昼休みになり、一夏は約束通り食堂に向かっていた。頭にたくさんのたんこぶを作ったセシリアと箒と一緒に。
「二人とも、大丈夫?」
「ああ・・・・」
「気遣ってくれてありがとうございます、一夏さん。」
二人は口ではそういうが結構なダメージを受けていた。理由は単純、千冬の出席簿である。
授業中、二人は一夏と鈴の関係が気になって授業に集中できていなかった。そのため千冬からの質問に受け答えできず、その度に出席簿の餌食となっていた。すれ違う生徒の一部は不思議思いながらに横目で見て、事情を知っている生徒は憐みの視線を送った。
「一夏ー、こっちよー。」
食堂入り口付近で鈴は待っていた。
「あ、鈴ちゃーん。」
一夏は鈴に手を振る。一夏たちは鈴に近づく。
「さすがに券売機前で待たないんだね。」
「当たり前よ。転校早々目を付けられたんじゃたまったもんじゃないわ。」
「昔迷惑かけたもんねー。」
一夏はふと中学時代の頃を顧みる。
中学生の頃の鈴は一夏と待ち合わせの為にわざわざ券売機の前でスタンバってた。が、それによって他の生徒に迷惑が掛かったことから先生直々の指導を受けた。それ以降、鈴は迷惑になる行為はしないように心掛けている。
「じゃあ早く食券買いましょ。アタシはラーメンだけど。」
「じゃあ僕は何にしよーかなー。」
二人は仲よく話しながら券売機の方へと歩く。その光景を二人は羨ましそうに見ていた。
「ところで鈴ちゃん、おじさんとおばさん元気?」
「ええ、元気よ。あんたのおかげでもあるけどね。それよりアンタなにIS動かしちゃってんのよ。」
「いや~、藍越学園を受験しようとしたんだけどなんでか迷ってねー。」
一夏はそう言いながら外を眺める。
「なんで外見てるのよ?」
「ちょっと・・・・・・・・・・ね。」
二人がそう話していると箒がわざとらしく咳払いをする。
「あー、ごほんごほん。一夏、そろそろその人との関係を教えてくれないか?」
「そうですわね。わたくしたちだけ置いてけぼりなのはいささか・・・・」
「あ、ごめんね二人とも。この子は凰鈴音ちゃん。箒の次の幼馴染だよ。」
「どういうことだ?」
一夏の言っている意味が分からない箒。
「えっとね、箒ちゃんが小学四年生の時に転校しちゃったでしょ。そのすぐ後に鈴ちゃんが転校してきて、中学卒業と同時に中国に帰ったってわけ。」
「そうか。凰、篠ノ之箒だ。よろしく頼む。」
「ええ、こちらこそよろしく。鈴って呼んでいいから。」
「ならばこちらも箒で構わん。」
二人は握手をする。が、心なしか手の血管が浮き出ていた。
(お前も一夏が好きなのだろうが、私は負けるつもりはない!)
(こっちだって同じよ!)
アイコンタクトでライバル宣言をする二人。その気迫にセシリアは押されていた。
(なんですの、この二人から発せられる異常なまでの気迫は!これはこのセシリア・オルコット、ここで負けてはいけない気がしますわ!)
セシリアはそう自分に言い聞かせ会話に入る。
「んんっ!わたくしもよろしいでしょうか?」
「いいわよ。で、アンタは・・・・」
「わたくしはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ。」
「へー、アタシと同じ代表候補生なんだ。よろしくね。」
セシリアとも鈴は握手する。
「そういえば先ほど一夏さんのおかげと言っておりましたがあれは・・・・・・」
「ああ、アレ?アレねー。実はうちの親ちょっと離婚になりかけたんだよね。そんな時に一夏がアタシの両親を説得してくれたの。どんな内容かは知らないけど一夏には感謝してるわ。」
「そうなんですの。」
鈴の話にセシリアは感動する。
「そういえばさ、鈴ちゃん。あの返事なんだけど・・・・」
「っ!(こ、ここで言うのね一夏!正直別れ際に言っちゃったからどんな返事が来るか不安だけどどんな答えでも受け入れ・・・・・・・・・・・ごめん、やっぱOKが欲しいわ)」
「えっとね、養えるくらいになるまで返事を待ってくれないかな?」
「・・・・・・・・・・・・・へ?」
「いや、あのね、千冬お姉ちゃん見ているからこんな返事なんだけど・・・・・」
「あー、な~るほど~。」
鈴は何となく察した。
「じゃあ待っててあげるわ。でもね、アタシも気長に待つつもりないから覚悟しなさいよ。」
鈴はにやけながらそう言った。そんな二人に箒が話しかける。
「あー、すまない二人共。鈴は一夏に何を言ったんだ?」
「え、えーっと・・・・」
一夏が鈴に視線を送る。
「はー、いいわよ。」
「うん。えっとね、空港で別れ際に【私の料理の腕が上がったら毎日酢豚食べてくれる】って。」
「ちょ、ちょっと――――――――――――――っ!なになに内容話してんのよ―――――――!」
『えぇええええええええええ!!』
『きゃぁあああああああああああああ!』
食堂に奇声が響き渡る。
「あーもう、恥ずかしいじゃない!別の意味で目を付けられるわよ!」
「だ、大丈夫だよ鈴ちゃん。僕も同じ立場だから。」
マイペースな一夏とは裏腹に鈴は耳まで顔を赤くする。
(も~~~~~~~~~~~っ!なんで告白の内容言っちゃうのよ!でもこうなったらこの学園にいる間に一夏を私の手中にして見せるわ!)
赤面しながらも決意を固める鈴。箒もまた決意を固める。
(くっ!鈴も同じように告白ていたのか。しかし私とてそれは譲れん!私が一夏をものにして見せる!)
そんな中セシリアはというと―――
「・・・・・・・・・」
石像と化していた。