転生者の名は暁古城   作:ちばーな

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第6話です!
ふと思いついたオリジナル展開を少し含もうと思っています。
これから先どこかで入れていこうと考えていますのでよろしくお願い致します

では、どうぞお楽しみください


第6話 少女の思い、剣巫の叫び

古城達が目指しているのはアイランド・ノース

 

企業の研究所が建ち並ぶ絃神島(いとがみじま)北地区の研究所街の片隅に目的の研究所跡地は残されていた

 

 

「あれがその製薬会社の研究所ですか?」

 

見た目はほぼ直方体の4回建てのビルである。変わった所があるとすれば窓が少ないだけで閉鎖されてる雰囲気はさほど感じられない

 

「親会社が撤退して閉鎖はされたが中の施設はそのまま残ってると思う。人工生命体(ホムンクルス)の調整施設もな」

 

「隠れるにはもってこいの場所ですね」

 

「だな。にしても窓ないから中の様子分からねえな」

 

「では私が調べてきます。先輩はここで待っていてーー」

 

雪菜が話してる最中に古城はスタスタ入口に向かって歩いて行った

 

「せ、先輩!?待ってください!」

 

「ん?俺も行くぞ。実力的には問題ないだろ?」

 

「で、でも…先輩は眷獣が使えないじゃないですか!」

 

「姫柊1人に任せられるわけないだろ。もしもの事があったら心配なんだよ」

 

「なっ///何を言ってるんですか///」

 

ストレートに恥ずかしい事を言う暁古城(鈍感男)に対して雪菜は頰を赤く染めた

 

「わ……わかりました。あ…ありがとうございます……」

 

「え?なに?」

 

後半の部分は小さく言ったので古城には聞こえなかった

 

「い、いえ…なんでもありません。行きましょう」

 

そう言って2人は建物に向かっていった

 

 

当然の事だが閉鎖された研究所の建物には鍵がかかっていた。安物の南京錠(ナンキンじょう)でガチガチに封鎖され、長い間放置されていたのか赤く錆びついていた

 

だが古城には違和感があった

 

「なんだろう…なんか引っかかるな…」

 

「先輩、当たりです」

 

そう言って雪菜は銀の槍、雪霞狼(せっかろう)を扉に突き立てた

 

その瞬間、キン、と甲高い音が響き渡り扉を縛っていたはずの鎖と鍵が消滅し、ゆっくりと扉が開いた

 

「これは…幻術か?」

 

「はい、それも初歩的なものです」

 

「ま、とりあえず進むか」

 

そう言って2人は奥へ進んでいった

 

 

 

すると実験室に辿り着いた

美しいと呼ぶには程遠く、廃棄された人工生命体(ホムンクルス)の調整槽があった

 

「これは……まさか…っ!」

 

古城はこれを見て呆然とした。そして激しい怒りを見せた

 

「先輩…?」

 

怒りを見せる古城に雪菜は驚きの表情を見せるが理由が分からないため聞こうとした

 

しかし、雪菜は唐突に槍を構え水槽の陰当たりに目を向けた

 

そこから出てきたのは藍色の髪の少女、アスタルテと呼ばれていた人工生命体(ホムンクルス)だった

 

アスタルテの存在に気づいて古城も振り返ったが雪菜がハッとしたように古城の目の前で左の(てのひら)広げた

 

「先輩は見てはダメです!」

 

「え?いや…は?」

 

「とにかくダメです!こちらを向かないでください!」

 

いったいなにを、と思った古城だがすぐに理解した

 

雪菜の掌ごしに見えたのはアスタルテのほぼ裸同然の(きわ)どい姿だった。いちよう薄い布きれを着ていたが全くの無駄と思っていいレベルである

 

するとアスタルテが唐突に静かに口を開いた

 

「…警告します(ウォーニン)、ただちにここから退去してください」

 

「…え?」

 

攻撃してくるかもしれなかった状況に関わらず、彼女の予想外な言葉に古城は我に返った。雪菜はその間に先制攻撃が可能な体勢になっていた

 

しかしアスタルテは淡々と言葉を続ける

 

「この島は、間もなく沈みます。その前に逃げてください。なるべく、遠くへ…」

 

「アスタルテ…お前は……」

 

古城はアスタルテを悲しそうな目で見た。古城はアスタルテが人殺しをしたくない事を感じ取ったのだ

 

現に今まで彼女は吸血鬼を襲いはするも殺しはしなかった。

おそらく彼女は元々は医薬研究とその開発の為に生まれてきたのだろう

 

そしてアスタルテは詩のような言葉を言った

 

「''この島は、龍脈(りゅうみゃく)交叉(こうさ)する南海に浮かぶ(はかな)仮初(かりそ)めの大地。(かなめ)を失えば(ほろ)びるのみ''……」

 

言い終わった直後、アスタルテの背後に、ゆらり、と大柄な影が現れた

 

それはロタリンギア殲教師(せんきょうし)ルードルフ・オイスタッハであった

 

「ーー左様(さよう)我ら(・・)の望みは、(かなめ)として(まつ)られし不朽(ふきゅう)の至宝。そして今や、その宿願を叶える力を得ました」

 

「おいオッサン、違うだろ」

 

「……?なにがですか、第四真祖よ」

 

「その目的はあんたの目的であっても、アスタルテの目的じゃない!あんたはアスタルテを巻き添えにしてるだけだろうが‼︎」

 

「ふむ、一理ありますね。薔薇の指先(ロドダクテュロス)を宿している限り残りの寿命はそう長くないでしょう。しかし目的を果たすためには十分です」

 

その言葉に雪菜は怒りをあらわにした

 

「そんなことの…そんなことの為ためにその子を育てていたんですか!あなたは…まるで彼女を道具みたいに」

 

「なぜ(いきどお)るのですか、剣巫(けんなぎ)よ?貴方も獅子王機関によって育てられた道具ではありませんか」

 

「…それはっ……」

 

「不要な赤子(あかご)を金で買い取って」

 

「…やめて……」

 

「ただひたすらに魔族に対抗するための技術を仕込み」

 

「…お願い…やめて……」

 

雪菜は古城だけには聞かれたくなかった

 

「戦場に使い捨ての道具のように送り出す。それが獅子王機関のやり口でしょう?剣巫よ」

 

「…………」

 

雪菜は呆然と下を向いた

 

自分でも自覚はある。私は道具、だと。だがそれを認めてしまえば古城の近くにいることはできなくなる。古城に幻滅してほしくなかった

古城に知ってほしくなかった

 

だが

 

知られてしまった

 

 

雪菜の心の中の負の連鎖は止まらない

 

嫌われた……

 

 

「剣巫よ、その歳でそれほどの攻魔の術を会得するために、貴方はなにを犠牲(ぎせい)(ささ)げたのです?」

 

オイスタッハは雪菜を愉快そうに眺めながら指摘する

 

 

「黙れよ、オッサン……」

 

古城は怒りをあらわにしながら呟いた

 

だがオイスタッハはこれを気にせず

 

 

「道具として作り出したものを道具として使う私と、神の祝福を受けて生まれた人を道具に(おとし)

める貴方たち。どちらが罪深き存在でしょうか?」

 

その言葉を聞いた時、古城の中の何かが切れた

 

「黙れと言ってんだろうが、(くさ)僧侶(ボウズ)が‼︎」

 

咆哮した古城の全身を、綺麗な稲妻(いなずま)が包み込んだ

 

「……先輩?」

 

雪菜は弱々しかった

 

「姫柊…俺はここ最近お前といて楽しかった。お前はどうだった?」

 

「わた…しは、楽しかったです…先輩と一緒にいるのは…楽しかったです」

 

泣きじゃくりながな雪菜は精一杯答えた

 

「なら姫柊は道具じゃない。どこにでもいる普通の可愛い女の子だろ、俺が保証する」

 

と優しい顔で微笑んだ

 

雪菜はその言葉に救われた

 

その時、ようやく自分の気持ちに正直になれた

 

「(そっか…私は…こんな優しい先輩が……大好きなんだ)」

 

いつも自分の事を気に掛けてくれる

そんな事をしてくれたのは獅子王機関にいる姉のような存在の人と古城だけだった

 

 

古城は雪菜の表情が柔らかくなったので大丈夫だと信じた。実際古城はこんな消沈した雪菜を見ていられなかったので本当に安心した

 

そして雪菜を傷つけた(くさ)僧侶(ボウズ)を睨みつけた

 

「もう許さねえぞ…オッサン」

 

「ほう。眷獣の魔力が、宿主の怒りに呼応しているのですか……いいでしょう………アスタルテ!彼らに慈悲を!」

 

「………」

 

「…?アスタルテ、なにしているのです」

 

アスタルテは従わなかった

彼女は抑揚のない表情で淡々と呟くばかりだったが感情が無いわけではない

アスタルテの感情は古城の言葉で確かに揺れていた

 

「…命令を聞かないなら良いでしょう。本当はこれは使いたくはなかったのですが…致し方ないでしょう」

 

そう言ってオイスタッハは懐から注射器のような物を取り出しアスタルテの首筋に刺した

 

「……うっ!?」

 

途端アスタルテの表情が強張った

しかしそれも次の瞬間何もなかったかのように無表情な顔になった

 

しかし、彼女の目は先ほどと違い光がない

 

「…アスタルテ!てめえっ、この(くさ)僧侶(ボウズ)……っ!」

 

「さあ、やりなさい!アスタルテ!」

 

命令受諾(アクセプト)

 

抑揚のない声でアスタルテが答えた

その目は光こそないが、どこか悲しげな表情にみえた

 

そしてアスタルテの身体からでてきた眷獣はより強化されて現れた。腕だけの存在だったはずが、ほぼ全身が出現しており、宿主であるアスタルテを眷獣の身体の中に取り込んでいた

 

「やめろよ……アスタルテ!」

 

古城の悲痛の叫びもアスタルテには届かず''薔薇の指先(ロドダクテュロス)''は腕を振り上げ古城を殴りにかかった

 

普段の古城なら避けるなりできたはずだがアスタルテに対して古城は攻撃しない…いや、できなかった(・・・・・・)

 

棒立ちのまま古城は殴られ十数メートル近く後ろに吹き飛んだ

 

殴られただけのはずが古城の身体には異変があった

 

倒れた古城の身体から白い蒸気と、肉の焼けるような臭いを漂わせている

 

まるで雷に打たれたような…いや、古城の魔力が逆流したかのような姿だった

 

「先輩っ!」

 

倒れた古城を庇うように雪菜はアスタルテに突撃した

 

真祖の眷獣をも(ほろ)ぼし得る七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)

 

その槍の一撃はいかなる魔族にも防げない

 

 

 

はずだった

 

 

 

雪霞狼(せっかろう)が…止められた!?」

 

雪霞狼の刃はアスタルテを包み込む眷獣に触れたところで止まっていた。

 

あらゆる魔族の結界を貫くはずの槍が止められている。なぜ止められているのか?その理由はすぐに気付いた

 

その事実と理由は雪菜に確かな驚愕を与えた

 

「そんな!?なんで……その能力は!」

 

「気付きましたか、剣巫(けんなぎ)よ。あらゆる結界を切り裂く''神格振動波駆動術式(D O E)…世界で唯一獅子王機関が実用化に成功していた、対魔族戦闘の切り札です。貴方との戦闘データを参考に完成させることができました。貴方のおかげです」

 

「そんな…わたしのせいで……」

 

戦意を失った雪菜は簡単に眷獣に吹き飛ばされた

 

本来の雪菜ならすぐに受け身をとって体勢を整えるだろう

 

だが今の雪菜は自分を責めていた

 

オイスタッハが力を手に入れたのも。古城が傷つき倒れたのも…自分がこの絃神島(いとがみじま)を訪れたせい

 

そう考えてるうちに受け身も取らず背中から落ち、衝撃が雪菜を襲った

 

「ーー!ゲホッケホッ‼︎」

 

背中から落ちたため息が詰まり咽せる雪菜

故に気付かない。自分の身に近付く存在に

 

「さらばです。獅子王機関の(あわ)れな傀儡(くぐつ)よ……せめて魔族ではなく、人である我の手にかかって死になさい」

 

「……っ!」

 

雪菜がオイスタッハの存在に気付いた時にはもう遅かった。オイスタッハによって振り上げられた戦斧(せんぶ)はもう振り下ろされる直前だった

 

もう避けることはできない

そこに待つのは死

 

雪菜は一瞬で覚悟を決めた

 

 

 

そして衝撃が襲った

 

 

 

 

古城(・・)

 

 

「……え……?」

 

古城から血が噴き出し雪菜の全身を紅く染める

 

「せ……先輩…?」

 

倒れ込む古城を支えて、雪菜は声を震わせた

 

 

古城の身体が異様に軽い。古城の身体は首から下は無残な姿になっていた

 

オイスタッハの一撃により背骨を砕かれ能力の根源である心臓を潰され、魔力の()(どころ)たる血は虚しく流れ落ちていた

 

残ったのは……首だけとなった古城だけだった

 

「そんな…どうして……いや…………いやあああああああっ……‼︎」

 

 

オイスタッハはその光景を無表情に眺めていた

これ以上戦闘を続ける力は雪菜にはない

今殺さずとも至宝を奪還すれば皆死ぬ

 

そう判断したオイスタッハはアスタルテに命令した

 

「行きますよ、アスタルテ……我らが至宝を奪還するのです」

 

「ーー命令受諾(アクセプト)

 

 

オイスタッハとアスタルテは去り、そこに残ったのは………

 

もはや精神の崩壊した雪菜と

 

 

身体を失い死んだ古城だけだった

 




次回の更新はおそらく来週になります。
毎度遅い更新ですがご了承ください

それではまた次回
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