小説ってなかなか思うように書けませんね。
作家さんはほんとにすごい!
カチカチと、時計の音が部屋に響く。机に向かい始めてからどれだけ経っただろうか。
廊下側の扉からカリカリとカマクラが俺の部屋の扉を引っ掻く音にももはや慣れつつあるな。そこまでしてこの部屋に入りたいのか、可愛いやつめ。とここまで考えて、後ろからバシリと頭を叩かれた。
「そこ、公式間違えてるから」
頭をさすって痛さをやり過ごす俺に聞こえたのは、なんともやる気のなさそうな声だ。
俺は今、自分の部屋で勉強をしている。現在勉強中なのは数学。俺は数学が大の苦手なのだ。
そんな俺に数学を教えているのは驚くことなかれ、例の六子の四男である一松だ。
一松は今ではこんなネガティブなグズ野郎だが、高校毛時代は超がつくほどの真面目な生徒で頭もよく、成績優秀者だったらしい。
それがなんでこんなグズニートになってしまったのか…それには涙なしでは語れない物語があるらしい。あるらしい、が一松は俺に話そうとしないので俺は知らない。
まぁそんなことはとにかくとして、一松は頭がいいのである。
「ねぇ、聞いてた?そこの公式間違ってるんだけど。」
眠たげな表情に、少しシワの寄った眉間。あ、ちょっと不機嫌になってる。そこまで考えて、俺の頭が再びバシリと叩かれた。
「他ごと考えるなら、今日はもう勉強やめたら?」
そう言うと一松はベッドと壁の間に作られた狭いスペースへと腰を下ろした。これは、「今日はもう勉強みませんから」の合図である。
しばらくごそごそと身じろぎをしていた一松であったがちょうど良い居心地の場所が見つかったのだろう、動きを止めるとふぅ…とため息をついた。
このため息は、「せっかく勉強をみてやっているのに集中力切らしやがってコノヤロウ、殺すぞ」という俺に対する怒りからではない。
ただたんに、俺に勉強を教えていたために疲れてしまっているだけだ。
俺は机に出されている教科書や筆記用具やらを片付けて部屋を出ようとする。
部屋の扉を開けると、カマクラがサッと入ってきた。
おーよしよし、と頭を撫でようとする俺を無視したカマクラは一直線に一松の方へと走っていく。
そうだよな、お前、一松が来てるときしか俺の部屋に来ないもんな…最初からわかっていたとも。…はちまん、しびしくない。
「よしよし、カマクラはいい子だね。」
いつもより大きなその声に振り替えると、一松がこちらを見ていた。
その顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいる。
カマクラは一松の膝に乗って、その優しげな一定のリズムで動く撫で方にすでにウトウトとし始めていた。……はちまん、さびしくない。
俺がリビングへ降りていくと、ちょうど小町がお茶の用意をしていた。
「あ、お兄ちゃん!今ちょうどお兄ちゃんの部屋に持っていこうとしてたんだ~。ずっと勉強して小町に構ってくれなかったから寂しかったよ~!あ、今の小町的にポイント高い!」
「おー、そんな小町に気がついて手伝いに来たんだぞー。あー、今の八幡的にポイント高いわー。」
「ちょっとお兄ちゃん、全然気持ちがこもってないんだけど!」
腰に手を当ててプンプン!効果音が付きそうな小町。実にあざといが、小町がするとなんでこんなに可愛いのか。六子の末弟とは天と地との差があるな。
ま、ヤローと比べたら小町に失礼すぎるか。
「今日のおやつはね~、今川焼だよ!この前トドくんが買ってきてくれたお店の!あれおいしかったから、お店教えてもらったんだ~。」
「おぉ、あの時のか。しかも一人二つずつとか、今日は奮発したな。」
「うん!いちくんはいつも小町やお兄ちゃんに勉強教えてくれるからね~。あと、小町があんことクリーム、両方食べたかったからであります!」
小町が手渡してきた袋には、まだ暖かい今川焼が六つ入っている。
「あ、ちなみに左側があんこで右側がクリームだよ」と聞こえたので、あんことクリームの今川焼をセットにして三つの小皿に盛り付ける。
小町が緑茶の入った急須と三つの湯呑みをお盆に乗せいたので、俺が今川焼の乗った小皿をそのお盆に一緒に置いて持つ。
小町が先頭を歩いて扉の開け閉めをしてくれるので、難なく俺の部屋の前につくことができた。
小町が俺の部屋の扉を開けると、ついこの間六子たちが勝手に持ち込みやがったちゃぶ台がセットされていて、その一角に一松が座っていた。
「いちくん、お待たせであります!」
「そんなに待ってないから。あ、ちゃぶ台はすでにセット済みであります。」
小町がビシッと一松に敬礼すると、一松もやんわりと敬礼を返す。
小町は満面の笑みでいるのに対して、一松は無表情だ。
別に一松は嫌々敬礼をしたわけではない。
「今日のおやつは一人二つも食べていいの?」
「うん!いつもいちくんにはお世話になってるから、そのお礼だよ。あ、他の松お兄ちゃんには内緒にしてね?お兄ちゃんが怒られちゃうから」
「あー、うん。まぁ八幡ならどうにかなるだろうし怒られても大丈夫だろうけど、とりあえず内緒にしとく。」
「待て待て、怒られちゃうの俺なのかよ!」
一松が比企谷家へ一人でやって来る日は少ない。
それは一松が他に野良猫の面倒を見ているからだとか色々な原因があるのだが、最低でも月に一度はこうやってふらりと一人でやって来る。
そんな日は決まって一松は俺か小町の勉強をみる。
そして勉強が一段落つくと三人と一匹でおやつを食べるのだ。
三人三様に「いただきます」をして今川焼にかぶりつく。
カマクラが一松の膝の上で「にゃ~」と鳴いて眠りにつくのが横目に見えた。あ、カマクラのおやつ忘れてきたわ。
とまぁそんなわけで、やはり俺には勉強後の休憩が必要不可欠なのである。
終。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
一松はみんなで来るとついつい悪ノリして八幡をからかうけど、他の兄弟がいないときはお兄ちゃんになります。
という妄想でした。
もっとぼっちとぼっちはわかりあってるんだぜ!っていうのを書きたいんですが書けませんでした。