簪との出会いから数日が経った。簪はISの整備に関して詳しいこともあり、一夏と仲良くなっている。箒たちはライバル視しているものの、彼女の技量は素直に認めている。
「で、クラス対抗には間に合いそう、簪ちゃん?」
「う~ん、ギリギリだしバグがあったら問題になるから無理かな。クラスの人にはそのこと言っているから臨時クラス代表の人が出るって。」
「だが、この時期だと鈴と一夏が脅威であることには変わりないだろ。」
昼休みの時間、食堂で一夏、箒、セシリア、鈴、簪の五人は一緒に食事を取っていた。一夏は簪の専用機の完成具合が気になりそれを話題にすると簪は難しいと答え、箒はどの道の話をした。
「確かにそうですわね。代表候補生ならまだしもISを一般の方がめったに触れる機会がありませんわ。その点を見てみれば一夏さんと鈴さんは周りにしてみれば脅威ですわ。」
その言葉に聞き耳を立てていた生徒も首を縦に振った。
「でもさー、そーゆう話聞くとえばってる女性が妙に嫌に感じてこない?」
鈴が唐突に話を持ち出した。
ISが登場してから女性の方が立場が上だと認識する、女尊男卑の社会風習が根付いていた。
「確かにそうですわね。前に街に買い出しに行った時にもそんなことをしているお方を見ましたわ。なんだか被害を受けている男性がかわいそうに見えてきましたわ。」
「実際、それによる冤罪が起きかけた時もあったよね。」
「そうそう!でもその話が解決したのって実は裏話があるんだって!」
簪の言葉に鈴が相槌を打つ。
「鈴ちゃん、裏話って何?」
「ネットで知った情報なんだけど、なんでもその冤罪に遭いかけた人は電車で痴漢御容疑を掛けられたんだって。実際、その人は痴漢をしていなくてその女性の人の金目的の行動なんだって。」
その言葉に周りは「うわないわー。」「サイテー。」との言葉を上げる。
「でね、警察もその言葉を信じかけた時に一人の金髪の外国人っぽい女性が待ったをかけたの。で、痴漢に遭った場合の微細物鑑定を申し出たらしいの。」
微細物鑑定。簡単に説明すると痴漢した人の手についている微細物と痴漢された人が触られた部分についている微細物を照合する鑑定の事。これは有力な証拠であり、皮膚、手袋にも付着する。ある人曰く
“人と人が触れれば必ず痕跡が残る”
そうだ。
「でも女性が一方的に男の人に罪を擦り付けようとして警察もそれに従おうとした時に言ったらしいのよ。
“国を、国民を守る警察官がなんたる愚行を!貴様らは警察官である前に、人として誇りはないのか!ただ一方の意見だけを聞き、周りの声に耳を傾けず守るものを守ろうとしないとは、騎士としての誇りすら感じれん!騎士たるもの、民を守り、国を守るのが義務!なのに守らぬとは貴様らは騎士として失格だ!そして貴様も、たかがISが使える性別であるからと言って貴様自身のIS適正は高いのか?ISが絶対的武器ではないのは一目瞭然!貴様がISを纏おうとも、決して貴様自身が強くなったわけではない!貴様はただ自分の社会的立場を利用しているだけにすぎん!”
って。」
「警察官って騎士なの?」
「一夏さん、確かに騎士は昔国を守る自衛隊の様なものでもありましたが、同時に警察的役割もありました。あながち間違っていませんわ。」
「でね、その人のカリスマ性があってか微細物鑑定をして、結果として虚偽の容疑を掛けようとした女性は逮捕されたってわけ。その人、前科があるらしくて不正な慰謝料とかも出したたらしくて執行猶予期間でもまともに働けなくなってるって話。」
『あー。』
鈴の言葉に一同納得した。鈴ですら知っているということは当然、現実でも話題になっている。そして今の社会、ISの技術発展によってネットワーク社会も幅広く成長。小さな情報緒あっという間に誰でも知れてしまう社会である。そんな情報の社会で現実に影響はどのように働くかは言わずもがなわかる。
「そういえば鈴ちゃん、その人の名前ってわかるの?」
「さあ?でも・・・・何とかペンドラゴンて言ってたらしいわよ。写真とかはないけどね。」
「ペンドラゴン・・・・・・・・・・・・・・・なんだかアーサー王みたい。」
「ほほほ、まさかそれはないでしょう。」
一夏の言葉にセシリアはそう言うが、どこかの屋敷の和室で一人くしゃみをした金髪の騎士王がいたとかいないとか。
そして時は過ぎてクラス対抗戦当日。やり方は総当たり戦である。結果として同率一位の一組と二組、二位は四組、三位は五組、最下位は三組である。
一組 二組 三組 四組 五組
一組 ○ ○ ○
二組 ○ ○ ○
三組 × × × ×
四組 × × ○ ○
五組 × × ○ ×
一組と二組は専用機があるため他のクラスとはアドバンテージがあるので言わずとわかる。しかし他のクラスはそう大差ないのになぜこういう結果なのか?四組の場合は簪のアシストがあって結果を残せた。五組は三組クラス代表のミスによって勝った形である。
そして残り一試合は一組対二組となった。
「やっと戦えるわね、一夏。」
「うん。どっちかが勝ったら本当に一位で、デザートフリーパスをもらえるもんね。」
「ふふん、アタシが勝ってデザートもらうんだから。」
「僕も負けるつもりないから。」
アリーナの空中で白式を纏っている一夏と、中国第三世代型IS甲龍を身に纏っている鈴が対峙していた。
一夏は右手に雪片弐型をコールすると、鈴もそれに対抗するように大型の青龍刀、双天牙月を右手にコールする。
《それでは両者、試合を開始してください。》
試合開始のブザーが鳴り響いた瞬間、鈴はカスタム・ウィングを起動させ、一夏に向け何かを放った。一夏は直感に従い横にスラスターを吹かして回避をする。
「へー、初撃を避けるなんてさすがね。でも・・・・・・・・・いつまで避けていられるかしら?」
鈴はそういうとカスタム・ウィングから攻撃を何度も繰り出す。一夏は低空飛行で回避行動を取る。
「な、なんなのだあれは!?」
モニタールームで見ていた箒は鈴の武装に驚く。そんな箒の疑問にセシリアが答える。
「衝撃砲ですわね。空間自体に圧力をかけ砲身を作り、その圧縮した空気を砲弾として発射する武器ですわ。あれの厄介な点は砲身だけでなく、砲弾すら見えない武器。空間さえあればどんな角度でも放つことは可能ですわ。」
セシリアが説明する中、山田先生の隣でモニターを見ていた千冬が一言言った。
「全く、凰は最初の一手を間違っている。あの時すべきは接近戦だ。」
『えっ!?』
千冬の一言に一度驚いた。
「な、なぜですか織斑先生?凰さんのISの特化武器を考えればあれは有効的な手段であったはずです。」
「それは素人に対してだ。専用機持ちは常に相手の手の内を探ろうとする。実際、織斑はその気になればいつでも接近できた。だがあの時織斑は動く気配は全くなく、むしろ防御の構えを取っていた。どういう意味か分かるか?」
「・・・・・・・・・・・あっ!」
「気づいたかオルコット?」
「はい。鈴さんはあの時近接武装を出していました。一夏さんはそれが自分のIS」よりも力が強いかどうかを見定めることにしていたのだと思われます。」
「その通りだ。そして近接戦闘であれば幾分織斑に隙を作ることができる。カスタム・ウィングから衝撃砲を喰らわせれば織斑の動きを止め、一気にシールドエネルギーを削れた。そして衝撃砲を使う今の方法に問題がある。そもそも何故目で照準を定める必要があるのだ?銃火器ならまだしも、あれは衝撃砲。掠っただけでも脅威な武器なのにな。」
「なんで当たんないのよ!」
鈴は一夏に何度も衝撃砲を放つが一向に当たる気配が無い。
(銃ならともかくあの武器に視線はいらない。それに鈴ちゃんは体ごと向けてれくれるから回避がしやすい。でもこっちが下だと鈴ちゃんに狙われやすい。かと言って下手に上に出たら一時的に停止したところを狙われる・・・・・・・・そうだ!)
一夏は策を思いつき、急停止からの急上昇。鈴に背を向け、鈴より高い位置に来るとスラスターを切り空中を浮遊、PICを活用し宙を舞い、身体をゆっくり横に回転を始める。
(隙ができた!)
鈴はここぞとばかりに衝撃砲を連射する。その瞬間、一夏は右のスラスターを吹かしサイド移動。体全体で弧を描き回避すると鈴に照準を定め、一気に瞬間加速(イグニッション・ブースト)で距離を詰めると同時に雪片弐型の零落白夜を起動し鈴に突きつける。普通の状態であればその程度でシールドエネルギーは0とならない。しかし先ほどまでの衝撃砲の連射によるエネルギーの消費によって今の鈴にはそれが脅威である。
「っ!(やられた!)」
鈴は咄嗟に双天牙月で防ごうとするがそれでもエネルギーの刃が鈴のシールドエネルギーを削り、残り一割となった。一夏は零落白夜を切り、鈴と距離を取る。
(もう衝撃砲を使うだけの余力は残ってないわね。使ったら次は無い。なら近接戦闘に持ち込めば!)
鈴は一夏に一気に近づき双天牙月を叩きつける。一夏は雪片弐型で受け止める仕草を見せるがそうはせず、双天牙月の振りに合わせる形で回転し、そして上段から雪片弐型の重さとスラスターの二つを組み合わせた力の一撃を与えた。
「きゃぁあああああああああああ!」
鈴は一気に地面堕ち、地面に叩きつけられた。土煙が舞い、鈴の状態が確認できない一夏は上空で様子を窺った。
短くも長く思える時間が経った時であった。土煙の中から鈴は瞬間加速を使い一夏に刺し違える形で突っ込む。
(そこまでできる鈴ちゃんはすごいよ。でも・・・・・・・・・これで決めるね。)
一夏は雪片弐型を手放す。雪片弐型を鈴は目で追ってしまう。意識が一夏から離れた瞬間、一夏は雪片弐型を蹴り、鈴に向け飛ばす。普通の飛行をしているのであれば避けられるが瞬間加速はいわばイノシシのようにまっすぐ飛ぶため急には止められず、横にも動けない。
(しまっ!)
鈴は何もできないまま雪片弐型を喰らってしまう。その直後、シールドエネルギーが0になった。
《一年二組代表・凰鈴音選手、シールドエネルギーがエンプシーとなりました。よって勝者、織斑一夏。》
アナウンスと共に歓声が沸いた。
(負けちゃった・・・・・・・・・・・でも、全力でやり合って負けたから嫌な気分じゃないな。)
下から上にいる一夏を見上げる鈴は微笑んでいた。鈴は一夏に近づく。
「一夏、アンタが勝ったんだから何か命令しなさいよ。」
「だったら久しぶりに鈴ちゃんの料理が食べたいな。」
一夏は純粋な笑顔で言った。
「・・・・・・・・・・・・あんたってホント乙女ブレイカーね。」
「ん?」
「何でもない///////」
鈴が赤面してそっぽを向いた直後、アリーナのシールドを破り、何かが入って来た。