バカと俺たちの日常   作:裂やん

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【バカテスト】 物理

問 以下の文章の()に正しい言葉を入れなさい。
『光は波であって、()である』

姫路瑞希、神楽睦月、神楽紫、桜儀燐の答え
『粒子』

教師のコメント
よくできました。

土屋康太の答え
『寄せては返すの』

教師のコメント
君の解答はいつも先生の度肝を抜きます。

吉井明久の答え
『勇者の武器』

教師のコメント
先生もRPGは好きです。

神楽橙夜の答え
『エクスカリバー』

教師のコメント
それはアーサー王が持っていたとされる聖剣です。


「誰がババァ長だい!」by藤堂 カヲル


第伍問目 戦後の後始末と暗躍と昼食会

Side.明久

 

 Dクラス代表 平賀源二 討死

 

F男『うぉぉーーっ!』

 

 その報せを聞いたFクラスの勝鬨とDクラスの悲鳴が混ざり、耳をつんざくような大音響が校舎内を駆け巡った。

 

F男「凄ぇよ!本当にDクラスに勝てるなんて!」

F男「これで畳や卓袱台ともおさらばだな!」

F男「ああ。アレはDクラスの連中の物になるからな」

F男「坂本雄二サマサマだな!」

F男「やっぱりアイツは凄い奴だったんだな!」

F男「坂本万歳!」

F男「姫路さん愛しています!」

 

 代表である雄二を褒め称える声がいたるところから聞こえてきた。最後のは違うけど。

 さっきまで雄二がいた方を見ると、がっくりとうなだれているDクラス生徒たちの奥でFクラスの皆に囲まれている姿があった。

 

雄二「あー、まぁ。なんだ。そう手放しで褒められると、なんつーか」

 

 頬をポリポリと掻きながら明後日の方向を見ている。あの雄二が照れるなんて意外だな。

 

F男「坂本!握手してくれ!」

F男「俺も!」

 

 Dクラスを倒しただけで英雄扱い。この光景を見るだけであの教室への不満度が如何に大きいかが分かる。

 僕も雄二のところに行って皆に混ざろう!

 

明久「雄二!」

雄二「ん?明久か」

 

 雄二が振り向く。

 そこへ右手を挙げながら颯爽と駆け寄って、

 

明雄「「イエェーーーイ!!」」

 

 ハイタッチをする。

 

?「まさか姫路さんがFクラスだなんて……信じられん」

 

 背中から誰かの声。

 振り向くとそこにはヨタヨタと歩み寄る平賀君の姿があった。

 

瑞希「あ、その、さっきはすみません……」

 

 違う方向から瑞希ちゃんも駆け寄ってくる。

 

平賀「いや、謝ることはない。全てFクラスを甘く見ていた俺達が悪いんだ。まぁ、噂どおりに吉井君の成績が上がっていたのも驚いたが」

 

 これも勝負。騙し討ちっぽかったけど、瑞希ちゃんが謝る必要は全くない。……僕のことが噂になっているのはちょっと恥ずかしいけど。

 

平賀「ルールに則ってクラスを明け渡そう。ただ、今日はこんな時間だから、作業は明日で良いか?」

 

 敗残の将か。なんだか可哀想に見える。これから彼は再び試召戦争を行使できる権利が回復するまでの三ヶ月間を、あの教室でクラスメイトに恨まれながら過ごさなくてはならない。勝てば英雄のように扱われるのが代表なら、負ければ戦犯として扱われるのも代表なのだから・

 

明久「もちろん明日で良いよね、雄二?」

雄二「いや、その必要はない」

 

 流石にその姿を見て今日中にとは言えないので、雄二に聞いてみると、僕の予想しなかった返事をしてきた。

 

明久「え?なんで?」

雄二「Dクラスを奪う気はないからだ」

明久「雄二、それはどういうこと?せっかく普通の設備を手に入れることができたのに」

雄二「忘れたのか?俺達の目標はあくまでもAクラスのはずだろう?」

 

 打倒Aクラス。それは僕と雄二、橙夜の到るべき到達点。

 だが、僕には雄二の言いたいことがさっぱりわからない。

 

明久「それなら、標的をAクラスにしないのさ。おかしいじゃないか」

雄二「(橙夜も言ったろうが)お前らの回復試験の時間稼ぎと召喚獣の操作に慣らす為だ。他にもあるが、少しは自分で考えろ。そんなんだから、お前は近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて愛称をつけられるんだ」

明久「なっ!そんな半端にリアルな嘘をつかないでよ!」

雄二「おっとすまない。近所の小学生だったか」

明久「……人違いです」

雄二「まさか……本当に言われたことがあるのか……?」

 

 み、見るなぁー!そんな目で僕を見るなぁー!それに呼ばれてたのは≪観察処分者≫になった当時だ!

 

雄二「と、とにかくだな。Dクラスの設備には一切手を出すつもりはない」

平賀「それは俺達にはありがたいが……。それでいいのか?」

雄二「もちろん、二つ条件がある」

 

 そりゃそうだよね。このまま解放したら意味が無い。ここに橙夜が居ても何かしらの条件を出していただろうし。

 

平賀「一応聞かせてもらおうか」

雄二「なに。そんな大したことじゃない。一つ目は、俺が指示を出したら、窓の外にあるアレを動かさなくしてもらいたい。それだけだ」

 

 そう言って、雄二が指したのはDクラスの窓の外に設置されているエアコンの室外機。

 でも、この室外機はDクラスの物じゃない。ちょっと貧しい普通の高校レベルの設備でしかないDクラスにエアコンなんてものはないのだから。おいてあるのは、スペースの関係でここに間借りしている――

 

平賀「Bクラスの室外機か」

雄二「設備を壊すんだから、当然教師にある程度睨まれる可能性もあるとは思うが、そう悪い取引じゃないだろう?」

 

 確かに悪くない。うまく事故に見せかければ厳重注意で済み、三ヶ月もの期間をあの教室で過ごす状態から逃れられるのだから。

 

平賀「それはこちらとしては願ってもない提案だが、なぜそんなことを?」

雄二「次のBクラス戦の作戦に必要なんでな」

平賀「……そうか。ではこちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」

雄二「タイミングについては後日詳しく話す。二つ目は三ヶ月間Fクラスに宣戦布告しないことだ。今日はもう行っていいぞ」

平賀「ああ。ありがとう。二つ目の条件も呑む。お前らがAクラスに勝てるように願っているよ」

雄二「ははっ。無理するなよ。勝てっこないと思っているだろう?」

平賀「いや。他にも何か隠し玉がありそうな気がしてな。何となくだが勝てそうに思えてな」

 

 じゃあ、と手を挙げてDクラス代表、平賀君は去っていった。

 

雄二「さて、皆!今日はご苦労だった!明日は消費した点数の補給を行うから、今日のところは帰ってゆっくりと休んでくれ!解散」

 

 雄二が号令をかけると、皆雑談を交えながら自分のクラスへと向かい始めた。

 

明久「雄二、僕らも橙夜たちと合流して帰ろうか」

雄二「そうだな」

 

 流石に疲労がかなりある。まだ試召戦争は続くようだから、今日は大人しく帰って寝ることにしよう。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.橙夜

 

 あの大音響から暫くして、補習室送りにされていたFクラスのやつらも解放されたようで、生き残っていた他の面々のように戻ってきて自分の鞄を持って帰っていった。

 俺と睦月はその様子を観察しながら明久たちが戻ってくるのを待っていた。

 

雄二「待たせたな」

瑞希「お待たせしました」

明久「お待たせ。橙夜、睦月。帰ろう」

 

 数分後、殆どのクラスメイトが帰った頃に明久と雄二、瑞希の三人が戻ってきて、そう言った。

 

睦月「おう。帰るか」

橙夜「ちょっと用事があるから、待たずに帰っていいぞ。それと睦月は帰り際に紫たちとこのメモに書いてあるものを買っておいてくれ」

 

 その提案を俺は断る。

 

睦月「ああ、分かった」

明久「そう?なら僕たちは先に帰るね」

雄二「当然待つわけがないな」

瑞希「それじゃ先に帰りますね」

 

 そう言って4人は鞄を持って教室を出て行った。やはり雄二は薄情だった。どうでもいいな。

 

橙夜「さてと。速水。そろそろ行くぞ」

速水「ああ……」

 

 用事とはあの放送の後始末である。速水はかなり恐怖している。

 

速水「本当にお前の対処法で俺は無事に帰れるのか?」

橙夜「安心しろ。確実に上手くいく」

速水「その言葉を信じるからな?」

 

 かなりの念の押しようだ。

 俺の言葉は決して自惚れではない。絶対の事実だからだ。あの船越女史って結構扱いやすいと思うんだがな。

 挙動不審な速水を落ち着かせながら俺たちは体育館裏に向かった。

 

 

 

 

 今、俺は速水と船越女史と別れて校舎のある場所に向かっている。

 

 ん?船越女史の対処はどうなったかだって?

 そんなもの既に解決したに決まっているじゃないか。

 何をしたかって?そんなのは簡単だ。

 

 「見合い話を持ち掛けたかった」

 

 そう説明しただけだ。船越女史は嬉々として話に乗ってきた。

 

 何故、見合い話を持ち掛けれるかというと、俺の家はあの『神楽グループ』だ。

 傘下には多くの会社があるわけで、その分社員も居る。

 それなら結婚相手を探している人間もいるわけだ。

 

 幸いにも今日はノートパソコンを持ってきていたので社員のデータなんかも手元にあったわけだ。

 船越女子と同世代で独身の社員を数人ピックアップして今度紹介すると約束した。

 

 その話が済んだときの速水は長年の憑き物が落ちたように晴れやかだった。

 

 閑話休題(それはさておき)。

 

 話が逸れたな。説明している間に目的地の扉の前に到着した。

 

 コンコン

 

 と、俺はその扉をノックする。

 

 ん?その扉の先はどこだって?それはすぐに分かる。

 

?『入りな』

橙夜「失礼します」

 

 その言葉と共に俺は扉を開いて部屋の中に入る。そこにいたのは――

 

?「何の用だい」

 

 ――長い白髪が特徴の妖怪、藤堂カヲル学園長―通称、ババァ長―がいた。

 

橙夜「ちょっとしたお願い――いえ、取引に来ました」

学園長「……取引、ね。それと、その前に自分の名前くらい名乗るのが礼儀ってモンだろうに」

 

 俺の言葉に訝しげな顔をしながら名乗りを促してきたババァ長。一応名前を名乗ることにする。

 

橙夜「失礼しました。俺は二年F組の神楽橙夜です」

学園長「神楽?もしかして、振り分け試験を無記名で提出したあの『神楽』かい?」

橙夜「その通りです。で、取引の件なんですが……」

 

 どうやら振り分け試験を無記名で提出したことは教師陣の中では有名のようだ。

 

橙夜「俺が所属する二年F組がD組に試召戦争をしたのはご存知だと思います」

橙夜[盗聴器が仕掛けられている。俺が全て外すから他人への普段通りの対応を]

学園長「……そりゃ知っているさね。その戦争の最終許可を出しているのはアタシなんだから」

 

 俺は取引内容の説明の前置きをすると共に、手に持っていたノートパソコンをババァ長の机の上において文字を打ちながら学園長室の現状を説明する。

 盗聴されている可能性は知っていたようで、ババァ長は僅かに顔を顰めただけであまり動揺はしていなかった。

 

橙夜「それなら、我々F組の最終目的がA組の設備なのは予想済みだと思います」

橙夜[全て外した。仕掛けられていた数は三つ。三つとも同じ物だった]

学園長「そりゃ、D組との戦争後に設備交換してないんだからある程度は予測できるさね」

 

 口で説明を片手でタイピングしながら、仕掛けられていた三つの盗聴器を手際よく全て無力化する。

 

橙夜[全て無力化した。ここからは全て口で説明する]

橙夜「で、ここからが取引の内容になるのですが、ある条件を満たした状態でF組がA組に勝つか引き分けるかしたらF組の設備をA組との交換(・・)などではなく同等(・・)にしてもらいたい」

学園長「ある条件が何かは知らないけど勝利して交換以外での設備の向上は認められないね。そうと分かったらさっさと帰りな」

橙夜「何となくそう言うと思ってましたよ。しかし、こちらのメリットに関してしか取引内容は説明していませんから最後まで聞いてください」

学園長「なら、勿体ぶってないでさっさと言いな」

 

 時間を掛けすぎたか。確かに時間も勿体無いからな。

 

橙夜「単刀直入に言いましょう。―――――は欠陥品なんでしょう?」

学園長「なっ!?そのことはまだアタシしか知らないはずさね!一体どうやって知ったんだい!?」

 

 やっぱり驚くよな。アレはまだ開発したばかりだろうし。

 

橙夜「お忘れですか?俺の家はあの(・・)『神楽グループ』ですよ?種類問わずに情報は集めるに決まってるじゃないですか」

学園長「……そういえばそうだったね。で、そのことを口外されないことが私のメリットかい?」

 

 ふーむ……。やっぱりそういうふうに思われるか。まあ、説明するか。

 

橙夜「そうではありません。―――――の欠陥を改善することが私から提示する学園長のメリットですよ」

学園長「はっ。アンタにそんなこと出来るはずがないね。システムの仕組みなどを知っているのはアタシを含めた開発グループだけさ。いくら『神楽グループ』の御曹司だろうと不可能さね」

橙夜「出来ますよ。それと勘違いしているようですが、俺は御曹司ではありません。俺の家は(・・・・)、と言ったかもしれませんが」

学園長「それは一体どういう……まさか、あの噂は本当だとでも言うのかい」

橙夜「知っていたようですね。なら話は早い。その噂は真実ですよ。だって俺が――」

 

 そこで一旦言葉を切り、再び口を開く。

 

橙夜「――『神楽グループ』の本当の総帥ですから」

 

 俺の言葉を信じられないものを見るような顔で見てくる学園長。

 流石に高校生が本当のトップと言われて納得なんて出来ないだろうよ。

 

 ここで説明するが『神楽グループ』ってのは世界有数の大企業だ。傘下には多種多様な企業がある。

 まぁ、その始まりは俺が8、9歳の頃に気紛れで設立した会社なんだがな。

 法律上、当時の俺が会社なんて設立出来る訳がないので、父さんを隠れ蓑として社長にして設立したんだが。

 現在なら法律上問題なく表立って総帥になれるのだが、面倒だから当面はそのままの予定だし。

 

 それで、色々なものに手を出したら全部が全部成功してドンドン大きくなって行き、現在の状態になったわけだ。

 

 それと、俺たち兄弟妹の家が『神楽グループ』だと知っているのはあまりいない。

 精々、桜儀家と木下家、吉井家に霧島家の関係者位だろう。後は瑞希も知ってたかな?雄二は霧島家の関係者扱いだからきっと知っているだろう。

 

 で、ババァ長が言っていた噂ってのは俺たち兄弟妹の誰かが本当のトップなんじゃないかってやつだ。誰が言い出したんだろうね、本当。勘が凄すぎだろう。

 

学園長「アンタが本当の総帥だったとしても改善は無理さね」

 

 おっと思考に耽りすぎた。まだ誤解しているようだ。

 

橙夜「誤解しているようですが、俺はシステムの仕組みなども殆ど把握済みですよ?」

学園長「……は?いやいや、待っとくれ。流石にそれは不可能だよ」

橙夜「別に不可能ではありませんよ。現に私の今持ってきているUSBメモリの中には全部ではないですが、その情報が入ってますし」

 

 そう言いながら持っていた鞄からUSBメモリを二つ取り出して片方を持ってきていたノートPCに差し込んで操作する。

 

学園長「……本物のデータの様だね。一体どうやって入手したんだい……?」

橙夜「その辺は企業秘密という事で。……で、理解して頂けましたか?」

学園長「あぁ……。これを見せられちゃ理解する以外にないね。アンタの言う取引に応じようじゃないか」

橙夜「感謝します。……と、言いたいところなんですが、学園長側にもう一つメリットがあるんですよね」

学園長「まだ、他にもあるのかい?アタシとしてはアレの改善だけでも十分なのに、なんだい?」

橙夜「まずはこれを見ていただきたい」

 

 そう言って、先ほどとは違うUSBメモリを差し込み、操作してババァ長に見せる。

 

学園長「……ふむ。どうやら効果はアレと似たようなもののようだね」

橙夜「その通りです。で、この情報を差し上げるので、設計図どおりにこれを開発して頂きたいんですよね」

学園長「システムの仕組みを知っているならアンタのほうで開発できるだろうに。何を企んでいるんだい?」

橙夜「何やら勘違いしているようですが、仕組みを把握していてもシステムを再現出来る訳じゃないですよ?開発する為の機材を準備できませんし」

学園長「なるほどね。理論自体は出来ているのに、再現する為の環境がなくて宝の持ち腐れ状態ってわけかい。いいよ、これを開発してやろうじゃないか。完成したらアンタに渡せばいいのかい?」

橙夜「感謝します。個数は二つ程で。別に俺に渡さなくてもいいんですけどね。なんだったら、俺が改善予定のアレと一緒に清涼祭で行う予定の召喚大会の賞品にでもしたらどうですか?それなら贔屓とかではなくて合法的に俺も手にすること出来ますし」

学園長「そうするとしようかね」

橙夜「それとアレなんですが、改善後も改善できてないように対応することをおススメします。内部には学園長の失脚を狙っている人間もいるでしょうから都合がいいでしょうし」

学園長「……確かに尤もな意見さね。そういえば聞き忘れていたけど、勝利か引き分けでの条件ってなんだい?」

 

 あぁ、システム関係の話で盛り上がって忘れていたよ。……本題のはずなのに。

 

橙夜「それはですね、――――が勝利していることです」

学園長「――――の勝利?それってアレだろう?それと、試召戦争でその条件を満たすのは不可能じゃないかい?」

橙夜「そういえばA組との戦争形式を教えてませんでしたね。代表同士の一騎討ちです。ですが恐らくA組は呑まないと思うので五対五か七対七になると思いますけどね」

学園長「なるほどね。それならさっき言った条件も分かるもんだね」

橙夜「では、取引成立という事でよろしいですか?」

学園長「新技術の情報が手に入るんだ、成立さね。それじゃこれを渡しておくからよろしく頼むよ」

橙夜「分かっています。それではこれで」

 

 ババァ長が机の引き出しから取り出したアレを受け取って、俺は学園長室から出て帰路についた。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.紫

 

 今私達の家には明久と燐が来ているわ。

 

燐「明久覚悟!」

明久「ちょ、燐!さらに睦月まで!それは酷すぎる!」

睦月「俺の近くにいた明久が悪い!さあ、ぶっ飛べ!」

紫「……なら、私は睦月でも狙おうかしら」

 

 何をしているかというとニン○ンドーGCの大○闘スマッシュ○ラザーズDXよ。WiiのXもあるのだけど、何故かDXをやっているのよね……。

 

 元々ライトノベルや漫画でオタクだった橙夜兄さんが明久の影響もあってゲームにも嵌ったのよね。

 結果、殆どのゲーム機本体を所持しているくらいだもの。……ファミ○ンなんて今時誰もやらないのに何故手に入れたのかしら?

 GCに至っては通常のブラックに加え、シャ○専用カラーも買ってるのよね。ブラックはリビングで、シャア専用は兄さんの部屋に固定されているけれど……。

 

 ああ、因みにハード本体は全て兄さんの実費よ。

 シャ○専用みたいな特殊なの以外は全てリビングに置いてあるから私たちも自由に使えるのよね。通常のだけしか買って無くてもリビングに置いてあるのだけど。

 だからやりたいソフトがあったら各自で買ってやってるのよね。

 基本的に私や燐はあまりゲームをやらないのだけど、大人数参加型のは皆で楽しめるからそれなりに出来るのよね。

 

明久「僕への睦月と燐の集中砲火は酷いよ……」

紫「私が一位で明久は四位のようね」

燐「私は三位~」

睦月「俺は二位だが、影の薄かった紫が一位だとはな……」

 

 睦月と燐の集中砲火がなければ明久が一位だと思うのだけどね。

 

 それとス○ブラDXの使用キャラなのだけど、私はゼルダ/シークで睦月がガノンドロフ、明久はサムス、燐はフォックス、この場にいない橙夜兄さんはネスよ。

 ネスのPKサンダー技って卑怯臭いわよね。完全に場外にいるのに、自分に当てて復帰したり、その状態で敵に当たると吹っ飛ばすなんて……。

 兄さんが強すぎて基本的にネスを選択することを禁止にしているくらいだし。

 

紫「それにしても兄さん遅いわね?」

明久「少し用事があるとは言ってたけど……」

睦月「流石にちょっと遅いよな」

燐「いつもなら、夕ご飯作ってるもんね」

 

 そうなのよね。燐の言うとおり今週は兄さんが当番だからいつもならこの時間には夕食の準備しているし。

 

紫「睦月と明久は兄さんの用事が何か聞いていないの?」

明久「聞いてないよ」

睦月「一つだけ心当たりはあるんだが、それだけだとここまで時間掛からないはずだし……」

燐「心当たりって一体何のこと?」

 

 私も気になるわね。

 

睦月「FとDの試召戦争中に校内放送があっただろう?」

紫「確か船越先生の呼び出しよね?」

燐「速水って男子は勇気があるなって思ったよ」

睦月「そう、それ。それの内容を指示したのが橙夜兄で責任を取って対処するって言ってたんだよな」

明久「そう言えば、そんなこと言ってたね」

 

 なるほどね。最後まで自分がやったことの責任持つなんて兄さんらしいわ。

 

燐「それなら船越先生の相手に手間取ってるのかな?」

紫「そうだったとしても手間取りすぎよ」

睦月「そうだよな。他にも用事があって、そっちに時間が掛かってるって考えたほうが早いし」

明久「まぁー橙夜なら大丈夫でしょ。何食わぬ顔して帰ってくるだろうし」

睦月「ありえるな」

 

 明久の言葉に睦月が同意すると同時に玄関が開く音が聞こえ、その後に声が続いた。

 

橙夜『ただいまー』

 

明久「ほらね?」

紫「そうね」

紫睦明燐「「「「おかえりー」」」」

 

 私たちは明久の言葉に苦笑しながら兄さんに挨拶を返した。

 

Side.end

 

 

 

 

Side.橙夜

 

 少し遅くなったと思いながら俺はマンションの前まで走り、既に家の前まで来ている。

 

橙夜「ただいまー」

?『おかえりー』

 

 玄関の扉を開けながら「ただいま」と言うと少ししてから4人ほどの声が聞こえた。どうやら明久と燐がきているらしい。

 

橙夜「ただいまっと。なんだス○ブラやってたのか。しかもDX」

睦月「おかえり。そそ。橙夜兄も後で一緒にやる?」

橙夜「そうだな。久々にネス使わないと腕が鈍りそうだから飯の後にでもやるか」

紫「兄さんがネスを使ったら私達に勝ち目ないわね」

明久「そうだよね。橙夜が本気でネスを使うと僕と睦月でも勝てなくなるし」

橙夜「まっ、今から飯作るからそのまま続きやっとけ」

燐「はーい。夕ご飯楽しみにしてるよー!」

 

 燐の言葉に背中を向けながら手を振って答える。

 

 

 

 

 あの後、ご飯は朝のうちに米研ぎしてあったから炊くだけだったから、明日の弁当の為に睦月と紫に頼んでおいた物以外の食材で焼き魚にほうれん草の胡麻和え、豆腐の味噌汁を作って五人で食べた。

 

 その後は睦月たちとス○ブラDXや他のゲームをやったり、明久の勉強をみながらまったり過ごして、明日の弁当にいれるおかずの下拵えとシュークリームを作って風呂に入って寝ることにしたのだった。

 

 

 

 

 そして朝。時間は6時40分くらい。睦月は直接起こし、燐には携帯に電話して起こすことに。

 

 7時前には二人とも覚醒していたのでお弁当を作る手伝いをさせることに。

 と言っても昨夜に殆どの下拵えが終わっているので揚げたり焼いたりするくらいだが。

 卵焼きとかの当日に作るようなものは俺が作るわけだし。

 

 それから大体三十分後。

 

 目の前には四段の重箱が四つ。無事に弁当が完成。

 弁当のあまりを朝食として睦月と燐同様に紫と明久を起こして、五人で朝食を摂る。

 食べ終えた俺は身支度をして一足先に登校することにした。

 

橙夜「んじゃ、先に行ってるぞー」

4人『いってらっしゃーい』

 

 その手には昨晩作っておいたシュークリームの入った箱を持って。弁当の重箱は四人に1つずつ持ってきてもらうことにした。

 

 

 

 

 学園に着いた俺は靴を履き替え、二年A組の下駄箱の前であることを確認していた。

 

橙夜「ふむ。愛子は既に来ているみたいだな」

 

 そう。愛子が既に登校済みかどうかだ。

 確認し終えた俺は三階の二年A組まで向かった。

 

 

 

 

 Aクラスの前まで来た俺は今回も入り口の近くにいた生徒に声を掛ける。

 

橙夜「悪いがそこの。工藤愛子に神楽橙夜が呼んでいるって伝えてくれないか?」

A男「ん?ああ、工藤だな。今伝えてくる」

 

 Aクラスの男子生徒はそう言って教室に入っていった。

 

?「あれ、おはよう橙夜。今日は朝から来たのね」

橙夜「優子か。おはよう。まぁーちょっとな」

 

 声を掛けられて振り向いた先にいたのは、またもや優子だった。

 

優子「今日のお昼は期待してるわよ。お弁当を持っているようには見えないけど」

橙夜「存分にしていろ。思った以上に量が増えたから睦月たちに持ってきてもらうように頼んだんだよ。だから俺はこっちを持ってきた」

 

 そう言いながら俺は手に持っていたシュークリームの入っている箱を優子の顔辺りまで上げた。

 

優子「デザートのシュークリームね」

橙夜「そういうこと」

優子「だとしても、なんでこんな朝早くからAクラスに?」

橙夜「それはな――」

?「ボクに何の用かな、橙夜君?」

 

 優子に説明をしようとしたら遮られた。まぁー遮ったのは俺が呼んだ愛子なんだが。

 

橙優「「おはよう、愛子」」

愛子「おはよう、二人とも。それで用件は?」

橙夜「それを今優子に説明しようとしてたんだがな。まぁーこれを愛子に支給されている冷蔵庫に保存しておいて欲しいってことだ」

 

 優子のとき同様に愛子の顔の前にあげる。

 

愛子「これはシュークリームかな?それならいいよ」

橙夜「お礼というわけじゃないが、ほれ。二人とも一個ずつ食って良いぞ」

優子「食後のデザートなんでしょ?今食べたら昼に食べれなくなるじゃない」

愛子「それは困っちゃうな。お昼に食べるのが一番美味しいんだから」

 

 その優子と愛子の言葉に俺は苦笑を浮かべながら返す。

 

橙夜「それなら安心しろ。元々頼むために人数分より4、5個多く作って持ってきてあるんだ」

愛子「なるほどね~。それなら今のうちに一個頂こうかな」

優子「ギブアンドテイクってやつね。それじゃ、私も貰うわね」

橙夜「紫や燐たちが来る前に食べ終えとけよ。それと優子は翔子と一緒に睦月と明久が持ってくる弁当の重箱を受け取っておいてくれ。翔子にもおまけとしてシュークリームを一個渡すのを忘れずにな」

優子「それなら丁度代表も来てるから今のうちにあげときましょ。呼んでくるわ」

 

 そう言って優子は翔子を呼びに教室に入っていった。

 

愛子「相変わらず橙夜君のシュークリームは美味しいね。お店で買うものよりも美味しいから他のシュークリームが食べれなくなりそうだよ」

橙夜「そう言ってもらえると嬉しいな」

愛子「そういえばDクラスとの試召戦争勝ったみたいだね」

橙夜「そりゃ、当然だろ。俺と睦月は参戦してないけどな」

愛子「Dクラスの代表を討ち取ったのが姫路さんってのは聞いたけど参戦してなかったんだね」

橙夜「本格的に参戦するのは、予定では次の途中からだからな」

?「……橙夜、久しぶり」

 

 愛子と雑談していると間を取って声が掛けられた。

 

橙夜「翔子か。久しぶりだな。それと学年主席おめでとうだな」

翔子「……ありがとう。でも、それは橙夜と睦月、紫に燐がこういった試験のときに真面目に受けないから」

橙夜「俺たちはあまり目立ちすぎるわけにはいかないからな」

愛子「そういえば、橙夜君と代表って一年の時にボクが転入してきた時から仲良かったよね」

橙夜「翔子とはここに進学する前から何度か面識があったからな」

翔子「……お互いの家柄的に、会う機会が何回かあったから」

愛子「家柄って?」

優子「愛子は知らないんだったっけ?代表の方は家がかなりの資産家なのは知ってたわよね。それで橙夜たちに至っては……ねぇ?」

愛子「?代表の方は知ってるけど、橙夜君たちのほうはどういうこと?」

翔子「……愛子、『神楽グループ』に聞き覚えは?」

愛子「あの世界有数の大企業のでしょ?それくらいは誰でも知ってると思うけど」

優子「じゃあ、橙夜たちの苗字は?」

愛子「そりゃ、かぐ……えっ?まさかそうなの?」

翔子「……そう。橙夜たちの家はその『神楽グループ』」

愛子「えええええええええええええ!?」

 

 愛子は動揺しているようだ。今のうちに翔子に弁当のことを頼んでおこうっと。

 

橙夜「翔子。後から睦月たちが持ってくる弁当の重箱を受け取ってAクラスで管理しといてくれ。それと報酬というわけじゃないが、シュークリームを一個やろう。弁当の後のデザートでもう一個食べて良いから」

翔子「……分かった。お弁当は責任を持って管理する。シュークリーム、ありがとう。橙夜の作るお菓子は美味しいから嬉しい」

橙夜「じゃ、よろしく頼んだ」

愛子「って、橙夜君と代表は普通に会話してないでよ!ボクのことも気にかけてよ!」

橙夜「……だってさ。そのリアクションは慣れてるし。……なぁ?」

優子「そうなのよね……」

翔子「……橙夜の言う通り」

 

 俺の言葉に同意する優子と翔子。

 

愛子「ボクだけ知らないってのが寂しいんだよ……」

橙夜「そう落ち込むな。わざと言わなかったわけじゃない。言う機会がなかっただけだ。学園内で知ってる生徒は10人もいないくらいだしな」

優子「知られると色々と大変だし……ね?」

翔子「……媚びてくる人間が多い」

愛子「そう言うことなら納得するよ……」

橙夜「そう拗ねるな、愛子。残りのシュークリームはっと…に、し、ろ、や……16個か。愛子は昼に二個食べて良いから機嫌を直せ」

愛子「ほんとに!?」

橙夜「本当だ。それに今、神楽家のことを知れたんだからそれでいいじゃないか」

愛子「それもそうだね。それじゃ、全部で三個のシュークリームで水に流してあげるよ」

優子「愛子だけ三個ってのはずるいわね」

翔子「……私もそう思う」

橙夜「二人だって全部で二個食えるんだからいいだろ。他の奴らは一個なんだから。っと、そろそろ教室に行くか」

優子「それじゃあ、お昼のお弁当期待して待つわね」

翔子「……楽しみ」

愛子「また、お昼にね」

橙夜「おう、じゃあな」

 

 愛子と優子と翔子にそう言って俺はFクラスに向かった。

 

 

 

 

 教室に入ってみると雄二が卓袱台で胡坐をかいて英語の教科書を持っていた。

 

橙夜「テスト前の悪あがきか?雄二」

雄二「おう、橙夜か。そんなところだ」

 

 雄二は俺のほうを向いて確認すると、再び教科書を見て俺の質問に答える。

 それを聞きながら俺は昨日も座った席に座る。

 

橙夜「英語も良いが、他のもきちんと勉強をしておけよ?特に日本史とか」

雄二「……本当にお前はどこまで知ってるんだ?」

 

 俺の言葉に教科書を見ながら疑問をぶつけてくる雄二。

 

橙夜「一体どこまでだろうな」

雄二「はぐらかすなよ」

橙夜「はぐらかしてるつもりはないさ。俺の発言は情報を整理しての予測に過ぎないからな」

雄二「そう言うことか。確かにお前にはその能力が必要だしな」

橙夜「そう言うことだ。ところで康太はもう来ているよな?」

雄二「ああ。どうせどこかでムッツリ商会を開いてるだろ」

橙夜「ちょっと明日のBクラス戦で用事があったんだがな……」

雄二「どういうことだ?何か情報を掴んだのか?」

橙夜「まぁな。その情報がなんとな――」

 

 雄二に情報を開示しようとしたと同時に教室の戸がガラガラと開いた。

 

睦明「「おはー(よー)」」

 

 どうやら睦月と明久が来たようだ。

 

橙夜「雄二。この情報は後でな」

雄二「分かった。後で聞こう」

 

 睦月と明久がこっちに向かってきたのが見えたから切り上げることに。

 

雄二「おう明久に睦月。時間ギリギリだな」

明久「ん、おはよう雄二」

睦月「少し寄るところがあってな」

 

 きちんとAクラスに寄ったようだな。

 

明久「皆には何も言われなかったの?」

雄二「ん?何がだ?」

明久「Dクラスの設備のこと」

雄二「ああ。皆にもきちんと説明をしたからな。問題ない」

明久「ふーん」

 

 最終目標がAクラスのシステムデスクなのだから、Dクラス程度で満足されては困るしな。

 それから俺たちはHRを受けて補給試験を受けた。

 

 

 

 

 午前中に俺たちは4教科の補給試験を受けた。

 

明久「うぁー……づかれだー」

 

 明久はそんな言葉を喋りながら机に突っ伏していた。

 

秀吉「うむ。疲れたのう」

 

 と気付いたら俺たちの近くに秀吉が来ていた。

 今日は髪をポニーテールにしているが、本当に男として見て欲しいのか甚だ疑問だ……。

 

康太「…………(コクコク)」

 

 いつも無口な康太もいた。

 

雄二「よし、昼飯食いに行くぞ!今日はラーメンとカツ丼と炒飯とカレーにすっかな」

 

 昼飯のメニューが明らかにおかしい。

 

美波「ん?坂本たちは食堂に行くの?だったら一緒していい?」

雄二「ああ、島田か。別に構わないぞ」

美波「それじゃ、混ぜてもらうね」

康太「…………(コクコク)」

 

 康太が頷いているのはどうせ下心だろう。

 とりあえずそろそろ声を掛けるか。

 

橙夜「お前ら忘れてないか?」

雄二「ん?何をだ?」

秀吉「む?そういえば何か忘れておるのう」

 

 睦月と明久以外では秀吉がうろ覚えで覚えているだけか。

 

睦月「弁当だよ。弁当」

 

 睦月が秀吉に助け舟を出した。

 

秀吉「おお、もしや昨日の約束のかの?」

 

 秀吉はきちんと思い出せたようだ。

 

橙夜「そうそう。今日の昼は準備してやるって言っただろう」

雄二「おお、そうだったな。ありがたい」

秀吉「それでは、せっかくのご馳走じゃし、こんな教室ではなくて屋上でも行くかのう」

明久「そうだね」

 

 そりゃ、こんな腐った畳と男の臭いしかしない場所で食いたくはない。

 

橙夜「それじゃあ、俺と睦月でAクラスから弁当受け取ってくるから先に行っておいてくれ」

雄二「そうか。それなら俺もちょっと寄り道するから先に行ってくれ」

明久「ん?雄二はどこか行くの?」

雄二「飲み物でも買ってくる。昨日頑張ってくれた礼も兼ねてな」

美波「あ、それならウチも行く!一人じゃ持ちきれないでしょ!」

橙夜「なら俺からも千円渡すから後6人分買ってきてくれ。この場にいる8人に後6人加わるから」

秀吉「全部で14人分かの?二人じゃ大変じゃろうからワシも行こうかの」

雄二「悪いな。それじゃ頼む」

美波「おっけ!」

秀吉「うむ、任せるのじゃ」

 

 島田嬢は珍しく気遣いを見せているようだな。明久も珍しいものを見るような顔で見ていたし。

 

雄二「きちんと俺達の分をとっておけよ」

橙夜「それなら大丈夫だ。人数分作ってきてあるから早々なくならない」

明久「それじゃ、僕らは先に行ってシートを敷いておくね」

睦月「あいよ」

 

 そう言って俺たちはそれぞれの目的地に向かった。

 

 

 

 

 俺と睦月がAクラスの前に着くと、既に紫や燐たち6人が入り口の近くで待っていた。

 

橙夜「待たせたな」

紫「兄さんたちやっと来たのね」

燐「ちょっと待ったよ」

睦月「悪いな。少し教室を出るときに話をしていてな」

優子「それなら仕方ないわね」

翔子「……大丈夫」

睦月「それじゃ、屋上に向かうか。他のも数人待っているから」

愛子「はーい!」

結子「はい」

橙夜「弁当は俺と睦月が二つずつ持つから愛子はそれを任せた」

愛子「オッケー、任されたよ!」

 

 俺と睦月は紫と燐、優子と翔子から重箱を受け取って屋上へ向かった。

 

 

 

 

 屋上へと出た俺たちは明久たちを目に入れて敷かれたシートの上に乗る。

 

橙夜「持ってきたぞ」

明久「待ってたよ」

瑞希「重箱四つって凄い量ですね……」

睦月「14人分だからな。普通にこれくらいになるだろ」

康太「…………何故此処に結子がいる?」

結子「紫ちゃんに誘われたからだよ。だから今日はお弁当作らなかったんだよ」

康太「…………理解した」

翔子「……雄二はどこ?」

橙夜「アイツは飲み物を買いに行ってるから少し遅れる」

翔子「……分かった」

優子「そういえば秀吉がいないようだけど、どうしたの?」

睦月「秀吉なら雄二と一緒に飲み物を買いに行ってる」

優子「そう。なら先に頂いてましょう」

燐「秀君たちには悪いけどそうしよっか」

紫「それなら早速広げましょう」

 

 その言葉と共に包みを解いて重箱を広げる。

 

一同『おおっ!(美味しそうー)』

 

 俺の弁当を初めて見た奴らは一斉に歓声をあげた。

 

橙夜「四つの重箱は全部同じ内容だ。一番下が稲荷でそこから上は卵焼きや唐揚げ、ポテトサラダに肉じゃがと色々なおかずをいれてある。一つの重箱に3、4人で食べてくれ。それと悪いが箸は割り箸で勘弁してくれ」

 

 俺がそう言うと自然と班が出来た。

 

 俺と愛子と瑞希。

 睦月と優子と今はいない島田嬢。

 紫と明久と燐と今はいない秀吉。

 康太と須藤嬢に翔子に今はいない雄二。

 

 ――ご都合主義乙ってことで――

 

 なにやら電波を受信したような気がするが、気のせいだな。

 

橙夜「それじゃ、飲み物を買いに行っている雄二たちには悪いが、いただきます」

一同『いただきます!』

 

 それぞれが思い思いのおかずに箸をつけ、口に運ぶ。

 

『美味しいー』

 

 誰が言ったか分からんがそんな言葉を聞いた。正直嬉しい。

 

愛子「(モグモグ)昨日の紫ちゃんの卵焼きも美味しかったけど、橙夜君のはもっと美味しいね……」

翔子「(モグモグ)……やっぱり橙夜の作るものは美味しい」

優子「(モグモグ)本当、昨日の紫が作ったのなら同性ってことでなんとか納得出来るけど、橙夜が相手だと自信なくすわ……」

結子「(モグモグ)紫ちゃんのお兄さんの手料理は初めて食べたけど、本当に美味しい……」

燐「(モグモグ)本当に橙夜が作る料理はなんでこんなに美味しいんだろう……?」

紫「(モグモグ)私は兄さんの料理の腕に慣れてるから自信をなくすことはないのよね」

 

 女性陣が色々と喋っている間に雄二たちがやってきたようだ。

 

雄二「やっぱ先に食べてやがった…か…ってなんで翔子がここに!」

翔子「……昨日のうちに優子経由で橙夜に誘われたから」

美波「坂本、いきなり立ち止まって一体どうしたのよ?」

秀吉「そうじゃ、雄二。邪魔になるから入り口のところで立ち止まらんでくれんかの。進むか退くかどっちかにしてほしいのじゃ」

 

 気付いたら翔子が雄二の目の前に移動していた。それは瞬間移動か何かか?

 

翔子「……雄二はこっち」

雄二「あ、あぁ……」

美波「やっと退いたわね。あら。これはかなり美味しそうね」

秀吉「おお。流石橙夜じゃな。美味しそうじゃ」

 

 おかずの詰まった重箱を見て秀吉と島田嬢が感嘆の声を上げた。

 

優子「秀吉。美味しそうじゃなくて、美味しいのよ。それも自信をなくすレベルで……」

美波「それってどれだけ……。あ、誰か箸とって頂戴」

睦月「ほれ」

美波「ありがと。それじゃこの唐揚げ貰うわね。(モグモグ)本当に美味しいわね。これ神楽兄が作ったって本当?それが真実だったら自信をなくすわ……」

優子「真実よ……。私は何度も自信をなくされてるわ……」

 

 なにやら優子と島田嬢が肩を落としていた。なんでだ?まぁいいか。

 

睦月「そういえば初めてあった奴らもいるだろうから自己紹介といかないか?」

明久「それはいいね。じゃあ、誰から行く?」

橙夜「それなら俺からいくか」

睦月「それじゃ橙夜兄からよろしく」

 

 一応分かりやすいように立って喋る。

 

橙夜「神楽橙夜。二年Fクラス。そこにいる睦月と紫の年子の兄で優子と秀吉、燐の三人とは従妹弟だ。明久と燐、瑞希は幼馴染だ。あまり接点や親交がない女子は苗字に嬢をつけて呼んでいる。呼称は神楽だと分かりづらいから区別する為に神楽兄か名前でいい。得意科目は政経に数学、国語、英語。苦手科目はない。特技や趣味は料理や読書。以上だ」

 

 そう言って俺は座る。そして入れ替わりで睦月が立った。

 

睦月「んじゃ次は俺だな。神楽睦月。さっき自己紹介した橙夜兄と同じくFクラス。橙夜兄の年子の弟で紫は双子の妹だ。親戚や交流関係などは橙夜兄と大体似たようなもんで、基本女子は苗字で呼び捨てだ。俺も神楽弟か名前で。得意科目は数学と音楽だな。特技や趣味は料理と音楽鑑賞といったところだ。よろしく」

 

紫「次は私ね。神楽紫。Aクラス。橙夜兄さんは年子、睦月は双子の兄。親戚関係は二人と同じで交流関係は女子が多いわ。呼び方は苗字か名前を呼び捨てね。私は神楽妹か名前で良いわ。得意科目は地理歴史よ。特技や趣味は料理や読書。後は明久の世話ね。よろしくたのむわ」

 

優子「それじゃ次は私ね。木下優子。Aクラス。秀吉とは双子で私が姉ね。私も苗字か名前でいいわ。特技や趣味は特に無いわね。得意科目も苦手科目も特にないわね。まぁよろしくね」

 

秀吉「ワシの番じゃな。木下秀吉じゃ。Fクラスで演劇部に所属しておる。姉上とは双子で弟じゃ。ワシも苗字か名前で構わぬ。特技や趣味は演劇かのう?得意科目はないのじゃ。それとワシはれっきとした男じゃから間違えぬように。よろしくたのむのじゃ」

 

燐「なら今度は私。名前は桜儀燐。Aクラスだよ。兄が一人いるよ。私も苗字か名前で呼んでくれればいいかな?得意科目は理科や数学だね。特技や趣味は料理と秀君の演技を見ること。後は理科系の実験かな?これくらいかな?じゃあよろしくね」

 

 俺と睦月の入れ替わり後、次々と続いていく。

 

雄二「俺の番か。坂本雄二。Fクラス代表だ。Fクラス以外は普通に苗字か名前で呼んでくれ。趣味は明久の幸せを邪魔することだな。得意科目などは木下姉と同じように特に無いあと料理は比較的得意だ。じゃあよろしく」

 

翔子「……霧島翔子。Aクラス代表。雄二とは幼馴染。代表でも霧島でも翔子でも坂本翔子「おい!」でも好きに呼んで構わない。私も得意科目や苦手科目は特に無い。将来の夢は雄二のお嫁さん「待て!」……それじゃ、よろしく」

 

康太「…………土屋康太。Fクラス。ここにいる須藤結子とはお隣さんで幼馴染。苗字でも名前でも好きに呼んでくれて構わない。得意科目は保健体育。よろしく」

 

結子「それじゃ私だね。須藤結子。Aクラスで康君が言ったとおり康君とはお隣さんで幼馴染。私も須藤でも結子でも自由に呼んでいいよ。得意科目は保健体育と英語だね。特技や趣味は家事全般や読書。後は康君のお世話をすること。よろしく」

 

明久「次は僕かな。名前は吉井明久。Fクラス。橙夜の言った通り橙夜たちとは幼馴染でお隣さんだね。後は「観察処分者」そうそう。って雄二は余計なことを言わないでくれる?得意科目は歴史だね。特技は料理かな?じゃあ、よろしく」

 

美波「なら次はウチが行くわ。名前は島田美波。Fクラスでドイツ育ちだったので日本語での会話は出来るけど読み書きは苦手。小学生の妹が一人います。ウチのことは苗字でも名前でも好きに呼んで。得意科目は数学。問題が読めれば他もそれなりには出来ると思うわ。料理はそれなりに得意かな?じゃあよろしく」

 

瑞希「それじゃ次は私が。名前は姫路瑞希でFクラスです。明久君や橙夜君たちは小学生のときからの幼馴染です。私も苗字や名前でも好きに呼んでもらっても構いません。得意科目は特にないです。特技や趣味は特にないですね。運動は少し苦手です。それではよろしくお願いします」

 

 瑞希はそう言って座る。そして最後に俺の隣に座っていた愛子が立つ。

 

愛子「ボクで最後だね。工藤愛子、Aクラスで水泳部。去年の終わりに転入してきたんだ。ボクのことも好きに呼んで構わないよ。得意科目は保健体育で、趣味は水泳と音楽鑑賞。好きなものはシュークリームだよ。結子ちゃんが得意なのは同じクラスになって知ったけど、土屋君も随分と保健体育が得意みたいだね。でも、ボクだってかなり得意なんだよ?……キミとは違って、実技で、ね♪」

 

 あ、マズイ。

 

愛子「吉井君。保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

明久「フッ。望むところ――」

美波「吉井には永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育の勉強なんて要らないのよ!」

瑞希「そうです!永遠に必要ありません!」

明久「…………」

雄二「島田に姫路。明久が死ぬほど哀しそうな顔をしているんだが」

 

 やっぱりこうなったか……。はてさてどうするか。

 

紫「安心しなさい、明久。もしものときは私が教えてあげるわ」

明久「紫……。ありがとう。こんな僕を慰めてくれて……」

 

 どうやら何とかなったらしい。

 

愛子「おやぁー?ふむふむ、まさかそうだとは(ねぇねぇ橙夜君。やっぱり紫ちゃんって吉井君のこと好きなの?)」

橙夜「(恐らくな。あんまり表に出さないから兄である俺でも判断しづらいんだ)」

愛子「(どう見ても吉井君の方も紫ちゃんのこと好きだよね?なんであの二人付き合ってないの?)」

橙夜「(それは明久の鈍感スキルだ。あいつは自分の気持ちにすら気付いていない超鈍感だからな)」

愛子「(なるほどね。まぁー紫ちゃんの努力次第って感じかな?)」

橙夜「(そんな感じだろうな)さて、自己紹介も終わったしそろそろ飯を再開するぞ。俺たちFクラスは飯食った後に明日の戦争のミーティングがあるからな」

雄二「そうだったな。じゃ、さっさと食ってやるか」

秀吉「折角の橙夜の馳走じゃから味わって食べたいが、仕方あるまい」

橙夜「食後にはデザートも準備してあるから楽しみにしておけ」

瑞美結「「「それは楽しみね(ですね)」」」

 

 そうして俺たちは再び箸を動かした。

 

 

 

 

美波「そういえば坂本、次の目標だけど」

雄二「ん?試召戦争のか?」

美波「うん」

 

 あれから弁当を食べ終え、デザートのシュークリームも食べた後、Aクラスの6人には悪いが早速、屋上から退場してもらった。

 

美波「相手はBクラスなの?」

雄二「ああ、そうだ」

 

 確か、Dクラスの後はBクラスとしか説明していなかったな。

 

美波「どうしてBクラスなの?目標はAクラスなんでしょう?」

雄二「正直に言おう。どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」

 

 戦う前から降伏宣言は雄二らしくもない。

 と言っても、実際のところ俺や睦月、明久に瑞希の四人がいて、雄二がどんな作戦を練ろうとも戦力が足らないから当たり前なんだがな。

 

橙夜「雄二がどんな作戦を考えても、まともにやれば(・・・・・・・)どうやってもAクラスに勝てないからな」

美波「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」

雄二「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」

明久「雄二、さっきと言ってることが違うじゃないか」

 

 別にAクラスの設備じゃなくてもBクラスの設備で十分だとは思う。

 

睦月「明久。さっき橙夜兄は言ったはずだぞ?まともにやれば(・・・・・・・)、と」

雄二「橙夜と睦月の言うとおりだ。クラス単位の戦争では勝てない。だから一騎打ちに持ち込むつもりだ」

明久「一騎打ちに?どうやって?」

雄二「Bクラスを使う」

 

 成績は上がったが、明久の頭の回転はまだ良くなっていないようだ。

 その辺の指導もしておくべきか?

 

雄二「試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか知っているな?」

明久「設備のランクが落とされるんだよね」

雄二「そうだ。BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ」

睦月「それくらいは当然知っているだろ」

雄二「では、上位クラスが負けた場合は?」

明久「えっと……下位クラスと設備を入れ替えられるんだよね?」

雄二「ああ。そのシステムを利用して、交渉をする」

瑞希「交渉、ですか?」

橙夜「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むよう交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備になるだけだからな。まず成功するだろうさ」

明久「つまり、それをネタに『Bクラスその勝負直後に攻め込む』ってAクラスと交渉するんだね」

雄二「そう言うことだ」

秀吉「じゃが、それでも問題はあるじゃろう。体力としては辛いし面倒じゃが、Aクラスとしては一騎打ちよりも試召戦争のほうが確実であるのは確かじゃからな。それに――」

 

 どうやら秀吉はこの作戦の欠点に気付いたようだな。

 

明久「それに?」

秀吉「そもそも一騎打ちで勝てるのじゃろうか?こちらに姫路や橙夜に睦月がいるということは既にAクラスに知られておるじゃろう?」

雄二「確かにそうだ。その辺は橙夜に考えがあるらしい」

橙夜「まぁーな。雄二にも考えがあったらしいが、酷く運頼みだったから却下したんだがな。Aクラスは交渉の場で上手く誘導するさ。それにFクラスがAクラスに勝つためにはこの作戦しかないからな」

雄二「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはBクラスに勝ってからだ」

 

 勝算がなければわざわざこんな作戦を取る必要もないからな。

 

雄二「で、明久」

明久「ん?」

雄二「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告して来い」

明久「断る。雄二が行けばいいじゃないか」

 

 やっぱりか……。明久を不幸にする為になら雄二は容赦が無いな。

 

橙夜「雄二」

雄二「なんだ、橙夜?」

橙夜「お前自ら宣戦布告に行かなかったらこの紙に書かれていることをお前の声真似をさせた秀吉に言わせて録音して翔子に渡すぞ?」

雄二「なっ!卑怯な!この文面をそのまま録音したら俺の人生が終わってしまうじゃないか!」

橙夜「分かったら宣戦布告はお前が行けよ。明久に行かせたら、今日がお前の命日になるかもしれないからな。(……紫の仕業的に)」

雄二「よし、分かった。俺が責任持って宣戦布告してこよう」

 

 最初からそうしろって話だったんだがな。

 因みにそのころの明久はというと。

 

明久「???」

 

 雄二の変わり身の早さに頭の上に?マークを浮かべていた。

 

 

 

 

 午後のテスト終了後、教室には少しだけ傷を負った雄二がいた。

 それで済むなら最初からお前が行っておけばよかったじゃないか……。

 

Side.end




紫「橙夜兄さんの暗躍ってフラグよね?」

裂「フラグだな」

睦「フラグというか伏線。だけどモロ分かりだよな?」

裂「そりゃ、あの用語が出ているんだから何か分かるよな」

橙「はっきり分かってないのはある条件の勝利者が誰かってことだよな」

燐「なんとなく分かるけどね」

裂「まぁーある二次小説やってたころの一部なんだがな」

愛「そういえば今回の文量凄いよね。もしかして今作最大文字数だったりするんじゃない?」

裂「かもしれない。後で確認する」『19341文字だった。もう少しで2万超えだった』

結「やっとまともに登場できた」

康「…………よかったな」

愛「それじゃあ、また次回~♪」

翔「……よろしく」

結「またね」
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