

 そう言ってメモを見ながら読み上げる。

 

横田「『逃げたらコロス』」

美波「全員突撃よぉーっ!」

 

 気がついたら島田の号令と同時に俺たち中堅部隊は戦場に向かって全力ダッシュしていた。

 

?「おぉー、島田たちではないか。援護に来てくれたんじゃな!」

 

 前方から向かってきたのは先行部隊の隊長の木下秀吉だった。

 

美波「木下、大丈夫?」

秀吉「うむ。戦死は免れておる。じゃが、点数はかなり厳しいところまで削られてしまったわい」

美波「そうなの?召喚獣の様子はどう?」

秀吉「もうかなりヘロヘロじゃな。これ以上の戦闘は無理じゃ」

美波「なら早く戻ってテストを受けなおしてきなさい。それと坂本にもしもの時の為にすぐに援護にこれるのを数人準備させておくように伝えて頂戴」

秀吉「雄二には伝えておこう。全教科受けている時間はなさそうじゃから、一、二教科受けてくるとしようかの」

 

 言うや否や、木下は教室に向かって走っていった。その後ろに前線部隊のクラスメイトが続いた。出陣時より人数が減っていたから補習室に連行されたようだ。

 

美波「速水、見て!」

 

 島田が叫んだので、島田の目線の先を見てみる。

 

美波「五十嵐先生と布施先生よ!Dクラスの奴ら、化学教師を引っ張ってきたようね!」

 

 学年主任の高橋女史だと勝負に時間がかかるから、立会人の教師を増やして一気に攻めてきたのか。

 道理で木下たち先行部隊が予定よりも早く引き返してきたわけだな。

 

速水「島田、化学に自信は?」

美波「全く無いわ。60点台常連よ」

 

 俺も人のことは言えないが、流石Fクラスだな。

 

速水「なら、五十嵐先生と布施先生に近づかないように高橋女子のところに行くか」

美波「そうしましょう」

 

 方針を決めて戦闘の行われている渡り廊下を目立たないように隅へ移動する。

 

?「あ、そこにいるのはもしや、Fクラスの美波お姉さま!五十嵐先生、こっちに来てください!」

美波「くっ!ぬかったわ!」

 

 Dクラスの一人に島田が見つかった。五十嵐先生を伴ってやって来ているから、召喚獣を出して応戦しないと、一撃で補習室送りになる。

 

 それにしても「お姉さま」ね。俺としては百合って結構、良いと思うんだよな……。

 

速水「よし。島田、ここはお前に任せて俺は先を急ぐ!」

美波「ちょっ……!普通逆じゃない!?『ここは俺に任せて先を急げ!』じゃないの!?」

速水「そんな台詞、現実世界じゃ通用しない!それに百合って俺は良いと思うんだ」

美波「は、速水!このゲス野郎!」

?「お姉さま!逃がしません!」

美波「くっ、美春!やるしかないってことね……!」

 

 五十嵐先生から10メートル以上離れて島田の様子を窺う。島田と美春と呼ばれていたDクラスの彼女は既に試験召喚獣を喚び出していた。

 

美春「お姉さまに捨てられて以来、美春はこの日を一日千秋の想いで待っていました……」

美波「ちょっと!いい加減ウチのことは諦めてよ!」

速水「ところで島田、お姉さまって――」

美春「嫌です!お姉さまはいつまでも美春のお姉さまなんです!」

美波「来ないで!ウチは普通に男がすきなの!」

美春「嘘です!お姉さまは美春のことを愛しているはずです!」

美波「このわからずや!」

 

 どうやら美春っていう彼女の一方通行な想いのようだ。流石に俺は百合でも両想いでないのはだめだと思うな。

 

美春「ここまでですっ!」

美波「くぅっ!」

 

 考え事をしていたら戦闘が終わりそうになっていた。

 

『Fクラス  島田美波  VS  Dクラス  清水美春

 化学    53点   VS            94点』

 

 島田、サバ読んでたんだな。60点にすら届いてないじゃないか。

 

美春「さ、お姉さま。勝負はつきましたね?」

美波「い、嫌ぁっ!補習室は嫌ぁつ!」

美春「補習室?……フフッ」

 

 島田が取り乱すが、楽しそうに笑いながら島田の手を引っ張る清水。

 

 あれ?そっちにあるのは保健室だぞ?

 

美春「ふふっ。お姉さま、この時間ならベッドは空いていますからね」

美波「は、速水、早くフォローを!なんだか今のウチは補習室行きより危険な状況にいる気がするの!」

 

 島田が哀れになってきたから助けてやりたいのは山々なんだが。でも、

 

美春「殺します……。美春とお姉さまの邪魔をする人は、全員殺します……」

 

 流石にソコに飛び込む勇気は俺にはないんだ。

 

速水「島田、お前のことは忘れない!」

美波「ああっ!速水!なんで戦う前から別れの台詞を!?」

美春「邪魔者は殺します!」

 

 って、島田の召喚獣の動きを止めてこっちにやって来た!逆に俺は推奨派なのになんで!?

 

?「速水。危ない!――試獣召喚っ(サモン)」

 

 と、脇から割り込んできた声。確かあいつはクラスメイトの須川!ありがたい!

 

『Fクラス  須川亮  VS  Dクラス  清水美春

 化学    76点  VS            41点』

 

 須川の召喚獣が清水の召喚獣を斬り倒した。

 

 清水は、島田との戦闘で消耗していたから簡単に勝つことが出来たようだ。

 

須川「島田、大丈夫か?」

美波「ええ、助かったわ須川。本当にありがとう。補習の鉄じ――西村先生、早くこの危険人物を補習室へお願いします!」

鉄人「おお、清水か。たっぷりと勉強漬けにしてやるぞ。こっちに来い」

美春「お、お姉さま!美春は諦めませんから!このまま無事に卒業できるなんて思わないでくださいね!」

 

 清水はとても危険な捨て台詞残し、補習室に連行されていった。

 

 その後、俺は島田に襲われかけ、その島田は須川に連行されていったのだった。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.橙夜

 

 Dクラスとの試召戦争開始から既に結構な時間が経っていた。

 

瑞希「次の問題をください」

睦月「俺にもください」

 

 秀吉や島田嬢たちが前線と補給試験を行き来している間、俺と睦月、明久に瑞希は回復試験を受けていた。

 

 俺たちの近くには雄二と近衛の本陣が控えていた。

 

 俺は試験を受けながら次々と雄二の元に次々と挙がってくる情報を整理していた。

 

 島田嬢が最初に戻ってきたときは大変だった。なぜなら――

 

美波「須川。放しなさい!今すぐに速水を殺しに行くんだから!」

雄二「島田はどうしたんだ、須川?」

須川「木下たちが補給に向かって前線の維持をしているときに速水が島田を見捨てたらしい」

雄二「なんだそりゃ?」

橙夜「新しい問題ください」

須川「俺もよく分からないんだが、島田と戦っていたDクラスの女子が島田の事をお姉さまと呼んでいたな」

睦月「それって清水美春じゃないか?次のお願いします」

瑞希「私にも次、お願いします」

雄二「清水?……あぁー、あの噂のか」

須川「噂?どんな内容なんだ?」

雄二「経緯は知らんが、島田Loveの同性愛者らしい。恐らく島田を見つけた清水の相手を島田一人に任せて逃げたってところだろ。確か清水は男は豚野郎としか思っていないらしいからな」

美波「ハヤミコロス…・・・ハヤミコロス……!」

 

 ――こんなやり取りがあったからだ。はっきり言ってかなり怖かったぜ。

 

 ……ところどころやりとりとは関係ないのもあったが。

 

 入ってきた情報を雄二とは別に俺なりに整理すると結構前線が厳しいみたいだ。

 

雄二「そろそろ前線の維持も厳しくなってきたか。明久、試験の調子はどうだ」

明久「世界史はさっき受け終えたから大丈夫。今受けている日本史も大体200点分ぐらいは解けたかな」

雄二「よし、なら明久は今受けてるプリントで切り上げて採点が終わり次第、前線に行ってくれ」

明久「分かった。けど僕って一応主戦力だから最後まで温存するんじゃないの?」

橙夜「お前の存在は有名だから今日戦わなくても明日にはバレる。そうなると秘匿のアドバンテージがなくなるから、そろそろ前線に投入しても平気なんだよ」

睦月「次、お願いします」

瑞希「私も次、お願いします」

明久「そういうことか。っと、終わったよ。先生採点お願いします」

福原「はい、分かりました。それとあまり私語はしないように。カンニングと見なして無得点にしますよ」

橙夜「分かりました。これから気をつけます」

 

 少し喋りすぎたか。一応、俺は雄二の参謀だから点数はあまり必要じゃないんだけどな。

 

F男「報告!Dクラスが数学の木内を呼びに行ったらしい」

雄二「戦況が大分拙くなってきたな。明久、採点は終わったか?」

明久「丁度終わったよ」

雄二「それなら須川と一緒に前線に行ってくれ。それと指揮を執っていると思われる速水に木内の情報を教えてきてくれ」

明須「「了解!」」

 

 雄二の指示に従って明久と須川は前線に行った。

 

橙夜「回復試験は退屈だ」

雄二「黙って試験を受けてろ。今回の戦争でのお前の役割は試験受けるだけなんだからな」

橙夜「そうだとしても俺も戦争やりたい。先生、次ください」

雄二「午前中に沢山の教科を受けたのは念の為の保険でしかないんだぞ。だから試験を受けてろ」

橙夜「しょうがないから次まで我慢してやるか」

睦月「せんせー、次ください。ところで次ってどことやるんだっけ?」

雄二「それは勝ってから教えてやる」

瑞希「先生、次お願いします」

竹中「分かりました。これをどうぞ。それと神楽君たち兄弟は試験のほうに集中してください。本当にカンニングと見なして無得点にしますよ」

橙睦「「今度こそ気をつけます」」

 

 結構真面目に受けてるからここで無得点になるのは辛い。公民科目はあまり真面目に取り組む奴がいないから俺にとって最大戦力なんだよな。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.明久

 

 僕と須川君は雄二の指示の通りに現在前線にいる中堅部隊と合流して、Dクラスと戦っている。

 

F男「吉井指揮官!横溝がやられた!これで布施先生側は残り二人だ!」

速水「五十嵐先生側の通路だが、現在俺一人しかいない!援軍を頼む!」

F男「藤堂の召喚獣がやられそうだ!助けてやってくれ!」

 

 僕の成績はBクラス以上で操作技術が学年一だとしても流石に一対多は厳しい。本陣に援軍を要請したいけど、作戦につぎ込む戦力が足らなくなってしまう。なんとか僕らで持ちこたえるしかない!

 

「布施先生側の人たちは召喚獣を防御に専念させて!速水君は総合科目の人と交代しながら効率良く勝負をするように!須川君は藤堂君の救出を!」

F男『了解!』

 

 皆が僕の指示に従って陣形を組み始める。援軍として後から来たのに指揮官として扱ってくれるようだ。

 

D男「Fクラスめ、明らかに時間稼ぎが目的だ!」

D男「何を待っているんだ!!」

 

 どうやらDクラスの連中は僕らの意図に気付き始めたようだ。これはやりづらくなりそうだ……。

 

D男「大変だ!斥候からFクラスに世界史の田中が呼び出されたって報告が!」

D男「せ、世界史の田中だと!」

D男「Fクラスのヤツら、まさか長期戦に持ち込む気か!」

 

 Dクラスの偵察部隊にウチのクラスにテストの採点でやってきた田中教諭が見つかったようだ。

 

 世界史の田中教諭はおっとりとした初老の男性で、採点の甘さに定評がある。その代わり採点に少々時間がかかるけど、長期戦の場合は田中教諭の方が都合がいい。

 

 それに対してDクラスは数学の木内教諭を連れ出している。

 

 数学の木内教諭は厳しいけど、採点の早さは群を抜いている。Dクラスはこちらとは対照的に、一気にケリをつけようとしているみたいだ。

 

 僕らの役割は唯一つ。試召戦争を行っていないクラスが今日の授業を終えるくらいまで前線を保つこと。

 その為には――

 

明久「須川君!」

須川「なんだ?」

 

 藤堂君を救出し終わって近くに来ていた須川君にあることを頼む。

 

明久「偽情報を流して欲しいんだ。時間を稼ぐ為に」

須川「偽情報?それは構わないけど、スグにバレるんじゃないか?Dクラスで前線の指揮をとってる塚本は声が大きいから、うまくいってもあっと言う間に混乱を収められてしまうぞ」

明久「須川君の言うとおりだが、でも大丈夫。対象はDクラスじゃないから」

須川「と、言うと?」

明久「先生たちに流すんだよ。他の場所に向かってくれるように」

須川「……なるほど。それは確かに効果的だ」

明久「でしょう?流す内容は橙夜や雄二と相談してくれればいい」

須川「ああ。確実に騙してみせよう」

明久「うん。よろしく」

 

 そう告げて、須川君は駆け足でこの場を離れていった。

 

明久「僕らは一対一じゃ勝てないからね!コンビネーションを重視して!」

 

 とりあえず僕は指揮官として後方から指示を出す。危なくなったら僕も前方に出ることにしよう。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.橙夜

 

須川「坂本!吉井からの伝言だ!」

 

 ん?数分前に明久と前線に行った須川じゃないか。伝言って一体?

 

雄二「内容は?」

須川「先生たちに偽情報を流して欲しいとのことだ。内容は坂本や神楽兄と相談するようにと」

雄二「なるほど……ムッツリーニ。Dクラスが呼んだのは誰だ?」

康太「…………数学の船越先生だ」

雄二「そうか。……だったら「雄二、その考えはやめておけ」……何故止める?」

橙夜「お前が明久を不幸にしたいのは分かっている。今回は船越女子の囮にするつもりだってこともすぐに分かる。だが、それだけはやめておけ」

雄二「そこまで分かっているならやらせろ」

橙夜「お前は頭が回るくせに明久を貶める時だけは自分に被る損害のことを忘れているよな」

雄二「俺に被る損害?…………あっ」

橙夜「やっと理解したか。放送を流して、それを指示したのがお前だと分かれば真っ先に紫が殺しに来るだろうに……」

雄二「…………」(ガタガタブルブル)

橙夜「須川、この内容を流せ。……速水には悪いが今回は地獄を見てもらうか」

須川「これは……。速水には悪いが、絶対に成功させてもらう」

 

 須川は俺が書いたメモを受け取って確認した後、そう言って教室を出て行った。

 

 口調は残念そうだったが、顔はにやけていたな……。

 

橙夜「速水には後で何か奢ってやろう……」

 

 そう呟いてから数分後。

 

 ピンポンパンポーン《連絡致します》

 

 遂に来たか。……速水、本当にすまん!

 

Side.end

 

 

 

 

Side.速水

 

 吉井が須川に何か指示を出していたようだが、一体どんな内容だったんだ?

 

D男『塚本、このままじゃ埒があかない!』

D男『もう少し待っていろ!今数学の船越先生も呼んでいる!』

 

 数学の船越先生を呼んだのは採点目的ではなく立会人になって貰う為か!

 

速水「吉井!これ以上、戦線を拡大されるとかなりマズイぞ!」

明久「もう少し悪化したら僕も出るよ!」

 

 ピンポンパンポーン《連絡致します》

 

 ん?いきなり校内放送?この声は須川か?となると吉井の指示は先生を別の場所に誘導することか。

 

 《船越先生、船越先生》

 

 しかも呼び出し相手は丁度今話題に上がった船越先生だ。素晴らしいぞ須川!

 

 《速水劉太君が体育館裏で待っています》

 

 ……へ?須川?

 

 《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》

 

 ちょっと待てぇぇ!なんて危険なマネを!相手はあの船越女子だぞ?確かに確実に体育館裏に向かうだろうが、俺の貞操が大変なことに!

 

F男「速水……アンタぁ男だよ!」

F男「ああ。感動したよ。まさかクラスの為にそこまでやってくれるなんて!」

 

 俺はこんなこと了承してないぞ!

 

速水「吉井!貴様の指示だな!」

明久「誤解だ、速水君!僕が指示したのは先生を別の場所に誘導することまでで、内容は橙夜や雄二と相談するようにと言ったんだ!」

 

 アイツら……!人がDクラスへの宣戦布告の使者をやってやったと言うのに、恩を仇で返すだなんて……!

 

D男『おい、聞いたか今の放送』

D男『ああ。Fクラスの連中、本気で勝ちにきてるぞ』

D男『あんなに確固たる意志を持ってる奴らに勝てるのか……?』

 

 Dクラスからもそんな呟きが聞こえてきた。

 

 外堀が埋まってきて、どんどん否定出来なくなっていく!

 

F男「皆、速水の死を無駄にするな!」

F男「絶対に勝つぞーっ!」

 

 ああっ!うちのクラスの士気にまで良い影響が!もうやめてくれっ!

 

F男「指揮官、いけますよ!この勢いで押し返しましょう!」

明久「そうだね……」

速水「……す」

明久「速水君。……頑張って」

速水「須川ぁぁあああああっっ!坂本ぉぉおおおおおっっ!神楽ぁぁああああああっっ!」

 

 吉井の励ましが唯一の救いだった……。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.橙夜

 

速水『須川ぁぁあああああっっ!坂本ぉぉおおおおおっっ!神楽ぁぁああああああっっ!』

 

 前線からはかなり離れているはずなのに此処まで速水の怨嗟の声が聞こえてきた……。

 

 とりあえず対処法はすぐに準備出来るからいいか。

 

橙夜「雄二、俺たちの回復試験終わったぞ」

雄二「そうか。それなら一旦、中堅部隊と明久を回収してくるか」

睦月「それじゃ俺たちはここで待機しているぞ」

雄二「ああ。ゆっくりしていろ。姫路はともかく、今回お前たち二人は参戦させないからな」

 

 そう言って雄二は近衛を連れて前線へと向かって行った。

 

橙夜「次の戦争を楽しみにするか」

睦月「暴れたいぜ。そういえば橙夜兄は次の相手は知っているのか?」

瑞希「それは私も気になります」

 

 そういえばまだ説明していなかったか。

 

橙夜「知っている。と言うか、今回のDクラス戦は次回の作戦の為でもあったからな」

睦月「で、どこなんだ?」

橙夜「それはまだ言えない。Dクラス戦が終わった自然と分かるからそれまで待ってろ」

 

 その後は雄二たちが戻ってくるまで、明日の弁当のおかずをどうするか睦月と話し合っていた。

 

雄二「お前たち、よくやった」

速水「坂本おおおお!」

橙夜「おっと。速水少し落ち着け」

速水「神楽ああああ!お前もだああああああ!」

橙夜「だから落ち着け!ちゃんと対処法は準備してある」

速水「……本当か?」

橙夜「本当だ。戦争終了後に俺も一緒に体育館裏に行って対策してやるから安心しろ。それと侘びに今度何か奢ってやるか」

速水「それなら今回のことは水に流してやる」

 

 何とか速水の暴走?は収まったようだ。

 

雄二「さて、そろそろ決着をつけるか」

秀吉「そうじゃな。ちらほらと下校しておる生徒の姿も見え始めたし、頃合じゃろう」

康太「…………(コクコク)」

雄二「おっしゃ!Dクラス代表の首級を獲りに行くぞ!」

F男『おうっ!』

 

 そう言って今度は瑞希を連れて雄二たちは再び教室を出て行った。

 

 教室に残っているのは俺と睦月の二人だけだ。

 

 それから十数分後、新校舎の方から耳をつんざくような大音響が聞こえてきた。

 

 どうやら作戦通りに事が進み、瑞希がDクラス代表の平賀源二の首を獲ったようだ。

 

 こうしてFクラスとDクラスの試召戦争はFクラスの勝利で終わりを告げた。

 

Side.end




裂「1話あけて華麗に復活だ!」

橙「裂やんの復活なんてどうでもいい。とりあえず今回の速水の扱いは酷かった……」

睦「そうだな……本格的に可哀相だ」

裂「私だってこうするつもりはなかった。Dクラスへの宣戦布告の為にだけに作ったキャラだったんだがな……」

紫「私達よりモブキャラに出番を与えている気がする」

燐「そうだよね。裂やんは一体何をしたいんだろう?」

裂「次回はきちんとお前たちに出番を与えられると思うからその手に持っているものを下ろせ」

紫燐「「ちっ……」」

裂「女の子が舌打ちなんてするんじゃありません!」

翔「……そんなことはどうでもいいこと。次回はどうなるの?」

裂「とりあえずDクラス戦の後始末だな。和平交渉とか橙夜の暗躍、Bクラスへの宣戦布告までだな」

紫「橙夜兄さんの暗躍って一体何をするつもり?」

橙「それはAクラス戦後のお楽しみってやつだ」

燐「そういわれると益々気になっちゃうなー」

睦「そう言えば今回の文字数ってどうなった?」

裂「後で確認する。感覚的には前回と同じくらいかそれより少ない感じだ」『9108文字だった』

橙「ふーん」

紫「それじゃまた次回」

燐「よろしくね~♪」

愛「またね~♪」
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