「そういえば雪菜、その髪飾りってーー」
「え?あっ……変…ですか?」
「いや、全然。似合ってるよ。さっきの荷物に入ってなかったと思ってな」
「
「へえ…仲が良かったんだな」
「そうですね。本当の姉のように思ってました」
「姉か…ちょっと会ってみたいかもな」
「…先輩は会わないほうがいいかもしれません」
「なんで?」
「……たぶん、命を狙われる事になると思うので」
その時の雪菜の言葉はやけに重みがあった
午後10時。パーティの開始時間に近付き、大勢の招待客が船の中へ乗り込んでいた
「
「そう…ですね。名前とは違って豪華ですけど…」
「…にしても、ニュースで見る顔の人がぞろぞろと…俺達だけ浮いてるなこりゃ」
「いえ、第一真祖の使者がこの島を訪れて、真っ先に挨拶すべき相手はこの地を支配する第四真祖です。先輩がこのパーティーのメインゲストになるんですよ」
「……周りはそんな事知らないだろうがな」
周りのお偉いさんは古城が第四真祖だと知るはずもない。古城達のような若者が歩いても石ころのような存在としか思わないだろう
「で……俺たちを呼びつけた張本人はどこにいるんだ?」
「上ですね。おそらく外のアッパーデッキにいます」
「アッパーデッキ……どっちに行けばいいんだよ…」
広すぎる故に迷う
「こっちです、先輩」
雪菜は古城の手を自ら引いて広間の隅の階段へ向かった
その時雪菜と古城……正確には古城だけを恨めしい目で見ている少女がいた事を2人が気付くことはなかった
階段を上り、船の上甲板にでた
漆黒の海と夜空を背景にして、広大なデッキの隅に立っていたのは1人の男だった。純白のコートをまとった美しい青年
金髪を揺らして振り返り、
その瞬間、彼の全身が純白の閃光に包まれた
コートの男が放った光の正体は、光り輝く炎の蛇。灼熱をまとった吸血鬼の眷獣だった
咄嗟に反応した古城は左腕を前にだし、自身の眷獣を呼んだ
「……っ‼︎
だが古城達の前に出てきたのは黄金色の獅子ではなく黄金色の盾だった
蛇と盾がぶつかる瞬間、盾から雷が発生し、蛇の眷獣を打ち消した
「……!」
コートの男はそれを見て驚いていた
「………?」
古城も無言で驚いていた
古城が呼んだのは
「先輩?その目……」
雪菜は気付いた。古城の目の色に
古城の目は黄金色に輝いている
「…?どうなってんだ?いったい…」
古城と雪菜が呆然としているとパチパチと拍手の音が鳴り響いた
「いやいや、お見事。まさかその能力にまで目覚めているとは…」
そう言った男は古城の前で片膝を突き、恭しい貴族の礼をとった
「
あまりに見事な彼の口上に古城は少し驚いた
突然攻撃してきたと思ったらこの態度、誰でもこの豹変ぶりは驚くだろう
「あんたがディミトリエ・ヴァトラーか?」
「初めまして、と言っておこうか、暁古城。いや''
そう言って、ヴァトラーは古城を愛おしげに見つめ、古城を迎え入れんとするかのように大きく両腕を広げた
「……はい?」
雪菜は唖然と、古城は意味がわからないと弱々しい呟きを洩らす
「いやいや、それにしても…普通の人間が第四真祖を喰ったって噂、わざわざ確かめに来たのも無駄じゃなかったわけだ」
「そうかい、それは良かったな」
いきなり攻撃をしてきたにも関わらずこの態度、戦王領域の貴族は中々図太いらしい
「それにさっきの気配は''
「
古城の後半の呟きにヴァトラーは驚きの表情を浮かべた
「なんだ、知らないのかい?眷獣の武器化は第四真祖が吸血鬼最強たる所以だヨ」
「そんな能力が…」
初めて聞く自身の異能
無意識とはいえ、引き出した事を自覚しきれない古城
「制御の難しいアヴローラ・フロレスティーナの5番目の眷獣''
古城の隣にいる雪菜を見ながらヴァトラーが言った
「あんたとアヴローラ……どういう関係なんだ?」
「最初に言っただろう?ボクは彼女を愛しているんだ。永遠の愛を誓ったんだよ」
「俺は男だ。アヴローラでもない」
「だからボクは、彼女の''血''を受け継いだ君に愛を捧げる。彼女に永遠の愛を誓ったボクとしては、当然の行動じゃないか」
「その理屈はおかしい」
古城の真っ当な意見もヴァトラーには通用しない
そして今まで傍観してた雪菜がヴァトラーに話しかけた
「アルデアル公。恐れながらお尋ねします」
「そう言えば君の事を知らなかったね。君は?」
「獅子王機関の剣巫、姫柊雪菜と申します。今宵は第四真祖の監視役、そして
パートナーのところをやけに強調していた。ヴァトラーが古城に愛をーーーーが気に入らないからだろう
「ふゥん……紗矢華
「……え?」
ヴァトラーの言った言葉に雪菜は反応した。
なぜその名を知っているのか
その答えはすぐにやってきた
「雪菜!」
そう言い雪菜に抱きついたのは自分が姉のように慕っている人物、
「さ、紗矢華さん!?」
「久しぶりね、雪菜!元気だった!?」
「は、はい」
「紗矢華嬢、そろそろ本題に入りたいんだけどねェ」
「…!は、はい。申し訳ございません…」
いきなり現れた紗矢華をヴァトラーは止め本題に入ろうとした
「本題ってなんだよ」
古城はうんざりと呟いた。いきなり愛を捧げるなんて言われたのだ、不機嫌にもなる
「ちょっとした根回しってやつだね。この魔族特区が第四真祖の領地だと言うのなら、まずは挨拶しておこうと思ってね。もしかしたら迷惑をかけることになるかもしれないからねェ」
そう言いながらヴァトラーは優雅に指を鳴らす。それを合図に船内から大勢の使用人達が現れた。彼らが運んできた料理は船内のパーティー会場より豪華であった
「迷惑とは、どういうことですか?」
出された料理には目もくれずに雪菜は訊いた。ちなみに古城は料理を味わいながらヴァトラーの話を待っていた
「クリストフ・ガルドシュという名前を知っているかい?古城」
「いや…誰だ?」
首を振る古城にヴァトラーの執事らしき男がワイングラスを手渡してきた。古城はさも当然のようにグラスを受け取り、それをさっそく飲んでいた
「せ、先輩!?」
雪菜は古城に声をあげた。古城はもちろん未成年だ。そんな当たり前のように飲まれたらこっちが困る
「大丈夫だろ。この船の中ならな…」
ヴァトラーの顔を見ながら古城は言う
「そうだね。問題ないヨ」
笑いながらヴァトラーは答えた。そして古城同様執事からグラスを受け取っていた
「クリストフ・ガルドシュ。戦王領域出身の元軍人で、欧州では少しばかり名前を知られたテロリストさ。
「黒死皇派?指導者が暗殺されて何年も前に壊滅したんじゃなかったか?」
古城は昔見たニュースを覚えているようだ。古城は記憶力は良い方なので大事件なら覚えている
「そう。指導者はボクが殺したよ。ガルドシュは黒死皇派の残党達が新たな指導者として雇ったんだよ。テロリストとして圧倒的な実績を持つ彼をね」
「で、そのクリストフ・ガルドシュって男がこの
「察しが良くて助かるよ、古城。ガルドシュが黒死皇派の部下達を連れてこの島に潜入したという情報があってね」
「だから挨拶ってわけかよ…」
少し怒り気味の表情で古城は言う。古城は気付いたのだ。ヴァトラーの本心に
「ヴァトラー…お前、この島で黒死皇派を誘き出すつもりだな?自衛権とでも言ってな」
「いやいや、愛しい君に会うのが目的だよ、古城。でも、ボクの眷獣は宿主であるボクの身に危険が迫ったら何をしでかすかわからないからね〜。この島を沈めるくらいのことは平気でやるヨ」
「…ヴァトラー……てめぇ…」
古城の身体から黄金色の稲妻が漏れ出した
ヴァトラーは正当防衛を主張して黒死皇派と闘おうとしている。この島を滅ぼす事になるとしてもだ
そんな事を言われて黙っていられるほど古城は大人ではない
「いいね、今の君となら楽しめようだヨ」
ヴァトラーからも魔力が漏れ出す
今ここで2人が激突したらそれこそこの島が沈む可能性があるだろう
「先輩!落ち着いてください!」
だが激突することはなかった
雪菜の一声で古城は少し冷静になることができた
「…すまん」
「伝えたい事は言ったよ。後はこのパーティーを共に楽しもうじゃないか!古城」
手を広げ、いつでもwelcomeと言いそうな雰囲気であった。つい先程一触即発だったと言うのにこの態度だ
「用がないなら帰る。……あと」
古城は用無しと帰ろうとしたが、ふと思い出して1度だけ振り返った。その時古城からは魔力が少し漏れ、瞳が黄金色になっていた
「この島を沈ませるようなことがあったら俺はお前を殺すぞ……ディミトリエ・ヴァトラー」
「……肝に銘じておくヨ」
その時の古城にヴァトラーは何か思う事があったのか古城をしばらく見つめ、言葉だけは返しておいた
そうして、第一真祖の使者と第四真祖の会談は終わりを告げた
オリジナル要素を明確にしました!
''獅子の黄金''は盾として出ましたが盾確定ではありません。
武器化はそれぞれの眷獣で最も適した武器を決めましたが、古城のイメージによって他の武器にする事も可能という設定にします!
今後の展開をお楽しみください!