「と言うわけで一年一組のクラス代表は織斑君になりました。あ~、いい感じですね~。」
翌日、朝のSHRで山田先生がそう言うとクラス一同拍手をする。
(まあ、そうなるよね。)
一夏は自分が勝利したことによる結果を受け止めていた。
「織斑、せっかくの機会だ。クラス代表としての意気込みを述べてみろ。」
「はい、織斑先生。」
一夏は席を立つとスタスタと教卓へ移動するが背が足りず、頭の先がちょこんと出ているほどしか皆には見えていなかった。
「これを使え、織斑。」
千冬はそう言うと椅子を差し出した。一夏は椅子の上に乗り一同の方を向く。
「あっと、何分不甲斐ない点もありますが皆さんの期待に応えられるように頑張りますのでよろしくお願いします。」
一夏はお辞儀をするとニコッと笑顔を見せる。
「グハッ!」
「っ!」
一夏はビクンと反応する。クラスのほとんどが鼻血を出しては無理もなかった。
「ど、どうしたの・・・・・・・・・みんな?」
「何でもないぞ一夏。この歳の子にはよくあることだ。」
千冬が一夏を安心させる中山田先生は思った。
(あ、今織斑先生、織斑君を一夏君って言った。公私混同しない人でもミスをすることあるんですね。)
そんな感じで朝のSHRは終わった。
今日は午後からISの実習授業があり、その模範として一夏とセシリアが一同の前に出ていた。
「これより専用機持ちによる実習を行う。各自二人に実習を見た後にレポートを提出するように。」
千冬はただ見学させるのではなく後々役立つようにレポート提出を要求した。
「では二人とも、ISを展開しろ。」
(え~と、イメージしたらできるんだからあれでいいよね。白っぽいし。)
一夏は笑う騎士が使う銀の狼の鎧を身に纏う感じで白式を展開する。白い槍騎士の人はあまり主役側に立たないことがあるためイメージ枠には入らない。だが一夏は黄金の狼の騎士さんのような強さに憧れています。
「まずまずと言ったところだな。」
身内とはいえ甘やかさない千冬であった。
「では飛べ。」
(今度はあれをイメージしよう。)
一夏は自分の背中に大きな翼があることを想定し、それを羽ばたかせるイメージで上昇する。
「一夏さん、飛行がお上手ですわね。」
「うん。羽を羽ばたかせるイメージでやってみたら上手くいったよ。」
(ああ、白い羽を羽ばたかせる一夏さんままさしく天使!そんな姿の一夏さんもいいですが逆に黒い羽の堕天使の一夏さんも捨てがたい。更に小悪魔的な羽根の一夏さんも・・・・・)
妄想が止まらないセシリア。因みに一夏がこのイメージについて言ったらそれをネームに腐女子連合軍がたくさん発行したとかしないとか。
そんな時に通信越しに千冬の指示が来る。
《よし、ではそこから急降下し急停止をしろ。目標は地上から10cmだ。》
「では一夏さん、お先に。」
セシリアはそういうと千冬の方へと急降下、そして足裏のバーニアを吹かし急停止する。
「うまいな~、セシリアちゃん。じゃあ僕も!」
一夏は羽を閉じ急降下するイメージで地面にまっすぐ降りる。そして直感で制止しようと自身をワイヤーで引っ張られるイメージで制止する。
「11cm・・・・・・・・・・・まずまずと言ったところか。初心者としてはよくやったというところだな。」
千冬は一夏を褒める。
「一応言っておくが、急降下からの急停止は経験がものをいう。一瞬でも判断を誤れば最悪地面位突っ込む結果となる。これが人命救助などの状況ではなおさらだ。ISは競技用として名が通っているが実質的な武器にもなる。が、使いようになっては人命救助の手段ともいえることを頭に残しておけ。」
『はい!』
千冬の言葉に一同返事をする。
「では次に武器を展開してもらう。織斑、まずはお前からだ。」
「はい。」
一夏は黒肌白髪の弓兵が武器を投影するイメージで雪片弐型を展開する。
「よし、イメージはできているようだ。一応聞くがどんなイメージだ?」
「えっと、赤い弓兵さんの投影をイメージしました。」
「理由は?」
「武器を巧みに扱うのと家事スキルがあることです(キリ)」
「成程(今のキリッとした表情の一夏もいいな。く、小型カメラを持ってくればよかった。)」
教師としての表情とは裏腹に内心はブラコンである。
「ではオルコット、武装を展開しろ。」
「はい。」
セシリアは右手を横に突き出しスターライトmkⅢを展開する。
「代表候補生としても上出来だな。だがそのポーズを直せ。」
「ですが織斑先生、これはわたくしのイメージを・・・・」
「織斑を見ても言えることか?」
「え?」
セシリアは一夏の方を向くとそこには雪片弐型をセシリアへ突きつけている一夏の姿があった。
「ごめん、なんか条件反射で。」
「この様に武器を故意ではないといえ突きつけられるとあらぬ誤解を生み、自身に武器が向けられることがある。イメージしやすいポーズがあることも大事だがそこのところも注意しろ。」
『はい。』
「よし。ではオルコット、近接武装を展開しろ。」
「は、はい!」
セシリアは近接戦闘用の武器を展開しようとするがなかなか現れない。
「・・・・・・・・・・・・まだか?」
「い、いえ・・・・・・・・ああ、もう!インターセプター!」
初心者がよくやる手段でセシリアはショートブレードを展開する。
「お前は射撃武器を使うばかりで近接戦闘の武器は全く使わないのだな。それでは至近距離に来られた時にまんまと敵に落とされてしまうぞ。」
「そ、その前に倒してみせますわ!」
「織斑にやられたものが言う口か?」
「うぐっ!」
セシリアは痛い所を突かれる。
「いくらどんなに強い射撃武器があっても至近距離にまでこられれば意味が無い。またその逆も然りだ。結局のところ武器を使う人間に問題がある。武器の特性を理解し、欠点を把握し、そしてその武器を自身が最大限活かせるように心掛けろ。」
『はい!』
その時丁度チャイムが鳴った。
「では今日の授業を終了する。来週の月曜までにレポートを山田先生に提出するように。専用機持ちも自分の改善すべき点や互いの使い方で気づいたところをレポートに纏める様に。」
千冬はそう言うとスタスタと教室の方へと戻って行った。
「大丈夫、セシリアちゃん?」
「うう・・・・・・・・・・・・突かれるところがたくさんありましたわ。」
「僕はセシリアちゃんより武器が極端に少ないからね。使用するときの使い分けとかも大変だよね?」
「ええ。特にわたくしが使うBT兵器は思考をよく使うので射撃と併用して使えませんわ。」
「だったらさ、いい方法があるんだけど・・・・・・・・一緒にやってみる?」
(い、一緒に!つまりそれは一夏さんと二人っきりになれる時間を設けられるということですわ!でしたらこのセシリア・オルコット、この機を逃すわけにはいきませんわ!)
「えっと・・・・・・・・・どうかな?」
一夏は不安な声で尋ねる。
「も、もちろんよろしくお願いしますわ!」
放課後になると一夏は運動しやすいジャージ姿でセシリアと一緒にトレーニングルームにいた。一夏は椅子に座りながら問題をセシリアに言い、セシリアはそれをランニングマシンで走りながら答える。
「じゃあ2の5乗は?」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・さんじゅう・・・・・・・・・・・・・・に・・・・」
「正解。ラスト一問。油断大敵はことわざ?それとも四字熟語?」
「こ、ことわざ・・・・」
「はい間違い。正確には四字熟語。はいそこまで。」
セシリアはクールダウンしながら一夏に話しかける。
「一夏さん、疑うのはよろしくないとはわかっていますがこれに何の意味が?」
セシリアの問いに一夏は答える。
「セシリアちゃんはBT兵器を使うときどうしても射撃が止まってしまうよね?それは撃つよりも操る方に傾いているからだよ。」
「それが普通ではなくて?」
「じゃあ聞くけど手紙を書きながら他の人と話すことはできる?」
「できますわ・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!」
「気づいたようだね。これはほんと身近なことなんだけど人間は同時並行ができるんだ。けどそのほとんどは無意識。戦いながら相手の弱点を探ることだって僕もあの時出来た。セシリアちゃんも考えてたでしょ?」
「ええ。」
「じゃあそれがBT兵器を使うときはできないか?答えはNOだよ。つまり考えながら動くことは人間出来るんだよ。この訓練は考えながら運動する。慣れればさっきの問題の倍は答えられるよ。でもその分体力を使うからね。無理しないように規定の問題数を答えてもらったんだけど。」
「成程。この訓練にはそんな狙いが。」
「じゃあ次は僕の番だね。」
一夏はそういうとセシリアに問題が書かれた紙を渡す。
「一夏さんもしますの?」
「うん。僕にもこれは必要だからね。」
一夏はそう言いながらセシリアと交代する。
一方その頃箒は人気のない屋上である人に電話を掛けていた。
『はろ~!みんなのアイドルの束さんだよ~!』
「お久しぶりです、姉さん。」
『おお、箒ちゃん。お久しぶりだね~。でも姉さん何て堅いよ~。で?今日はなんで電話をしたのかな?』
「身勝手なことを承知でお願いしたいことがあります。私にも、専用機をください!私は一夏の隣に立ちたいんです!」
電話越しで箒は頭を下げる。束もそのことを分かっているような表情を電話越しに察した。
『うんうん、ただ力が欲しいなんて邪な心じゃなくて純粋にいっ君の隣に立ちたい箒ちゃんの心、ちゃんと束さんの心に響いたよ。実は誕生日に渡そうと思ってた箒ちゃん専用のISを今作ってるんだよね~。』
「わ、私専用のISを?」
『そう。白と並び立つIS.その名も『紅椿(あかつばき)』!』
「紅椿・・・・」
『うん!そんでもってこの紅椿を作った労を労ってもらうためにいっ君を“姉妹丼”しよ!』
「?」
話の中にさらっとトンでもないことを言う束。しかし創った方面の知識に疎いと言う箒にはその言葉の意味が分からなかった。
『じゃあ近い内に渡すから待っててね~。』
束はそういうと電話を切った。
「姉妹丼・・・・・・・・・・・料理か何かか?」
この時ほど箒の性への知識が疎かったのに感謝するときはないだろう。