「はい、シャルル君。」
「ありがとう、一夏。」
1025号室で一夏はシャルルに点てたお茶を手渡していた。
「んぐ。日本のお茶っておいしいね。紅茶とはまた違った入れ方をするの?」
「日本茶は点てるっていうんだよ。原材料事態は大差ないけど乾燥時間によって味わいが変わるからね。」
「へ~。そういや抹茶ってあるけどあれってどうやって作ってるの?」
「あれはね、乾燥した茶葉を石うすで粉にしているんだよ。」
「石うす?」
「うん。こんなの。」
一夏はパソコンを操作し石うすを見せる。
「へ~、こんなのでできるんだ。」
「うん。これってきな粉を作るときや金を取り出すときなんかにも使えるんだよ。」
「金を取り出すとき?」
「うん。なんでも金が含まれている岩を粉々にして、鉛と一緒に熱して取り出すんだって。」
「でもそれってくっ付かない?鉛と一緒に。」
「溶ける温度が違うから大丈夫なんだって。鉛のほうが融点が金より低いから。」
「へ~。日本人って昔からそんな技術を磨いてきたんだよね?さすがマルコ・ポーロが東方見聞録で書いていた“黄金の国、ジパング”っていうだけはあるね。」
「なにも金だけが日本の芸術じゃないんだよ。日本の芸術には虫を使ったものもあるから。」
「虫?」
シャルルはイマイチ想像できなかった。
「日本の昔の芸術の中には玉虫って鮮やかな色をしている虫がいるんだ。誰が手を加えたわけでもなくて自然とそうなっているんだ。」
一夏はそういうと玉虫の画像を見せる。
「わ~、すっご~い。こんなきれいな虫がいるんだね。」
「うん。海外にもこれを使った芸術はあるんだけどそれを作るのにはすごく多くのタマムシを構えないといけないんだ。」
「そっか。結構手が凝っているんだね。」
「うん。」
シャルルは日本の芸術に感動する。
「ねえ一夏、前々から気になっていたことがあるんだけど聞いていいかな?」
「答えられる範囲だったら聞いてあげるよ。」
「日本の浮世絵ってあるよね。あれってどうやって描いているの?それと何であれ途切れているの?」
「うん。まず前者はちょっと違うね。あれは版画って言って色によって木が彫られているんだ。」
「彫られてる?」
「そうだよ。部分部分によって色が違うんだけどそこは元の絵があるから大丈夫。で、一枚の紙に複数の色が割り当てられた版画のを塗って、それを一枚の紙にするんだよ。最初は白い紙に一色だけの変なのだけど重ねるごとに絵が出来上がっていくんだよ。」
「お~、日本ってすごいね。で、もう一つの方は?」
「それは昔の人がチリ紙に使っちゃったんだよ。」
「ええ、もったいない!」
「あはは、それは仕方ないんぢょ。昔はそれほど価値がなかったからね。ゴッホだって死後にその価値が出たでしょ?それと同じだよ。」
「なるほど。」
一夏のわかりやすい説明にシャルルは納得する。
「じゃあ遅いからもう寝よっか。」
「うん。おやすみ、シャルル君。」
一夏はそういうとベッドで横になる。
「本当に一夏は優しいね。」
シャルロットは微笑む。
「騙すのは・・・・・・・辛いよ。」
一夏はその言葉を黙ってただ聞いていた。
翌日の学校はある話題で盛り上がっていた。
「なんなんだろうね?」
「さあ?」
一夏の問いにシャルルは首をかしげる。
一方その頃、廊下でセシリアと鈴はその噂を積極的に聞いていた。
「その話、本当ですの!」
「嘘じゃないでしょうね!」
「本当だって。実際私たち聞いちゃったし!」
そんな話が聞こえる中、箒は机に座りながら思っていた。
(どうしてこうなった・・・・・・・・・・)
箒はただ個人的にデートを頼んだがそれがどう転んだのか“トーナメントで優勝したら一夏とデートができる”というジンクスになっていた。もちろん一夏はそんなことを知らない。しかし、今更弁明しようにも元の人が誰かわからないので出来るものも出来ない。
(くっ、かくなる上は私とラウラがトーナメントで優勝する他ない!)
箒は一人そう意気込んだ。その意気込みのあまり幻影か、炎が浮き出していた。周りの生徒は一旦距離を取った。
「みんなおはよ~。」
そんな時に一夏が教室に入ってきた。
「今日はここまでにしよっか。」
「う・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・そう・・・・・・・・・・・だね。」
放課後のアリーナで平然と立っている一夏に対しシャルルは太ももに手を付き、肩で息をしていた。
「一夏って・・・・・・・・・・・・体力あるね・・・・・・・」
「そうかな?三日やって一日休むペースで走っているから体力があるのかも。」
かわいい姿なのに中身が化け物じみているとシャルルは思った。実力面でも、体力面でも。
「それじゃあ戻ろっか。」
「うん・・・・・・・」
ちなみにシャルルの“体力あるね”のフレーズでまたネームが3本出来上がったそうだ。
一夏が更衣室で制服に着替え終わると、更衣室の扉越しに山田先生の声が聞こえた来た。
「織斑君、デュノア君。今入っても大丈夫ですか?」
「は~い、僕はいいですよ~。」
「僕も大丈夫です。」
二人の了承を得て、山田先生は更衣室に入る。
「失礼しま~す。えっとですね、まず最初に二人に報告があります。今男子用に大浴場を作っているので来月には完成するので楽しみにしていてください。」
「わかりました。よかったね、シャルル君。」
「う、うん。」
「それと織斑君には私と一緒に来てください。」
「ん?僕何か悪いことしましたか?」
「いえいえ、そうではなくて織斑君が専用機を持つ上で必要な書類に名前を書いてもらうんです。」
「わかりました。シャルル君、悪いんだけど先にシャワーに入ってて。」
「うん。」
「ふ~、結構数があったよ。」
頭からは湯気が吹き出そうなくらい疲れている一夏。厚さは辞書の半分とはいえ何度も自分の名前を書く作業を続けていると流石にナイーブになる。
「ただいま~。て、シャルル君まだシャワーか。あっ!そういやボディーソープ切れているんだった。」
一夏は棚の中からボディーソープを取り出し浴室に入る。
「シャルル君、替えのボディー・・・・・・え?」
「へ?い、いち・・・・・・・・・・か?」
一夏の目の前にいたのは胸に膨らみがあるシャルルの姿であった。