地面から出てきたニンジンの頭がチューリップが開花するように開き、そしてそこからうさ耳が顔を出した。
「あっ!あれって!」
一夏はそのうさ耳に覚えがあり、駆け足で近づいてゆく。一夏が大分近づくと黒髭危機一髪のごとく勢いよく飛び出てきた人物、篠ノ之束が姿を現した。
「やっっっっっっっっっっっっっっっっほ―――――――――――――――!いっくん久しぶりー!」
束はそういうと一夏を抱き上げ、一夏の顔を胸に埋める。
「む――――――っ!」
「う~ん、いっくんのこの抱き心地久しぶりだよ~。もっと束さんとハグハグしよ!もし望むならアレを後でしてもいいよ。」
「っ////////」
束のある一言に一夏は耳まで顔が赤くなる。
「おやおや、もしかしていっくんあの時の事をまだ鮮明に覚えてるのかな?う~れし~なごはっ!」
「何をやっているんですか姉さん!一夏が窒息しそうなあまり赤面しているではないですか!」
箒がどこからか取り出した木刀で束の頭を叩いた。束は叩かれたところを両手で押さえているため一夏は今解放されている。
「う~、痛いよ箒ちゃん。束さんにおっきいたんこぶができて人面顔ができちゃよ。」
「どこぞのグダグダ王の小さいのみたいに増殖するんじゃないんですか?」
「いや~、流石の束さんもあんなランクオールEになるようなものを増やすなんて嫌だよ。」
ちゃっかり話が通じている二人。もしかして運命を英語に訳した作品が好きなのだろうか。
「それにしても久しぶりだね箒ちゃん。」
「お久しぶりです、姉さん。」
「うんうん、大きくなった箒ちゃんをちゃんと見れて束さん嬉しいよ。とくにおっぱいが!」
「はっ!」
「ごはぁっ!」
箒は目にも止まらぬ速さで束の溝に拳を打ち込む。
「打ち込みますよ、拳を。」
「もう・・・・・・・・・・打ち込んでるじゃん・・・・・・・」
束は腹を抱えて苦しむ。
「箒ちゃん、それ以上したら流石に可哀そうだよ。」
「大丈夫だ一夏、姉さんはたとえ睡眠薬を入れた食事を口にしても大丈夫なはずだ。」
「そ、そうかな?」
なんとなく間違っていることを言っているとは思えないと思った一夏は完全には否定できなかった。
「ところで姉さん一体全体何の用なんですか?」
「おおー、そーだった。実は昨日箒ちゃんが言ってたものができたんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・待ってください姉さん。」
「何かな箒ちゃん?」
箒は息を大きく吸うと叫んだ。
「なんで昨日頼んだことが今日出来上がっているんですか!」
「うお~~~~~~~~~~~。」
束は耳を抑える。
「おかしいでしょ、おかしいでしょ!ISをたった一日で完成させるなんてやはりちびノッブが手伝っているんじゃないんですか!」
「ちっちちー、そんなことないよ箒ちゃん。束さんおステータスはオールEXだよ。束さんに死角はないんだよ。」
「すみませんが姉さん、姉さんには二つE-が二つあります。一つは一般常識です。」
「ちなみにもう一つは?」
「頭の残念さがEXと言う名のE―です。」
「ぐはっ!痛い、その箒ちゃんの本心からの言葉が痛いよ!」
「大丈夫です。姉さんは既にイタイ人種の頂点です。」
「ごはぁっ!ま、まだだよ!ガッツでHPは1残ってる!」
もはやこの茶番劇の収拾がつかない状況はカオスであった。
「ふ、二人共~。現実世界に戻ってきてー。」
「っ!すまない一夏。姉さんの度を超えた異常に我を忘れてしまっていた。」
「度を超えたってひどいよ箒ちゃん!束さん聖杯に取り込まれちゃったよ。」
「さて姉さん、それで私のISはどこに?」
「スルー!まさかのスルーだよ!私が見ない内に箒ちゃんは何かスキルを上げちゃったよ!」
それはきっと固有スキル・仕切り直しである。
「まあ茶番はこれくらいにしてっと。」
束は投影ディスプレイを操作しグランドに現れたニンジンをさらに地上に出した。ニンジンの下には八面体の物体が地上から姿を現した。その上にニンジンが乗っているのは何ともシュールである。
「さあさあご覧あれ!」
ニンジン型の機械が宙を舞い、八面体の側に降りると八面体は展開し、中から赤いISが姿を現した。
「これが箒ちゃん専用IS『紅椿』だよ。説明は初期化と最適化をしながら話すから早く乗って。」
「わ、わかりました。」
箒は束の言葉に従い打鉄から降りると紅椿の方へ搭乗する。
「なんですの、このカオスは・・・・・」
一人取り残されたセシリアは目の前の光景を受け入れるにはまだ精神が追い付いては来なかった。