束は投影ディスプレイのキ-ボードを叩きながら箒に紅椿の説明をする。箒はその話を聞いている。そんな光景に一夏はふとあることを思った。
(そういえば束さんがISを開発してからこうした機会ってないよね。昔みたいになるのは無理でも、仲がいい関係でいたいな~。)
そんなことを思っているとあっという間に箒のISの初期設定と最適化が終わった。
「はい、3分ぽっきりで終わったよ~。早いね~、束さん。カップラーメン並みだよ。」
「姉さん、最近は5分のカップラーメンもありますよ。」
(う~ん、僕だったら三分で両氏の下ごしらえが7割くらいできているかな~。)
一夏は二人の会話を聞いてそう思った。
「それじゃあ箒ちゃん、今度は紅椿の武器に関する説明だよ。武器は今のところその雨月と空烈の二つと、カスタム・ウィングに付いているビット兵器が二つ。ビット兵器は近接攻撃型だよ。」
「待ってください姉さん、今のところとは?」
「それは後々説明するね。それじゃあ箒ちゃん、試運転といこうか。」
「は、はい。」
箒はPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)を使い浮上、カスタム・ウィングのスラスターを吹かし飛行する。
(すごい・・・・・私が思った以上にこの紅椿は動いてくれる・・・・・・これが専用機。)
箒は改めて専用機のすごさを実感する。失しそれと同時に恐怖も抱いていた。
(だが、力を持つということは同時に責任を持つということだ。)
箒はふとセシリアとの試合が終わった後の一夏の言葉を思い出した。
セシリアとの試合が終わった学生寮1025室。セシリアとの試合が終わった一夏はブレスレッド上の待機状態になった白式を見ながら真剣な顔をしていた。
「どうしたんだ、一夏?」
「あ、箒ちゃん。」
真剣な顔をする一夏に箒は話しかける。
「うん・・・・・・・・・・・・ちょっと考えてたんだ。」
「なにをだ?」
「この白式を持つって何なんだろうって。最初は持っててすごいって思ってたんだけど、段々怖くなってきたんだ。」
「怖い?」
「うん。力を持つってことはそれなりの責任を持たないといけなくて、それでこの力をも間違った方向に使わないかって思うと怖いんだ。」
一夏の手は震えていた。一夏は純粋で優しい。故に一夏は力に溺れることに恐怖をしていた。箒はそんな一夏を見て思った。
(私とは違い一夏は力を持つ意味を持とうとする。私は力がれば何でも守れると思っているが・・・・・・・・・・・・・・・・いや、そもそもそう思うこと自体間違っている。千冬さんだっていくら強くてもすべてを守れるわけじゃない。たとえ体は守れても心は守れない。一夏、お前は私と違って本当に強いな。)
箒はそっと一夏の手を握った。
「箒ちゃん・・・・?」
「一夏、もし一夏が道を踏み外しそうになったら私が戻してやる。だから私が道を踏み外そうとした時はお前が戻してくれ。」
「うん・・・・・・うん!」
一夏は箒の手を強く握った。
(あの時の言葉を今ならよくわかる。だから一夏、私はここでもう一度約束しよう。もしお前が道を踏み外そうとしたなら私が引き戻す。)
新たな力を得た箒の決意は束にもわかっていた。
(箒ちゃん、なんだかいっくんのために決意しているみたいだね。うんうん、束さん箒ちゃんのその成長が微笑ましいよ。)
束は箒の成長を心から喜んだ。
「それじゃあ箒ちゃん、試運転もちょうどいい頃合だから武器のテストをしよう!」
「は、はい!」
束は投影ディスプレイのキーボードを叩き空中に浮遊型ミサイルポッドを出す。
「いっくよ~!」
束は箒に向けミサイルを放つ。箒は雨月と空烈をコールすると頭の中に直接武器の特性が伝えられてくる。箒は雨月を振るいレーザーの雨を降らせ粗方ミサイルを破壊すると上昇し、追ってくるミサイルを空烈のエネルギー刃を飛ばし破壊する。
「やるね~。だったらこれはどうかな?」
浮遊ミサイルポッドから追尾型ワイヤーが発射され箒を捕獲しようと迫りくる。箒は空中を舞うように回避しながら雨月と空烈でワイヤーを斬ってゆく。
(上手い・・・・・・・・・・・空にいる限り縛りはないから縦横無尽に動けることをちゃんと頭に入れていますわ。)
セシリアですら感心した。専用機を持って間もない人間ができる芸当ではなかった。
それからしばらく箒の初専用機のテストは続いた。
「どうだった箒ちゃん?」
「ええ、正直専用機には驚かされます。ですがこの力を持つということに責任を持たないといけないのもまた事実です。」
「お~、箒ちゃん成長したね~。束さん嬉しいよ。」
二人がそう話しているとグラウンドに千冬が入って来た。
「アリーナの方が騒がしいと思ったらやはりお前か。」
「やーやーちーちゃん久しぶり。束さんに会えてうれしいでしょ?」
「いや、むしろ早くとっとと去ってほしいと思ている。」
「Σ(゚д゚lll)ガーン!」
「顔文字を使うな。」
「よくわかったねΣ(・□・;)!!」
「どうせお前のことだからそんなことだろうと思ったわ。」
千冬はノーモーションからの出席簿を束に振り下ろす。
「アイター!痛いよちーちゃん!」
「大丈夫だ、問題ない。」
「束さんには問題あるから!」
夫婦漫才のようなことが繰り返される中、一夏はふと折ることに気づいた。
「束さん、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「なにかな、いっくん?」
「箒ちゃんのISって第何世代なんですか?」
「おやっ!いっくんいいところに気づいたね。ふっふ~ん、驚くなかれ、箒ちゃんのISはなんと第四世代なんだよ!」
『なっ!?』
束の言葉にその場にいた一同が驚きを隠せなかった。
「えっと、確か各国でもやっと第三世代のISが開発されたのに束さんはその先を行っているんですよね?」
「そうだよー。それに箒ちゃんのISは展開装甲を使ってるよ。もちろんいっくんのISにも一部展開装甲が使われているから。」
「おー。」
一夏は束の言葉に感心した。自分のISにも箒と同じ技術が使われていることに。
「全くお前は、やりすぎるなとあれほど言っているだろ。」
「えへへ~((ノェ`*)っ)」タシタシ
「褒めていない。」
束は照れるが千冬はバッサリと否定する。
「それじゃあ束さんはここでお暇するね。じゃあね、いっくん、箒ちゃん、ちーちゃ!」
束はそう言うとニンジンマシンに乗り込み、地中に潜っていった。
「なんで今回は地中からなんだろう?」
「さあな。大方ニンジンは地面から生える物だと前に言ったのが理由だろう。」
千冬はこめかみを手で押さえながら呆れていた。
「織斑、篠ノ之、そしてオルコット。さっきあのバカが言った通り篠ノ之のISは現在各国で開発されているISを凌駕している。くれぐれもそのことを公言しないように、いいな?」
『はい。』
「よし、ならば早く戻れ。私はこいつが空けた穴を文字通り埋めないといけないのでな。」
千冬はそういうとアリーナを後にした。