やはり俺が六子と腐れ縁なのはまちがっている。   作:からぶり

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ぼっちと三男

「あのクズ長男、消してやる。」

 

ガチャリと静かに開いた扉の先。そこには静かに怒りのオーラを身にまとわせて仁王立ちをする緑色の鬼がいた。

 

 

 

 

「なー八幡、お前もそう思うよな?な?」

「お、おぅ…。」

 

緑の鬼、もといチョロ松が来てからかれこれ一時間が経過していた。

チョロ松は酔っているわけでもないのにいつも以上に滑舌だ。

チョロ松の話をかいつまむと、アイドルの握手会の参加していたところをおそ松に邪魔されたらしい。

 

俺はアイドルとかそういうものに興味がないため詳しくは知らないが、チョロ松が好きなアイドルのことだけはよく知っている。

なぜ知っているのかと言うと、チョロ松が一人で来た時は決まって一回はそのアイドルの名前が出るからである。

 

しかもこの前なんか「お前も一緒にライブに行こう!」とか言われて危うく連れ出されるところだった。

いくら地下アイドルといっても、一回ライブに行けば入場料で軽く3000は飛んでいくだろう。

高校生の俺にそんな大金使わせようとするとは、チョロ松も何気に下種だよなと思う。

それに俺の少ない小遣いは大体小町に消えるのだ。

少しくらい自分用に残しておきたい。

あ、なんで小町に消えるのかと言う疑問は愚問だ。

千葉の兄弟事情を知っていれば大体想像がつくだろうからな。

 

 

「って、おい八幡聞いてんの?お前のそういうところよくないぞ。だいたいなぁ、」

「あー、すまん。明日小テストがあるから、そのことちょっと考えてたわ。」

「ん。まぁテストなら仕方ないか。なんのテスト?」

「化学だったかな。」

「うわ!化学!お前文系だろ?大丈夫なのかよ。」

「あーまぁ最善を尽くせるように頑張るわ。」

 

ふぅ。矛先が俺に向かいそうだったから思わずテストの話したけど正解だったな。

 

高校生の良い所は、テストがあるからと言えば大抵のことが許されることだ。

学生の本分は勉強である。決して青春ではないのだ。

バイトだって、「来月なんだけど、もう少し入れない?」にも「あ、来月末にテスト始まるんで…」と言えば大抵は「そっか、じゃあ仕方ないね。」で片づけてくれるところがほとんどだろう。

まぁ俺はバイトをしていないので関係ないわけだが。

チョロ松も高校生時代に実行委員会などもしていたらしいし、自称常識人らしいのでテストの話をすれば大抵のことは許してくれるのだ。

 

「で、だ。チョロ松、申し訳ないんだがテスト勉強するから帰ってくれるか?」

「は?なんで。」

「え、さっき明日小テストあるからって言っただろ。その勉強だよ。」

「八幡なら今更勉強しなくたって大丈夫だろ。」

「まてまて。その自信は一体どこからやってくるんだ?」

「八幡は優秀だから、大丈夫だって。俺信じてるし。」

 

そこまで言うと、チョロ松は手にしていた湯飲みに入っていた残りのお茶を全て飲み干す。

勝手に急須からお茶をおかわりするその姿は「だから僕の話を聞け」と言っているも同然だ。

 

ふっ。これだからこの六子は。

お前はいつからカラ松になったんだ?てかいつからMに目覚めた?俺は一松じゃないから胸倉を掴んだりなんかしてやらないぞ。

先ほど何度も愚痴で聞かされた「まったくクズな兄を持つと大変だ」をそのまま返してやりたい。

やっぱりお前も立派なあの六子の一員だ。

まさに今証明されたわ。

 

 

…まぁ俺の場合チョロ松は兄ではないけどな。断じて違うけどな。

 

 

とにもかくにも、「テスト勉強したいから申し訳ないけど帰ってね」作戦は失敗に終わった。

さて、愚痴連射モードに入ろうとしているチョロ松を帰らせるにはどうするべきか。

 

「で話は戻るんだけど、ついこの間もあのクズ長男が…」

 

ペラペラと台本を読むように話し出すチョロ松。

息継ぎどこでしてんのかマジわからん。

 

「それでさ、一松も一松でなんであそこで脱糞なんだよって話なんだよなー。」

 

おぉ、ついに他の兄弟の話も出てきたぞ。

これはおそ松の愚痴から徐々に兄弟一人ひとりへの愚痴にシフトチェンジしていく流れだな。

 

チョロ松の話に「うん」とか「あー」とか相槌を打ちながら俺はチョロ松に気づかれないようにある人物に連絡を入れる。

最後に「頼んだぞ」と打ち終わったスマフォを上着のポケットに入れながらため息をつく。

「お、やっぱりため息つくよな。ついちゃうよなー。いやー八幡は話が分かるやつで良かったよー」と俺のため息を聞いてなにやら勘違いしているチョロ松が嬉しそうにしている。

が、俺がため息をついたのは今まさに目の前にいる緑色のせいですから!愚痴に対する感想なんかじゃないからな!?

まぁ確かに他の六子もため息をつきたくなるような奴らばかりだけど!今はお前に対するため息しか出てこないまである。

 

そうこうしているうちに今度は十四松の愚痴に移ろうとしたところで、部屋の扉をコンコンと叩く音が聞こえてきた。

 

「おーい、お兄ちゃんにチョロくーん!おやつ買ってきたから一緒に食べよー!」

 

おぉ、今まさに天使の清らかなる声が聞こえた。って小町の声だけど。

 

俺が部屋の扉を開くと、ティーセット一式と箱の入った袋を持った小町が立っていた。

小町はそのまま俺の部屋に入ると、カチャカチャと音を響かせておやつの用意をしていく。

 

「おやつありがとう。はぁ~。俺幸せだわ~。こんなかわいい妹がいて。」

「チョロ君ってば、一人でここに来るといっつも同じこと言うよね。」

 

今までの愚痴連射モードはどこへやら。チョロ松は嬉しそうに小町の手伝いを始める。

そんなチョロ松に、小町も慣れたように相槌を打っている。

 

ここでお気づきだろう。俺が先ほど連絡を取っていた相手、俺の最終兵器、その名も天使:小町だ!

 

「さ、おやつの準備もできたし、お兄ちゃんもそんなとこに突っ立ってないでケーキ食べようよ!チョロ君の分も、お兄ちゃんがさっき連絡くれたからちゃんと買ってきてるよー!」

「は、八幡…。お前さっきからスマホ気にして僕の話も聞かずになにやってやがるって思ってたけど、連絡入れてくれてたのか。」

 

「俺、いい弟持って幸せだわ…。」とつぶやくチョロ松。

くそ、スマホを操作していたことに気が付かれていたとは…!だがしかし、どうやら俺の作戦には気が付いていないようだ。

このチョロ松という男は、小町に甘い。そりゃもうマッカンなんて比にならないくらいに甘い。

そんな小町がおやつを一緒に食べようと誘う。それはチョロ松にとってにゃーちゃんの握手会に抽選で当たるのと同じくらいとても嬉しいことなのだ。

 

チョロ松はによによとだらしない笑顔を小町に向けている。

よし、今回の「一旦嫌なことは忘れて、小町と一緒におやつ食べようよ」作戦は成功だ。

だがしかし、遅くなったがこれだけは言っておかなくては。

 

「いやだから、小町も俺もお前らの兄弟じゃないからな。断じて違うからな。」

「細かいこと言うなよ。さ、せっかく小町が紅茶入れてくれたんだし冷めないうちにおやつを食べよう。」

 

チョロ松はそういうと、ショートケーキが乗った皿をずいっと俺に差し出してくる。

さりげなく俺がケーキを選ぶ権利を剥奪するコイツはさすが松野家の一員。ちなみに俺の狙っていたチョコレートケーキはヤツの目の前にすでに待機済みだ。

三人で「いただきます」をして、それからは小町の学校でのことや、相変わらずの俺のぼっちライフをチョロ松と小町が談笑するという時間が過ぎていく。

あれ、俺の高校生活が笑い話にされている気がするんだけど?

 

「俺、そろそろ帰ろうかな。」と言って帰る準備を始めるチョロ松に気づかれないようにため息をつく。

ふと小町を見やると、ため息をついた俺に気が付いたのか、哀れな者を見るような目で俺を見ていた。

 

 

ヤツが一人でこの部屋にやってくることが多くなって、愚痴を散々言っては帰っていくようになったのは、俺が中学二年に上がるころだった。

その頻度は月に一回の時もあれば週に何回もやってくることもある。

始めのうちは数十分で終わっていた愚痴は、いつの間にか段々と長くなっていき、俺が気が付いた時には一度来たら松野家の夕飯の時間になるまでずっと、という今の状況になっていたわけである。

なぜこんなことになるまで放置していたんだ、と過去の自分を問い詰めてやりたい気分である。

だがしかし、例え当時の自分が放置せずとも、今の状況を回避できたかと聞かれれば俺は自信を持って首を横に振る。

だって相手は六子の一人、チョロ松なのだ。

 

結論を言おう。

やはり俺が過去を悔やんだところで後の祭りであるしチョロ松が俺の部屋にやってくることに変わりはないのだ。

 

 

 

終。




ここまで読んでくださりありがとうございます。
おそ松さんのアニメが終わってしまいましたが引き続きスローペースではありますが更新していきたいと思います。
よろしくお願いします!
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