読み方は、同じ『あお』です。
それに伴い、本編の中で変更されていない部分があるかもしれません。もし、見つけられた方は教えてくれるとありがたいです。
それでは、本編へどうぞ。
青い空。
その中で輝く太陽が、休日開放されている演習場を照らした。
演習場には、その太陽によってできた大きな影が一、二、三、四…………全部で約十五。
その影の正体は――
その中でも汎用機竜と呼ばれるもので、三種全てがその場には存在していた。
それぞれ、蒼、橙、翠色。
順に、
飛翔型汎用機竜《ワイバーン》
陸戦型汎用機竜《ワイアーム》
特装型汎用機竜《ドレイク》
の三種。
屋根がなく、普段は解放的であるその演習場から見える空は、《ワイバーン》によって、機械的な蒼色に染め上げられていた。
そして地上には、陸戦特化の《ワイアーム》。
さらに、その二種の後方を固めるように索敵、迷彩、補助などに特化した《ドレイク》が陣取っている。
「流石は『
そんな演習場の中。
しかし、機竜には乗っていない生徒二名が演習場――の観客席に腰を下ろしていた。
「三種それぞれの特徴に合った、見事な戦闘配置です」
「そうね。でも、当然だわ。今まで『騎士団』として、
銀色と水色。
それぞれ異なる髪色をした二人は、これまた異なる感情をのせた視線を交わす。
銀色――アイリは、先ほどの発言に対する訝しげな視線を、そして水色――クルルシファーは、相手をからかうような少しの挑発をのせた視線を。
「……なんですか。最近、ユウキ兄さんとありもしない噂が立っているクルルシファー・エインフォルクさん。いえ、ここでは――ユミル教国からの留学生様、とお呼びした方がよろしかったでしょうか?」
お返しのような物言いにクルルシファーは、フッと笑い声を零す。
「あなたはルクス君より冷静なのね。……いや、正確には『ユウキ君に関わる話』以外の時、かしら」
「……うるさいです」
「ふふっ、可愛いわね」とさらに笑うクルルシファーに、アイリはジト目を向け、リスのように頬を膨らませた。その様子がおかしくて、またクルルシファーは笑う。
やがて、諦めたようにアイリが、
「はぁ。……クルルシファーさんは、行かなくていいんですか?」
演習場の中に視線を戻しながら、質問した。
当然の疑問だった。
先ほどからアイリのことをからかっているが、この妖精のような少女は時折興味深げに演習場に目を向けていた。そしてまだ始まらないとわかると、再びアイリに目を戻す。
そんな彼女は、明らかに『ユウキとルクスの戦いに多大な興味』を示している。
なのに、演習場の中で自分の機竜に乗っているわけではない。戦いに興味があるなら、自分で戦った方がよりその実力がわかるはずなのに、だ。
「当然の疑問ね。でもね、妹さん?――行くも行かないも、私はユミル教国からの命で『授業以外で戦いに赴いてはいけない』のよ」
――なるほど、そういうことでしたか。
アイリは自分の中にあった疑問を解決できて少しスッキリ。そして、
「……その、妹さんって呼び方やめてください」
さっきから横で微笑んでいるクルルシファーに、わずかな反撃をするのだった。
「わかったわ、アイリちゃん。――それで、どう思う?」
あまりにも唐突な問い。
そんな問いだったが、アイリは正確にその意図を汲み取っていた。彼女が聞きたいのは『ユウキとルクスが勝てるかどうか』ではなく、『どう戦うか』だ。
……まるで、兄さん達の実力は
しかし、アイリのそんな問いへの答えはもう決まっていた。
「見てたらわかりますよ。……ですが、ただ一つ言えるとしたらそれは――あの二人が組んだら絶対に負けない、ということですかね」
驚いたように少し目を見開くクルルシファーから、アイリは再び演習場に目を向ける。
すると、そこには今来たであろう自分の兄と想い人の姿。
その光景に、アイリはただただ嬉しかった。まるで、昔一緒に訓練していたのを近くで見ていた頃に戻れたようで――。
(……楽しそうですね。兄さん達)
思わず自分の頬が緩むのを感じる。
久しぶりに兄達二人が一緒に機竜で舞う様を見られるのだ。
ふと、こちらに背を向けて立つ兄達と小さい頃の兄達が重なって見えた。
それは、昔の記憶。
かつて、まだ二つの王国が消える前の記憶。
そして――アイリの心の中で一番楽しかったと思えた頃の記憶。
聞き慣れた機竜の起動音が聞こえてくる。
そろそろ試合が始まるという合図だ。
アイリは起動時の機竜の光に包まれる兄達を再び見据えた。
――その瞳をにわかに潤ませながら。
*****
数刻前。
演習場の控え室。
そこには、この学園に二人しか存在しない男子の姿があった。
「……なぁ、ルクス。これって、完全に俺らの意思無視してるよな」
「……奇遇だね。僕も全く同じこと考えてたよ」
……何故かテンション低めな、その姿が。
「でもまあ仕方ないか」
「……そうだね」
少しだけ顔色がマシになった二人は、それぞれ自分の
蒼色の剣ではなく、自分の神装機竜の機攻殻剣に。
「ユウキ。……本当にごめん」
唐突にルクスはそう言う。
そんなルクスにユウキは首を傾げようとして――やめた。
……まだ自分のせいだと思ってんのかね。
唐突な謝罪ではあったが、ユウキからすればさほど不思議なことではなかった。ルクスはクーデター時のユウキに関わること、すべてを自分のせいだと思っている。だが、ユウキはそんなことちょっとも思ったことはない。全てはあの男のせい――。
――いや、いまはこんなこと考えてる時じゃなかったな。
ユウキは、剣に視線を落としたまま謝ってくるルクスの頭に――自分の機攻殻剣をそっと置いた。
「痛ぁ――じゃなくて、重っ!?」
「おおー、的を射たリアクションだな。流石ルクス」
「あ、ありがとう――じゃなくて!」
ルクスは自分の気持ちも知らないユウキに再び声を上げようとして、しかしそうすることができなかった。
――優しげなユウキの笑顔をその瞳に捉えたから。
「……な、何?」
「いや、まだ自分の責任だとか思っているお前に怒ろうと思ったんだけどさ。なんか今から試合するのが楽しみで、怒る気になれなかったんだよ」
返ってきたのは、本当に楽しげな笑い声と共に発された、そんな言葉だった。
「これからやるのは、まぁ『騎士団』に入るために勝手に決められた試合だ。でもそれが楽しみなのは、またお前と飛べるからだよ」
「――っ!」
遠い目をするユウキが今見ているのは、何だろうか。いや、おそらくルクスはわかっている。
……自分も同じだから。
「昔みたいに……いや、昔より強く、そして五年経ってまた強くなってるだろうお前と飛ぶのが楽しみだ。だからまあ――期待してるぞ?」
――まったく、普段もこのくらいカッコよければいいのに。
小さな不安を胸の内に隠し、ルクスは笑う。
「ふふっ、こっちのセリフだよ。足、引っ張ったら許さないからね」
「おー、言うようになったな――」
そんな軽口を叩きながら、二人は同時に立ち上がり、機攻殻剣を腰に差した。蒼い方は横に、神装機竜の機攻殻剣は後ろに。
「じゃあ、行くか」
「うん」
目指すは『騎士団』団員が待っている演習場。
先ほど集まっていた人数だけでも、約十〜二十人。
そんな数を相手に負けない何てできるのだろうか。
ルクスはそこまで考えて、フッと笑った。
……考えても仕方ないね。でもきっと、大丈夫。
――僕の横には、頼りになる親友がいるんだから。
「何だよ、いきなり笑って。気持ち悪いなー」
「気持ち悪い!?何だよもう!締まらないなぁ!」
*****
「さっ、やって来ました演習場!」
「ルクス、誰に言ってるんだ?」
ところ変わって演習場。
到着早々バカやったバカは無視して、「何でノッてこないの!?」……ユウキは演習場内を見渡した。
「早く始めるぞ!二人共、機竜に乗れ!」
「わかったって」
「はぁ。……わかってますよ」
朱の神装機竜《ティアマト》に身を包み、やけにやる気に満ちたリーシャに促され、ユウキとルクスは詠唱を始める。
「「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が剣に従い飛翔せよ、《ワイバーン》」」
光が発せられ、その光が消えた頃には二人は蒼色の機竜に身を包んでいた。
「……ほう?ルクスの機竜は一度見たが、ユウキの《ワイバーン》はなんかかっこいいな」
リーシャはユウキの纏う機竜を見て、そんな感想を言った。
ルクスの《ワイバーン》は基本の期待に加えて、装甲強化パーツばかりをくっつけ、装甲を厚くし重量を上げているので、通常の《ワイバーン》より大きい。
それに対して、ユウキの《ワイバーン》は、装甲を強化パーツを付けているところは同じなのに、通常の《ワイバーン》とサイズが同じ。
リーシャは機竜を見ただけで、それを読み取ったのだ。
「リーシャ……わかってるな。――あっ、そうか。レリィさんの言ってたのは、リーシャのことだったのか」
『この学園には整備も開発も完璧にできる生徒なんて、一人くらいしかいない』。
レリィは確かにそう言っていた。ならば、それはリーシャのことだろう。
リーシャの発言でユウキはそれがリーシャのことだと確信した。
「ああ!装甲機竜は機能性が一番、その次に格好良さが重要だからな!その点を見れば、ルクスの《ワイバーン》より遥かに――というか私はこの《ワイバーン》気に入ったぞ!」
「だよな!かっこいいよな!ちょっとこだわったんだけど、わかってくれる奴いなくてさ。リーシャ、サンキュー!」
「これの格好良さがわからんとは、ダメだな!おっ、そうだ。今度私の開発した機竜見るか?」
「いいのか!?よっし!」
何故か盛り上がる今は敵と味方の男女。
ルクス及び他の『騎士団』団員は、口を開けたまま固まってしまった。
「リーシャの《ティアマト》だっけ?その機竜もかっこいいな!」
「そうだろ?機能性にも溢れてて、見た目もいいんだよ!」
「おう、だよな!」
「
「そうなのか?見てみたい!」
……。
…………。
しばらくして、
「ユウキ!リーシャ様!」
「ん?何だよ、ルクス。今、リーシャと機竜の改造について話してるんだから、邪魔すんなよ」
「そうだぞ、ルクス。こんなに話のわかる奴は初めてだからな!今はすまんが、邪魔しないでくれ」
「邪魔!?いや、二人とも忘れてるよ!試合!『騎士団』入団のための試合!」
ルクスの叫び。
地面だけ見るとムンクの叫び――失礼。
それを聞いたユウキとリーシャは、ポカーンと固まった後。
「「――あ!?忘れてた!?」」
大丈夫かな?この二人……。
ルクスはこれからの学園生活に大きな不安を抱くのだった。
*****
「では、ルールの確認をするぞ?ルールは簡単だ。まずは試合をする。そして『騎士団』団員が試合の後、多数決をする。これで終わりだ。まあ、もう入団は決まったようなものだろ?」
「いやいや、リーシャ様!人数差!忘れたらダメですよ!」
「何だよ、ルクス。二対十五だろ?――勝とうぜ」
自信満々のユウキにルクスは、はぁ、と一つため息を吐き、小さく頷いた。
「始めるぞ?学園長、試合開始の合図を頼む!」
『はーい、じゃあいくわよ?試合――』
「ちょ!ちょい待ち!」
『――開始』と続けようとしたレリィと、臨戦態勢に入っていたルクス、リーシャ、『騎士団』団員が一斉に不満そうな視線をユウキに向ける。まさに視線の針の筵だ。
「うっ……い、いや!止めたのは謝るけど、何でレリィさんがいるんですか!?」
『あら?私がいたら悪い?こんな楽しそ――重要な案件に学園長である私が関わらないわけないじゃない』
「いま、楽しそうっていいましたよね!?異議!異議を申し立てる!」
ユウキが声を上げて、抗議の声をあげるが――。
『却下よ』
「即答!?聞くだけ聞いて!」
「ユウキ、聞いてもらうだけでいいの!?」
「……ユウキ、諦めてくれ。あの人はああいう人だ」
「リーシャ……わかった、諦めるよ。レリィさんお願いします」
『ちょ、ちょっとユウキくん?いまのは聞き捨てならな――「「「早く!」」」……わかったわよ』
全員のツッコミをうけたレリィ。
ちゃっかり、今のツッコミにはクルルシファーとアイリも加わっていた。
まあそれはそうだろう。観客席の二人は試合を楽しみにしていたのに、なかなか始まらなかったのだから。
『じゃあ、行くわよ――』
若干投げやりなレリィの声で、演習場内が緊張感に包まれる。観客席以外、全員が臨戦態勢だ。ユウキも主力武装である大型ブレードを右手に持ち、構える。
『――試合開始』
開始の合図と共に、
「全員、撃てーー!」
リーシャの掛け声、そして、
ズドドドドォ――――。
《ティアマト》の専用武装である大砲の
――戦闘開始。
第八話でした。
どうだったでしょうか?
今回は戦闘開始まで、次の話はほとんど試合の話になると思います。作者の苦手な戦闘模写……なるべく分かりやすく書くつもりですが、分かりにくかったらすみません。
読んで頂きありがとうございました!
感想、評価よろしくお願いします!
それでは、また次回。